野生の勘
ブーンとバイクでかっ飛ばす熊谷は明らかに交通ルールを無視していた。
「これ絶対警察に捕まりますよねこれーーーーー!!」
「風のせいで何言ってかわんねーよ!! fooooooooooo!!」
会話が成立してない高速ドライブは幸か不幸か、無事に到着した。場所はシツリー駅。ニューザ市の上のシツリー市の駅である。しかし駅自体はニューザ市内という何ともめんどくさい場所だ。
真田から受け取ったメモにはこう書いてかいてある。
・コーヒー豆
・ガトーショコラ
・夜ご飯(セナに任せる)
以上だ。まあ適当ではある。
「あんな飛ばして大丈夫なんですか? 本当に怖かったんですけど」
「お前、チーターに追われたことあるか?」
「そんな経験は普通ありませんよ」
熊谷はフンと鼻を鳴らし
「まだまだ若いなお前は」
なんなんだこの人……
二人は駅構内に入り、コーヒーが売られているケルディというお店を目指す。
「シュウトさんはなんで最初あった時あんな不機嫌っぽかったんですか?」
「あれは、ルービックキューブが一面も揃わなくてイライラしてただけだ」
「はは、そうなんですね。ナンカキイテソンシタ……」
「ん? なんか言ったか?」
「いえ、何も」
駅の人混みが騒がしいおかげか愚痴は聞かれなかったようだ。話してる内にお店に着き、買い物を始める。
ガトーショコラやその他、諸々を購入。シュウトさんがミャンマーの香辛料を買おうとしたが、使い時がわからないので、なんとか止めた。
破天荒ながらも、なんとかおつかいを終える。すると、シュウトさんが提案をしてきた。
「セナ腹減ってるだろ。さっきの詫びがてら美味しい飯を教えてやるよ」
「怪しいですけど……」
「ガチなんだって! ここは母親に免じて頼む!」
「免じての意味わかって使ってますかそれ……お腹空いてるの事実なのでいきますか」
「よし! 行くか!」
お誘いがうまくいったせいか陽気になり、行よりもとんでもないスピードでバイクを走らせる。
「ここだ!」
そう言ってじゃじゃーんとポーズをとるその先には[こうらや]と看板が立っていた。
「かつ丼屋ですか?」
「そうだ! 入るか」
店内に入るとシュウトが第一声
「おいクソジジイ! くたばらずにやってかー?」
とんでもない罵倒から始まり、めを丸くした
「お? 熊カスじゃねーかぶっとばすぞ」
と返す店主。雰囲気からしていつもの光景っぽかった。それから五分近く罵倒合戦をしていた。
「じゃあいつもので このバカには定番でも食わせろジジイ」
「はいよ」
やっと落ち着いたのかシュウトは水を口に含む。
「いつもこんな感じなんですか?」
「ん? ああそうだよ。出会ったときからずっとそうだな」
ここの店主とは三年近くの仲らしく、ご飯が出るまで色んなエピソードを聞いた。自分もクスクス笑うよう話がてんこ盛りだった。
「はいできたぜー」とようやくやってくる
「いただきます」
セナが一口いただくと
「めっちゃ美味しいです!」
「ワシが作ったんだからたりめぇよ」
シュウトに目を向けると、深刻そうな顔をしていた。そして立ち上がる。
「すまん、超急用思い出したわ。オレのやつも食べて構わないからな」
「え? シュウトさ……」
既にいなくなっていた。