暗雲
夏の延長は終わりを告げ、夜は急な冷え込みが街を襲う。鈴虫の鳴き声が夜を騒がしくみせている。とある教会に二人の男が入っていった。
「わざわざ来ていただきすいませんね」
ニコニコした顔の篁は、二人を待っていたかのように立ち上がる。ひとりはカーボーイハットを着ていて、もうひとりは不格好な服装に顔を赤くして酔っぱらっていた。
「来たはいいものも話っなんです?」
カーボーイな男は尋ねる。
「犬養くん。牛久保くん。あなたがたには邪魔者の排除をお願いします。私の計画の障害になるものはすべて取り除かないといけません。先週に私も真田くんに嫌がらせという名の布告をしてきました。我々から出方をうかがいましょう」
「はいはい、なるほどなるほど」
飲みすぎたせいか牛久保は教会の長椅子へ腰を掛けた。
「彼の無礼をお許しください篁さん。さっき手を火傷したようでして気分が悪いようです」
「別にいいのですよ。これくらいのことは神が許してくれます」
「なんとありがたきお言葉。ありがとうございます。それでは行って参ります」
犬養は牛久保の頭を抑え首を垂れる。二人は颯爽と教会を出ていった。
静寂が戻り、一人残る篁は笑顔をやめ角のほうに目をやる。
「そろそろウォーターくんの出番かもしれませんね。初出陣ということで付き人も準備しています。存分に腕を振るってください」
小柄な人影がそこにはいた。何とも言えない寒気があった。