暗闇のなか
情報の渦の中は深海の底のようだ。
りこは、静かに意識を沈めていく。たくさんの文字、数式、映像が脳内を駆け巡る。そして闇の中に手を伸ばす。
新書目録というのだから。本の形をしているのだろうか。場所は何処。そんなに遠くには行ってないはずだ。推測だがまだ日本からは出てないだろう。とりあえず引っ掛かるわワードを検索してみるか。
そう。なるほど。
誰かが拾ったのね。だが、彼らの文明がそう易々と解き明かせまい。厳重に保管されているはずだ。どこかしら?
ここじゃない。
もっと奥かしら?
りこは深く深く沈んでいった。
怖くはない。だって、私には戻れる場所があるのだから。
黒く。深く。広がっていく。
凄いわ。こんなところに隠すなんて。
「でも、持って帰れない」
深い暗闇の底でりこは頭を抱えた。
慎重に誰にも気付かれずに来たけれど、強引に仕掛けるか。もともと宇宙人の物だから許してよね。
「ちょっと、壊すね」
切り裂くような警報が鳴り響いたのは、その直後だった。
普段の静けさが嘘のように施設内は混乱していた。大人達がバタバタと走り回っていた。
「落ち着け。とにかく。とにかく、かげろうを連れてこい!!!!」
白衣の男は立ち上がる。
厳重な扉のロックが外され。黒髪の少年が走ってくる。
「説明は後で聞く。状況は?」
「ダークウェブの下層までいかれた」
パソコンの前に少年が椅子に座る。脳に負担がかからないよう、ゴーグルのような機械をつける。
「あれの場所を特定された」
「マジかよ。間に合うか?」
かげろうは、驚く。
「とにかく急げ。情報を奪われるぞ」
「相手は誰だ。合衆国かロシアか?協定はどうなったんだよ」
「わからん。とにかく死守しろ」
「無茶苦茶言うなよ」
かげろうは眉を潜めた。
こんなもんマラソンで例えたら周回遅れもいいとこだ。
ふざけるなよ。
「くッそ!」
情報の底なし沼に勢いよく飛び込んだ。
精神がもって逝かれそうだ。
トラップならいくつも仕込んだ筈だ。
間に合わなくても顔くらいは見てやるぜ。




