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74:騎士と封印の地。⑤

何やら総合評価が急に増え始めました。どうしてでしょうか?

 稲田が先の火の玉で疲れ切っているため、妥当な線で俺が先頭に立つことになった。稲田を休ませてまた稲田に前を歩かせようとしたが、ステファニー殿下が時間が惜しいと言ってきたので仕方なく俺が先頭に立っている。


 俺の後ろにはフローラさまとルネさまがおられ、フローラさまの横にステファニー殿下がいた。勇者たちは最後尾におり、まだ稲田の回復を前野姉が続けている。回復力もないとか、それだと騎士として使い物にならないじゃないか。俺のことを笑えないくせに、笑ってきやがって。まぁ、どうでも良いけど。どうでも良い奴のことなんか気にもならない。そんなことよりも、


「暗いわね」

「暗いですね」


 フローラさまの仰る通り、辺りは目が慣れていないと暗いだろう。火の玉の場所までは明かりがあったが、それ以降は一切の明かりがない状態だ。俺は≪順応≫でスキルになっていないが、慣れるには時間がかからないようになっているため、すぐに明るい状態と変わらない明るさになった。だが、目が疲れてくるからあまり暗いところにはいたくはない。


「『フォース』」


 フローラさまが俺の後ろから手だけを前に出されてそう唱えられると、光の玉が俺の前に出現した。俺のすぐ近くにあり、明るさも良い感じの光の玉だ。そのおかげで目を酷使せずに済んだ。


「魔法、ですか?」

「そうよ、驚いた? 学園ではこういうことも習っているのよ」

「はい、驚きました。魔法も教えてくれるのですね」


 タランス学園で何を習っているのか、正直よくわからなかったが、魔法も教えてもらっているのか。俺がフローラさまの付き添いの時に受けてた授業は魔法ではなかったし、魔法を教わっていると教えてもらわなかった。それにしても魔法か。


「アユムは魔法を習わないの?」

「それはできません。自分は魔法を使うことができませんから」

「使うことができない? どういうこと? 魔力がない、とかではないわよね。だって、いつも使っている鎧は魔力でできているんだから」

「はい、その通りです。自分に魔力がないわけではありません。ただ、何度やっても魔法を使うことができませんでした。理由は分かりません」


 そう、俺は一切魔法を使うことができない。この世界に魔法があると知ったのはシャロン家にお世話になってからだった。俺は魔法が使えるのではないかと少し浮かれながら魔法をランベールさまの奥さまのエスエルさまに教わり始めたが、結局一切魔法を使うことができなかった。


「理由が分からない? そんなことがあるのかしら」

「自分がいるのですから、あるのでしょう。自分はそこで魔法を習うことを断念しました。そもそも魔法に使う魔力を武装に回した方が自分の戦い方としては合っていますから」


 まぁ、使えたら戦える手段を多く持てるから覚えたかったが、覚えられないものは仕方がないと思ったのもあるし、何より俺には必要ない。圧倒的な火力で敵を殲滅する。これしか俺にはできない。


「あの、テンリュウジさん」

「はい、何でしょうか」


 ステファニー殿下に声をかけられ、俺は顔だけステファニー殿下の方を向けて話を聞く姿勢になった。ステファニー殿下は何かありそうな顔をしておられる。


「テンリュウジさんは、先ほどイナダさんが本当にここを突破できると思ってイナダさんを推薦されたのですか?」


 まさか、王女殿下に面と向かってそんな分かり切ったことを聞かれるとは思わなかった。そんなことは言われるまでもなく分かっているものかと思っていたが、稲田を信じた時点で分かっていないな。


「本当にそう思われているのですか? あいつの実力はあなたたちが一番分かっているはずでは?」

「・・・・・・なら、どうしてイナダさんに簡単に譲ったのですか?」

「それこそ愚問です。自分が一番だ、あいつに任してはいけないとか言っている奴を守ってやる義理はありませんよ。それに、あの勇者の中で一番弱いのは稲田で、聞いた話によると稲田の責任で魔王討伐に失敗したのではありませんか。あいつの実力を一番見極めなければならないのは、王女殿下ではないのですか?」


