裏切り者
この星は平和だ。緑と水の惑星シリウス。
そして、それを納めるのは若き王である。
ズカズカと乱暴な足音が城に響く。そして、その後ろをぞろぞろと従者が続く。それは不気味な静けさと緊張があった。
「まったく、どういうことだ。あの女がいないと言うのに。なぜ、民衆はこうも反乱ばかり起すのだ。うんざりする」
「陛下。ほんの僅かでもいいので彼らに慈悲を。それだけで民衆は心を動かします」
隣を歩く眉目秀麗な短い黒髪の青年は、絞りだすように訴える。
「ハッ、俺は王だぞ。なんでそんなことをする必要がある?」
「で、ですが……」
「いいか、それ以上喋ったらお前の口を引き裂いて犬の餌にするぞ」
従者の胸ぐらに掴みかかる。
「……はい」
「くそっ、こんなことならあの女を逃がすんじゃなかった。髪の毛を掴んで引きず回して、見せしめにしてなぶり殺しにしていれば皆大人しかったろうに」
苦々しげに王は吐き捨てる。
「すでに母船は損傷で撃沈。生存確率はないでしょう。でも、もしかしたら奇跡的どこかの星で生きているかもしれません。新書目録が一緒でしたので。ただ、釈明の機会さえ与えられなかったのは悔やまれます」
「ですが、私は信じられません。彼女がクーデターなどと。なにかの間違いです。聡明で、美しく、なにより政治の全権も兄であるあなた様に早々にお譲りしておりました。ただ穏やかな日々を祈っておられたのに」
もう一度、従者は胸ぐらを捕まれる。
王は静かに耳元で囁いた。
「あたり前だろ。全部俺が仕組んだことだよ。目障りだったからなぁ」
「……………えっ」
「裏切り者に手引きさせたんだよ。まんまと乗せられて、ハハッ」
「………それは誰のことですか?」
「それにしても、俺は優秀な妹をなくてして残念だよ。奇跡的に生きてたとしても、いまごろ裏切り者に殺されているだろうな。釈明くらいは聞いてやってもよかったんだかな」
「シダ様のことですか?」
恐る恐るそれを聞く。
「まさか、誰があんなこうもり野郎。不足だろ。悲劇が足りなさ過ぎる。こういうのは、信頼してる相手じゃないとな。面白味にかけるだろ?なぁ」
「…………ヘンドリックス陛下。あなたは………」
若き王は、上機嫌で薄い笑みを浮かべた。




