ギフテット
葵ハルは、ため息を漏らした。
「めずらしいな。君が浮かない顔をするなんて」
机の上に影が落ちる。
「神崎さん?あれ」
「授業ならとっくに終わったよ」
「そう、あはは。恥ずかしいな」
「どうした?悩みでもあるのか。花壇はいま補修中だし。新しい種もまだ手に入らないらしいから、時間ならあるぞ」
美しい少女に顔を覗き込まれる。透明な水色の髪がさらりと揺れる。
「そうだ。学校のカフェテリアに行かないか?たしかまだ空いてるはずだ」
なんか今日は積極的だな、神崎さん。
ハルは断る理由もなかったので頷いた。
「一度行って見たかったんだ。なんか僕みたいのは、入りにくいから。誘ってくれて有り難う」
屈託なくハルは、微笑んだ。
「では、行くか」
颯爽と神埼冬子は歩き出した。
キラキラとした、上品な空間に僕はそわそわする。
「なんでも好きなものを頼むといい」
「いや、大丈夫だよ」
「クラス委員の特権で、自由に使えるのだよ。いまの今まで使ったことはなかったが」
なにやら、カードのようなものを冬子は見せる。
「だから気にするな」
なんて男前。
惚れちゃうわ。前から惚れてるけど。
「じゃ、じゃあ言葉に甘えて」
そう答えたハルの前にはいつの間にか、お洒落なパンケーキがドンッと置かれた。苺やチョコレートソースも乗っている。
なぜだ?
「頼んでないけど、神崎さん?」
「流行りの食べ物らしい。私も食べて見たかったからだ」
食べるように勧められて、一口食べる。
こんな生クリームとかフルーツとか乗った豪華なおやつは、はじめて見るな。今度、妹にも似たようなやつを作ってやろう。
「甘くて美味しい」
「そうか、それは良かった。こういうときは、甘いものを食べると元気になると書いてあったからな。そうだろ?」
「うん、有り難う」
なんか神崎さんに気を遣わせてしまったな。
おいしい紅茶も頂いて、僕は少しだけ話すことにした。
「僕の妹のことなんだけど……」
「賢そうな子だったな」
「うん。実際僕より頭が良いんだよ。今はまだ適性検査を受けてないだけで、おそらくランクは高いだろうと思う……」
ハルはちょっと躊躇った。
「なんか怖くて、りこは集中するとやり過ぎちゃうから心配になるんだ。両親いないから、僕が親代わりみたいなものだけど本当は全然駄目なんだ。りこのことちゃんと導いてやれるかなって。僕には、過ぎた妹なんだ………」
「君はよくやってるよ。心配し過ぎじゃないか?」
ハルは静かに彼女を見た。
「神崎さん………」
「りこはギフテットなんだ。すごく賢くて、たぶん神崎さん達と同じ種類なのかなぁ……。そんな天才の妹をこんな平凡な僕がなんとかしていけるかなって。もし、危ないことや。間違ったことして。そんなときは、ちゃんとお兄ちゃんでいれるのかなって凄く不安になるんだ…………」
ハルは心の暗い部分を彼女に見せた。




