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reNatu 没 2022 4月より再執筆  作者: 秋村 楼
第一章 エクストラダイアリー
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滑稽な仮面男

 今日は九月二十三日。屋敷での生活が一週間を過ぎた。これといった出来事は起こらず、篁とは停戦(ていせん)状態だ。修行は過酷ではあるが、笹金との体術は彼女の動きに慣れ始めてきた。負けまくってい入るが……。リネイトの方は(きょく)を物体に与えることができるようになり、現在は人間に与えれるように努力している。結論からいうと順調だ。


 昼前のこと、ちょっと腹を満たせるものがないかと冷蔵庫のある家庭科室に来ると。僕と同じような考えをしてたのか、また先客がいた。


「あ、あなたはルービックキューブをしてた人じゃないですか」


 そう僕がこの屋敷に来た日、最初に会った人がそこにはいた。その日以来、訪れていなかったのか今日で二回目の顔合わせだ。


「おーセナか。久々だな」


「名前知ってたんですね。えーとお名前は……」


「オレは熊谷(くまがい)修斗(しゅうと)だ。よろしくな」


 一回目とは印象が大きく違い、とても明るい。彼もここの仲間のようだ。


 熊谷は思い出したかのような素振りを見せ。


「そうそう、歓迎ってことでお前に渡したいものがあったんだよ。能力を有効活用できそうなやつだ」


「そうなんですか! 是非欲しいです」


「よし来た! じゃあこい! ……ってここどこだ? すまんきたばかりだから道案内してくれね?」


 そういえば熊谷さんもシェリーの能力発動後から今日初めてここに帰ってきたようなので仕方ない。


 セナは案内しつつ熊谷と会話を交わす。


「ここ一週間は何かしてたんですか?」


「オレ? あー偵察(ていさつ)してたんだよ、敵地のな」


「偵察ですか?」


「あーそうだ。実はオレらサツともちょっと関わりがあってな。能力による事件等はここが担うことになってんだ」


「警察と連携してるんですか? 知らなかった……」


「あれ? これ言っちゃダメな奴か? ああ、まあいいや。とりあえずだな、街に多くの偵察部隊がいてな、全員と連携の確認と今後についてのために出かけてたんだよ。目星をつけてた敵のアジトももぬけの殻だ」


「なるほど、それはお疲れ様です」


「基本能力絡みの事件は偵察部隊からここに連絡が来ると思ったほうがいい。あとは依頼とかが直接来るとかな。まあほとんどないけど」


 組織的に動いていることに驚愕するセナ。かなり大事に巻き込まれていることを危惧(きぐ)した。


 目的地に着くと、そこに段ボールが置かれていた。


「おーこれこれ、開けていーぞ」


「熊谷さんありがとうございます!」


 熊谷さんは真面目でいい人なんだな。ワクワクしながら開けると中には鉄の(かたまり)みたいなのが入っていた。


「これなんですか?」


鉄仮面(てつかめん)だ」


「……はい?」


「聞こえなかったか? 鉄仮面だよ鉄仮面」


「鉄仮面!?」


 まさかの贈り物が予想斜め上に困惑する。被れと。


「じゃあ早速被れ」


 ですよね~。


 持ってみるとかなり重い。なぜなら鉄の塊だからだ。意地で持ち上げ被る、中にはクッションもあり被り心地は悪くなかった。だが重い。こんなの一時間も維持できない。


「能力出してみろ、見てみたかったんだよ」


「わかりました」


 体勢を立て直し、左手でパチン。瞬間、左手はグッと仮面へ吸い寄せられ、顔にくっついてしまった。


 熊谷は思いっきり吹き出し大爆笑する。


「バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ! 絶対やると思ったわ。アッハッハッハッハハハ」


 前言撤回。この人悪い人だ。


「騙したんですか! まだ操作になれてないんで剝がれないんですけど!」


 極は発動できるが、解除はまだできないので五分はこの状態になる。


 笑い転げる熊谷。現状打開策がないセナはただただ苛立ちを込み上げる。


「お前の能力を聞いた時から絶対やろうと思ってたんだよ。しかもそれ磁力に強いから剥がれんぞ。あー面白い」


 自分では見れないが、実に滑稽(こっけい)なのだろう。


 ようやく笑いが収まったようだが、次はスマホを取り出し、パシャパシャと撮り始める。まあムカついてしょうがない。


 すると、そこに真田がやってきて


「えーっとこれは、どういう状況だ?」


 案の定、意味不明な場面に出くわし困惑していた。


「みてくださいよヒラさん。このセナのバカさ加減を」

「真田先生! この人ひどいんですけど!」


「同時に喋っても聞き取れん。厩戸王(うまやどのおう)じゃないんだから。まあシュウトの餌食(えじき)になったのはわかった」


「そうなんですよー」


 僕の同情を聞き流すかのように話を変える真田は


「そんな2人に買い出しをお願いしたい。」


「えー、普通に嫌です」


「すまんが拒否権はない、俺は出かけなくちゃいけないし、他のメンバーも忙しいから空いているのはふたりだけだ」


「了解でーす。もちろん行くよなセナ?」


 即座に応答する熊谷。威圧(いあつ)にやられ


「わかりました……」


 泣く泣くセナも不服(ふふく)ながら了承した。


「セナ! 準備するからバイクの鍵持っといてくれ。あとその仮面も外しとけよ。ククク、邪魔だからな」


 思い出し笑いをしつつセナへ鍵を投げる。鍵を落としかけたセナは右手も能力で引きようとする。パチンと無事に鍵をキャッチするも、右手もガーンと鐘のように音を立てて無事に両手がくっついた。


 既にシュウトの姿はいなかったが、一部始終を目の当たりにした真田は笑いを我慢しつつ、やれやれと仮面を脱ぐ手伝いをしてくれた。はあ疲れそうな一日になりそうだな。


 こうして、熊谷とセナのイヤイヤおつかいが始まる。今後も降りかかるイタズラにまんまとハマりまくるが、今のセナは知る由もない。

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