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戦略的撤退




 コトッ。

 りこの前に紅茶が置かれてた。

 ベルガモットの良い香りが漂う。



「おい」

「んっ?」

 紅茶を飲むりこに神室は話し掛ける。

「もっと頼んでいいんだぞ。ジュースとかクリームソーダとか。パフェとかケーキとか。遠慮するな」

「いや、別に遠慮してないよ。だって家に帰って晩御飯食べるし。それにハルちゃんと食べるのが至福の一時だから」

「よし。じゃあ、ケーキを二人分包んでやる」

「えっ、いいよ」

 止めるが、神室はすでに手をあげて店員に注文していた。

「ここのケーキは美味しいと評判なんだ。持って帰ったら蒼ハルも食べるだろう?いつもあんなレーションばかりじゃ味気ないしな」

「あっ、有り難う」

 小さな声で、りこはお礼を言う。それを見ながら、神室は満足そうにコーヒーを飲んだ。




 店内には静かなクラっシックが流れる。

「それで、本題に入るが。宇宙船を修理するのにあと何が必要だ?金か機材か?手に入るものなら何でも用意しよう」

「それは……」

 りこは少し苦い表情をした。


 前回のオリエンテーションで必要な物や資料は入手した。それをここ数日分析して、ある答えに辿り着いた。

「どうした?はっきり言ってくれ」

「まず大前提として。あなた達は悪い人ではないし、力になりたいし、助けてあげたいと思う。宇宙船も直してあげたいし、星に返してあげたいと思う」

「ああ……」

「だけど、結論から言うと不可能だわ」 

 ガタッ!!!!!


 神室は思わず立ち上がる。


「ごめんなさい」

 りこは真っ直ぐに神室を見た。

「まず第一に宇宙船の規模が大き過ぎること、もう一度あそこに戻って作業するのが困難なこと」

 何者かの邪魔も入ったこともあり危険極まりない。

「あなた達が自分達の正体をおおやけにして、政府の協力が取り付けられれば可能かもしれないけど、成功率は低い。逆に立場を悪くしかねない」

 ゆっくりと神室は椅子に座り直す。

「私のこと殴ってもいいわよ」

「そんなことしないさ。冷静に考えれば、まったくその通りだからな」

「でも、オリエンテーションでの収穫は大きかったわ。代用できる地球側の技術があるのもがわかった。沢山の人と予算と技術があれば、直せるかもしれない」

「だな………」

 神室は力なく声を出す。


「そこで、提案なんだけど。宇宙船を直すのは辞めて、他の星から助けて貰えないかしら?」

「何?」


「発想を変えてみたの。時間はまだまだかかるけど、小型の宇宙船。もしくは通信機のようなものなら、私きっと作れるわ。だから、この地球から最も近い星の友好な宇宙人に連絡するのよ」


 神室聖は、その提案に息を飲んだ。








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