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56:騎士と騎士王決定戦・予選。②

筆の進み方が日によって違うのはどうしてでしょうか。56を二日で書き上げましたが、それをどうして早くできなかったのか。

 漆黒の刃が目を引く双剣を持った黒のスーパーロングヘアの女性が放った言葉に、俺は驚かずにはいられなかった。だって、その言葉は俺の元居た世界の、京都弁と呼ばれる言葉であったからだ。思わず、俺は驚嘆の声を上げずにはいられなかった。


「は?」

「だ~か~ら~、ウチと遊ばへん? って言うてるんよ」


 こいつ、俺と同じ世界に生きていた人間なのか? そうでなければこの世界でこの言葉を聞くことはあり得ないだろう。いや、もしかしたらこの世界でも同じように話す人たちがいるのかもしれないから、俺は平常心を取り戻して女性の問いに答える。


「断る。今は大会中だ。そんなことをしている暇はない」

「・・・・・・あれ?」


 よく平常心を取り戻せたと自分自身を褒めていると、今度はあちらが困惑していた。そちらが困惑しても、俺からしてみればその理由が分からない。俺が困惑するのは分かるが、そちらが困惑する理由がないだろう。意味が分からない空気が漂う。


「もしかして違ったのかな。でも、そんなはずはないと思うけど、どういう意味だろう」

「用がないのなら、俺は行かせてもらう」

「それはごめんね、少し待って」


 何やら独り言をつぶやいているが、俺としては一刻も早くキング・ワームの卵を取りに行かないといけないから先に行こうとする。しかし、女性に止められてしまう。もしかしてこいつは大公の手先で、俺の足止めをしているのか?


「待たない。足止めをしようとしているのなら無駄だぞ? 俺は遠慮なくお前を戦闘不能にしてでも先に進む覚悟を持っている。それでも足止めするのなら、覚悟してもらおう」

「それは本当に勘弁してほしいな。私は別に悪意を持って足止めをしているわけではないから、戦闘不能にするのはやめてね」


 いつの間にか、女性は京言葉ではなくなり、普通に話し始めた。あの言葉は俺がいた世界の誰かから教えてもらった言葉なのだろうか。それなら一体誰だ、迷惑な奴は。それに、こいつが俺を足止めする理由は何だ? 俺はこいつのことは知らないし、こいつを追ってきている奴らがもう少しでこちらに来る。


「俺はこんなところで時間を浪費している場合ではない」

「そんなこと言わずにさ? お姉さんに付き合って」

「しつこいぞ。いい加減にしないと本当に怪我するぞ」


 厄介ごとに巻き込まれたくない俺は、すぐにその場から移動してようとする。そしていつまでもしつこい女性のせいで、ついに女性を追っていた奴らがここに来てしまった。


「ようやく追いついた――おや、元々の標的がいるではないか。これは幸運だ」


 ごつい装備をしている六人の男の騎士たちが俺たちの前に来た。だが、リーダーらしきひげ面の男が俺を見て不快な笑みを浮かべて標的と言ってきた。こいつらは俺に悪意を当てていた奴らだ。こいつらの目的は俺なはずだが、この女性を追っていたのはどうしてだろうか。


「俺に何か用でもあるのか? てっきりこっちに用があるのかと思ったぞ」

「そちらにも用があるが、大本命は貴様の方だ」


 間違いなく、こいつらが大公の手先だろう。こんなにも真っ向から来るとは思わなかった。こいつらが囮で他にいるのかとも思ったが、その気配はない。本当にこいつらが手先なのかと思うと、大公のバカさ加減を心配してしまう。なぜこいつらを差し向けたのかと。それくらいなめられているのなら、後悔させてやるつもりだ。


「俺はお前らに用はない。先に行かせてもらう」

「そんなことをさせると思うか? お前がここで死ぬことは決定事項だ。大人しく死ね」


 俺に向けてそう言うと、男たちは俺たちに剣を構えてきた。隣にいる女性もそれに合わせて漆黒の双剣を構えたが、この女性と共闘することは決定事項なんだな。どちらにしても、こいつらを倒すのに変わりないから俺もクラウ・ソラスを取り出して構えた。すると、俺の剣と彼女の双剣に変化が起きた。


「これは・・・・・・」

「やっぱり、神器だね。あの噂は本当だったんだ」


 俺の剣は白銀に光だし、彼女の双剣は漆黒に怪しく光っている。彼女が俺の剣を見て神器だと言ったが、この現象は一体どういうことなのだろうか。こんなに光ることは、≪魔力武装≫以外にない。


