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07:騎士と七聖剣。

連日投稿、これで七日目。頑張りましたよね? こんな短時間で書いたことなんてありませんよ。精神崩壊しそうです。

 荷物を各々の部屋へと置き、学園の中を四人で歩き回っていた。学園の見取り図は、部屋を説明されたときに渡されており、自由に行動しても良いと言われた。そんなことを言われても言われなくても、フローラさまは絶対に探索していただろう。フローラさまは新たな場所で知らないままでいるほど無知ではない。俺もここでは初めてだから探索しておかないと、いざという時に無駄な時間を喰ってしまう。


「学び舎、植物園、馬小屋、訓練場、舞踏場、図書館、食堂、騎士育成場、保健室、学園内冒険者ギルドなど、いっぱい施設はあるけれど、その大きさが一つ一つ大きいわね」


 俺もフローラさまと同じ地図を見ていて、同じ意見であった。貴族の中で高位な貴族の部類に入るシャロン家であるが、さすがに国家予算には及ばないか。・・・・・・それにしても、施設の数が多いな。この施設の充実さと、生徒の数が比例していない。まぁ、どうでもいいけれど。


「とりあえず一通り回りましょう。最初はこの近くにある植物園からで良いわね」


 フローラさまの言葉に誰も反論はなく、フローラさまの言う通りになった。移動している際に、学園の中でも俺は注目されっぱなしでいた。しかし、その都度フローラさまが上級生であろうとも関係なしににらみを利かせて俺の腕を抱きしめていたため、俺に近づいてくる人はいなかった。俺としては、こんな世界観でモテモテになっても嬉しくない。そもそも俺はモテないと自覚しているのだから、今更モテたところで戸惑うだけだ。


 最初からモテていたやつには分からないような話だ。俺の顔なじみと仲良くしていたあいつはイケメンだったが、こんなことを考えていなかっただろうな。どうせ、まるで人が不細工だぁっ! みたいなことを考えていたんだろう。これもどうでもいい話だった。




 俺たちは様々な学園内の施設を見て回った。まず、植物園。ここは色々な薬草や毒草、秘薬になる草などがあった。中には人食い草などがあり、様々な植物の研究をしていた。


 馬小屋は名前の通りに、馬を育てている場所であり馬以外にも飛竜などを育てている場所と隣接していた。フローラさまが馬の細部まで世話されているとおっしゃっていたが、俺には何が何だかわからない。だが、馬や飛竜の戦闘的な面で捉えることは可能だ。こいつら馬の足はそこらの馬より鍛えられ、早いだろうな。それに飛竜も強いな、そこらの野生にいる飛竜とは違って。さすが金をかけただけはある。


 訓練場では、何と生徒である貴族が剣を握ったり魔法を使ったりして訓練していたのだ。てっきり貴族だから訓練など汗臭いことをしないと思っていたが、貴族であるからこそ抜かりなく訓練しているのだろう。フローラさまも特訓しているのだから、珍しいことではなかった。俺が考えていた貴族は、戦闘など執事や騎士などに任せるものだとばかり思っていた。


 図書館には、数多の書物が存在し、ここに所属していれば読むことができる。その本の多さに圧倒されたが、もしかしたら俺が異世界に帰る方法が記された本があるかもしれない。まぁ、すぐに帰るわけにはいかない。ここにはフローラさまやランディさま、ランベールさまにエスエルさま、そしてスアレムなどのひどい対応をされている人たちを置いてはいけない。うぬぼれかもしれないが、その人たちが平穏な生活を得ることができたのなら、俺は元の世界に帰るつもりだ。ここは俺の居て良い場所ではない。


 そして、学園内冒険者ギルド。この施設は、生徒や学園関係者のために作られた冒険者ギルドなのだ。外のギルドでクエストを受けても、学園では考慮されないが、学園内冒険者ギルドでクエストを受ければ学園でそれなりに考慮してくれるらしい。そのクエストは王都が発注しているものであるから、難易度は王都が発注するくらいに高いものとなっている。しかし、クエストを達成すれば王都に貢献したと認められ、目をかけられることが多くなるらしい。嫌な予感しかしなかったが、早速フローラさまが試しにクエストを受けてきなさいよと言ってきたが、さすがにクエストを受け付ける人が止めてくれた。だが、やっても良いと俺は思っている。自分がどれくらい強いか分かるからな。


 とまあ、こんな感じで色々な施設を回り、最後にたどり着いたのが騎士育成場であった。俺が一番気になっていたのがこの施設だ。一応騎士の端くれとしては、この世界の騎士というものがどれほどのものか見てみたい気をしていた。俺がどのくらいの位置にいるかとか、どれくらい強いとか。


「ここが最後ね」

「はい、そのようでございます」


 フローラさまと俺たちは騎士育成場へと入っていく。二階建ての建物であるが横に長く広がっており、おそらく部屋がいくつもあるのだろう。そして外で訓練する場所が広く取られて、汗水たらして訓練している女の人たちが多くいる。男の姿は見えない。訓練している人たちは貴族の人なのだろうか。俺みたいな使用人なのだろうか。分からないけれど、ここにきて貴族の印象が変わったな。


