59:騎士と騎士王決定戦・本戦。
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そして、全然終わらないことに焦っています。今月中には三章を終わらせたいのですが。
ついに、今日という待ちに待った日が来た。今日は騎士王決定戦の本戦がある日だ。昨日はフローラさまとルネさま、ニコレットさんとブリジット、そしてサラさんと同じベットで寝て、全然寝れなかったが、朝食にニコレットさんの手作りご飯を食べて元気いっぱいだ。数日くらい寝なくても全然平気な身体だからそこは問題ない。寝てたら殺されるモンスターは〝終末の跡地〟にはざらにいた。
フローラさまたちは、後から向かうということで俺一人で目的の場所に向かっている。騎士王決定戦を行う場所は王城を中心に五角形のように配置されている五つの闘技場のうちの一つで、守護の闘技場である。これは召喚される五人の勇者に合わせて作られた闘技場で、この場所は俺にとっても縁深き場所だろう。
目視できたその場所は、多くの人が収容できる大きさであった。フローラさまの言葉を胸に、俺がその守護の闘技場に向かおうと一歩踏み出そうとしたとき、少しだけ地面が揺れたことに気が付いた。揺れは少しの間続いたが、何事もなかったかのように止まった。他の人は微弱すぎて気が付いていないようだった。
俺は疑問に思いながらも、≪完全把握≫に何も引っかからなかったから、そのまま守護の闘技場に入っていく。勝てると思っていても、少しだけ緊張しているが、大丈夫だ。自分の力を信じないで、勝利を得られないはずがない。
本戦に出場する騎士は、観客が入る出入り口ではなく王国の兵士が警備している裏口から中に入る。細い道を進んでいくと、開けた場所に出てそこにはすでに十四人の騎士たちが集結していた。備え付けられているソファーやいすに座っているもの、壁にもたれかかれているものなど様々な感じで休んでいるようであった。
しかし、この場には男しかいない。男は数が少ないはずだったのに、十四人も出場している。・・・・・・それに、参加者の一人はカスペールの護衛の男がいる。その男は俺を見るなり見下した笑みを浮かべてきた。別に特に気にならなかったから無視して他の参加者に目をやる。
・・・・・・うん、気になる騎士はいない。どの騎士も予選を勝ち抜いてきた腕のある騎士のようであるが、俺を驚かせるような騎士はいない。ただ、気になる騎士はいないが、気になる武器はある。カスペールの護衛の男が腰にさしている剣は、とんでもない代物だ。何もしていなくても剣が無秩序に威圧してきている。だから他の参加者もこいつを避けている。気を付けておくか。
それに、今回は勝つだけではなく俺という存在を恐怖させなければならない。それがフローラさまのご命令なのだから、全力で恐怖を覚えさせる。幸い、この大会は殺しを許されている。相手が降参しない限りは俺はとことん追い詰めるつもりだ。
「全員いるな」
周りの参加者をさりげなく観察して時間を潰していると、開けた場所に入ってくるなり声を出す人物、ラフォンさんの姿を視界に入ってきた。その横にはロード・パラディンのグロヴレさんがいる。この国で騎士として名高い二人がこの本戦の審判をするのだろう。
「では、今から騎士王決定戦・本戦トーナメントの対戦相手を抽選で決めてもらう。なお、第五集団では一名しか本戦出場しなかったため、一人は一回戦目はなしとする」
第五集団では、俺しか通らなかったから一人はシードになるか。その枠に入れれば、優勝まで三戦で済むのだろうが、俺としてはどちらでもいい話だ。勝てばいいだけの話だからな。
「この箱の中に一から十六の数字が書かれた紙を入れている。それを一人ずつ引いていき、トーナメントの対戦相手と対戦順番を決める」
ラフォンさんがそう言うと、ラフォンさんは参加者の元に行き一人ずつ回って引くように促している。俺の番になると、ラフォンさんは真っすぐとした眼差しで俺を見つめてきた。俺は紙を引きながらラフォンさんと目を合わせる。そして、これかと思うくらいに自信満々の表情をした。伝わったかどうかは分からないが、ラフォンさんは満足そうな顔をしている。
どや顔をしていたら恥ずかしいなと思いながら、俺の手元にある紙の数字を見る。紙には『四』と書かれている。数字の通りに試合が行われるということは、俺の試合は二番目になる。
「何番だ?」
「四です」
俺の数字に反応した奴が一人いた。それは、さっき数字を三と言っていたワイルド系の大男だった。大男は俺の方を見てニヤニヤとしているのが見える。どうしてそんな顔をしているのか、舐めているのか?