 俺の言葉に、ステファニー殿下は俯いてしまった。どれもこれも自業自得だ。ラフォンさんから稲田の話を聞いたが、ひどいものだった。稲田は召喚されてから勇者だからと言って、好き放題にやった挙句修行をしても適当に流すだけ。勇者一行で魔王討伐に向かったが、稲田が役に立たず足手纏いとなって帰って来たらしい。


 それでも稲田は修行せずに遊び、俺よりも強いと格好つけている。とりあえず、それを咎めない周りが悪いし、早く切り捨てたらいいのに、あんな奴。自分の好き放題して周りに迷惑をかけているんだ。それ相応のツケは払ってもらわないといけないだろうが。今はまだ俺には関係ないことだから良いが、あいつが俺の大切な人たちを傷つけようものなら、迷わず殺す。それだけの話だ。


「あれをどうにかしないと、取り返しのつかないことになるのではないのですか? まぁ、自分には関係のない話なのでどうでも良いんですけど」


 あいつを放置している前野たちも同罪だ。稲田を好き放題させているのなら、その始末をお前たちで付けないといけない。それが嫌なら早く殴る蹴るして言うことを聞かせないとな。


「アユム、あいつが私たちに何かしてきたらどうするつもり?」

「フローラさままでそのようなことを聞かれますか」

「いや、顔馴染みはどうするのかと思っただけよ」

「顔馴染みだろうが関係ありません。何かして来れば、殺すだけですよ。内容によっては苦しみながら死んでもらいます」

「それを聞いて安心したわ。あんなクズ遠慮なく殺してちょうだい」

「かしこまりました」


 俺とフローラさまの会話に、ステファニー殿下は唖然としているが、唖然とすることでもない。あいつがクソ野郎なのだから死ぬ。ただそれだけの話だ。もう少しまともなら魔王討伐も上手く行っていたかもしれないのに。どうでも良いか。


「ッ、ありました」


 俺が見える範囲に魔法陣が見え始めて、後ろに報告してその場に止まった。相変わらず魔法に通じていないから何の魔法陣かは分からないが、魔法陣があることは分かる。


「ッ! あ、あの魔法陣は、矢が飛んでくる魔法陣ですね」


 ステファニー殿下が俺の言葉で我に返って魔法陣の解説をしてくれた。ステファニー殿下は魔法陣を読み解くことができるのか? それとも知っているのか? どちらでもいいが、俺の盾があれば何が飛んできても問題はない。


「火の玉と同じように進みます」


 そう言って、俺は≪魔力武装≫で白銀の盾を取り出して透明な巨大な盾が出現する≪絶対防御≫を道いっぱいに展開する。これをしていれば、大抵の罠に対抗できる。これがラフォンさんでも進むのが難しいとされる魔法陣なのか? 何か拍子抜けの部分はある。


「アユムッ! それは――」


 俺は少し油断しながら前に進もうとすると、ラフォンさんの声と同時にステファニー殿下の言った通りに俺に向けて矢が飛んできた。俺が透明な盾で防ごうとするが、透明な盾をすり抜けて俺の盾に直撃した! どういうことだ? どうして≪絶対防御≫がすり抜けたんだ?


「それは物質化していないものをすり抜けることができる矢だ! 気を付けろ!」


 物質化していないもの? そうか、俺の≪絶対防御≫は物質化しておらずほぼ魔力や概念構築で形成されている。だから透明な盾がすり抜けて魔力武装の盾には当たったのか。魔力武装は物質化して防御力をもたらしているから、盾は大丈夫か。


 それなら俺がやることは一つ。俺は≪絶対防御≫を解いてクラウ・ソラスを出現させた。そして次から次へと飛んでくる矢を、クラウ・ソラスで打ち落としていく。盾で防ぐよりも確実だからやりやすい。打ち落としながらも、前に進んでいく。


 横からや上から、下から俺たち目がけて飛んでくる矢をすべて打ち落としてフローラさまたちに当たらないようにする。幸い、ここでも通った後には魔法陣が起動しなくなるから後方に割く意識が少なくなる。でも、後方に意識を割かないわけではない。通った後でも魔法陣が起動する可能性も捨てきれないから、後方にも意識を割く。


