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98:騎士とお姫さま。⑧

あぁ、ネット小説大賞の一次にすら落ちてしまいました。この人たち見る目ねぇな、この作品を一次で落とすとは。・・・・・・ハァ、悔しい。

 地面に背中を付けていると感じながらも目を開けると、そこには雲一つない大空が広がっていた。一瞬だけ現実の外に来てしまったのかと思ったが、現実とは違う空気で外ではないことを理解させられた。周りを見渡すと、俺の周りには綺麗な花が咲いていて、俺は花のベッドで仰向けになっているのか。周囲には小鳥のさえずりが聞こえてくる。


 そして、今の俺はルネさまの悪夢の中に来ていることを理解して、ルネさまの悪夢の元凶を見つけ出さないといけないこともすぐに思い出した。しかし、悪夢の元凶を見つけたとしても、どうやってルネさまを悪夢から解放させるのか分からない。そこのところ重要だったのではないのか?


 そんなことよりも、今はルネさまを探すことに専念しよう。そう思った俺は起き上がって、仰向けの状態では花で周りが見えなかった周囲を見ることができた。俺が横になっていた周囲には、綺麗な花がたくさんあったが、一定以上の場所からは枯れている花や不気味な花がたくさん咲いているのが見えた。


 周囲を見渡しても、ルネさまの姿が見当たらないため、俺はその綺麗な花たちの場所を抜けて枯れている花などが咲いている場所に足を踏み入れた。すると小鳥のさえずりや雲一つない大空は一変して、人が苦しんでいる声が辺りに響き渡り、雲一つない空はよどみ始めて空気も悪くなってきた気がする。


 ・・・・・・これが、ルネさまの見ている悪夢なのか? 最初は綺麗なお花畑でルネさまらしいと言えばらしいと思ったが、それ以降は全くの別物の場所になっている。これが、ルネさまが見ている悪夢なのか、それともルネさまが抱えている世界なのか。そもそも、今のルネさまの状況が本当に理解できていない。悪夢のような苦しさを見せているが、ナイトメアロードを倒した。だけど、ルネさまは目覚められない。どうなっているのかさっぱりだ。


 どちらにせよ、ルネさまを探さないことには何も始まらない。俺がこの悪夢の中に呑み込まれる前に、俺がルネさまをお助けしなければならない。そう思い、俺はその不気味な世界で早足で歩き始める。ここでは気配を感じることができないから、適当に歩かないといけない。


 不気味な世界を歩き始めて数分が経ったが、一向に何も見つけることができていない。俺の眼前には不気味な世界が広がっているだけで、それ以外のものは一切ない。強いて言えば、俺が進むにつれて枯れている花や奇妙な花たちが増えている気がする。


「・・・・・・あれは、何だ?」


 周りを見渡しながら進んでいると、遠くで花でない何か大きな物体があるのに気が付いた。俺はすぐにそちらへと進んでいき、近づいていくにつれてその正体に気が付いた。


「ルネさま⁉」


 俺が遠目で見た花ではない物体は、うつ伏せで倒れられているルネさまであった。俺は急いでルネさまの元へと走り出し、もしかして手遅れだったのかと焦りながらも、倒れているルネさまの元へと駆け寄った。


「ルネさま! ・・・・・・ルネさま?」


 俺はルネさまの元へと駆け寄ってルネさまを抱きかかえたが、そこで一瞬だけ思考が固まってしまった。後ろ姿はルネさまで間違いなかったのだが、抱きかかえてルネさまのお顔を見たら、ルネさまではない全く別人の顔であった。それにそのルネさま擬きは目を見開いて動かない。人形なのか分からないが、一体どうなったらルネさま擬きが出てくるのか全く分からない。


 そのルネさま擬きに困惑していたが、気を取り直して周りを見渡すと、いつの間にか俺の周りにはルネさま擬き? で埋め尽くされていた。俺はそっと抱きかかえていたルネさま擬きを地面に置いて、他のルネさま擬きを確認する。他のルネさま擬きも、本当にルネさま擬きであった。