「もしかして、この現象を見るのは初めて?」

「・・・・・・この現象は一体なんだ?」

「この現象は〝共鳴〟だよ。神器と神器が近くにあると、他の神器の居場所を知らせているのか警戒を促しているのか分からないけれど、光り出すんだよ。光り出す意味は未だに分かっていないから、これ以上聞かれても説明できないからね」


 神器同士が近くにあるとそんな現象が起きるのか。これまで神器の持ち主と出会ったことは、神器フラガラッハの所有者であるサンダさんだけか。サンダさんといた時は、クラウ・ソラスを出現させていなかったから共鳴が起きなかったんだ。


 ・・・・・・って、こいつの持っている漆黒の双剣も神器なのか。世界に十五しかない神器のはずなのに、最近になって二つと出会ったぞ。神器と神器は引きあう性質でもあるのか?


「フン、光り出したかと思えば、何も起こらないではないか。単なるこけおどしか」


 この共鳴という現象は、あまり知られていないらしく、リーダーの男はこの現象を鼻で笑った。確かに光るだけで何も起こらないのならこけおどしと変わりない。


「相手が二人だと思っても油断するな! 男の方は眼中に入れるまでもないが、女の方は厄介だ」


 俺を眼中に入れるまでもないとは、言ってくれる。最初からここまで馬鹿にされることは初めてだ。


「女はリモージュ王国の第一王女にして、神器パシュパラストラの使い手だ。相手国の重要人物を手に入れる滅多にない機会だ、気を引き締めていけ!」

「・・・・・・えっ?」


 今、リーダーの男がこの女性のことをリモージュ王国の第一王女とか言っていなかったか? そんな人物がどうしてここにいるんだよ。それも騎士として出場して、遺跡にまで入ってきている。俺は虚を突かれて女性の方を見る。すると女性は俺に向かって少し慌てた様子でリーダーの男の言葉を否定する。


「違うんだよ? 私は別にお姫さまとかそういうものじゃないから。第一王女に似ているだけの赤の他人だから」

「今更言い訳をしても遅い。その長い黒髪に、すべてを呑み込む色の黒の双剣を見間違えるわけがない。そうだろう? 〝漆黒の戦姫〟」

「さっきから言っているけれど、私はそんな人を知らないよ? ただの人違い」


 とぼけているが、この感じからして、この人は間違いなく王女さまなのだろうな。この王女さまは何を考えているんだよ。自分が重要人物だということを分かっていないのか? 重要人物だからこうして狙われいるだろうに。


「まぁ、そんなことはどうでもいい。男の方は必ず殺せ。そして女の方は生け捕りにしろ。やれッ!」


 リーダーの男の掛け声で五人は一斉に俺たちの方に来た。一斉に来たと言っても、俺の方には一人で女性の方には四人と、女性を警戒しているのか俺を舐めているような割り振り方だ。だが、俺に敵意を向けている以上することは変わらない。


「一つ聞く」

「あ? 何だよ? 命乞いでもするのか?」


 俺の元に来たイケメンだけどバカそうな男に言葉を投げかけるが、男は俺を馬鹿にしているような目で見てくる。こいつなら何でも話してくれそうだ。バカそうだから。


「お前らは大公の差し金か?」

「そうだよ、俺たちは大公さまからお前を暗殺するように言われたんだよ! 口先だけの男を早く始末しろと言われてな」

「ちょっ――」


 俺の思い通り、この馬鹿がすんなりと話してくれた。それに対してリーダーの男が呆気にとられた表情をしている。もう少し考えて部下を選出した方が良いだろう。こちらとしては嬉しい限りだけどな。


「それにしても、よくあんな不細工な女のために動けるものだな!」

「・・・・・・何?」

「大公さまにお前の資料を見せてもらったが、あんな女のどこが良いんだか。お前は顔が良いのにもかかわらず、不細工の元で働くなんて、バカがすることだ。何か脅されているのか? それなら可哀想だと思うが、もしも好きで働いているというのなら、笑い話だ。それに不細工の女の元で働いていたから、こんな殺される状況になるんだろう? 不細工に囲まれて、死ぬとか俺には我慢できない。貴族としても人間としてもどうしようもないクズの女に雇われたことを後悔することだな」