「振りが甘いぞ! そんなことでは戦場で何もできずに死ぬぞ!」


 騎士育成場に入ると、長い金髪を後ろでまとめている怖い顔であるが美しい女性が複数の女の人たちに模擬戦をして指導している様が見えた。それは鬼気迫るものであり、その声で少し驚いてしまった。


「・・・・・・ここにいる人たちは、貴族や使用人など様々な人が入り混じっているようね。社交の場でお会いしたことのある貴族の方もいれば、付き添いとして来ていた使用人もいるわ。ここにいる人たちは何なのかしら」


 そうフローラさまが呟くが、誰も答えることができない。誰も答えることができないまま、訓練場の端でしばらく訓練の様子を見ていると、訓練場の出入り口から誰かが来るのが見えた。波打っている長い黒髪で、大人のように余裕の表情で魅力的な笑みを浮かべている女性が訓練場へと入ってきていた。


 俺はそいつが見えた瞬間に、すぐにスアレムの背後に立ちスアレムにピッタリとひっついて、そいつから死角になるように隠れた。


「突然どうしたのですか? アユム?」

「ごめん、少しだけこうさせていてくれ」


 あの黒髪の女があいつである可能性は低い。だが、俺がここにいるのだから、あいつがここにいてもおかしくはないだろう。だが、別人であることを祈っている。


「何をしているの? アユム」


 フローラさまがどす黒い雰囲気を出しながら、こちらへと聞いてくるが今はそれどころではない。今じゃなければ何でもするから、今は放っておいてくれ! しかし、放っておいてくれるフローラさまではなく、俺の耳を引っ張ってきた。


「主人の言うことを無視するとは、良い度胸ね。そんなにあの女に会いたくないのかしら?」

「わ、分かっているなら、今は放っておいてください。後で何でもしますから」

「ダメよ。私の騎士であろうものが、そんなこそこそとすることは許されない」


 言っていることは分かるけど、今だけはその考え方を曲げさせてくれぇ! 今はものすごく会いたくない相手がそこにいるんだ。


「それに、気に入らないわ。後ろに隠れるのを万歩引いて良いとしても、それが何故ブリジットなのしから。主人である私の許可なく、背後に立つとは良い度胸をしているわね」

「そ、それは、フローラさまとサラさんには遠慮があったのですが、スアレムは同僚という間柄なので遠慮せずに済んだからです」

「言いたいことは分かるけれど、スアレムに密着することは許さないわ。その代り、私に抱き着くことを許すわ。遠慮なく私に抱き着いてきなさい」


 ・・・・・・うん? つまり、俺はスアレムではなくフローラさまに抱き着けばいいのか?


「早くしなさい。いつまでスアレムに密着しているの」


 俺がいつまでも離れないから、フローラさまは怒気を含んだ声音で命令してくる。俺は言われた通りに、あの女から見えないようにスアレムから離れて、遠慮せずフローラさまの巨乳に顔をうずめる形で抱き着いてしまったぁっ⁉ これをした張本人である俺が一番驚いているよ! 何も考えずに抱き着いてしまった結果がフローラさまの胸に顔をうずめてしまったよ。


 何か言われるかと身構えてしまったが、フローラさまは何も言わずに、むしろ俺の頭を両手で抱きしめて一層胸の感触が顔全体に広がっている。・・・・・・これは、やばいな。これがパフパフと言うものなのか。今までに感じたこともない柔らかさと弾力が俺の脳内に侵食してくる。


「こんにちは、フロリーヌさん」

「こんにちは、マヤ。今日も来たのか」


 抱き着いている間に、脳内がおっぱいでいっぱいにならないように周りに気を回す。金髪の女性が訓練を一休みしていると、黒髪の女が話しかけた。・・・・・・話しかけたが、やはり声が同じだ。それに金髪の女性が言った名前は、俺が知っている奴の名前であった。間違いなく、俺が思っている通りの女であることが確定した。確定したならば、なおさらあいつに顔を見せるのは嫌だ。


「えぇ、来ちゃいました。コウスケは来ていますか?」

「いいや、あいつは来ていないぞ。・・・・・・全く、あいつは自分がどんな立場で、どれほどの責任がかかっているのか分かっているのか? あんなのだから強くなれないのだ」

「彼はそういう人間ですから。努力するのが嫌などうしようもない人間なので、どうしようもないです」


 話題に出ているコウスケという名前も、俺は知っている。あいつも異世界転移してきたのか。そうなると、あの黒髪の女とコウスケという男以外にも、残り三人も異世界転移してきたのかもしれない。ふぅ、縁が切れたと思っていたら、またこんなところで縁があるとは思わなかった。


