平凡な日常
廊下に女生徒の悲鳴が響く。
ただ歩いているだけなのに、難癖をつけられる。だから、そう。ただ殴り返しただけだ。俺は、悪くない。向こうが睨むからだ。俺の勘に触るからだ。
それでいつもやり過ぎる。
止めるやつがいないからだ。
「おい、いい加減にしろ」
肩を捕まれて、思わず振り返ると美男子がいた。
「なんだてめぇ」
しかし、相手は怯まない。
「気がすんだろ。もう止めないか」
厳しい眼差しで睨んでくる。
「ああ?」
「それ以上校内でことを荒立てるなら、相手になるぞ」
「チッ、わかったよ」
マキリはパッと腕を払いのけその場を立ち去る。
見ればわかる。
あいつは強い、やりやって怪我をするのは俺だってごめんだ。さすがに、父親に咎められるのはめんどうだ。
そして、少し口角をあげる。
面白そうな奴もいるもんだ。学校ってのも悪くない。
「なんだよ、あいつ」
黄色い声援で、女子達が駆け寄る。
「キャー。祐希くん、かっこいい」
「素敵」
「あいつ誰か知ってる?」
「編入生のマキリくんよ。財閥の御曹司だけど、凄く乱暴なの。こわいわ」
「ふーん」
立ち去る彼の背中を見つめながら、祐希は呟いた。
「大丈夫だ。俺が好き勝手にさせないさ」
そして、また黄色い歓声があがる。
ちょっと危ないな。
冬子様に報告しておこう。
あと、蒼ハルにも注意してやろう。あいつ、弱そうだし。かつあげ?みたいなのされるかもしれないしな。
「クシュン!!!」
「なんだよ、風邪かよハル」
遠坂が声をかける。
「ん~、どうだろう。一年中冬だからわからないな」
「そりゃそうだな」
「なぁ、遠坂って物知り?」
「そら、新聞部だもの」
「調べて欲しいことがあるんだけど、いいかな?」
「わかってる、神崎冬子のスリーサイズだな。わかってるって」
「ちっ、がうよ!」
「冗談だよ。なんだその侮蔑を含んだ眼差しは」
「実は、編入生徒のこと知りたくて」
「わかってるって、あのこ可愛かったもんな。ちょっと変わってるけど。ヨッシャ、任せておきなさい」
遠坂はドンッと胸を叩く。
「じゃなくて、もう一人のほうなんだ」
ちょっと気まずそうにハルは頼んだ。




