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91:騎士と捜索。②

全然進みません。本当は九十と九十一話を合わせて一話と考えていました。なのに、無駄に書いてしまいました。

 俺は国の周囲を均等に感知がしやすいように、またしても元々お城があった場所にあの場にいた全員と共に戻ってきた。その際に、フローラさまとブリジット、サラさんは俺の近くにおられたんだが、ルネさまとニコレットさんは何故か前野姉と一緒に歩いていた。


 前野妹の情報はやはり嘘ではなかったし、どうして一緒に歩いているのか分からない。しかも前野姉とルネさまが会話している時、会話の内容は聞こえないがルネさまは楽しそうに会話しているじゃないか。本当に意味が分からないことばかりだ。


「・・・・・・ここら辺で良いか」


 城があった場所の、真ん中の場所に立って息を深く吸って深く吐いた。ここら辺が均等に感知することができる場所だから、この場所にしたが、・・・・・・周りの人が俺のことをずっと見てきてやりずらいんだが。それに、順応をしている間の俺はとても醜い。


「あの、あまりこちらを見ないでいただけるとありがたいです」

「あら、見てはいけない理由があるのかしら?」


 俺の言葉に、フローラさまが突っ込んでくるが、見てはいけない理由はない。これは俺の願望であるから、フローラさまがどうしても見たいと言うのなら俺は止めることはしない。


「いえ、ただ少しやりずらいだけなので、そこまでの理由はありません。人の視線を受けていると気が散るかもしれないだけです」

「そう、それなら問題ないわね。それくらいのことは我慢しなさい。そんなこともできないで、騎士王として胸を張れるの?」


 はい、フローラさまの仰る通りです。見られているとやりずらいと言うのは、ほんの少しだけの理由だから説得できるわけがないか。今更他の理由を並べるわけにはいかないから、このまま進めるしかない。


 俺は覚悟を決めて、クラウ・ソラスを出現させて地面に突き立てた。もう一度大きく息を吸って、長く息を吐いた。戦いの時ならこういう覚悟をせずにできるが、今回は戦いの時ではないから覚悟がいるな。しかも今回は感知のスキルを順応するんだ。それ相応の負担はかかるだろう。


「・・・・・・行きます」


 とりあえず、今は順応することだけを考える。目を閉じると同時に≪完全把握≫を展開して、国全域に感知範囲を広げる。この範囲が今の俺の限界だが、≪感知≫の時でもこの範囲はあまり変わらない。俺のスキルが≪感知≫から≪完全把握≫に変わった時の変更点は、どんな影響下でも邪魔されないという点だ。感知範囲は順応に入っていなかった。


 だが、今回はこの広さを必要とする上に、それを処理するための脳機能の上昇が必要になる。それは、俺の脳に多大な負荷をかけることになるのと同じことだ。それが俺の嫌な理由であった。ただ、俺のスキルに≪痛覚麻痺≫が入っているから、この負荷を軽くしてくれればいいと思っている。


「くぅっ・・・・・・」


 俺は無理をして感知範囲を広げ始める。それに伴って、身体がこれ以上は無理だと訴えかけてきたり、情報の多さにより頭が痛くなり始める。・・・・・・やっぱり、こういう順応はいつまで経っても慣れない。まだ生きるか死ぬかの間際の順応ならいいが、あってもなくても生死に関係ない順応はキツイ。


「・・・・・・がぁっ」


 あぁ、このままやめてしまいたい。だけど、これはフローラさまたちを守るために必要なスキル習得だ。こんなことでくじけてしまいそうになるのなら、俺はフローラさまたちに仕える資格などない。


 歯を食いしばり、身体や脳の悲鳴を却下して無理やり≪完全把握≫の感知範囲を広げていく。どんどんと感知範囲が広がっていくのが分かるが、それ以上に身体が壊れてしまいそうな感覚になっている。それに応じて、俺の鼻から何か垂れてくるのが分かった。鼻水か何かだろう、恥ずかしい。


「あ、アユム⁉ 大丈夫なの⁉」

「・・・・・・はい、大丈夫です。大丈夫ですから、今は話しかけないでください」


 フローラさまが俺を心配してくれる言葉をかけてくださったが、今の俺にはその優しさに答える余裕はないから、いつもの俺では考えられない言葉をフローラさまに放ってしまった。だけど、今だけはその言葉を許していただきたい。本当に余裕がない。


「っぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」


 息をするのも困難なほどに、俺は苦痛と戦っているが、段々と感知範囲が増えてきている。しかし、≪痛覚麻痺≫は外的な痛覚しか麻痺できないのかよ。こんな脳の負担も麻痺させてくれないのだろうか。結局順応して治るのだから、危険信号の痛みは意味がない。


「・・・・・・ッ⁉」


 あ、頭が、これ以上にないほどに痛くなってくる! 順応が全く反応してくれない。・・・・・・最近、順応の反応が鈍ってきている気がする。何が原因だと考える暇がない。このままだと無理で死にかねないぞ。クラウ・ソラスは俺を怒らせるつもりなのかよ!


「ッ! ≪魔力武装≫ッ!」


 俺は堪らず魔力武装で白銀の鎧を纏い、身体能力やその他諸々を急速に頑丈にする。この魔力武装は鎧を纏うだけではなく、身体能力の向上はもちろん、脳の処理も早くなるから今武装した。だけど、思わず鎧を纏うほどになるとは思わなかった。


 ・・・・・・うん? 何だ、これ? これは、クラウ・ソラスが、痛がっている? この無機物の剣が痛がっているというのか? 頭がおかしくなりすぎて訳の分からないことを思い始めたか? いや、それだと今までも頭がおかしくなっていたということになるな。


 もはや迷う余地もなく、このクラウ・ソラスは意志か何かを持っているのだろう。そして、時折俺に何かを訴えかけている。今は、〝痛くて堪らない。やめるか、気合を入れなさい。私が順応するのではなく、あなたも順応するのよ〟と言っている気がする。頼りっぱなしではなく、気合を入れろと言うことか。言葉ではない感情が痛さと戦っている俺の頭の中に響いてくる気がする。だけどそうだ、俺が気合を入れないといけないだろうが。


「かぁっ・・・・・・、ああぁぁぁぁああっ! あぁっ!」


 俺は痛さと戦いながら、その痛さをどこかへと飛ばすためと気合を入れるために腹の底から叫んだ。その際にクラウ・ソラスと俺の白銀の鎧は白銀の光を放ち始め、辺りを俺の白銀の光で照らした。白銀の光がどこまで届いたかは分からないし、俺の視界は白銀の光しか見えなかった。


 そして、白銀の光を放ち始めると同時に、俺の頭の痛みが治まり始め、感知範囲も軽く限界を超えて国の周囲まで感知範囲を広げており、今もなお広がっている。俺の頭の中では、順応で≪限界突破≫と≪順応促進≫、≪地形把握≫を手に入れることができた。


 そんなことより、感知範囲の中で、俺の感知に引っかかる場所を発見した。そこには先の神器を無効化するモンスターと同じ気配を持っているモンスターたちがいた。間違いない、ここが誘拐犯のアジトだ。


 場所の感知が終了すると、次第に白銀の光が収束し始めて白銀の鎧とクラウ・ソラスは光を放たなくなった。しかし、クラウ・ソラスからは〝頑張ったね〟という言っている気がする。俺の無理に付き合ってくれてすまないと思いながら、俺は魔力武装を解いた。


「ッ⁉ はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」


 解いた瞬間に、俺は身体に力が入らなくなり、崩れ落ちるように膝を地面について倒れそうになるが、腕を付いてそれを食い止めた。・・・・・・どういうことだ? 順応を一回したところで倒れそうになるはずがない。それなのに、この疲労感は何だ? そこまで強力なスキルを手に入れたわけではない。一体、俺の身体に何が起こっているんだ?


「ちょっと! 全然大丈夫じゃないでしょ!」


 俺の倒れそうになっている姿に、フローラさまは駆け寄られて俺を心配そうな顔で見ておられる。くそっ、少し無理をするはずが、とんでもなく無理をした感じになっている。一体どういうことなんだよ。クラウ・ソラスの件と言い、意味が分からないことが多く起きている。


「はぁ、はぁ、ッ、大丈夫です。問題ありません」

「大丈夫じゃないわよ。鼻血が出ているのに気が付いていないの? 身体に負担をかけすぎよ」


 フローラさまに言われて、ようやく俺は鼻水かと思っていたものが鼻血だということに気が付いた。鼻下を手でこすると、真っ赤な血が俺の手に付着していた。それに鼻血は俺の服にもついており、執事服が台無しだ。自分の血で汚れてしまった。こんなこと今までに一度もなかったぞ。