 髪の色が違っていたり、髪の長さが違っていたり、身長が低かったり高かったり、体型が骨と皮しかなかったり、ふくよかだったりと、様々なルネさま擬き俺の周りに埋め尽くされていた。見方によれば、ただのホラーとしか思えない。最初は綺麗な花や小鳥があったのに、次は枯れている花と苦しむ人々の声が現れて、今度はルネさま擬きが出てきた。一体どういう悪夢なんだよ。


「私は、失敗作」

「私も、失敗作」

「私も、失敗作だよ」

「私は、もっと失敗作」

「私も」

「私も」

「私――」


 次々とルネさま擬きが喋り始め、私は失敗作という言葉を延々と言い続けている。本当にホラーになっているのかよ。喋り続けているだけで、俺に何もしてこないのが幸いだが、これがルネさまが見ている悪夢なのか? ルネさまは、どんな悪夢を見ていられるんだ?


「ねぇ、アユムくん。こんな私は、綺麗?」

「ねぇ、アユムくん。こんな私を、愛せる?」

「ねぇ、アユムくん。こんな私を、嫌いにならない?」


 喋り続けているだけかと思ったが、ルネさま擬きは上半身を起こして俺のことを見ながら俺にそんなことを聞いてきた。・・・・・・この悪夢は、ルネさまの心の内が反映されているのもそうだが、俺も関係してる悪夢なのか? じゃないと俺にこんなことを聞いてくるわけがない。


 俺がここに来たことは正しかったのだろうが、ルネさまを見つけないことには仕方がない。俺はこの場にいるルネさま擬きの顔を一人一人すべて見て行くが、どこにもルネさまがいなかった。なら、次の場所に向かうしかない。俺はルネさま擬きたちの間を通ろうとするが、その際にルネさま擬きに腕や足を掴まれた。


「どこに行くの? 私はここにいるよ? 私を一人にしないで」

「あんなにも私のことを大切だと言っておいて、私を置いていくの?」

「やっぱり私のことが嫌いなの?」

「私を置いて行かないで?」


 ルネさま擬きが俺の周りを囲んできて、俺にしがみついて来ようとする。だが、俺はすべてのルネさま擬きを避けて先へと進んで行く。こうして目の当たりにして、初めてルネさまの本音を肌で感じた。俺は、本当に何も見えていなかったのかもしれない。ルネさまはこんなにも闇を抱えていたのに、俺はそれを見えていなかった。何度思っても、足りない。ルネさまにこんな思いをさせている時点で手遅れなのだから。


 だけど、手遅れだからと言ってルネさまを見捨てる理由にはならない。俺は俺の全身全霊を持ってルネさまのすべてを受け入れてルネさまと話し合う。それが俺に残された贖罪の道だ。だから、今はルネさま擬きを相手にしている暇はないんだ。ルネさま擬きも、ルネさまから出た闇の部分だから、擬きとは言えないのだろう。


 俺がルネさま擬きを避けて進んでいたが、後ろからルネさま擬きが俺を追ってきた。その顔は悲しそうな顔をしていたり怒った顔をしていたり、いつものルネさまでは考えられない表情をされながら追ってくる。少しだけ新鮮に感じたが、今は本物のルネさまだ。


 走りながら辺りを隈なく探しているが、一向にルネさまを見つけることができない。それどころか、追ってきているルネさま擬きが増えてくる始末にある。増えたルネさま擬きも、一人ずつ顔をじっくりと見ていたが、やはりルネさま擬きで相違なかった。


「待ってよ、アユムくん。何で私から逃げるの?」

「私はアユムくんと仲直りしたいと思っていたんだよ? なのに、アユムくんが拒むの?」


 俺が進む先からもルネさま擬きが出現する。ルネさま擬きは俺に何故逃げるのか問いながら俺にしがみつこうとして来られる。だけど、俺はルネさま擬きを避けながら先へと進む。これらすべてがルネさまの想いだとしたら、本物のルネさまに合わなければいけない。だから俺はルネさま擬きから逃げる。


