女王
燃えるような赤い髪の少女。
とても珍しい色だったから印象に残ってる。
彼女はハルの腕に手を絡ませ、顔を覗き込んでくる。
「まだ名前言ってなかったよね?私はコニー。コニー・アンナ・マクレウス。私のこと忘れちゃった?」
「いや、覚えてるよ」
驚きつつもハルは答えた。
「でも、どうしてうちの学校に?」
「ハルのクラスの編入生。それ私のことだよ」
屈託ない笑顔で彼女は笑った。
「そ、そうなんだ」
「だから学校のこと色々教えてよ、ハル!」
なんか勢いが凄い子だな。それに表情もクルクル変わる。
「そうだ。どうせなら席も隣がい、ダダダダダダ!!!!!」
次の瞬間、彼女の腕は捕まれ高く持ち上げられた。
「どこの令嬢かは存じあげないが、あまり気安くそれに触らないで頂きたい」
淡々とした声の持ち主は、相馬ジュリ。親衛隊の取り巻きの一人だ。といことくらいしかあまり知らなかった。
あと、それって僕のことかな?
「いったいな。あんだどこの誰よ」
ブンッとその手を振り払うコニー。
「はじめまして、隣のクラスの相馬ジュリと申します」
「こんなことして、ただじゃ置かないわよ」
「この学校は身分よりもランクが優先される校風だと聞いていますが?」
「なによ。あんた私よりランクが上だとでも言いたいの?」
「そうですね。私のほうが優秀かと思います」
ジュリは上から下まで少女を観察するように眺めた。
「失礼ね、あんた。それに相馬とか言ったかしら?あんた、隣クラスじゃない?それなのに何故邪魔してるのよ」
「確かに私は隣のクラスですが、蒼ハルに慣れ慣れしかったものですから。あなたの所有物ではないので警告いたします」
「警告ぅ?じゃあ誰の所有物だと言うのよ」
そう言い返されて、彼女はふと考え込む。
そして、僕を見る。
「あなたは、冬子様のものです」
「いえ、違いますが……」
僕は思わず真顔になった。
「ほら、違うっていってるじゃない」
キャンキャンコニーが吠え出すと、そこに親衛隊を引き連れた。彼女がやって来た。
そして、こちらを不思議そうな顔で眺めている。
「教室の前で何をやっているジュリ。通行の邪魔になるだろう?」
透き通る水色の長い髪。
白い肌。
青い海のような目の少女。
学校のクイーン。
神崎冬子が声を掛けた。