かげろう
某東京都心。
秘密情報工作機関中枢指令本部。
コードネーム。蜻蛉。多数のモニターを張り巡らせた施設は、まるでミラーハウスのようだった。
「はぁ、よく寝たな」
艶のある短い黒髪に、夜鷹のような鋭い青い目の少年。シンプルな白いTシャツに半ズボン。ぽりぽりと頭を掻きながら廊下を歩く。
「まったく、くちゃねくちゃね。やることがないな」
しかし、ここから出られる訳もなく諦めの境地だ。生まれてこのかた建物を出たことがない。
まあ、別にいいけど。既に胎児のときに、情報処理系統に適正有りとして決められた運命だった。
でも、衣食住は保証済み。欲しいものも手に入る。下層の市民よりはこのうえなく恵まれている。ないのは自由だけだ。
ペタペタと素足でひんやりと薄暗い廊下を歩く。
人類の道は一体どこに続いているのだろうか。
もう長いこと日本の。いや、世界の秘密を人知れず守っている。それが、本当に良いことなのかわからない。それでもまだ人類には早すぎるだろうことはわかる。
知的生命体とのコンタンタクトは危険だ。人にとってパンドラの箱。進化への道かはたまた破滅を早めるだけか。
国のお偉方は恐れている。それの正体を懸命に隠しているのだ。
まだ判断が下せないせいだろう。
「俺には関係ないけどね」
ポケットから銀紙に包まれたチョコレートをだして食べる。口の中にねっとりと甘味が広がる。
「そういえば、こないだ拾った玩具があったけ。なかなか開かないんだよね。ちょっと面白い」
ペロッと舌をだしてなめる。
ふと、かげろうは思い出した。緑色のキレイな文字の羅列。不思議な規則性。神秘的な文明だった。偶然発見されて、この施設で保管しているあるものを思い出した。まだそれを開くことは出来ない。
真っ暗な大きな窓の方に手を広げる。星はなく。ただただ暗闇が広がっている。こんな冷えきった地球に一体彼らは何をしに来たのだろう。
いや、それこそ関係ないのだろう。
ただ俺が生きる意味は、情報をひとつとして箱庭から出してはいけない。だだそれだけ。だけど、いまは心が踊ってるように感じる。
あの文字をたくさん調べているうちに寝てしまった。すべての言語を解析して、改めてな言語の構築もしてみた。起きてすっきりした頭の頭の中には文字が浮かぶ。あれを読むならばこうではないだろうか。
「新書目録………」
かげろうはポツリと呟いた。




