秘密
さて、働き始めて1ヶ月が経った。
園芸売り場の春は
くっっっっそ、忙しい。
なぜなら、お花の苗もいっぱいなら、野菜もいっぱい、おまけにお客様もいっぱいなのである。
そんなこんなで激務を終えて、お昼休憩に入った。休憩室ではドワーフの土田さんがお昼を食べていた。
私は禁忌かもしれないが、気になって仕方ない事を聞いてみた。
「あの…、気になってたんですけど、店長さんエルフ好きなのに、店にエルフの方いないですよね…。
もしかして…。
エルフ族の間で店長がやばいって噂になってるんですか?」
土田さんは少し沈黙した後、爆笑した。
「なわけないやんw
はっはっはっww」
「えー違うんですか?
だって、園芸コーナーにエルフの人来てくれたら、植物たちの状態すぐにわかるじゃないですか!管理も楽になりそうなのに。
店長ぐらいにしか、原因が思い当たらないです。」
「確かに、ヤバイ性癖だけど、違うと思うよ。ここができて、最初の1年はエルフの人を園芸コーナーに雇ってたんだって!
でも、続かなかったらしいよ〜。」
(ふーむ。セクハラじゃね?
でも、店長続けてるしな〜。山田さんなら理由知ってそうだな。)
私は、山田さんに聞いてみることにした。
「お疲れ様です!レジ変わります!」
「えっ?もうそんな時間?!」
山田さんは、時計を見てほんとだ!とびっくりしている。
「あの、山田さ…」
「すみませーん!」
「はーい。」
例の事の真相が聞きたがったが、お客様に呼ばれて行ってしまった。
(まぁ、あとででいっか)
やっと落ち着いて話せるようになったのは日暮れ前だった。
「山田さん。ちょっと気になることがあるんですけど。」
「なに〜?」
「エルフ族って園芸とかに長けてそうな種族なのに、なんでいないんですかね…。
いてくれたら、作業楽になりそうじゃないですか?」
「あー。それね…」
山田さんは話しながら、苗の手入れをしている。
「エルフ族の人達って、植物の気持ちが理解できるらしいの。
それで、今からする作業なんだけど。」
山田さんは、3つほど、しなしなになった植物の苗を持っていた。
「これ、もう復活できないから捨てます!」
この植物を捨てるとき、土、植物、ポットと分別するのだが、どうもこの作業の時に植物の悲鳴がエルフ族には聞こえるらしい。
店内にいても感じるらしく、それが嫌で続かないそうだ。
「あっ!これ店長の夢を壊すし、店長に辞められたら困るから内緒ね!」
「はい!」
私は笑顔で返事をした。
店長にエルフ族のいる会社に移動されるより、ここにいる方がエルフ族の安全を守れる。
私はこの秘密を守ることで、エルフ族の未来を守っている。