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月下のダイブ





りこは非常に満足していた。


ハルちゃんを心行くまで堪能したからだ。

やれ、宇宙人だ。やれ宇宙船だと日常を引っ掛け回され散々だ。もっとも助けてやりたい気持ちはある。あるのはあるのだが。

しかしその前に私が強欲な人間なのを忘れて欲しくない。人間には、それ相応の対価というものが必要なのだ。

好き人と時間を共有したいし。私だけを見つめていて欲しい。効率を優先される彼らとは考え方が違うのだ。


神室は呆れた表情をしていた。

いや、人間らしい表情を作ったように思えた。


「本当にそれで、なんとかしてくれるのだろうな?」

「勿論、だけど適度な休日とご褒美を要求するわ。それでこそ、仕事の真価が現れるというものよ。駄目かしら?」

「いや、かまわない。こちらが頼んでる立場だ。それにしても……」

「それにしても?なに?」

少女はクルリとした瞳で覗き込む。


「なんというか。非効率だ。僕らには、ご褒美とか休暇とか。モチベーションとかそんなもの存在しないからな」

「そうなの?」

ビジネスマンかよとりこは思った。


「ああ、常に全力をつくす。感情の浮き沈みもない。体も疲れにくい」

「へぇ、それは凄いね」

「だけど、たまに羨ましく思うよ。もっと感情に振れ幅があれば楽しいと思うこともあるよ」

「それは、どうだろうね。感情が薄ければ辛いと思うことも少ないと思うよ。そこはちょっと羨ましいな」


なぜなら、人間の私利私欲のためにこんな環境の地球になってしまった。気候は寒く。毒の雨も振る。資源は枯渇して、領土も海に沈んだ。あまりに当然の報いに、人々はこの星が滅びゆくのも妥協している。

ただ叶うならと、いまの私達や大人達は罪を悔いて僅かでも環境を良くしてこの星と共に生きる最後の時間を大切にしているのだ。


「ねぇ、そのシリウスという星は綺麗なの?」

「ああ、気候は良く、風が心地よく。鳥が歌い、水が流れる。緑の惑星だよ。ただ皆、感情はあるが薄い。それゆえ争いもなかったはずなのだが……」

そこまで話して神室は、口を閉じた。


「素敵な星ね」

りこは呟いて、静かに微笑んだ。





そんなわけで、数日いろいろと堪能して気力を充実させたのだ。りこはカーテンを閉じたて、ハルちゃんから借りたパソコンを開く。

「報酬分は、働かないとね」


私は彼らに嘘をついた。

そう、新書目録を調べてくれるような知り合いなどいない。当たり前じゃないの。だって私まだ小学生よ。

それなのに、彼らの信頼は何故か厚くなっていく。私のことを信頼してくれているのだ。非常に不思議だ。彼らが初めて秘密を明かした人間だからだだろうか。よくわからない。

でも、信じて貰えるのは悪い気がしないのだ。


「流石に人類の端くれとして、宇宙人の期待は裏切れないわ」



りこはパソコンのキーボードを叩く。

「見つけてやろうじゃないの。その新書目録ってやつをね」



目を細めてりこは、不適な笑み浮かべた。






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