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閉じられた物語




わたしはたくさんの本を読んだ。だけど、子どもの頃に読んだ本の結末なんてとっくに忘れてしまったのだ。




しばらく目を閉じていた人形のように美しい少女が動く。長い睫毛をゆっくりと持ち上げると、世界はゆっくりと広がっていく。考えはまとまった。


「迅速に処理実行する。ウイルス分析後は政府にデータを拡散して任せる。理事長に私から根回しをしておく。残った者はシダを捕らえ、事情を確認したうえで処罰する」

冬子の言い回しにひっかかりを覚えて、聞き返す。

「処罰ですか?」

「ああ、処罰だ。甘いかもしれないが、まず事情をきく。生き延びた同胞が今日まで何を思ってこの行為に及んだか私にはわからぬからな。船を落とした責任は私にある。私に巻き込まれてこのようなことになったのだからな」

冬子は歩きながら出口に向かう。

「私は、理事長に会いに行く。おまえは現場に戻りシダを捕らえよ。あと祐希のやつはどこだ?」

「あ、あの冬子様」

「なんだ」

「非常に言いにくいのですが……」

「なんだ。言うてみよ」

「はい、あの現場の中心地に祐希と……」


心臓が大きく跳ねた気がする。


「碧ハルが」




「…………。隣町だぞ。なんでそんなところにいる?」

「あっ、その。たまたま偶然でして」

そんな偶然あってたまるかと冬子は心の中で叫びかった。

「無事なのか」

「おそらく。祐希を側につけてます。いまごろはシェルターかと思われます」


私は唇を噛んでおし黙った。

「よく聞け。いますぐ理事長に会って事情を話せ。ウイルスの分析も最速でやれ。現場には私が行く。シダも私が捕らえる」

「はっ?それは危険で………」

「早く行け!」

冬子は睨みをきかせた。

「ぎ、御意!」


言い終わるまえに私は走り出していた。



むかし読んだ本の結末は忘れてしまった。


真っ暗な星一つない夜にそんなたわいもない話をしたことがある。それを聞いてた彼はフフッと吹き出した。君でも忘れることがあるんだねと。


「覚えてないなら、僕が決めてあげるよ。君が読んだ物語は全部ハッピーエンドだったよ」


本の結末なんて全部忘れてしまった。



だけど彼の柔かな笑顔だけは、私はずっと忘れられずにいた。




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