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reNatu 没 2022 4月より再執筆  作者: 秋村 楼
第一章 エクストラダイアリー
13/18

勉める

三週間空いてすいませんでした!!

 タイスケさんとの修行を終え疲れ切った身体を休めるため、僕はシャワーを浴び、部屋へと戻った。空はだんだんと淡い赤へと姿を変えていた。一日はあっという間だ。

 そうやすやすと休むことできず、持ってきた勉強道具を手に取る。旧図書室へ足を運ぼうとした。


 実際、これも真田さんの指示である。曰く「学生の本分は勉学だ。どんな状況であっても学ぶという行いは取り上げてはならない。何人(なんびと)たりともな。俺も元塾講師だ。困ったら言いなさい」とのこと。高校の方も現在は休学中と形をとってもらっている。今日は火曜日だが、ここにいるのはそういうことである。一体真田さんはどんな力を使ったのやら……


 廊下を歩いていると、先ほどもお話しをした峯岸さんが歩いていた。オドオドと挙動不審な動きをしていて、こちらを見つけるととんでもない速さで迫ってきた。


「に、二階堂さーん。助けてくださーい!」


 涙目でこちらに訴えかける峯岸。


「どうしたんですか?」


「お手洗いがわからないんですよぉ。みんなで話してた時からずっと……」


「え?! だいぶ時間経ってますけど大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないんですよ! 私、過度の方向音痴(おんち)なのと、今日屋敷の間取りが()()()()()()()()のでぇ」


「こっちですよ」


 峯岸さんに場所へと案内をした。峯岸さんからたくさんおじぎをして、お手洗いへかけていった。

 僕も図書室の場所を聞きたかったなあ。昨日せっかく構内を把握したというのに、屋敷内の部屋が全て変わってしまったのだ。自分の部屋も、日光のあたるところから日陰へ変わった。これもreNatuによるものだ。能力者を聞いたところ、啞然。()だった……そう! 犬だったのだ。人間だけでなく、動物も能力を()()()()()()()()らしく、おとといの騒動にそっぽを向いていた犬の仕業(しわざ)なのだ。名はシェリー。犬種はミニチュアダックスフンドで毛色は灰色ベースである。道端(みちばた)でひん死だったところを拾われたらしく、ここに招かれた。部屋の場所を変えたら建物が崩れるんではないかと思うが、さすが不自然的能力というべきか。


 そんなこんなで軽く10分はかかったが、ようやく到着。中をのぞくと、本棚に本はなくスッカスカで、あるにしても難しい哲学や専門学の書物ばかりだ。たぶん、誰かが持ってきたのだろう。そして先着がいたようで、その姿は笹金であった。ひょこんとひとり黙々とペンを動かしている。僕がマイナス思考せいか、彼女からは近づいてくるなと言わんばかりのオーラを放っていてる気がした。


 日も傾き、窓を(つらぬ)く光も力を失いかけているようなので、僕は室内の電気をつける。集中していたのか、笹金は明かりがついたのに気づき、顔をこちらに向けた。そしてため息をつき、またカリカリとペンを動かす。相変わらずの対応に少し悲しくなるも、オーラに負けず僕は数ある席の中で彼女の手前へ腰を掛けた。笹金はノートに目を向けながら


「なぜ私の前なんですか。集中できなくなるのでそこの席ではやめてください」


 一蹴(いっしゅう)。彼女の感情が乗っていない話し方と氷のごとく固まった表情がさらに僕に対する拒絶(きょぜつ)反応を示している。


「ご、ごめん」


 何か反論をしようと思ったが、喉からこれ以上言葉は出ずに別の席へ退散。わかったこととして、彼女が物理の勉強をしていたくらいだ。


 それから約一時間近く、会話は一切無しに2人は勉強をした。しびれを切らしたのか、ムードや気力が根負けしたセナは勉強道具を片付ける。流石に負けっぱなしも嫌だったのか、もう一度笹金の方へ向かった。彼女のノートを見るセナ。解くのに苦戦しているのか、ペンは止まっていた。消しゴムのカスがノートの上にたくさん散らばっていてる。ふと、笹金も影で気づきため息交じりに


「あのですね、さっきも言いましたが勉強の邪魔です。終わったならはやく出て行ってください。そんな暇があるのなら体術の自主練をしてください」


 笹金のとげとげしい発言のせいか、次の瞬間大きな声を出す。


「ちがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーう!!!!」


 急な大声に目を大きく開ける笹金。セナは怒ってはいなかった。


「その解き方じゃないんだよ! もっと簡単な方法があるんだよ。ほらペン貸してみ」


 いつもなら拒否する笹金も素直に応じ、持っていたペンを渡す。


「これはだな、左手の法則を使ってだな……」


 セナは笹金に分かりやすく問題の説明をした。すると、笹金はみるみるうちに他の問題を解けるようになった。


 気づくと外は暗闇が覆っていて、時計は九時を回っていた。セナは自学習より彼女の指導の方が長くやっていたようだ。


 笹金も疲れたのか、道具を全部片し、立ち上がる。


「さっきよりスムーズに解けたじゃないか、コツをつかんだようだな」


 自慢げに喋るセナと聞き流すかのように沈黙(ちんもく)する笹金。持ってきたものを全部手で持ち、サササっと図書室を出ていく。しかし。最後にセナに向かってお辞儀をして去っていった。


 彼女の行動に驚くセナ。たしかに、教えた側へありがとうのひとつは欲しいと思ってしまったが、冷たい態度をとる彼女の行動とは真逆の行動が見れたのは、ちょっと収穫なのかもしれない。


「あまり人と接してないのだろうか」


 右手を(あご)に置きぼやくセナ。彼女との距離がミリ単位で(ちぢ)まったのかもしれない。


 その日の夜は寝る前に筋トレしたせいか、また眠れなかった。

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