 バカがべらべらと話してくれるのは良いことだが、やはりべらべらと喋っていると余計なことも話してくれる。俺の逆鱗に触れることを平然と話してくれるあたり、殺すことに躊躇しなくて済むからやりやすい。大公の関係者は、どうしても俺の逆鱗に触れたいらしい。


 だが、俺はこんなことで怒りはしない。先の大公の件でこれくらいのことで怒りを露わにするようなことはなくなったらしい。ただ、こいつらを殺すという明確な殺意を抱くだけで、不必要な攻撃はしない。それだけだ。


「言いたいことはそれだけか?」

「あん? ・・・・・・どうせ死ぬんだから、いくら話そうがどうでもいいか。とりあえず死んどけ」


 男は俺に向かって剣を振り上げて俺を斬ろうとする。そんな男を殺すべく、男の胴体目がけて逆袈裟を繰り出した。


「・・・・・・は?」


 男の身体は胴体を斜めに切られて、男は二つにされているにもかかわらず何が起きたか分からない表情をしている。そして男の頭が付いた身体は地面に落ちて、下半身も力なく倒れた。最後まで何をされたのか分からない表情であったから、痛みなどなかったのだろう。それが俺にできる最後の情けだ。


「俺は急ぐ。そしてお前ら全員殺す。時間をかけずに殺してやるよ」


 俺は≪剛力無双≫と≪神速無双≫の二つを発動し、大公の手先に狙いを定める。大公の手先なのだから手加減はしない。俺を恨んでも良いし、大公を恨んでくれ。


「ば、バカなッ⁉ あいつの硬さは世界で十本の指に入るくらいだぞ⁉ それなのにあんなにも簡単に切られたぞ!」


 王女さまの方に行っている一人の男が、驚いたようにそう言ったが、こいつの硬さが世界で十本の指? それは世界を馬鹿にするのも大概にしとけよって言いたい。こいつを二つにするときに何も硬さなど感じなかった。それくらいに俺の前では硬さが無力だったというわけだ。


「くそおぉぉぉっ! よくもルイをッ!」

「おい、待てッ!」


 女性に掛かっていた男の一人が、仲間の静止を振り切って俺の方に来た。俺に剣を振り下ろしてきたから、俺はクラウ・ソラスで受け止めた。やはり、こいつらは注意すべき相手ではなかった。時間をかけるのもバカバカしい。


「よくもルイを殺してくれたなッ! お前だけは許さないぞ!」

「別に許さなくても良い。それに、殺しに来ているのに殺されたくないとは、とんだ拍子抜けな覚悟を持っているんだな。ふざけたことを言う」


 お前らは俺を殺しに来ているが、こちらは殺すな、抵抗せずに殺されろと言っているのか? こいつらは。本当にふざけたことを言ってくる。殺される必要性を感じないし、俺は死にたくない。だから、俺と相反する主張をするお前らを殺す。命と命がぶつかっている以上、少なくとも命を賭けられないのならここに来なければいい。


「ルイの恨みだ!」

「恨み? 逆恨みも良いところだ。殺されそうになったのはこちらなのに」


 男のくだらない主張を聞くつもりはなく、男の剣をはじこうとするが、男の剣から炎が出現し炎の剣が出来上がった。こいつ、魔法騎士か。前線に出ながら魔法を放ち、仲間を守ることができるオールラウンダーな立場な騎士だ。俺はただの騎士だから魔法を使うことができない。だから魔力を≪魔力武装≫みたいな形で使っている。


「ルイを殺せたのは単なる偶然だッ! それをいい気になって我らに勝てると思っているのなら傲慢も良いところだ! すぐにお前を殺してやろう!」

「偶然? 傲慢? そんな言葉を並べる前に、攻撃してきたらどうだ? 口先だけの男のお仲間さん?」

「――殺すッ」


 俺の少しの煽りで、炎の剣を持った男は殺気とともにこちらに斬りかかってきた。だが、所詮炎を纏った剣であって、何も変わらない。切れ味や付与効果が付くだけで、特に何かすることはない。


 クラウ・ソラスで男の炎の剣を真っ二つに折ってやり、一瞬のことで理解が追いついていない男の頭上に剣を振り上げて真っすぐ振り下ろした。男の身体は二つに増えて、地面に倒れこんだ。液体が飛び散ってきそうだったから、俺は数歩後ろに下がって液体を避けた。


