幸せな家庭
お久しぶりです。初めましてのかたは初めまして。
久々に長編に挑戦します!二年近くストーリーを練ったので、必ず完結させます。
みなさんよろしくお願いいたします。
目の前で妹が殺された。それが復讐の始まりだった。
~30分前~
秋の始まりなど微塵も感じず、夏がサッカーでいうアディショナルタイムでもしてるのではないかと思うほど、ただただ暑さの続く九月上旬。二階堂家は、いつも通りの日常を過ごしていた。
「せなー、この食器片しといてくれ。もう出なくちゃいけないんだ」
「はーい」
父さんは朝から忙しいせいか、いつもより急ぎ気味に仕事へ向かう準備をしていた。今日は自分が家事担当だが、昨日、父さんが当番なのに夕飯の食器洗いをサボっていて、自分が今現在それを行っているのに気づいていなかったのが無性に腹が立った。
しかし、母親を亡くしてから約十年。以降、僕たち二人を養う為に、頑張って働いている父さんの背中を見ると、つい許してしまう。それが家族だからかなんなのかは分からないが、そうこう考えているうちに、もう一人がリビングにやってきた。
「ふわぁ~、せなにぃおはよー」
「うん、おはよう、今日は兄ちゃん特製のサンドイッチだぞー」
「ほんと?! 好きなんだよねーこれ。もういっそ毎日せなにぃが当番してほしいよー」
「それはヒナがやりたくないだけだろ……」
「へへ、バレた」
彼女は妹のヒナ。とにかく元気でよく笑い、その笑顔が一番似合う。二人の中は、高校生にしたら仲の良い方だと自負してるし、僕にとってもヒナは自慢の妹だ。
父さんは準備が終わったようで、
「それじゃ先に行くよ。お前たちも遅刻せずに学校行くんだぞ」
「「はーい、いってらっしゃい!」」
二人で見送り、リビングに戻ったあと、ヒナはサンドイッチをモグモグ食べながらテレビをつける。朝の他の家庭事情は知らないので分からないが、ヒナはよく地方のローカルニュースを見る。
ここだけは普通の女子高生、いわゆるJKじゃない部分かもしれない。しかも、その時だけちょっと険しい表情になるときがある。まあニュースに興味があるのはとても感心することだ。
「ヒナーそんな顔してテレビ見てるが、なんかあったか?」
「ん?いやー、またニューザ市で行方不明が起きてたみたいで、怖いなーって」
「そっかあ、たしかにそれはこえーな。でも大丈夫!ヒナはに近づく危ない人間は兄ちゃんがぶっ放してやっから」
「ハハハ! そへは頼もひいなぁ、ありはほー」
ヒナはほおばったサンドイッチをモグモグさせて、感謝を述べる。いつものことなので何を言いたいかは容易に理解できた。それにしても、そんな笑顔で美味しく食べられると、悪い気が一切しない。この時には父さんへのムカつきは忘れていた。
10分後、片付けと身支度を終えた僕は玄関でヒナを待っていた。
「おーい、はやくいくぞー」
「はーいちょっと待ってー」
ドタバタと天井からが音がしつつ、階段を高速に降りてくるヒナ。一階に下りたと同時に足を滑らせ、しりもちをつく。
ドタンッ!!
「はーいててぇ」
「そんなに焦るからだぞー」
「だってぇー、せなにぃが焦らすからじゃーん」
「はいはい、悪かった悪かった。そんじゃいくか」
「うん! 行ってきます母さん!!」
レスポンスは帰ってこない。それはもちろんのことだ。
玄関を出て、一緒に高校へ向かう。因みに高校も同じだ。僕が二年で、ヒナが一年。よく同級生にシスコンと言われるが、うるせー人の勝手だこっちくんなと思う。まあ、ヒナがそれにあまり意識してないのがありがたいところだ。
「そういえば文化祭楽しかったねー! わたし友達とタピオカ巡りしたもーん」
「そうだなータピオカまだ飲んだことねーが、あれ美味しいのか?カエルの卵みてーだよな」
「そんなこといわない! あれすっごく美味しいのにー」
「ふーん、僕はお化け屋敷巡りしたなー。なかなかクオリティ高くて普通にびっくりしたわ」
「そうなんだー、怖くて行けなかった」
「そういえば祭で思い出したんだけど、お前モーカ祭の時に急にどっか行ったり消えたりしたよな?あれは結局何だったんだ?」
「ん? あ、あーそれはねぇ……」
「それは?」
急に黙り込むヒナ。何か都合の悪い質問でもしたのだろうか。ヒナはこういう事がよくある。だからこうなってしまったら自分が一歩下がるのが、常だ。兄妹にも超えてはならない領域がある。何人たりともな。
「色んな友達と会ってたんだよ!…高校から会えなかった子とかもいたからさ。」
「そうだったのか、せっかくたこ焼きとか買ってたのに。どうせなら連絡してくれよー、お兄ちゃん悲しいぜ」
「ハハハ、ごめんごめん。そうだ! じゃあ今日作ってよたこ焼き! いや、せなにぃ特製たこ焼きを!」
「そうだな、久々に本気出すか」
「わーい、やったー! 今日の学校は頑張れそう!! ハハハ」
そんなこんなで、引き続きたわいのない会話交わしていた。
角を曲がる時、二人の男性が立っていて道を通せんぼしている。一人は大柄な大男、もう一人はスキンヘッドの少し怖い感じの雰囲気を出している。ヒナはその二人を見て体を硬直させ、まるで絶望的な状況に出す顔していた。たしかに、怖そうではあるが、そこまでオーバーでなくてもとヒナの肩をポンと叩き安心させる。ここはお兄ちゃんまかせなさい。
「すいませ…「せなにぃ危ない!!!!!」ダンッ パコーン!!
え?
押し飛ばされ倒れる自分、僕を突き飛ばしたのは確かにヒナだった。しかし自分が彼女の姿を確認した時には、体が宙を浮いていた。大男にぶっ飛ばされたのだ。なんだあの音、まるで金属バットにで殴られたかのような……あ? え? ヒナ?
あまりの理解できない状況に混乱する。男たちの嘲笑のような笑い声、近隣の人が目撃したのか大きな悲鳴。ヒナ大丈夫か!ヒナ!全てが心の声でしか言葉が出ない。体が動かない、声も出せない。心も周りもうるさく、全てを遮断した。
でもたしかに聞こえたのがわかる。ヒナは倒れてから一切動きを見せないが、でも聞こえた。それは紛れもない彼女の声だ。
「せなにぃ! 逃げて!!!!!」
そこからの意識は一切なかった。