 ・・・・・・と言うか、この魔法陣を消してはいけないのだろうか。俺の空間ごと切り裂く≪断絶≫のスキルを使えば、魔法陣を切り裂くことができる。魔法陣は通常術者を殺すか、解き方を知っていないと解けないようになっているが俺はそれを無視して斬ることができる。見たところ魔法陣は壁などに描かれているのではなく、空中に描かれている。だから普通は物理攻撃を受けずに切り裂けないが、俺のスキルなら可能だ。


「ステファニー殿下、魔法陣を斬ってはいけないのですか?」

「き、斬る? 魔法陣をですか?」

「はい、そうです。斬っていいのなら斬ります。むしろ斬ってはいけない理由を教えてください」


 俺の言葉にステファニー殿下は理解できていないようだが、早く返事をしてほしい。魔法陣を斬っていいのならすぐにすべての魔法陣を斬りに行く。いや、ステファニー殿下の許可をもらわなくても良いか? こちとら命のやり取りをしているんだから。


「・・・・・・きょ、許可できません」


 ステファニー殿下は少しの沈黙の後、許可できないと言ってきやがった。そんなにもここで死者を出したいのか?


「何故ですか? 封印の場所に無暗に行かせないのは分かりますが、ここまで行かせなくする必要はないのではありませんか? 自分やラフォンさんがいないと下にたどり着くことができないくらいなのですから、下に行く必要が出てくるのならこの魔法陣は取っ払うべきです」

「分かっています。ですが、この魔法陣は数百年前に最強と言われていた五聖賢の一人が設置したと言われる魔法陣なのです。これらの貴重な魔法陣を・・・・・・」


 五聖賢は、七聖剣と同じように世界より選出された五人の優秀な魔法使いたちを総称して呼ばれる呼び名だ。数百年前に最強と言われていたとか、知ったことではない。貴重であろうと、俺には関係のない話だ。


「では、聞き方を変えます。これから散る命と、これから役に立つか分からない人を殺す魔法陣、どちらが大事ですか?」

「・・・・・・分かりました。魔法陣を斬ることを許可します」

「ありがとうございます」


 ステファニー殿下より許可をもらったことで、俺は≪断絶≫を使用して魔法陣を次々と切り裂いていく。魔法陣自体には何の仕掛けもないため、簡単に斬ることができる。それにしても、術者は死んでいるはずだよな? それなのに魔法陣が維持されたままというのはすごいことだ。確かに貴重なものだ。魔法の使えない俺には関係のない話だけどな。


「コウスケッ! どこに行くの⁉」


 魔法陣を斬っている中で、後ろから前野姉の声が聞こえてきた。何かと思い視線だけそちらに向けると、最後尾にいた稲田が白い剣を持ってこちらに走ってきていた。回復した早々戦うとは、随分と熱心なことで。


「俺より下のお前が、俺より前に出るな! すっこんでろ! こんな簡単なところで俺より優位に立っていると思っているのか!」

「別に。どうぞ、お好きなように」


 俺は走ってくる稲田に道を譲った。それよりも、今の今まで稲田のことをすっかり忘れていたから、お前と比べていないし、比べても意味がないからしていないぞ。だが、この先に進みたいと言うのなら、ご自由にどうぞ? 命の補償はしないけどな。段々と威力が上がっていてゴールが近いことから、ここから先は今までで一番強い矢が出てくるだろうと予想する。


「テンリュウジさん⁉ イナダさんには無理ですよ!」

「子供ではないのですから、好きにやらせたらいいでしょう。それで命を落としても本望でしょうね」


 ステファニー殿下が俺の言動に驚いているようだが、俺はあいつの保護者でも何でもない。死にに行くのなら俺は止めはしない。助けてと言われても、助けに行かないがな。


「はぁっ!」


 飛んでくる数十発の矢を稲田が剣で打ち落とそうとするが、一発目の矢に剣がはじかれて矢を打ち落とす体勢に入ることができずに、次々と矢が稲田の腕や足に突き刺さっていく。


「がっ! があぁぁぁぁっ!」


 稲田が激痛で悲鳴を上げているが、矢は止まることなく飛んできている。あぁあ、弱いし調子に乗るからあんなことになるんだろうが。自業自得とは、まさにこのこと。


「コウスケ!」


 俺がざまぁと思いながら稲田の死にゆく姿を見ていると、後ろから前野妹たち四人が稲田の方に走っていく。そして前野妹が深紅の剣を出して稲田に向けて放たれている矢を弾き飛ばすが、一撃で体勢が崩されそうになっていた。何発も飛んでくる矢を必死で打ち落としている。