「では、コウスケを探してきますね。探しても渋るようなら、これ以上ここに迷惑をかけられないので、別の方法でコウスケを強くしないといけませんね」

「別に私は迷惑だと思っていない。あいつが渋っても、強くなってもらわないとならない。あいつも勇者なのだから」


 コウスケ、いや、稲田が勇者と来たか。稲田が勇者ならば、マヤ改め三木も勇者なのだろうか。まぁ、俺にはどうでもいい話だ。俺は勇者として呼ばれたわけではない。俺は別の場所で死にかけたのだからな! 俺を呼んだ奴に恨みしかない。いや、フローラさまと出会えたから、恨み以外にもあるか。


 三木が訓練場から去ろうとしたときに、こちらに視線を送ってきた気がしたから、フローラさまの抱きしめる力をより強くしてばれないことを祈った。その祈りが通ったのか、三木はこちらに気が付かずに訓練場から去っていった。三木の気配が遠ざかるのを確認して、俺はフローラさまから離れた。


「ありがとうございました、フローラさま。おかげで気が付かれずに済みました」

「そう、それは良かったわ。で?」

「・・・・・・で? とは?」

「あの女とはどういう関係なのかと聞いているのよ。私に抱き着いたのだから、それくらいの説明責任はあるはずでしょう?」


 これは、本当のことを説明できないぞ。三木のことを細部まで説明するには異世界のことを説明しなければならない。嘘でもいいのなら説明できるが、フローラさまにそれはしたくない。異世界から来たことはランベールさまにしか説明していない。おそらくフローラさまに説明しても、特に反応を示さないだろう。


 だが、理屈でそう考えていても、どうしても説明する覚悟が俺にはできていない。説明してこの関係が崩れそうで怖いのだ。だから、俺はまだフローラさまに説明することができない。


「申し訳ございませんが、自分にそのことを含めて自分のすべてを説明するには覚悟が足りておりません」

「へぇ? あの女のことを説明するのに、そんなにも覚悟がいるの? 親密な関係だったのかしら?」

「いえ、あの女のことは、どうとも思っていません」

「それなら、あの女とどういう関係かどうかを言いなさい。それで今回は不問とするわ」

「簡単なことでございます。あの女とは、ただの知り合いなだけでございます。それ以外の感情を持ち合わせていない、顔を一回も合わせたくない知人です」


 あいつらともう関わりたくない。俺は関わりたくないのに、あいつらから関わってこようとする。そして面倒ごとばかり頼って、俺は何でも屋じゃないっての。あいつらのおかげで俺の青春は彼方へと飛んでいき、あいつらと関わらないために地元の大学に入学しても、会わないようにしてきた。まぁ、俺の青春なんてとっくに飛んでいたんだけどさ。


「そう、それなら良いわ。以後、あの女と出会うことを回避したいのなら、私に抱き着くことを許可するわ。それ以外にも、スアレムに抱き着く用件があるのなら、私にしなさい。これは命令よ」

「承知しました」


 ・・・・・・いつでも抱き着いて良いってことなのか? それはそれで嬉しいことだけど、お嬢さまに抱き着くのはやっぱり抵抗があるな。主と騎士なのだから、そう簡単に抱き着けはしないだろう。


「ここは見終わったから、もう寮に――」

「少し良いか?」


 フローラさまが帰ろうとしたときに、訓練場の方から声をかけられた。そこにはさっき怖い顔をして指導していた美人で長い金髪の女性がそこにいた。


「何か御用ですか?」


 フローラさまはすぐに他所向けの顔になり、良い笑顔で金髪の女性に返答した。この笑顔を俺にも向けてくれたら良いんだけど、俺には意地悪な笑みしか浮かべてくれない。悲しい。


「私はフロリーヌ・ラフォン。ここの指導官で、七聖剣の一角を担っているものだ」


 フロリーヌ・ラフォンって、七聖剣の⁉ マジかよ! この世界に疎い俺でも知っている大物だ! 人類側が魔王軍と対抗するためにどの派閥にもかかわらず、強い戦士を選抜した。それが七聖剣。その一人が目の前にいる女性だ。つまりこの人は十本の指に入るほどの実力者と言うことになる。


「私はフローラ・シャロンですわ。七聖剣のお方が、私にどのようなご用件でしょうか?」

「いや、君ではなく、そこにいる彼に用事があってきた」


 ラフォンさんが指名してきたのは、俺であった。え? 俺が何かしたのか? もしかして何か気づかないうちに何かをしたのか?


「君、名前は?」

「じ、自分は、アユム・テンリュウジです。それで、御用と言うのは?」

「テンリュウジくんか。では単刀直入に言おう。私と決闘してくれないか?」

「・・・・・・え?」


 ラフォンさんの言葉に、周りで聞き耳を立てていた訓練所の人たちがざわめきだす。七聖剣と決闘とか、勝ち目がないだろう。どれほどの強さか知らないが、俺はそんなに強いと思っていないし。


「良いじゃない、戦ってきなさい。いえ、戦いなさい」

「・・・・・・はい」


 フローラさまの言葉で、俺はラフォンさんと決闘することになった。

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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