帰還
淡い日差しに、黄金のような金髪が揺れた。
空港を大きな硝子の向こうから一望する。
これがあの日本とはな。ずいぶん前のお伽噺のような話だが、その昔戦争があった。各国が自分勝手に権利を主張し、利益を求めた結果だ。
人の傲慢が招いた第三次世界大戦が起こった。環境破壊に人命、文明の消失が起こった。日本もまた三分の一の領土を失い、人口も半数に減った。数年は混乱を極めたいう。
俺達が生まれたのは、それがやっと収束に向かった時代だ。
「ずいぶんとマシになったじゃないか」
最先端の設備と環境にマキリは呟いた。
日本に帰るのは数年ぶりだ。財閥の後継者として、祖国で今日まで勉強を積み重ねた。あとは、会社を継ぐだけなのだが。
空港を出るとそこには、見知った男がいた。
「お帰りなさいませ。マキリ様」
「ああ……」
焦げ茶色の長髪を綺麗に後ろに結んで、ビラビラの白いシャツを来ている。
「いつ見ても恥ずかしい服だな」
「私は執事ですがらね。それよりお車を用意しております」
そこには、黒塗りのベンツが待ち構えていた。
「さぁ、お乗り下さい」
特に無言で車は走り続けた。
「おい、なんか話せよ」
「特に面白い話はございません」
「ほんとにお前はつまらないやつだな」
「なんとでも。ところで、お父様から学校件聞いておりますか?」
マキリは少し顔を歪めた。
「それは必要か?俺の学力は高いぞ」
「はい。それでも必要です。学校を卒業することは一種のステータスです。それに、マキリ様は会社を継ぐにはまだ若すぎる。せめて卒業までは通って頂きます」
「それなら、故郷の学校でも良かっただろ?めんどくせぁな」
「いやいや、暴力事件起こして停学になったのは何処のどなたですか?お金を積んで他の学校に編入という形で丸め込みましたが、2度目はないですよ」
「わかってるよ、うるせぇな」
「留学されて、素晴らし成績を残したのは伺いましたが素行の悪さは治りませんでしたね。残念です」
「うるせぇよ。そもそも、俺は愛人の子供で、貧困層で暮らしてたんだからしようがねぇだろ。他の兄弟が馬鹿なせいで引っ張ってこられてたんだ」
「でも、願ったり叶ったりでしょ。あなたはそれで飢えることのない身分になったのだから。探してくれたお父様に感謝してくださね」
「してるつーの。だから、真面目に勉強してるだろ」
静かに車は緑の園を抜け領内に入った。
「それと、お父様より伝言です。問題を起こすことなく勉学に励み、マキリの名を汚さぬよう。それと、友達の一人でも作ったらどうだ?と」
「ふざけんな、クソが」
マキリは窓の外を見た。
「まぁ、でも私もマキリ様にはご学友がいた方がよいかと思います。コミニュケーション能力が壊滅的ですから。そんな乱暴な言葉使いだから友達が出来ないんですよ」
涼しい表情で執事が言う。
「クビにするぞ」
「したければどうぞ。でも、あなたにお仕えする最後の執事ですよ。他の人は全員あなたの我儘で辞めさせたじゃないですか。いなくなって困るのは、マキリ様ですよ」
しばらくしてから、車内に舌打ちの音がした。