初戦闘
挑発に乗るかのように素早く距離を詰めるアイアン、鉄を帯びた拳が放たれる。
ボクシングのおかげか、動体視力に長けているセナは華麗に避ける。
しかし、相手も上手。避けるのを読んでいたかのように、二発目が繰り出される。
当たったと確信するアイアン。だが、セナははそれを待っていましたかのように手で受け止めようとした。
(フン、当たれば骨なんぞイチコロ。ワイの拳はそれでは受けきれんよ)
ガキーン!!
金属同士が当たるような音がした。そう、セナはさっきの鉄球を使って防御を図ったのだ。
その防衛術に目を大きく開くアイアン。その刹那の隙をセナは見逃さない。相手の大きな腕を鉄棒のように使い、上へ登る。アイアンもすぐにパンチを警戒し防衛をするが、セナは足を針糸を縫うように足を顔に一発、蹴りをぶち込んだ。
この時アイアンはもう一つの誤算に気づく。
(あの戦いの構え……確実にボクシングの構えやった。しかしあれはブラフ。足の攻撃を気づかせないためや。こ、コイツやり手や)
受け身をとり着地するセナ。すぐさま鉄球を投げつける。アイアンは余裕もなく腕でばってんを作り、玉を跳ね返す。鉄球は高く上へ飛ぶ。
(一度、体制を立て直さんとマズい。?! 足が動かへん!)
「気づいたか? そこは僕が最初に立ってたとこだ。下を見ろ」
下を見るアイアン。そこには
S S
と書かれていた。
ハッと気付くアイアン。鉄球の不規則な軌道を今理解したときには遅かったのだ。
鉄を操るアイアンと磁力を操るセナ。これは運命の巡り合わせなのか両者の相性はバッチリだ。
腕が重力を強く受けてるかのようにどんどん重くなっている。アイアンは断腸の思いで力を解くしかなかった。
セナは片手を大きく開きを相手に向ける。手のひらにはNという字が浮き上がった。
「最初の相手がお前でよかったよ。おかげで自分の力をよく理解できた。」
体が浮き上がり、アイアンの元まで加速するかのように近づく。手のN極とアイアンのいる地面のS極が引き合い、セナの移動を加速させた。アイアンの近くまで戻ってきたところで地面を蹴り、宙を舞う。飛んでいた鉄球は重力に身を任せて自由落下をしていたので。それを手に取り、バスケのダンクシュートを彷彿させる攻撃でアイアンに襲い掛かった。
「くらえーーーーーーー!!」
アイアンは一切の抵抗をしなかった。おかしいと感じるセナ。しかし、攻撃を中止することはできず……
カキーン!!
先ほどと同じ、鉄同士が重なり合う音。まさか!
「顔も鉄で覆えないなんて、誰が言ったん? ん?」
クソ! 警戒してなかった。
カウンターのごとく襲いかかるパンチは避けることなど到底できず、セナの体にクリーンヒットする。腕で防御をするも、吹っ飛ばされるセナ。壁まで思いっきりたたきつけられた。
グハッと口から鮮血を出すセナ。
(確実に腕の骨が折れた。ど、どうすれば……)
ゴキゴキ言わせながら腕を回し、こちらへと歩いてくるアイアン。痛みで動くことが困難だ。
「いやーなかなかに手ごわかったわー。顔も守れはしたけど、普通に痛いの~」
自分の目の前で来たアイアンはメインディッシュでも食べるかのような顔で、
「そんじゃ、おつかれさーん。あの世で妹と仲良くなー」
腕を挙げるアイアン。
(し、死ぬのか。僕が)
バーン!!!
遠くから聞こえた。殴られた音では到底ない……! これは銃声?!
貫かれたアイアンはその場で体を崩した。
「ふぅ、間に合ったみたいだな! お前が約束の時間を守るはずないと思ってたんだけど、やっぱりか」
昨日聞いた声だ。目を開けると、そこには真田と言っていた男と、銃を構えた女の子がいた。
た、助かった。安堵のせいか、疲弊しすぎたせいか。気づかぬうちにセナは意識が遠のいていた。