「アユムくん、私が醜いから逃げるの?」

「私が、自分勝手だから逃げるの?」

「私が、アユムくんの気持ちを受け入れなかったから、逃げるの?」


 次々とルネさま擬きからルネさまの声で俺に問いかけてくる。・・・・・・どのルネさま擬きの言葉も俺の心に突き刺さる。これらすべての言葉が、本物のルネさまの叫びにしか聞こえない。俺の悪夢ではないのに、俺が苦しんでいてどうするんだよと思いながらも、俺は今でも追いかけてくるルネさま擬きの言葉に耐え切れずに、言葉を返した。


「自分は逃げているわけではありません。ただ、本物のルネさまにお会いして、ルネさまに問い詰めたいだけです。どうして自分から逃げたのか、どうしてルネさまのお気持ちを教えてくれなかったのか。そして、自分を許してくれるのか。それを聞きに来ました!」


 俺がそう言うと、ルネさま擬きが動きを止めた。俺の言葉に反応されたのだろうか。俺は不思議に思ってルネさま擬きの方を見ると、ルネさま擬きは全員が困惑した表情をされている。そんなにも変なことを言ったのだろうか。


「・・・・・・アユムくんは、私に怒っていないの? こんなどうしようもない私に、呆れていないの?」


 ルネさま擬きの一人が、俺にそう問いかけてきた。俺がそんなことで怒っていたら、フローラさまやランディさまにお仕えすることはできない。まだルネさまの方がだいぶ楽でいい。だけど、俺が騎士になってから二年間で、一度もやめたいと思ったことはない。それだけは自信を持って言える。だからこそ、ルネさまの言動が許せない。


「自分はひどく怒っています。ルネさまが勝手な言動をしても、ルネさまが自分を本当に嫌いになったとしても、自分は全然構いません。ですが、自分が怒っていることは、自分のことを考えてルネさまの気持ちを押し殺していることが一番許せません」

「・・・・・・謝ったら、アユムくんは許してくれるの?」


 ルネさま擬きは、全員が同一個体であるからか表情が全員一緒だ。周りにいる五十以上のルネさま擬きが全員俺の顔を伺っているから、言い方は悪いが気持ち悪いと感じてしまった。でもこれはフローラさまでも誰がやってもこう思ってしまう。全員ではなく誰か一人だけで収めてほしかった。


「謝るのはこちらの方です。自分はルネさまの気持ちを考えることをせず本当のルネさまの姿を見ようとせずに、今まで過ごしてきました。それが先日ルネさまのお気持ちが爆発してしまいました。だからこそ、自分はルネさまとちゃんと向き合います。何がルネさまの本当のお姿で、何を考えているのか、何を自分に求めているのか、知りたいです。ですから、戻ってきてください」


 俺の言葉に、ルネさま擬きたちは泣きそうで嬉しそうな顔をされながら一人、また一人と消えていく。これは、どういう原理なんだ? 俺が今思っていることを、誠心誠意ルネさまに伝わるように言ったらルネさま擬きが消えていく。消えていって良いのか?


「本物は、あっちにいるよ」

「ありがとうございます、ルネさま」


 ルネさま擬きが最後の一人となり、最後に本物のルネさまがいる方向を教えてくださった。俺はそのルネさま擬きに笑みを浮かべながらお礼を言ったところ、満足そうな顔をして最後の一人が消えていった。これで周りにはルネさま擬きがいなくなり、枯れている花たちがあるだけの世界になった。


 さて、ルネさま擬きが教えてくれた方向に行ってみることにしよう。それしか俺に残された道はないわけだし、ルネさま擬きが嘘を言っているとは思えない。ここで嘘を言っても何も意味がないからな。周りを注意深く見ながら、指し示した方向に進んで行く。


 しばらくもはや聞き慣れた枯れている花と苦しんでいる人の声が続いていたが、その数が段々と減ってきているのに気が付いた。もしかしてと思い走って進んで行くと、俺の目的の人である座っておられるルネさまの後ろ姿が見えた。・・・・・・ルネさま擬きの前例があるから、まだ断定はできないか。


「ルネさま?」

「・・・・・・アユムくん、何か用?」


 振り向いてすぐに顔を戻した時に見えたルネさまは、間違いなくルネさまであった。だけど、俺の知っているルネさまではなく、髪が乱れて顔色が良くなかった。どうしてそんなお姿になっているんだよ。悪夢によってこうなられたのか。それよりも、さっきからルネさまが何をしているのか気になってしまった。