 残りの他の奴らを殺そうとそちらを向くが、全員が唖然として動こうとしない。それは王女さまである双剣の使い手もそうであった。このくらいで唖然としているとは、生ぬるい環境で育ったようだな。冒険をしていればこれくらい当たり前だろうが。俺が殺すと決めた相手ならば、モンスターとそう変わらない。


「う、うぷっ!」


 一人が人間だったものを見て吐き気を催しているようであった。だが、そんなことをしても敵は待ってくれない。大会のためにも早く大公の手下を排除することにした。リーダーの男と吐き気を催している男を放っておき、残りの二人に狙いを定めた。


 ちょうど、二人が良い感じで近くて縦に並んでいたから、二人が重なって見える正面に来てクラウ・ソラスを腰を狙って横払いした。後ろの奴は咄嗟のことで何も動きがなかったが、前の奴は対処しようと剣と身体の間に魔力で作り出した魔力壁を何重にも出現させた。


 だけど、俺の剣はそんなものでは止まりはしない。魔力壁は紙のようにすっぱりと斬れ始め、すぐに二人の腰にたどり着き、腰を簡単に切り裂いた、と思ったが、俺の剣に何やら薄い膜がまとわりつき、俺の剣が一瞬とは言え切れ味がなくなった。誰がやったのかと周りを見ると、リーダーの男がこちらに手のひらを突き出して何かをしているのが見えた。


 切れ味がなくなったとは言え、俺の剣の勢いが止まることはなく、二人は俺の剣にぶつけられて壁に勢いよくぶつかった。ぶつかった拍子で出てきた砂ぼこりで二人の様子は分からないが、気配がなくなったところを見ると即死だろう。


「無駄なことをしたな。お前が何かしてもしなくても、死んでいるぞ」

「ッ! 貴様ぁッ・・・・・・」


 さっきまで俺のことを舐め腐っていた表情はどこかに行き、リーダーの男は憤怒の表情でこちらを見ている。何もしなければ死ぬことがなかったろうに。大公についたことが運の尽きというものか。


「次はお前の番だな。リーダーの男は後回しだ」

「ひ、ひいぃぃぃっ!」


 嘔吐していた男が俺に震えあがって出口に走り逃げ出した。俺はその逃げ出した男を追わず、≪裂空≫と≪剛力無双≫を組み合わせた≪裂空・剛≫を使い、こちらに向けている背中に飛ぶ斬撃を繰り出した。見事に男の背中に命中して鮮血が噴き出し、大量出血で死に絶えた。


「さて、後はお前だけだ」


 リーダーの男にクラウ・ソラスを突き付けてそう言うと、男はとても悔しそうな顔をしてこちらを見ている。別にこいつから何か聞き出そうとするつもりはない。ただ、絶対にこいつらを殺すかもしくは二度と俺に歯向かわないようにしないといけない。


 どうせ大公のことだ、また変なでっち上げを作り上げて俺に冤罪を吹っ掛けることもしそうだ。俺はその芽を摘んでいなければ、またしてもフローラさまとルネさまに負担をかけてしまう。この身がどれだけの人間を殺したとしてもな。


「私に何かを聞こうとしても無駄だ。私は一切話すつもりはない」

「結構。俺もさっきのバカから知りたいことは知れた。お前から聞くことは何もない」

「それでは、私を殺すというのか?」

「それはお前次第だ。お前が命が惜しくて死にたくないというのなら、条件付きで殺しはしない。どうする?」

「・・・・・・ふっ、考えるまでもない」


 リーダーの男はそう言うと、懐からナイフを取り出した。そのナイフで攻撃して来るのかと身構えたが、男は俺に向けるのではなく、自身の心臓に向けて自分で自分の心臓を貫いた。俺は少々驚いたものの、こいつが最後何かしてこないか注意深く観察する。


「がはっ・・・・・・、たい、こう、もうしわけ・・・・・・ございません」


 そう言いながら男は血を流しながら倒れた。敵を前にしての自殺か。漫画の世界では聞く話であったが、現実で目の当たりをするとは思わなかった。とりあえず、今この場は解決したからすぐにキング・ワームの元に向かう。


「ねぇ、私のことを忘れていない?」


 そうだった、こいつがいるんだった。他所の王女さまとは言え、王女さまだから下手なことができなくなった分、面倒だと思い始めた。だから、俺は王女さまを無視してキング・ワームの元へと走って行く。これで撒けたらいいんだが。

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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