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満天の星に



艶やかな柔らかい髪のツインテールを揺らしながら、りこは靴をはいていた。

トントンという小さな音が玄関に響く。


玄関に置いている大きめの鞄には、カモフラージュの色とりどりの花火が入っている。本命の超小型宇宙船はこの鞄の底に入っている。


今日まで本当に長かった。いくら、私が超可愛い天才少女とはいえ、宇宙船なんて専門外だ。それを資料を集めて、試行錯誤して、何百という失敗を繰り返して、すでに当初の目的も忘れて意地になって作り上げたという努力の賜物なのだ。もし、万が一これの打ち上げが失敗したら断言してもいい。私は寝込んでしばらく起きあがれないだろう。


りこは、玄関の扉を開けた。

夕暮れの気配がする。今日の星空はさぞ綺麗だろう。


「あれ、かなちゃん?」

「うん」

玄関先でバッタリ出会う。

そういえば彼は隣に引っ越して来て、そういば、とても顔のいい美男子だった。私の好みではないけれど、彼は神崎冬子さんの彼氏である。

「目立つから先に行ったんじゃないの?」

「女の子にそんな荷物持たせられないよ」

爽やかに祐希の言葉にりこは思った。

イケメンかよ。これじゃあ、万が一つもハルちゃんに勝ち目がないじゃないか。

「あ、ありがとう」

全部言い終わらないうちに、祐希はサッとりこの鞄を肩にかける。その横顔も造形が深く美しい。

「さ、行こう」

駄目だ。全ての行動がイケメンだ。ハルちゃん、これは勝てない。力になれない妹を許してください。無力感に襲われながらりこは祐希と公園のそのまた奥の裏山へ向かって歩きだした。





しばらく歩いていくと遠くに人影が見えた。

「遅いぞ」

神室の声だ。そして、もう一つ人影があった。

「誰?」

「すまん。見つかった」

柔らかな短い髪の美しい少女だった。こちらに気付いて、小さく会釈をする。

「こんばんは、葵りこさん」

「噂はかねてから伺っております。私は、冬子様の腹心の部下の相馬ジュリといいます。以後、お見知りおきを」

「こ、こんばんは」

りこは思わず神室の顔を見た。が、思い切り顔を反らされた。

「心配しなくても他言しません。あと訂正ですが、あなた達がこそこそやっているのは以前から知っていますよ。だだ今回の件あまりに彼の妹さんを巻き込み過ぎです。止めはしませんが、何かあったら申し訳が立たないので私も同行させてもらいます」

「げ、冬子様にバレたのか?」

祐希が青くなって叫んだ。

「内容まではバレてません。私は何も喋ってませんから。ちなみに今日私がここに来たのは冬子様も知りません」

「それは、何故だ?」

今度は、神室が尋ねる。

「あまり冬子様は気がすすまないようだけれど、私個人として、星に帰れる望みがあるなら試す価値はあると思っているわ」

「ふん、お前は反対すると思ってたよ」

「まさか、私にとってもシリウスは故郷なのだから帰りたい気持ちくらいあるわ。でも当初それを口に出す余裕なんてなかっただけよ」


あまり表情に出ない淡々とした少女はキッパリと告げた。

「さぁ、はやく準備をしましょう。私も手伝うわ」


あたりはすでに夜になり、天井には満天の星空の優しい光がささやかに辺りを照らしていた。












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