それじゃねぇよ
「さぁ、やりましょう」
相馬ジュリは、静かに手を出した。
そして、それに頷きながら神室がバケツを付き出した。フッと笑いながらメガネを直す。
「準備ばばっちりだ」
「あっ、俺も持ってきたよ。夏の風物詩スイカって奴をな」
みなの期待に応えるように、背負っていたリュックからスイカを取り出す。
「さっ、りこちゃん。はやく火を」
りこは立ち尽くしたまま動かない。
「ちょっと待って」
そのニッコリとした笑顔は物凄く怖かった。
「君たちは何をしようとしてるのかな?」
「「「…………………………………」」」
なぜお前達は、そんなに驚いているんだよ?????
「は、花火を……」
祐希が口を開く。
「いや、なんでやねん」
それはカモフラージュに持ってきただけなんだよ。お前らのために私はどんだけ頑張ったよ。何しに来たんだよ。
小型機打ち上げるためにだろ。遊びに来たんじゃないんだよ。なに花火やる流れになってるのおかしいだろ?
「私達、小型機打ち上げに来たのよ。花火やりに来たんじゃないのよ!」
りこは叫んだ。
「……すまない。不謹慎だった」
「相馬さん……」
「花火という物をやったことがなくてな。つい胸のトキメキを抑えられなかったんだ。なんせ私達の星にはそんなものはなかったから」
クソ冷静沈着そうな顔して、トキメキとか言っちゃうんだね。意外すぎるわ。
「俺もすまん。つい俺達の星は実用性を重視するばかりでこんなもの見たことなかったんだ。火をつけると七色の光が出ると聞いてな。昨日から気になって眠れなかったんだ。俺が知ってるのは火をつけると砲撃で人が消し炭になるような花火しか知らなかったものだから」
「うん、それは花火ではないよね。なんらかの兵器だね」
いやいや。お前が、一番星に帰りたがってたんじゃないんかい?
「りこちゃん、俺花火やりたい。ついでにスイカ割もしたい。地球の夏の思い出作りたい」
素直かよ。
「…………………」
わかる。彼らはいま凄く花火をやりたがっているのは、だけど私達遊びに来たんじゃないのよ。危険を犯して小型機を打ち上げに来たのよ。
「……………せっ、かく。だから花火してからにしようか?」
たぶんハルちゃんなら言うであろうと思う台詞を吐きながら私は諦めた。
私には無理だった。駄目って言えない。
だってやりたいだもんね、三人の顔がやりたいって言ってるもん。
はぁ、と小さなりこの溜め息は三人の歓喜の声に打ち消されて消えてしまった。




