豊醸あかり
この学校に通っていることはわかったが………。
しかし、どうすれば会えるのやら途方に暮れる。はやく、私を見つけにこいよ。
薄暗い音楽室で、ピアノを弾く。音楽というものは良い。人類の素晴らしき文化だ。心はないが、落ち着くような気がする。
窓からは、青く大きな月が見える。
セミロングの髪が柔らかく揺れる。少女は、薄い金色の瞳を細めた。小さな足音が廊下から聞こえてくる。
誰だろう。
誰でもいいか。
もし、私を見つけられないのであればそれもいい。せっかく自由になったんだ。面白おかしく生きてるみるのも悪くはないと最近思いはじめたところだ。
ガラリッと音楽室の扉が空いた。
懐中電灯の光が眩しい。
「アッー!!!!!!」
叫び声が響く。なんという汚い低音だろうか。
「でた、でた、でたお化け」
二人組の男子生徒だった。
「ちょっと、落ち着きなよ祐希くん」
バァン!!!!!
けん盤を叩いて私は立ち上がる。
「幽霊でないのならなんだって言うんだよ」
彼の前に立ってるもう一人の少年は冷静だ。静かに私を見詰める。
「あれ?君………」
どうやら私のことを知ってるようだ。
「えっと、わかるかな僕。同じクラスの葵ハルだよ。あの、もしかして。豊醸あかりさん?」
「……ええ」
「……あっ、の。えっと、どうして夜中の音楽室に?」
「まぁ、ちょっと……」
「そう。体はもういいの?入学してからずっと入院してたから顔を合わせる数えるほどだけど」
少女は少し考えるように黙った。
「ええ、もうすっかり良くなったわ。はやく学校に通いたくて忍びこんで見学していたのよ。もうこんなことはしないから内緒にしてくれない?」
「うん、わかったよ。じゃあ、もう遅いし帰ろうか。ね、祐希くんも」
そうして、三人は音楽室をあとにする。
「噂の正体って豊醸さんだったんだね。これで一件落着。よかったね祐希くん」
「ああ…」
「驚かせてごめんね。もうしないわ」
「豊醸さん、学校にはこれる?」
「もうしばらく落ち着いたら、復学するわ」
「よかったね。楽しみにしてるよ」
わからないことあったら聞いてね。ピアノ上手だね。なんて話しをしていたら校門までいつの間にか着いていた。
「じゃあ、私こっちだから」
「うん、暗いから気を付けてね」
「んっ?」
彼女は何故か祐希くんの肩を掴んだ。
「ねぇ、家まで送ってくれない」
そして、彼の目をじっと見る。
「はぁ、なんでだよ。勝手に帰れよ」
「こんな暗い夜道を女性を一人に?」
「送ってあげなよ。それか、僕が送ろうか?」
「いい。有り難う。私は彼に送ってもらうわ。じゃあね、葵ハル」
少々、強欲に彼の肩に力を入れた。
「そ、それじゃあね」
もてる男は辛いねといいながら、葵ハルは離れて歩き出す。
「あっ、おい待てよ」
ブンッと彼女の腕を振り払う。
「お前、馴れ馴れしいのもいい加減しろよ、ブッ!!!」
思いがけず彼女に校門の壁に叩きつけられた。
すでにそこには、葵ハルの姿はない。
あるのは、金色の冷ややかな瞳。
「お前こそ、いい加減にしろよ。私を誰だと思ってる」
「はっ、誰だよ」
「あんなところに落としやがって、お前の首をへし折ってやりたいくらだ。私が、誰か知りたいなら教えてやるよ」
声は驚くほど低く。怒りに満ちていた。
「私は、君たちが血相を変えて探し回ってる新書目録さ」




