表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/134

87:騎士と異形。③

久しぶりの戦闘シーンでした。

 巨大なライオンが俺に飛びかかり、その鋭い爪で俺に攻撃しようとしている。俺はクラウ・ソラスで対応して爪を受け止める。巨大なライオンの攻撃はそれで終わらず、俺に向かって黒い炎を吐き出そうとしている。この黒い炎がどういう効果があるかなんか知らないが、受けることはない。


 俺は巨大なライオンの爪をはじき、巨大なライオンが体勢を崩した隙に攻撃しようとするが、崩した体勢で俺に黒い炎の玉を吐き出してきた。正直、こいつの攻撃を神器で受けたくはないが、やらないと分からないから、黒い炎の玉をクラウ・ソラスで切り裂こうとする、が、こんな炎の玉ごときでクラウ・ソラスが押されている。いや、神器に入る力が弱くなっているんだ。


「ハァっ!」


 すぐに力を込めて炎の玉を切り裂いた。黒い炎の玉は割れて街の方に落ちていき、落ちたところで燃えている。どうやら一つ以外は普通の炎と変わりないが、その一つが厄介だな。あいつ本体に攻撃する時に力が弱くなるのではなく、黒い炎でも例外なく攻撃が弱くなってしまうのか。


「ガアアアアァァァッ!」


 巨大なライオンが威嚇のように咆哮を俺に向けて放ってきた。そんなことで俺が怯むわけがないが、どうやら目的はクラウ・ソラスらしい。前にクラウ・ソラスが不安定になっていた時に順応したのに、また同じ現象がクラウ・ソラスで起きている。


 クラウ・ソラスが歪んでおり、今にも消えそうになっている。しかも前に受けた攻撃より、不安定さが増していて剣としての機能していない。やっぱり、こいつは前野妹たちや俺が遭遇した洞窟にいたモンスターの仲間か。だが俺が遭遇した犬の化け物より、断然気配が大きい。


「ガァッ!」

「まぁ、今来るよな」


 クラウ・ソラスが不安定な状態で巨大なライオンが再び俺に襲い掛かってきた。今攻撃しなかったらいつ攻撃するんだって話だ。今はクラウ・ソラスで受けれない。今回の歪みはそれなりに大きいから順応するには時間がかかりそうだ。なら、残っているのは拳のみ。


 俺は巨大なライオンが俺に突進してきたため、俺の拳で巨大ライオンの顔を殴って受け止めた。そして思ったより巨大ライオンが強かったため、力が拮抗して周りに余波が及んで俺と巨大なライオンの足元が崩れそうになっている。この崩れやすい足元は少し嫌だな。そう言えば、サンダさんが空中を蹴っていた技があったが、あれを教えてもらえれば戦闘の幅が広がりそうだ。


 そんなことを思っている間に、巨大なライオンと接触していた俺の拳がライオンの黒い炎に侵食されている。別に痛くもないし熱くもないから気が付かなかったが、それでも害があるのは確かだろう。俺は≪剛力無双≫を使い巨大なライオンを後方に飛ばした。


 そして手を見ると、指辺りが黒く変色しているのが分かる。俺は≪状態異常無効≫が付いているのに、どうしてこんな侵食が起こっているんだ? 状態異常系ではないのかもしれないが、いずれにしても対処するには≪順応≫に頼らなければならない。


 クラウ・ソラスはまだ使えないし、黒く変色した手で相手を攻撃した場合、何が起こるか分からない。それでも攻撃するしかないよな。こんなことで死ぬようなら、俺がその程度だってことだし、こいつを克服すれば俺の天敵はいなくなるわけだ。ちょうどいい腕試しの相手だ。


「さぁ、クラウ・ソラス! ここが正念場だ! こんな奴らの攻撃で使えなくなっているじゃないぞ!」


 俺は自分を鼓舞するのと同時に、何となくクラウ・ソラスに語りかけてみた。そう、何となくだ。意思がないのは分かっているし、神器だろう。他の人が俺を見れば頭がおかしいと思われるかもしれない。だが、それでも言わずにはいられなかった。何故だか、分からない。