「よし、全員引き終わったな。最後に箱に残っている数字は『十』だ。つまり、九を引いたものが一試合目をなしとする。試合の下準備が終わったところで、もう一度騎士王決定戦・本戦の規則を今一度確認しておく。この試合は殺しが制限されていない。相手を殺そうが、相手に殺されようが何も言われないのがこの大会だ。ここにいるということは、全員がそれに同意しているということになる」
ラフォンさんの声音は少し脅している感じで俺たちの覚悟を問うている感じでもあった。だが、全員がその言葉に動じることはなかった。自分が勝つと思っての自信なのか? 俺がその口だけどな。
「もちろん、降参すれば命の危険はない。だが、それができるからと言って命を簡単に賭けるのであれば、やめておいた方が良い。死にそうなときに降参されても助けられないからな」
なるほど、試合相手が死にそうな間際で降参しても間に合わなかったら殺しても良いという判断なのか。知ったところでどうにもならないが、もし、カスペールの護衛が俺の相手になったら、降参する暇もなく殺してやるつもりだ。口もきけないようにしてな。
「まだ開始まで時間がある。時間になれば順番に呼び出しに来る。それまでは精神を落ち着かせていることだ」
そう言ってラフォンさんは来た道を戻って行った。グロヴレさんもその後に続くが、少しだけ俺の方を向いて頷いてきた。だから俺も軽く頷き返してグロヴレさんはラフォンさんに続いた。
二人が去ったところで、参加者が各々のことをし始めた。剣の手入れをしたり、装備を付け始めたり、精神統一をしたりなど。俺はと言えば、何をするわけでもなくただボーっとしている。精神統一なんて仕方が分からないし、武器はいつでも万全な状態のクラウ・ソラスがあるし、装備はクラウ・ソラスから出現させることができる。
俺がこの場でやれることは何もない。参加者全員の観察も終わったし、試合前にここまで暇になるとは思わなかった。・・・・・・スマホを触りたい。ボッチだった俺はスマホを触って暇をつぶしていた現代っ子だったからな。
「おい」
「あ?」
結局ボーっとすることに落ち着いたが、どうやって勝とうかと虚空を見てあてもなく考えていたところ、目の前に三番を引いた大男が俺の目の前に来て見下してきている。正直、こういう手には関わりたくないが目の前に来られてはどうしようもない。
「お前、こんなところにいて良いのか?」
「何を言っている? 言う相手を間違っているんじゃないのか?」
俺は一瞬だけフローラさまのことを考えたが、フローラさまの気配に異変はないため安心した。それ以外に理由が思いつかないため、他の人と勘違いしているのかと思った。だが、違ったらしい。
「いいやお前だよ。そんな弱そうなお前が、棄権もせずにこんなところにいて良いのかと言っているんだよ。俺はお前が弱くても手加減せずに殺しに行くぞ?」
普通に挑発されていたのか。全然気が付かなかった。こんなくだらないことをしてくるとは思っていなかったからか。それにしても、こいつは相手を棄権させるために言っているのか? 殺し合うのにそんなことする必要はないだろう。よっぽど自信がないのか?
