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reNatu 没 2022 4月より再執筆  作者: 秋村 楼
序章 途中参加
1/18

幸せな家庭

お久しぶりです。初めましてのかたは初めまして。

久々に長編に挑戦します!二年近くストーリーを練ったので、必ず完結させます。

みなさんよろしくお願いいたします。

 目の前で妹が殺された。それが復讐(ふくしゅう)の始まりだった。


             ~30分前~


 秋の始まりなど微塵(みじん)も感じず、夏がサッカーでいうアディショナルタイムでもしてるのではないかと思うほど、ただただ暑さの続く九月上旬。二階堂(にかいどう)家は、いつも通りの日常を過ごしていた。


「せなー、この食器(かた)しといてくれ。もう出なくちゃいけないんだ」

 

「はーい」


 父さんは朝から(いそが)しいせいか、いつもより急ぎ気味(ぎみ)に仕事へ向かう準備をしていた。今日は自分が家事担当だが、昨日、父さんが当番なのに夕飯の食器洗いをサボっていて、自分が今現在それを(おこな)っているのに気づいていなかったのが無性(むしょう)に腹が立った。


 しかし、母親を亡くしてから約十年。以降、僕たち二人を(やしな)う為に、頑張って働いている父さんの背中を見ると、つい許してしまう。それが家族だからかなんなのかは分からないが、そうこう考えているうちに、もう一人がリビングにやってきた。


「ふわぁ~、せなにぃおはよー」


「うん、おはよう、今日は兄ちゃん特製のサンドイッチだぞー」


「ほんと?! 好きなんだよねーこれ。もういっそ毎日せなにぃが当番してほしいよー」


「それはヒナがやりたくないだけだろ……」


「へへ、バレた」


 彼女は妹のヒナ。とにかく元気でよく笑い、その笑顔が一番似合う。二人の中は、高校生にしたら仲の良い方だと自負(じふ)してるし、僕にとってもヒナは自慢の妹だ。


 父さんは準備が終わったようで、


「それじゃ先に行くよ。お前たちも遅刻せずに学校行くんだぞ」


「「はーい、いってらっしゃい!」」


 二人で見送り、リビングに戻ったあと、ヒナはサンドイッチをモグモグ食べながらテレビをつける。朝の他の家庭事情は知らないので分からないが、ヒナはよく地方のローカルニュースを見る。

 ここだけは普通の女子高生、いわゆるJKじゃない部分かもしれない。しかも、その時だけちょっと険しい表情になるときがある。まあニュースに興味(きょうみ)があるのはとても感心することだ。


「ヒナーそんな顔してテレビ見てるが、なんかあったか?」


「ん?いやー、またニューザ市で行方不明が起きてたみたいで、怖いなーって」


「そっかあ、たしかにそれはこえーな。でも大丈夫!ヒナはに近づく危ない人間は兄ちゃんがぶっ放してやっから」


「ハハハ! そへは頼もひいなぁ、ありはほー」


 ヒナはほおばったサンドイッチをモグモグさせて、感謝を述べる。いつものことなので何を言いたいかは容易に理解できた。それにしても、そんな笑顔で美味しく食べられると、悪い気が一切しない。この時には父さんへのムカつきは忘れていた。


 10分後、片付けと身支度(みじたく)を終えた僕は玄関でヒナを待っていた。


「おーい、はやくいくぞー」


「はーいちょっと待ってー」


 ドタバタと天井からが音がしつつ、階段を高速に降りてくるヒナ。一階に下りたと同時に足を(すべ)らせ、しりもちをつく。

ドタンッ!!


「はーいててぇ」


「そんなに(あせ)るからだぞー」


「だってぇー、せなにぃが(あせ)らすからじゃーん」


「はいはい、悪かった悪かった。そんじゃいくか」


「うん! 行ってきます母さん!!」


 レスポンスは帰ってこない。それはもちろんのことだ。


 玄関を出て、一緒に高校へ向かう。(ちな)みに高校も同じだ。僕が二年で、ヒナが一年。よく同級生にシスコンと言われるが、うるせー人の勝手だこっちくんなと思う。まあ、ヒナがそれにあまり意識してないのがありがたいところだ。


「そういえば文化祭楽しかったねー! わたし友達とタピオカ巡りしたもーん」


「そうだなータピオカまだ飲んだことねーが、あれ美味しいのか?カエルの卵みてーだよな」


「そんなこといわない! あれすっごく美味しいのにー」


「ふーん、僕はお化け屋敷巡りしたなー。なかなかクオリティ高くて普通にびっくりしたわ」


「そうなんだー、怖くて行けなかった」


「そういえば祭で思い出したんだけど、お前モーカ祭の時に急にどっか行ったり消えたりしたよな?あれは結局何だったんだ?」


「ん? あ、あーそれはねぇ……」


「それは?」


 急に黙り込むヒナ。何か都合の悪い質問でもしたのだろうか。ヒナはこういう事がよくある。だからこうなってしまったら自分が一歩下がるのが、常だ。兄妹(きょうだい)にも超えてはならない領域がある。何人たりともな。


「色んな友達と会ってたんだよ!…高校から会えなかった子とかもいたからさ。」


「そうだったのか、せっかくたこ焼きとか買ってたのに。どうせなら連絡してくれよー、お兄ちゃん悲しいぜ」


「ハハハ、ごめんごめん。そうだ! じゃあ今日作ってよたこ焼き! いや、せなにぃ特製たこ焼きを!」


「そうだな、久々に本気出すか」


「わーい、やったー! 今日の学校は頑張れそう!! ハハハ」


 そんなこんなで、引き続きたわいのない会話交わしていた。

 角を曲がる時、二人の男性が立っていて道を通せんぼしている。一人は大柄な大男、もう一人はスキンヘッドの少し怖い感じの雰囲気(ふんいき)を出している。ヒナはその二人を見て体を硬直させ、まるで絶望的な状況に出す顔していた。たしかに、怖そうではあるが、そこまでオーバーでなくてもとヒナの肩をポンと叩き安心させる。ここはお兄ちゃんまかせなさい。


「すいませ…「せなにぃ危ない!!!!!」ダンッ パコーン!!


 え?


 押し飛ばされ倒れる自分、僕を突き飛ばしたのは確かにヒナだった。しかし自分が彼女の姿を確認した時には、体が(ちゅう)を浮いていた。大男にぶっ飛ばされたのだ。なんだあの音、まるで金属バットにで殴られたかのような……あ? え? ヒナ?


 あまりの理解できない状況に混乱する。男たちの嘲笑のような笑い声、近隣(きんりん)の人が目撃したのか大きな悲鳴。ヒナ大丈夫か!ヒナ!全てが心の声でしか言葉が出ない。体が動かない、声も出せない。心も周りもうるさく、全てを遮断(しゃだん)した。


 でもたしかに聞こえたのがわかる。ヒナは倒れてから一切動きを見せないが、でも聞こえた。それは紛れもない彼女の声だ。


「せなにぃ! 逃げて!!!!!」


 そこからの意識は一切なかった。




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