表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/73

ドッペル





「おい、田中遅かったな」

作業着を着た中年男性が話かける。その声に気付いて男が顔をあげる。

「いや、この会社広くってさ。迷っちまったんだ」

男は帽子のつばをくいとあげる。


「まぁ、わかるけどな。ほらさっさと掃除に行くぞ」

田中と呼ばれた男はまだ若かった。


「はいよ。わかってらぁ。それにしても、何年か前はちいさな中小企業だったらしいじゃねぇか」

「そら、それはあれだよ。ある人物を雇って風向きが変わったんだってな」

「へぇ、よく知ってるねぇ」

「そりゃあ、ここいらのオフィス街の清掃員をなめちゃいかんよ。いろんな話を小耳に挟むんだよ。まぁ、ここだけの話だけどな」

「ところでその男ってのはどんな奴だい?」

「さぁな、そんなところまで知るかよ。まあ、なんでも警戒心の強いみたいで誰もそいつの顔を見たことがないようだけどな。ここだけの話、俺は知ってるぜ」

「すげぇや、おやっさん」

「黒い長髪の漆黒の目をしたえれぇ、べっぴんの兄ちゃんよ」

「へぇ……」

俺も知ってる。その言葉は誰にも聞こえないくらい消えいるような声だった。


そして、田中は薄く笑った。








「そんなことより田中、仕事を……。おい、あれ?」


そこに部下の姿はなかった。



「おやっさん。もうどこ行ってたんですか?」

「なんだぁ?」

遠くから見知った相手が走ってくる。

「もう、トイレから戻ったらいないとか酷いから」

それは田中だった。


「お前、今?」

「いま?なんすか?」

「………………いや、なんでもない。たまにあるだよな。この仕事やってると、変なものみるときがさ」

「なんの話スッか?」

「もういい。仕事するぞ」

そう言って、おやっさんは先を歩き出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