「勝手にすればいい。そういう大会なのだから」
「どうやら死ぬ覚悟はできているようだな」
「死ぬ覚悟なんて必要ない、絶対に勝つのだから。それよりも、お前はできているのか?」
「俺か? 俺もできていないに決まっているだろう。俺が絶対に勝つんだから」
「本当にそうか? 絶対という言葉を使う奴が、相手に棄権するように言いに来るか? お前の方がこの場に相応しくないんじゃないのか? そんな中途半端な覚悟しか持っていないだろうに。口先だけの男に、騎士なんて言葉はもったいない。お前には口先騎士で十分だ」
暇でくだらないことを言ってくるから、俺は適当なことを並べて大男を挑発する。スポーツでもなく、どうせ試合で殺し合うんだからこれくらいは許されるだろう。そして、俺の言葉に目の前の大男は顔を真っ赤にし始めた。大男は頭に血が上った状態で俺につかみかかろうとしてきた。俺はそれを軽やかなに避ける。こんなところで体力を使うなよ。
「お前の方が口先だけだろうが! やってもいないニース王国の兵士を倒したと言い張り、弱いくせに実力を示さない雑魚が! 生きているだけでも恥だということがまだ分からないのか⁉ 主と一緒で、何もかもが汚いんだな!」
頭に血が上って叫んだ言葉に、俺はすぐさま理解した。こいつ、大公の手先だな。しかもご丁寧に俺はともかくフローラさままでけなしてくる辺り、大公の手先っぽいな。
ふと、こいつが叫んでいる間に周りに気が付かれない程度で見ると、焦った顔や驚いた顔、苦虫をかんだような顔をしている奴が俺とこいつ以外全員だった。その表情はどれも事情を知っていないとできない表情になる。つまり、ここにいる奴らは俺以外が全員大公の手先と言うことなのか?
それはまた随分と手を加えたな。もはや大公杯か何かと命名した方が良いのではないのか? と言うか、大公がここまで手を加えてくるとは思わなかった。精々二、三人が限界だと思った。どういう手でこいつらを予選通過させたのだろうか。真っ当な手でないことは確かだ。
「言いたいことはそれだけか?」
ひどく顔を真っ赤にしている男が言い終えるのも待ち、言い終えたのち俺はそいつに言葉を投げかけた。大男は俺の言葉に何を言っているのか分からないという顔をしている。
「だから、言いたいことはそれだけか? と聞いているんだ。まぁ、それ以上あっても聞く気はなかったからもう言わなくていいぞ」
「・・・・・・フンッ! 雑魚は誇りもないようだな! これだけのことを言われても何も言い返さないとは腑抜けているな!」
言ってきたのはそっちだろうが。言い返してほしいのかよ。面倒くさいな。
「別にどちらでも良いだろう。これからそれを白黒つけに行く場があるんだ。それだけで十分だろうが、大公の手先」
「ッ⁉」
「言っておくが、大公の手先と知った以上は、こちらも手加減をするつもりはない。棄権をお勧めする」
「はッ! お前も自信がないのか⁉ ハッキリとそう言ったらどうだ?」
「いいや、これは警告だ。一度言ったから、もう二度は言わないぞ」
そう言って俺は目をつぶって精神を落ち着かせる。目の前の大男が何やら叫んで攻撃を仕掛けてきているが、俺はそれを反射で避けつつ自分の中で苛立っていることを再度理解する。憎き大公と一緒にいること自体が、俺にとっては憎悪する対象だ。こいつら全員が俺の憎悪する対象ならば、俺は遠慮なく最初から力を使い始めれる。
「一と二を引いたもの、時間だ」
「私たちについてきてください」
ラフォンさんとは違う、見分けがつかない美しい長い青髪の女性二人が一と二を引いた奴を呼びに来た。そして二人は女性に連れられて闘技場へと進み始める。しばらくすると、始まったのが分かるくらいの歓声がこちらに響いてきた。ついに騎士王決定戦の本戦が始まった。
待ちわびたし、参加者の素性を知れてよかった。フローラさまの言いつけも簡単にできそうで何よりだ。こんなにも殺しに抵抗がなくなるとは、俺は随分と変わってしまった。