 俺は少しだけ移動してルネさまの正面が見える場所に立った。ルネさまの正面には小さな鉢が置かれており、ルネさまの手にはジョウロがあり、鉢にジョウロで水をかけておられた。・・・・・・花に水をあげているだけの悪夢なのか? そんなことが悪夢? 今の状況だと良く分からないから、少しだけ様子を見ておこう。


 ルネさまはジョウロにずっと水をかけておられて、その鉢には土が入っているのが見える。しかし、ずっと水をかけておられるということは、鉢の中は水浸しになるはずだがその気配はない。ここは夢の世界なのだから普通は普通じゃないんだ。


 少しの間、ルネさまが水をかけておられるのを眺めていると、ルネさまの目の前にある鉢に異変が起こり始めた。小さな鉢の土がもっこりと膨らみ、何かが膨れ上がっているのだろう。その何かが小さな鉢を壊す勢いで膨らんでいて、もはや鉢が壊れても良いくらいに何かが鉢から溢れている。


 そんな状態の鉢から勢いよく何かが吐き出された。絶対にあの鉢からは出てこないであろう、人間が吐き出されてきたのだ。夢の中だから何でもアリだと思いながら、吐き出された人間を確認したところ、青い髪のルネさま擬きがそこにいた。そしてそのルネさま擬きを見たルネさまは落胆の声を吐き出した。


「・・・・・・これも、ダメ。こんなもの綺麗じゃない」


 そう言われたルネさま擬きは、何も言わずにルネさまの元から離れてどこかへと歩いて行く。再びルネさまは小さな鉢に水をかけられて、しばらくするとルネさま擬きが現れた。・・・・・・仕掛けは良く分からないが、ルネさまが花を育てる要領で、ご自身の分身を育てておられるのか? それも、ルネさまが納得するまでずっとしているのか? 俺が相手にしたルネさま擬きすべてルネさまが出されたのだとすれば、どれだけの時間をそれに費やしたのだろうか。


「ルネさま、早く現実に戻りましょう。フローラさまや自分が待っています」

「・・・・・・まだ、帰らない」

「どうしてですか? それにここで何をされているのですか?」


 帰らないと仰られたルネさまに、どうして帰らないのか理由を素直に聞いてみることにした。悪夢から出ないなんて言う人はあまりいない。これが悪夢だと言えるのかどうかも怪しいけどな。


「・・・・・・ここで、私が納得するまで花を育て続けるの。私みたいに醜い顔じゃなくて、綺麗で、誰もが魅了されるような花を、作るの。だから、それまで帰れない」


 概ね俺が思っていた通りだな。だけど、ルネさまはルネさま擬きを花と認識されているのか? それにしても、捉え方によればこれも立派な悪夢だ。自分が納得できなければ、現実に戻ることができずにここに縛られ続ける。一種の悪夢だ。普通の悪夢より質が悪い。


「ルネさま、作業を続けたままお聞きください」

「・・・・・・何?」


 ルネさまは俺の方を見ることをしないし、小さな鉢に集中しておられるから、たぶん俺がここから出るように説得しても無駄になるだろう。なら、ここで俺がルネさまに俺の心中をお話ししてしまおう。幸い、ルネさまは俺の言葉を聞いてくれるようだ。


「ルネさま、本当に申し訳ございません」

「ッ⁉ ・・・・・・ど、どうしてアユムくんが謝っているの?」


 俺はルネさまの正面で正座をして、手をついて頭を下げて謝った。いわゆる土下座というものだ。人生で初めてしたが、誠心誠意謝るにはこれが一番分かりやすいな。この状態を見たルネさまは、少なからず動揺しているのが声音で感じられる。


「今まで、ルネさまのお気持ちに気が付くことができず、ルネさまに寄り添うことができなかったことについて、深く反省しています。本当にすみませんでした」

「えっ、・・・・・・あ、アユムくんが謝ることじゃないよ。アユムくんは何も悪くない、一番悪いのは自分勝手でアユムくんの気持ちを傷つけた私だよ。だから、もう頭を上げて? ・・・・・・それに、頭を下げられても、私は帰るつもりはないから」