 長い黒髪を三つ編みにしている佐伯は、前野妹を援護しようと緑色の弓を持って飛んでくる矢を放った弓で相殺しているが、相殺するには一撃一撃を強く放たなければならず飛んでくる矢に間に合っていない。それを黒長髪のウェービーヘアの三木が青色の杖を出現させて、魔法で対抗してようやく放たれている矢をしのいでいる。それもいつかは限界が来るだろう。


 その間に前野姉が橙色の腕輪で稲田の傷を治している。おぉ、前野たちが神器を出しているから俺のクラウ・ソラスが光り輝いているが、そんなにもその男が大切なのか。それはそれは良いことだ。そいつと一緒に落ちてくれればなお良いぞ。この程度の実力ならすぐにでも死にそうだがな。


「テンリュウジさん! 彼らを助けましょう! でなければ彼らが死んでしまいますよ⁉」


 焦った表情をしているステファニー殿下が助けろとか言ってくるが、何の冗談だそれは? あいつらを助けることに俺が労力を費やすわけがない。あいつらが死んでくれないかと思っているのに、助けるわけがないだろう。


「何をご冗談を。あれは自業自得です。自分たちの始末は自分たちでつけるべきです。しかし、ご心配なく。あいつらが死んでもこれから先は自分が責任を持ってステファニー殿下を無事に送り届けますので」

「そういうことではなくて――」

「アユム、少し私に力を貸してくれないか?」


 ステファニー殿下の言葉を遮ってラフォンさんが俺に頼みごとをしてきた。この場である程度のことは理解できるが、一応ラフォンさんに聞き返す。


「何のためですか?」

「マヤたちを助けたいという気持ちもあるが、それよりもこんなところで時間を費やしたくないからな。私が突っ込むから、アユムは私の援護をしてくれ」

「はい、了解です」


 稲田たちが苦しむ姿はもう十分だから、ラフォンさんの頼みを素直に聞くことにした。ラフォンさん一人でできないのかと思ったが、ラフォンさんなら一人でクリアできるだろう。火の玉の時でもそうだが、ラフォンさんが進んで前に出ようとしない。何か企んでいるのだろうか。


 まぁ、今はそんなことは良い。二人でやった方が簡単に終わることは確かだ。ラフォンさんが前に出る時に俺も前に出た。


「じゃあ、行くぞ」

「はい、行きましょう」


 ラフォンさんが走り出した瞬間に、俺も同時に走り始めた。すぐに勇者たちを横を通り過ぎてラフォンさんが前から来ている矢を業物だということがすぐに分かる剣を持って打ち落としていく。俺はラフォンさんが届かない場所にある矢を打ち落としていき、一瞬で矢が放たれている魔法陣にたどり着いた。


「アユム!」

「はい!」


 ラフォンさんの言葉で、一歩前に出た俺は最後の魔法陣を≪断絶≫で斬って消した。この程度で苦戦しているようでは魔王討伐なんて夢のまた夢だろう。そんなことよりも、やはり、ラフォンさんだけでも行けるではないか。何か企んでいるな。ハァ、嫌な予感しかしない。ここは早めに聞いておこう。


「ラフォンさん」

「な、なんだ?」


 俺が疑っている声音でラフォンさんに声をかけると、ラフォンさんは俺から視線をそらして目を合わせようとせずに何やら挙動不審になっている。なお怪しいな。


「何か、企んでいますか?」

「そ、そんなことはないぞ! わ、私は何も企んでいない」

「私は、ですか?」

「ッ⁉ ・・・・・・そ、そうだ。私は何も企んでいない」


 ・・・・・・ラフォンさんは企んでいなさそうだが、何かを知ってそうなのは確かだ。ラフォンさんはどうしてか俺に対して隠し事が下手だからな。他の人になら真顔で嘘をつけているのに。さて、こんな状況の中でこれから先どうなって行くんだ。

全然話が進みません。次は進むと思います。封印の地は残り二話で終わります。

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[良い点] フローラさまのフォースに読者の私も驚きました!? タランス学園へ通っている他メンバーも 今後、どかで活躍する機会があるのではないでしょうか。 ステファニー殿下ももっと活躍しましょう! 稲田…
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