ただいま
「あっ、これ駄目なやつだ」
ツインテールを揺らしながら、りこは顔を歪めた。
そもそもデータ動かしたら形跡が残る。そうすると犯人特定されちゃって。ハルちゃんとの平穏が壊される。かと言って、このまま放置するわけにはいかな。
「どうするか?とりあえず、解放して別の場所に飛ばすか」
とにかく、あとで回収すれば万事上手くいくだろう。
たぶん。
手を広げて、新書目録に触れようとした瞬間。
微かな耳鳴りがする。
「もう気付いたの?」
りこはため息をついた。
確かにこれば大変な国家機密だ。並みの能力の人間が守ってるわけないか。捕まったら偉いことになりそうだ。
ここに入れたのは、本当に運が良かった。兎に角、そんなやつ相手に出来ないわ。早く逃げよう。
「ごめんね、新書目録。あとで迎えにいくから許してね」
そっと瞼を閉じて、りこは祈るように呟いた。
「……こ。りこ?」
「……ハルちゃん」
りこは、顔をあげた。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ。声かけても出てこないから心配して、部屋に入ったんだ」
不安そうな顔で兄が自分を見ていた。
「ごめんなさい。パソコン触ったら、集中力しちゃって聞こえなかった………」
その様子驚いて、りこは弁解した。
「もう、わかったから。今日はパソコン禁止。休んで寝なさい」
「えっ、でも…」
パタンッとパソコンを閉じられる。
いつもと違って、ハルちゃんは強い口調で言い切る。
「えっ、じゃないよ。りこ、鼻血が出てる」
そう言われれば、なんか生暖かい。
いつの間にか、脳に負担がかかったようだ。
ハルちゃんにティシュで拭かれ、りこはなんだか恥ずかしくなった。
「ごめんなさい。ハルちゃん」
「もう、りこは無茶ばかりするんだから」
優しいハルちゃんの微笑みをりこは眺めながら思った。そういば、自分はまだ小学生だったなぁと。