 動揺されていたルネさまであるが、これが説得のつもりだと思われているようであった。俺は最初からそのつもりで話しているわけではない。ただ、ルネさまと話し合うためにここにいるだけだ。ルネさまを連れ戻すのは二の次だ。


「いいえ、今の自分はルネさまを連れ戻すために話しているのではありません。今はルネさまのことを知るためにここにいます」

「私を、知るために?」

「はい、その通りです。本当に今更のことですが、これまでルネさまのこと知ろうとしなかった自分でした。ルネさまが良ければ、ルネさまのことをすべて教えてください。いえ、絶対に教えてください。自分はルネさまが心の底から自分から離れることを望まれておられるのなら、潔くルネさまから離れます。ですが、そうでなければ自分は絶対にルネさまから離れることはありません。ルネさまが自分のことを思って拒絶されたとしても、関係ありません。自分は、ルネさまやシャロン家の方々をお守りするためにいるのですから、ルネさまが自分のことを思われるのは騎士として情けなくて仕方がないです。ルネさまが我がままを仰られるまでは、自分が諦めることはありませんから、どうかご覚悟ください」


 俺はルネさまに自分の想いをすべてお伝えした。俺の言葉を聞かれていたルネさまは、驚いた表情をされていたが、俺から目をそらされてまたジョウロで鉢に水をかけられ始めた。


「・・・・・・それは、フローラたちにしてあげればいいよ。私にそんな資格はないから」


 俺がこれまで接していたいつも通りのルネさまとは違い、暗い反応をされる。知らなかったからこそ、俺は知らなければならない。俺が知りたいから知る、騎士としてはあり得ないくらいの我がままだ。


「資格とかそんなものは関係ないです。自分は、ルネさまのことが知りたいですし、ルネさまの我がままを聞きたいですし、何より、ルネさまと離れることが嫌です」

「・・・・・・ど、どうして、私と離れることが嫌なの?」

「どうしてって、そんなことは決まっています。ルネさまのことが大切に思っているのと、・・・・・・ルネさまのことを誰にも渡したくないからです」


 こうなってしまえばやけだ。大切に思っているではルネさまは納得してくださらないだろう。だから、俺は自分の気持ちに素直になってルネさまにお伝えする。そうすればルネさまも素直になってくれるはずだ。傲慢なことこの上なく、恥ずかしいことは変わらないけれど。


「自分は、ルネさまのことを愛しています。だからルネさまと離れることが嫌です。ルネさまが誰かの手に渡るのも嫌です。綺麗だとか、不細工だとか、そんなものは関係ありません。自分はルネさまだから、誰にも渡したくありません。この世でたった一人のあなただから、自分は愛しています。・・・・・・自分が、ルネさまと離れたくない理由、これ以上に必要ありますか?」


 俺は顔が赤くなっているのを気づかないふりをして話し続ける。俺の告白を受けているルネさまは、すでにジョウロは手から落ちていて俺の顔を見て固まっておられる。・・・・・・何か反応してくれないと俺がこの沈黙に耐え切れないのですが。


 そう思っていると、突然周りの寂れた雰囲気は一変し、綺麗なお花が咲き誇り始めて苦しんでいる人の声が聞こえなくなった。そして俺の身体が消え始めた。何が起こっているのか分からないが、いい景色に変わっているから大丈夫なのか?


「・・・・・・ありがとう、アユムくん」


 目の前のルネさまからそのお言葉を聞いた瞬間、俺の視界は暗くなった。

絶対に今後ネット小説大賞には応募しない、たぶん。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作品は好きで毎回楽しみに読ませて貰ってるけど個人的に駄目なところはヒロイン過多なとこだな 薄めどころかもはや空気みたいなキャラも多いし
[良い点] 周りにいる五十以上のルネさま擬き(笑) まさかの鉢に水をあげてルネさま擬きを育てていた!? アユムって自分に素直になると良いセリフが多いですね。 前半の夢の中の出来事は読者が想定できない…
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