未来を変える
ほんの小さな選択肢だった。
それなのに、世界線が変わったなんておこがましいだろうか。
すべては、大きな運命に呑み込まれていく。それはなにも変わらない。
でも、私は彼という人間に出会った。ただそれだけだ。答えはない。
「シダ。一度だけお前を許す。お前もお前の部下も私が保護する。そして、私達の星に戻る」
「戻る?仮に戻れたとしても兄上に殺されますよ」
ほの暗い表情でせせら笑いを浮かべる。
だが、その目は真剣にこちらを見ている。
「兄上は私が殺す。奪われた星も私の民も取り返す。私の命に変えてな」
「…………」
「はっ、そんなこと出来るわけがない。あなただって、本当はこの星でなにもかも忘れて普通の暮らしがしたいくせに」
こいつは、ほんとうに嫌なとこをついてくる。
「ああ、その通りだよ。お前を殺してなかったことして、いつもの平凡な日々に戻りたいさ。でも、お前を生かした責任も、王族としての責任もわすれちゃいないさ。だが、なによりも兄上がほっておくわけがない。地球になにかあっては申し訳ない」
「いちよう死んだことになってるかもしれませよ」
「兄上は執念深いんだ。遺体を探してるかもな。それにこの地球も我が星の侵略戦争の範囲内だ」
渋い顔で言った。
「勝算はあるんですか?」
「低いな。同盟を結んだアルテミスが兄上より早く私を見つけてくれれば、他の同志に呼びかけられるがな。とりあえずは地球に被害が及ばぬようここを離れようと思う。今殺されるのと、延命とどちらでも好きなほうを選べ」
「どちらも変わりませんがね。まぁ、面白いのは後者ですね」
「では、承諾ということだな」
冬子は手を差し出す。
シダはその手を軽く握り変えす。
「あなたの仲間に殺されませんかねぇ。私なんかが加わったら。もともと険悪だった記憶しかない」
「それはお前がどっちつかずだったからな。まぁ、殴られても殺されはしないだろうから安心しろ。事後処理はやっておく。落ち着いたら私も元に戻れ」
「了解いたしました。では、のちほど」
サッと姿を眩ましてシダは消えた。
おそらく私はいま重要な決断をした。
しかし、昔のように後悔はなかった。だけど、彼といずれくる別れにはすでに後悔せずにはいられなかった。