「ガァ・・・・・・、ガアァァァ!」


 飛ばされた巨大なライオンが叫び声を上げると共に、俺に巨大な黒い炎の玉を吐き出してきた。俺はそんな巨大な黒い炎の玉なんか関係なしに黒い炎の玉を殴り消した。黒い炎の玉に触れると、俺の手の浸食度合いが増加しているが、そんなもの関係ない。


 いつまでも受けでは巨大なライオンを倒せないから、今度は俺から攻撃することにした。≪神速無双≫で一瞬で巨大なライオンの真下まで移動し、俺を見失ったライオンの心臓があるであろう場所に向けて≪剛力無双≫で強化した拳を放った。


「グガァ⁉」


 巨大なライオンは驚いたような声を出しながら、空高く真上に飛んで行った。これではライオンも身動きが取れないだろう。ここで巨大なライオンに渾身の一撃を喰らわせて、ライオンを倒す。生かすかどうかは、喋れないから生かしても無駄だろう。生かすとしても、逃がして巣穴に戻ってもらわないといけないだろう。


「・・・・・・嘘だろ?」


 巨大なライオンに狙いを定めていると、侵食されている手に違和感を感じ、手を見ると完全に侵食されており、最初に侵食された指にひびが入っている。侵食した後に崩れ去るっていうのか? 冗談じゃない。こんな奴に手なんてやれるかよ。


 直接手で触るんじゃなかったと思いながら、今は巨大なライオンを倒すことに集中する。巨大なライオンに手を触れずに拳圧で倒すことに切り替える。あの巨大なライオンを倒すためには、≪剛力無双≫を限界の三割で十分か。四割だとライオンの身体に穴をあけてしまう。


 とりあえず今はライオンを無力化することを考えよう。その後に手のことを考える。≪超速再生≫でもこの侵食が治らない。≪浄化の剣≫を持っているが、クラウ・ソラスがこんな状態では使えない。浄化するスキルを持ってないといけないな。


「ハァァッ!」


 足場の建物が壊れるのかと思うくらいにもろくなっているが、そんなことは関係なしに真上にいる巨大なライオンに拳圧を放った。巨大なライオンは成す術なくその拳圧に当たると思っていた。だが、拳圧と巨大なライオンの間に何か巨大なものが割り込んできた。


 割り込んできた何かを見るが・・・・・・、黒いもやを纏った亀の、甲羅なのか? 腹の部分しか見えないから疑問形になってしまった。しかし亀の甲羅で間違いないだろう。あれは亀の甲羅だけなのか? それとも中にいるのか分からない。ていうか、こいつも巨大なライオンの仲間だよな。どこからここまで来たんだよ。こいつらは人型になれる力でもあってこの国に侵入しているのかよ。


 しかし、割り込んできた亀の甲羅のおかげで巨大なライオンに拳圧が当たらなず、亀の甲羅に当たってしまった。亀の甲羅はライオンと一緒に一層上に飛ばされたが、真ん中に当たらなかったから俺の下に落ちてこずに他の場所に落下しようとしている。・・・・・・しかも、そっち方面はフローラさまがいる方じゃないか。他にもルネさまやニコレットさん、ブリジット、サラさんがいる。


 さっき≪完全把握≫でフローラさまたちがどこにいるのか確認したし、今も感知しているからそこにいることは間違いない。こんなことになるのなら、最初から殺す気で行けばよかった。今はそんなことを考えている場合ではない。今すぐあいつらを別の方向に落とさないといけない。


「・・・・・・絶対に、やらせない」


 今、ルネさまとぎくしゃくしていて、それに応じてフローラさまたちと上手く話せていない日が続いているが、それでも俺の忠誠は変わらない。必ずルネさまたちは守って見せる。それが俺の役目だ。だからこそ、あんな奴らにへばってんじゃねぇぞ。


