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招待状





厳かで清楚な学園に似つかわしくない下品な声が廊下まで響く。ここは時折、仲間達が集まって相談をする資料室である。




「おい、ちょっと声を控えろ」

「アッ、ハハハ。だって笑いが止まらないわ。お金持ちって最高に気分がいい」

バンバンと太ももを叩いて笑い転げる少女がいる。その名も新書目録という。


彼女は髪をかきあげて、目を細める。

「しかも、食事もできる。運動もできる。笑ったり喋ったり冗談も言える。ああ、味覚ってすばらしい。人の体は最高に楽しいわ」

「楽しそうでなりですけど、目立つ行動は控えて下さいね。なんでも株で大儲けしたとか………」

相馬ジュリは、少し呆れた表情をする。


「金は天下のまわりもの。私が持って何がいけないの。非力な私には武器が必要でしょ?」

薄く笑う彼女の姿は、感情豊かだった。やっとのことで人間達に溶け込んだ自分をおかしそうに見ていた人間らしく感情豊かに振る舞う姿には恐れいる。


「それよりもシダについて何かわかりましたか?」

それを聞いて、彼女は笑うのをやめ首を横に振る。

「勿論わからないわ。アーカイブに接続すれば私が捕らえられないわけはない。彼はすでに手足となる者がいるだろうな。だから自分で動かないのだろう」

「じゃあ、俺達はどうすればいいんだ」

「どうもしない。出てくるまで傍観あるのみ」

「なに!!」

神室は眉をつり上げる。


「まったくもう。君達はせっかちだな」

やれやれと新書目録はせせら笑う。

「急いだって何もなりゃしない。どんなに我らがヤキモキしても、思い通りにはならないのさ。ジタバタしたところで、星を追われたのも地球に落とされたのもどうしょうもなかっただろう。それよりも生きてることを感謝して青春を謳歌したまえよ。それに彼を捕まえてとっちめても現状なにもかわらんよ」

「しかし……」

「わかっているさ。もし彼が姫様の妨げになるようなら全力で力になる。しかし、何もしてないときに何も行動など出来はしない」

「目下、私の今の悩みはこれだな」

うつむき加減にスカートの裾から手紙を取り出す。


「それは?」

ニヤリと少女は口角をあげる。

「これな~んだ。じつは私、財閥令嬢の旭さんにお茶会に招待されました。パンパカパーン。だから私は忙しいのよ」


「駄目です」

「駄目だろ」

相馬と神室は反対する。


「なんでなのよ」

新書目録はブーたれる。

「なにか問題を起こしそうな予感がします」

「彼女は、前に冬子様に無礼を働いた者だぞ」


ピョンと新書目録は椅子から立ち上がる。

「いやいや、ほんと心狭いな君達は。聞けば、いまは姫様には絡まないだろ。それに碧ハルの友達だって言うじゃないか。私だって友達の一人くらい欲しい。たまには優雅にお茶を飲んで息抜きしたい。話しのつまらん君達と過ごすのはもう飽きた。うんざりだ息抜きがしたい。止めても無駄だ。私は行くぞ。じゃあ、そーゆことで行くからついて来るなよ。ついて来たら絶交だぞ」

早口にまくし立てて、そうそうに鞄を持って資料室を出ていく。

「見送りはいらないから。姫様に宜しく」

それは、なさがらその場は嵐が去ったあとのようだった。





小雨が降るなか傘を傾ける。

今日の天気はよくないが、紫霧が出てないだけついているな。新書目録はワクワクしていた。飲んだことのない珍しい紅茶の香りに思いを寄せて、クルクルと傘をまわす。


「はてさて。ここで待ち合わせか」

彼女は人通りの多い学校の門を出たあと、バス停の近くでうろうろと待っていた。


「物騒だから知り合いが行くので、あとで落ち合いましょうと手紙にはかかれていたな。誰が来るんだろう」

視界はやや悪く、ほんとに物騒だ。平和ではあるが、陰気な雨の日。特に紫色の霧の出る日は、なぜか犯罪率が高い傾向にある。

思い返せば、こう一人になるのはこの体に入ってからひさしぶだった。たしかに雨の日は好きじゃない。人間の体はこの湿気と思い空気を感じて非常に鬱陶しいからだ。


雨音に混じって足音が聞こえる。

振り返り簡易なビニール傘をたたむ。


「ほんとに雨の日は好きじゃない……」

手首がジンッ痺れた。

傘も曲がってしまった。


それは、自分の頭上に振り下ろされた黒ずくめの男の腕だった。力任せに乙女の顔に殴りかかるなんてとても酷い。

新書目録はしかたなく傘をほった。もう使い物にならないし。

「今日は、用事あるのよ勘弁してよ」

聞いてるのか聞いてないのか男が再び殴りかかってくる。咄嗟に受け身を取って防御したあと、頭を髪の毛を掴んで膝蹴りを食らわす。男が倒れたと見ると遠くから複数の男が走ってくるのが見てた。

「ちょっと、ちょっと。今日はえらく気合いが入ってるじゃない。病弱な少女に何をするつもりよ」

動揺したのは、まさに男が懐から何かを出したからだ。

ヤバいと心臓が警告した。


その時。

「伏せろ!!!!!!!!」

言われた通りに素直に身を屈める。

雨の中。鈍い発泡音が立て続けになる。そして、腕を引っ張られる。黙って少女も走り出す。


「逃げるぞ。たくっ、なんだこれは」

ようやく相手を見た。同じ学校に通う少年だった。

「ま、マキリくん」

「なぜ知ってる?」

「天才の私は学年全員の顔と名前を覚えるのよ!」

「それよりこれは何の騒ぎだ!!」

二人はバタバタと雨に濡れながら懸命に走る。

「なんの騒ぎかって、そりゃあ豊醸財閥の最後の跡取りの病弱な少女が奇跡の生還をはたしたらそりゃもうね。遺産を受けとる気満々だった親戚一同に恨まれて命を狙われちゃう羽目になるわよ。しかも、最近は私は儲けて口座の桁もマックスだから。向こうからしたら生きていてほしくなのでしょうね。ハハハッ!!!!!」

早口でまくし立てながら新書目録は笑った。

「それよりここは日本だけど、何故君は銃を持ってるの」

「助けてやったんだから黙ってろ!!!」

「あっ、わかったぞ。マキリくんが旭さんの手紙に書いてた迎えに来てくれる人だね。さっすが、気が効くてね」

ヒューヒューと彼女ははやし立てる。

「いい根性だな。俺だってまさか銃撃戦に巻き込まれるなら来なかったぞ」


「まぁ、まぁ。兎に角にあいつら巻いて、温かいお茶でも飲みに行こうよ」

この期に及んで新書目録はお茶会に行く満々だった。

「お前………」

























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