「ほら、今拭くからじっとしていなさい」

「いえ、大丈夫です。フローラさまのハンカチを汚すわけにはいきませんから」


 フローラさまはご自身のお気に入りのハンカチで俺の鼻血を拭おうとなされるが、俺はそれを断固拒否する。そんな綺麗なハンカチを俺の鼻血で汚すわけにはいかない。何より、今の俺には近づいてもらいたくない。主、と言うよりかは好きな女性にこんな弱り切った姿を見せたくない。俺は騎士であるから、いつでも主を守れるようにしないといけない。


「良いから! それとも私の言うことが聞けないの?」

「そういうわけではなく、ただそのハンカチはフローラさまのお気に入りのハンカチなのですから、汚すわけには――」

「では、こっちなら大丈夫ですね」


 いつの間にかそばに来ていたブリジットが、無地のハンカチで俺の鼻血を拭いてくれる。まぁ、それなら問題ないが、拭かれるのは恥ずかしいから自分でやりたいところだ。


「自分で拭くから貸してくれ」

「いえ、私が拭きますのでアユムは動かないでください」


 あぁ、これは何を言っても聞かないと思った俺は、大人しくブリジットが拭き終わるのを待つ。だが、それを気に入らない方が一名いる。


「ブリジットが良くて、私は良くない理由を教えてもらっても良いかしら?」

「えっ、いえ、ブリジットが良いと言うわけではなく、フローラさまのハンカチがいけなかっただけです」

「そう。それならブリジット、私にそのハンカチを貸しなさい。私がアユムの血を拭ってあげるから」


 フローラさまがブリジットにそう言うが、ブリジットはフローラさまのその言葉に顔を向けるものの、俺の鼻血を拭く手は止めずにいた。・・・・・・フローラさまにハンカチを渡さずに交代しないのか? それともフローラさまにこんなことをさせないってか。


「フローラさま、アユムのことは私がしますので、フローラさまは疲れをお取りになってください。ここは私だけで十分ですので」

「・・・・・・私の言葉が聞こえなかったの? 私はそのハンカチを貸しなさいと言っているのよ? 聞こえたのなら早く貸しなさい」


 うん? どうしてこんな険悪な雰囲気になっているんだ? いつもならブリジットがフローラさまに譲る流れなはずなのに、ブリジットが譲らないし、フローラさまはフローラさまで何やら不機嫌な雰囲気を醸し出している。


「嫌です。あの件はフローラさまが言い出されたのですから、フローラさまが遠慮すべきです。私はもう我慢の限界です」

「それは私もそうよ。でも、ルネお姉さまのことを考えれば、ルネお姉さまの傷を治す方が先でしょう」


 何やら俺に分からない話をしておられるな。ルネさまという名前が出たから、最近のことを何か言っているのだろうか。それなら俺は全く分からない。でも、ブリジットがフローラさまに文句を言うのは本当に珍しい。


「お取込み中のところ申し訳ないが、少し良いだろうか」


 俺がどうしようかと思っていると、俺たちの近くにグロヴレさんが来た。俺はそれに乗じてブリジットが持っていたハンカチをすかさず奪い、素早く鼻血を拭いてグロヴレさんの方を向いた。


「はい、大丈夫です」

「それは何よりだ。それよりも、先ほどの光は国全体を覆ったよ。神器が光ることは知っているが、あそこまで光るとは思わなかった。あれはクラウ・ソラスだけなのかな?」

「それは分かりません。自分もそこまで光るとは思っていませんでしたから、自分でも驚いています」


 何か、最近クラウ・ソラスが光ることが増えている気がする。それも俺の身体に起きている何かと関係しているのだろうか。・・・・・・いや、考えても分からない。このクラウ・ソラスが意思を持っていると思っているのだから、こいつから何か答えてくれればいいものを。・・・・・・何も答えてはくれないか。やっぱり何かの気のせいなのか?