少しの間待っていると、もう一度歓声が響いてきたことで第一試合目が終わったことを理解した。勝ち残った方がここに戻ってくるのかと思ったが、先ほどの一と二を連れて行った女性二人がここに来た。
「三番と四番の方、時間です」
「私たちについてこい」
俺と大男は二人の女性にそう言われて闘技場の方に向かう。大男が俺を押しのけて先に進もうとするが、俺はするりと避けて後ろに回る。そんなに敵に背後を取られたいのなら、どうぞ前に行ってくれ。
そうして暗い道を進んでいくと、左右に分かれ道が現れた。女性二人は左右に一人ずつ別れ、俺たちの方を向いた。
「こちらにアユム・テンリュウジさん」
「こっちにギヨ・バルローだ。騎士が闘技場に入る入り口は西と東に二つある。別れて闘技場に入ってもらう」
そう言われて大男は高圧的な口調の女性の方に進んで、先に進む。俺もそれに送れずに柔和な口調の女性の方に行き、歩き出す女性について行く。円形の闘技場であるから、入り口に進んでいく道は緩やかに曲がっている。そんな暗い道を進んでいると、女性から声をかけられた。
「テンリュウジさん」
「はい?」
「この騎士王決定戦、頑張ってください」
「え、あ、はい。頑張ります」
・・・・・・この女性と会ったことはないはずだ。そして、応援されるほど俺の噂は良くないはずだ。むしろ悪いと言えるだろう。俺がカスペールを暗殺しようとしたと言われているのだから。
「巷ではカスペール家当主を暗殺しようとしたとか、色々言われていますが、私はそんなことが出鱈目だと思っています。だって、フロリーヌさんがべた褒めしている人ですから」
「そんなにべた褒めしていますか?」
「それは本当に。隙があればあなたのことを褒めていますから、随分と気に入られていますね」
何だか俺の知らないところで知らない人に俺のことを言いふらすのはやめてほしい。恥ずかしい。こういう状況になるのは恥ずかしくていやだな。
「この騎士王決定戦、大公が裏で全てを指示していることは国王やフロリーヌさん、グロヴレさんは知っています。それでもなお決定戦に水を差さないのは、あなたを信頼しているからでしょう。私が言うまででもないでしょうが、派手に暴れまわってください。観客には絶対に被害を与えませんから」
「分かりました。ご期待に沿えるように、頑張ってきます」
俺と女性はついに闘技場に出る手前まで来た。向こう側には少し距離が離れているが先ほどの大男がいるのが目視で来た。
「ここで待っていてください。審判に名前を呼ばれてから闘技場に出てください」
「分かりました」
審判とは誰のことだろうと思ったが、声を聞いた瞬間に分かってしまった。
「それでは、騎士王決定戦第二試合目を始めます」
ラフォンさんであった。ロード・パラディンであるラフォンさんが審判をやるのは至極当然のことか。そしてラフォンさんは言葉を続ける。
「西方、数多の国民を守りパラディンの地位に就いた王国騎士ギヨ・バルロー」
「よっしゃぁぁぁっ!」
言わされている感が半端ないラフォンさんの言葉に、客席の歓声と共に大男は叫びながら闘技場に出てきた。パラディンというと、騎士の階級は真ん中くらいか。どの階級にどれくらいの人がいるのか分からないから、パラディンが凄いのか分からない。
「東方、シャロン伯爵に仕える騎士にして、ロード・パラディンの弟子である期待の騎士、アユム・テンリュウジ!」
「期待って・・・・・・」
先ほどとは違い、生き生きとした喋り方で俺のことを紹介してくれた。だけど、絶対にラフォンさんが考えた言葉だよな。期待とか言わないでほしかった。
そう思いながら闘技場に出ると、闘技場の全容が目に入った。名前の通り闘技場で、周りの壁の上に観客席があり、その観客席の一部に国王さまが座りそうな太陽の光を遮るように屋根がつけられた場所があった。その上には、全身鎧を着た騎士が剣を地面に突き刺して威風堂々としている姿の巨大な石像がある。