「さっさと順応しろ、クラウ・ソラス!」


 いつまでも順応しないクラウ・ソラスに腹が立ち、クラウ・ソラスに向かってそう言い放った。するとその言葉に反応するかのように、クラウ・ソラスが光始め、さっきまで歪んでいた刀身は形を成し、いつ見ても綺麗な銀色の刀身が現れた。それに応じて、侵食されていた手が元に戻った。どうやら、≪不可侵領域≫を獲得したようだ。これで誰も俺に影響を与えることができない。


 それにしても、いつも≪順応≫した時はこんな光を発するはずがない。何かいつもとは違う様子だったが、俺の想いに呼応したのか? ・・・・・・まさか、そんなはずがない。クラウ・ソラスが生きているとでも言うのか? 何度かそんなことがあったが、未だに信じられない。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。


 クラウ・ソラスが戻った今、俺の力を百パーセント発揮できる。それに≪不可侵領域≫を獲得したから、神器での攻撃も相手には当たるはずだし、鎧を纏っても不安定にされる心配はない。


「≪魔力武装≫ッ!」


 暗闇の中で、クラウ・ソラスから発せられる白銀の光がいつもより目立っており、その光に包まれて俺は黒い模様が一割の白銀の鎧を身に纏った。やはり白銀は夜に見るのがお似合いだろう。夜が俺の白銀を綺麗に目立たせてくれる。そして、今の俺はさっき神器を使えなくなっていたとは思えないくらいに調子が良く思える。


 鎧を纏った俺は、フローラさまたちがおられる場所に落ちて行っている巨大なモンスターたちに向かって≪神速無双≫を使って走り始めた。それほど距離がなかったから、巨大なモンスターたちが落下してくるであろう場所にすぐにたどり着いた。まだモンスターたちが落ちてくるまでに時間がある。


 建物の上でモンスターたちに気をやりながら、気配で外に出ておられているフローラさまたちに目をやる。そこには久しく見ていなかったと思えるルネさまとニコレットさんがいた。俺はお二人がお元気そうな顔をしていて一安心した。形はどうあれ、やはりルネさまたちがお元気であることが一番だと再認識してしまった。俺といて元気で幸せではないのなら、俺が身を引くのもありだろう。今回の件で、ルネさまに確認をして、本当に俺と一緒にいるのが嫌なら、身を引く方が良いだろう。


 そして、モンスターたちが落下してくると同時に、巨大なライオンは口から黒い炎をあふれ出しており、巨大な亀は甲羅から顔と手足を出して口から何か出そうとしている。俺が避ければ下におられるフローラさまたちに怪我をさせてしまう。・・・・・・やっぱり、騎士は何かを守るという気持ちにならないと力が発揮できないようだな。


 さっきとは違い、身体の底からあふれ出している力が違う。気のせいかもしれないが、それでも後ろに守るべき人がいるだけで俺はいくらでも戦い続けれる。守るべきものがいなくなった時は、俺が死んだ時かフローラさまたちにいらないと言われた時だけだ。後者の場合になれば、俺は大人しく元の世界に帰る方法を探そう。


 とてもくだらないことを考えてしまった。でもまぁ、俺のやることは変わらないし、奴らが何かをしてきても対処するだけだ。ライオンの口から黒い炎の玉が吐き出され、亀の口から黒い水塊が吐き出されたが、このクラウ・ソラスで切り裂く。クラウ・ソラスからやる気? みたいな感情がこちらに伝わってくるが、今は気にしている場合ではない。


「≪裂空・剛≫!」


 クラウ・ソラスを構えて、≪剛力無双≫と≪裂空≫を合わせた技であるとてつもなく大きい斬撃を黒い炎と水に向けて放った。斬撃は炎と水を飲み込み、威力を維持したままライオンと亀の元へと飛んでいく。当の巨大なモンスターたちは空中で身動きが取れずにいた。


 だが、巨大なライオンが巨大な亀の甲羅を足場にして俺の斬撃を避けようとした。それでも間に合わずに、巨大なライオンの右後ろ足が斬られ、巨大な亀は甲羅ごと真っ二つになっている。巨大なモンスターたちは俺の攻撃で落下地点がずれて、フローラさまたちとは随分と離れた場所に落下することになった。


