秘密
ポツリと冬子は呟いた。
「これは何の冗談かしら?」
放課後、冬子はゆっくりと資料室でスレイブを眺める。
「どういたしまましたか?」
「いえ、個人情報を理事長権限で見せて貰ったのよ。これが、コニーの編入試験の結果よ」
指先でスレイブを操作して、相馬ジュリのほうに見せる。目を通したのを確認してパッと消した。
「基準に達しておりませんね。それでも、この学校に入れるということは何かあるのでしょう。理事長はなんと?」
ジュリは渋い表情をする。
「なにも……。それにそこまで強引に聞けないわ。彼とは友好な関係でいたいからな」
ゆっくりと流れる雲を見ながら冬子は静かに語る。
「どちらにせよ。私達は身の振り方が決まるまでは、この地球では摩擦なく人間と暮らして行きたい。いつか畏怖と好奇の目で見られようとも」
「冬子様。それはいつか我々の正体を明かすということでしょうか」
「なんとも。だがいつかはそう思う」
「危険です」
ジュリは釘を刺す。
「その通りだな。しかし、自分の正体を偽ったままで信頼関係を築けはしないだろう?」
「蒼ハルのことを言っているのですか」
「そんな怖い顔をするな。相手が信用にたるまで言うわけがない。誰だってこんな近くに異星人がいるなんて考えもしないだろう?」
冬子は想像してみた。
優しい君の顔が恐怖でひきつる様を。
それは吐き気がするほど嫌な気分だった。
「いつか彼が信用にたると?」
「安心しろ。きっとそんな日は来ないだろう」
自傷気味に冬子は笑った。
「りこ」
その声に妹は、驚いたように振り返った。
「ハルちゃん。なんでこんな時間に」
「いや、ちょっと帰りが遅くなってさ。りここそどうした?」
「あっ、あ、うん。ちょっと友達とカフェに寄ってたの。ほら、ハルちゃんにもお土産あるよ」
りこは神室に貰ったケーキボックスを見せる。
「そっかあ。りこにもそういう友達いるんだな。お兄ちゃん安心したよ。いつも勉強ばかりしてる気がしたから」
「そんなことないよ」
プンプン怒るふりをする。
本当は友達なんかいない。人を蹴落とすことばかり考えてるし。
そして、将来高給取りになるため勉強ばかりしてる。
ハルちゃんだけいればいい。
「ごめん、ごめん」
「わかればよろしい」
澄んだ瞳を細め、りこは微笑んだ。