あれは過去のクラウ・ソラスの所有者を模したものだろうか。持っている剣や着ている鎧が微妙に違うから、良く分からないが所有者によって形が変わるのかもしれない。・・・・・・しかし、大男が入ってきた時は大歓声だったのに、俺が入ってくる途端歓声がやんだぞ。まぁ、そっちの方が静かでいいんだけどね。全然悲しくない。
「アユムッ! 胸を張りなさい!」
この場で異物感を味わっている俺に、胸を張れと客席から声を投げかけられた。俺はそちらを急いでみると、国王の席の近くに位置している場所に立ち上がって俺を見下ろしているフローラさまであった。その表情は怒っているように見える。確かに、こんな不甲斐ない騎士を大衆の面前でさらすわけにはいかない。
俺は言われた通りに絶対の自信とフローラさまの騎士という自覚を胸に、前に進む。大男は俺の方を見て下衆な笑みを浮かべており、俺は戦闘状態に思考を切り替える。こいつを殺すということだけを頭に入れている。
「それでは、両者武器を手に」
ラフォンさんの言葉で重装備の大男は背負っていた大きな剣を手にする。俺は異空間に収納していたクラウ・ソラスを取り出す。俺と大男の状態を見たラフォンさんは手を上げる。
「・・・・・・始めッ!」
ラフォンさんが手を振り下ろして始まりの合図が放たれた。大男は始まりと共に俺に向かって走り出し、その大きな剣を振り下ろしてきた。それをクラウ・ソラスで受け止めるが、大した力ではなかった。何度もその力で剣を振るってきたため、無駄だし邪魔だと思って少し殺気を当てた。それには気が付いたようで、すぐに大男は俺から距離を取った。
「・・・・・・ふ、フンッ、受けているだけでは勝てないぞ?」
「それは同じ考えだ。この試合は無意味だから早めに終わらせることにしよう」
「俺をすぐに倒せると思っているのか? このパラディンの俺を?」
「パラディンかは関係ない。それから、もう一度だけ聞いておく。降参する気はないのか?」
「・・・・・・どれだけバカにすれば気が済むんだッ!」
俺が少しの優しさで棄権を大男に進めたが、馬鹿にしていると思われたらしく顔を真っ赤にしている。それなら仕方がない。・・・・・・コロスか。
「≪魔力武装≫ッ」
周りに白銀の光が身体中からあふれ出し、周囲を照らした。光が収まるころには、俺の身体は白銀を基調とした全身鎧で覆われ、クラウ・ソラスと大きな盾が手に収まっている。だが、いつもと違うところがあった。それは黒の模様が七割くらいになっていることだ。この黒の模様が何かは未だに分かっていないが、いつもと変わらず、いつもより調子がいいから今は気にしない。
「忠告はした」
「忠告? 急に鎧を着ただけのはったりだろうが。それでどうやって俺を――」
大男が何かを言い終える前に、俺は大男の近くに行く。急に俺の姿が見えたことに驚いている大男であるが、それを気にせずに大男の上半身に向けてクラウ・ソラスを振った。すると俺の剣圧で周囲の地面が衝撃が走り突風が吹き荒れ、砂埃が大男と俺の周りに舞っている。
俺は砂埃にかかるのが嫌だから、大男から離れた。観客が大騒ぎしているが、そうこうしているうちに砂埃が収まり大男の姿を見た観客が全員大人しくなった。大男の上半身はなくなっており、下半身だけがその場に立っているからだ。上半身は俺が剣を振った先の壁で潰れて原型がすでになくなっている。
すでに≪完全把握≫で大男が息絶えていたことは分かっていたから、俺は≪魔力武装≫を解いて元来た道に戻って行く。
「勝者、アユム・テンリュウジ!」
その言葉に反応できる観客はいなかった。さすがに上半身を吹き飛ばすのは絵的に良くなかったか? でも俺の前、フローラさまの前に立ち塞がったのだからこうなるしかない。
最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。
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