「本題に入るが、テンリュウジくんの≪完全把握≫で国の周辺に敵の拠点はあったかな?」


 この場にいる誰もが聞きたかった内容を、グロヴレさんが問うてきた。だから、俺は迷わず、そして迅速に返答した。


「はい、ありました。その場所に今からでも行くことは可能です」

「本当かい⁉ それは良かった。今すぐにでも場所を教えてくれ」


 俺の言葉にグロヴレさん以外も驚いた表情をしていた。あんな状態を見せたから失敗したと思っていたのだろうか。俺のスキルを考えれば心配はない。まぁ、今は普通の状態ではないから心配はあったが、失敗するとは思わなかった。それよりも、場所を教えてくれ? 俺も一緒に行くに決まっているだろう。


「場所は自分が案内します。その方が早いです」

「いや、君は少し休んだ方が良い。先のモンスター襲撃では疲れていないと思うが、今の気配察知で身体的に疲れているだろう。この国全域以上の気配範囲を展開したんだ、倒れても不思議ではない」

「何も問題ないです。すぐに回復しますから」


 今すぐにでもベッドで寝たい気持ちだけど、相手を早く倒したい気持ちの方が大きい。俺は立ち上がるのも辛いが、一層気合を入れて立ち上がろうとする。だが、立ち上がろうとすると、フローラさまが俺の服の裾を掴んでこられて俺が立ち上がるのを阻まれた。


「どうされましたか?」

「アユム、本当に行くつもりなの?」

「え? はい、行くつもりですが、それがどうされましたか?」


 俺がそうフローラさまに聞くと、フローラさまはしばらく口を閉じられた後に、不安な顔をされて俺の方を見られた。どうしてそんな顔をされるんだ? フローラさまにそんな表情をさせるほど、俺は何かしたのだろうか。


「ねぇ、それはアユムが行かないといけないことなの? アユムじゃなくても、ロード・パラディンの二人がいるだろうし、勇者たちがいるでしょ? アユムが行かなくても良いんじゃないの? ・・・・・・私は、アユムがそこまで身を酷使して頑張ってほしくないのよ。そんなアユムは見たくないし、私の騎士なのだから、私の傍にいればいいじゃない」


 ・・・・・・あぁ、そういうことか。俺はまたフローラさまを不安にさせてしまったのか。情けない、主を安心させることができない騎士など騎士ではないだろうが。ふぅ・・・・・・。もう、フローラさまに心配させないようにする。それは当たり前のことだ。そして、この場も譲れない。


「そのことについては、申し訳ございません。自分が至らないばかりにフローラさまを不安にさせてしまいました。ですが、自分は敵の拠点に行かないといけません。勇者たちは神器無効化を受ける可能性が高いので信用できませんが、ラフォンさんやグロヴレさんがいれば問題ないでしょう。しかし、それでも自分は行かなければならない気がします。それはもちろん、フローラさまやブリジットやサラさん、そしてルネさまやニコレットさんを守るためということもありますが、行かないと気が済みません」


 本当にどうして俺が行きたいのかが分からない。ラフォンさんとグロヴレさんだけで事足りるはずなのに、俺が行こうとする意味がない。国の中で守りに入っていた方が良いだろう。だけど、俺の身体のどこかで行けと叫んでいる。・・・・・・クラウ・ソラスからか?


「・・・・・・分かったわ、何か理由があるのなら行くことを認めるわ」


 俺の顔を見てフローラさまが渋々納得してくださった。こればかりは本当に感謝しないといけない。俺の我がままでフローラさまの守護を放棄しているようなものだ。だけど、クラウ・ソラスが叫んでいる。〝今すぐにあそこに行ってちょうだい〟ってな。自分勝手なクラウ・ソラスだ。こちらから話しかけても答えないくせに。


「だけど、主と騎士が一緒にいるのは当たり前のことだから、私もそこに行くわ」

「・・・・・・えっ? フローラさまが行かれるのですか? 危険ですよ?」

「それは百も承知だわ。それでもアユムが守ってくれるのだから、問題ないでしょう? 私を連れて行かないと、行くことを許可しないわ」


 ・・・・・・これは、絶対に一緒に行かないといけない状況か。まぁ、俺が我がままを言っているのだから、フローラさまの我がままを許さない、なんてことはできない。


「すみません、グロヴレさん。自分とフローラさまも行きます。すぐに行きましょう。身体はもう回復しているので大丈夫です」

「・・・・・・仕方がない。分かったよ、今すぐに行こう」


 こうして、俺とグロヴレさん、そしてフローラさまの三人で俺が見つけた敵の拠点に行くことになった。

ようやく佳境を迎えれます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アユムが≪完全把握≫の感知範囲を広げて脳への負担を 順応で対応する場面は、闘いの場面よりも辛く感じました。 これは、見ている周りも心配になりますよね… スキルを使用する条件設定が細かくて…
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