 俺は巨大なライオンを追うために向かおうとするが、念のためフローラさまたちに怪我がないか目視した。フローラさまたちも俺の方を見ておられるが、ルネさまだけが視線をそらされている。それだけで俺の心は少し傷つけられたが、今はルネさまのお姿を見れただけで十分だ。


 フローラさまたちの無事なお姿を確認して、俺は巨大なライオンを追いかけた。巨大なライオンは右後ろ足を斬られているから、早く行動することもできないだろう。思いがけず、捕獲の道ができてしまったか? そう思いながら、俺は巨大なライオンが落下地点に向かった。


 落下地点に到着すると、落下の衝撃で建物が崩れている光景を目にした。そして、巨大なライオンの方を見ると俺は少し驚いてしまった。巨大なライオンが死した巨大な亀の肉を食べているからだ。ここで食事をしているからと言って、逃がすわけがない。


 俺は食事しているライオンに構わずに、巨大なライオンに近づいてクラウ・ソラスで斬ろうとするが、巨大なライオンは素早く俺の攻撃を避けた。結構早く動いたつもりだったが、これで避けられるか。それに右後ろ足があの短時間の間で治っている。


「あれは・・・・・・」


 ライオンが何かを口にくわえているのが見えた。よく見ると、口にくわえているのは黒い光を放った黒い宝石だった。あれは俺がお花畑で見た宝石と同じものなのか? あれを今くわえているということは、あれは亀のものか? 普通ならくわえるのではなく体内にあるはずだ。


 何をするのかと見ていると、巨大なライオンがくわえた宝石を呑み込んでしまった。巨大なライオンは呑み込んだせいで苦しみ始めた。何をしたのかは分からないが、自殺行為ではないと感じた俺は苦しんでいるライオンに接近したところ、ライオンの身体から周囲に黒いもやが発せられた。


 スキル≪不可侵領域≫があるから、俺の身体に何か起こることはないだろうが、むやみに近づくことをやめて様子を見ることにした。黒いもやのせいでライオンが認識できないため、ライオンの気配を探っていたところ、ライオンの気配が小さくなったり大きくなったりで不安定な状態になっている。


 これは確実にパワーアップをする流れだが、そんなことをさせるわけがない。気配で詳しい場所は分かっているし、黒いもやなど吹き飛ばせばいい話だ。何もその空間自体が黒いもやに変化しているわけではない。だから俺はクラウ・ソラスを握り直した。


「≪裂空・広≫」


 裂空によりライオンの周りにある黒いもやを風で払い飛ばした。黒いもやの先には、巨大なライオンの身体がボコボコと膨らんでは縮小するなどして、形を変化させている。醜いこと他ならないが、着々と気配が強くなっている。早々に片を付けよう。


「≪一閃・死撃≫」


 構えずに、≪一閃≫と≪剛力無双≫の合わせ技で今も変化していたライオンを真っ二つにした。真っ二つにしてもなお、ライオンは動こうとしていたが、すぐに動かなくなった。真っ二つにした際に、黒い宝石は斬れていなかったようで、地面に転がっていた。


 これで何か起こるかもしれないから、二つの黒い宝石の元へと向かい黒い宝石を握り潰した。相変わらず黒い宝石の中に肉塊があったが、一瞬でどこかに行った。あれが何なのか未だに分からないが、これでとりあえず一件落着――


「ッ⁉・・・・・・次から次へとッ」


 一件落着だと思ったが、国全域に張り巡らせていた≪完全把握≫に突如として現れた異物たちを認識できた。それは人型だった時のライオンと同じ気配を感じた。そして、その異物たちは化け物の気配へと変わって行った。少し遠くには、巨大な蛇の首が見えている。何体いるんだよ、十体以上はいるぞ。どれだけ相手は作っていたんだよ。


 苛立ちながら、俺はその化け物たちを処理するために走り始めた。

まだ全然四章の終わりが見えません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] クラウ・ソラス(神器)の意思が今後のひとつのカギになりそうですね! 単に力押しだけでは倒せない特殊な敵がやっかいですね… <不可侵領域>みたいに、アユムのスキルもモリモリパワーアップです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