53:騎士と麗しき伯爵と大公と穢れし伯爵。②
あけましておめでとうございます。
そして総合評価700を超えたことに感謝します。何度も言うようですが、更新頻度を上げていきたいです。
タランス学園から出て、国の象徴である一際は大きい王城に足を踏み入れる。王城の前には門番がいたが、門番はラフォンさんとグロヴレさんの方を向いて敬礼をしている。道行く兵士たちも二人にお辞儀をしたりと、二人がどれだけ偉いのかが分かる。
そして、グロヴレさんはいかにも王さまがいる謁見の間に通じるであろう階段の前で足を止めた。会談の前では兵士たちが武装して構えているのが見える。その武装は、俺を警戒しての武装なのだろうか。いつも通りであっても、重装備すぎるぞ。
「おぉ、グロヴレ殿。そこの罪人を捕らえてくれましたか。他の兵士たちがいないところを見ると、そこの罪人は暴れましたか」
武装した兵士たちの中から、中年特有の腹をした偉そうな恰好をした貴族の男が出てきた。俺の方を見て蔑んだ視線を送ってくるのは気分が良くない。それに何もしていないのに罪人と言われるのも気分は良くない。だけど、こんなことで切れているわけにはいかない。
でもまぁ、俺が怒りを露わにする前に、ラフォンさんがその貴族の男に殺気を送っているのが分かる。殺気を受けた貴族の男は、冷や汗をかいてグロヴレさんに近寄る。
「ラフォン殿が私の方を睨んでくるのですが、私が何かしでかしてしまいましたか?」
「いや、あなたは何もしていませんよ。だけど、この件に関して言えばもうあなたは関わらない方が良いですよ。この件は下手をすれば国が滅んでしまいますから、関係ない人間が変なことをする可能性を減らした方が良いですから、この件は他言無用でお願いします」
「そ、そうですか。分かりました、箝口令を敷いておきましょう。それと、罪人を捕らえに行った兵士たちはどこに行ったのですか?」
「今は学園にいますよ。捕らえる際に、殺気に当てられてしまって気を失っています。彼女たちの回収をお願いします」
「殺気・・・・・・? はぁ、分かりました。それでは、私たちはこれで失礼します」
殺気について疑問を覚えた貴族の男であったが、グロヴレさんに何も聞かずに武装した兵士たちを連れて外へと出ていった。それにしても、この国ではもう俺の立場が危ういんではないのかと思っている。今箝口令を敷いても、広がっている可能性がある。そうなっていればシャロン家にすでに迷惑をかけているな。
「国王が待っている謁見の間に行こうか」
「はい」
高級そうな階段を上がり、俺たちは豪華な装飾がされている扉がある謁見の間の前に立つ。て言うか、王城の中は豪華な装飾がされていて、場違い感が半端ない。だけど、そんなふわふわした感じで国王さまに会うわけにはいかない。それに大公もいるわけだ。気を引き締めなくては。
「国王、テンリュウジ殿を連れてまいりました!」
グロヴレさんは謁見の間の前でそう言い、謁見の間の扉を開け中に入る。俺も謁見の間に入ると、一番にフローラさまとルネさまの姿が見えた。お二人は俺の顔を見るなり、安どの表情を浮かべている。お二人の姿に困惑しながらも、謁見の間の様子をくまなく見渡す。
まず、何と言っても一段高いところで王冠に赤いマントを身に着けられ椅子に座っておられる長い白髭が特徴的な現国王さまが見えた。次に、その近くに立っている、国王よりかは年老いてはいないものの年老いて見えるが年不相応の派手な格好をしている男、国王の一番近くにいるということはこいつがミッシェル・ユルティス大公か。
その大公の近くには先日俺の殺気で気絶したカスペール家当主がおり、部屋の両脇には偉いであろう大臣か何かであろう豪華な服を身に着けている者たちがいる。他にも兵士たちがちらほらと見える。強いか弱いかを聞かれれば、間違いなく弱い部類だろう。
「どうして罪人を捕らえていないんだ? 捕えていないと国王を暗殺するかもしれないぞ」
大公は捕らえられていない俺の姿を見て、俺を見下しながらふざけたことを言ってくる。
「テンリュウジ殿はそのようなことをしません。ですから、拘束など不必要です」
「バカを言うなッ! こいつはワシを殺そうとしてきたのだぞ! そんな危険な奴を信用できるわけがないだろう!」
グロヴレさんが俺の身の潔白を証言してくれるが、それを聞かないのがカスペール家当主。こいつ、人のことを危険人物みたいに言ってくるな。どちらかと言えば、お前の方が危険だろうし、お前が捕らえられていない方がよっぽど危ない。
「それが事実であれば、確かに拘束しなければなりません。ですが、私は事実であると思ってはいませんから」
「なっ! ・・・・・・わ、ワシが嘘をついていると言っているのか⁉」
グロヴレさんのストレートすぎる言い分に、カスペールは顔を真っ赤にして動揺しながら大きな声でグロヴレさんに言い放つ。だが、グロヴレさんは何食わぬ顔でその言葉に返す。
「そういうわけではございません。ただ、あなたよりもテンリュウジ殿を信用に値する人物であったため、その言葉を切り捨てたにすぎません」
つまり、カスペールを信用していなくてカスペールの言葉を聞くに堪えないということだな。うん、それは良く分かるが、そんなにも信用してくれているとは思わなかった。いや、カスペールと比べたら誰でも信用できるとも言える。
「ッ! ・・・・・・ッ⁉」
当のカスペールは顔を真っ赤を通り越してうっ血しているのかと思えるくらいになっており、口をパクパクとさせて言葉になっていない。ここまで言われるとは思っていなかったという顔だな。グロヴレさんは本来国王側なのだから、言われるとは思わないだろう。
「口が過ぎるぞ、グロヴレ。何様のつもりで物を言っているんだ?」
「申し訳ございません。思わず本音を漏らしてしまいました」
カスペールに助け舟を出したのは、もちろんカスペールの後ろ盾の大公。しかし、どうしてカスペールの後ろ盾をしているのかが分からない。まだそこそこ良い地位の人間なら分かるが、伯爵なら守ってやるメリットがないはずだ。
「で? そこの罪人を捕らえないのは、お前の独断ということか? お前はそこの罪人に手を貸すということで良いのか? そうであるなら、それはそこの罪人と同じく国家転覆罪と同等の罪になるぞ」
大公はグロヴレさんにそう言って圧をかけてくる。話には聞いていたから、こいつのこの喋り方には何も屈しない。思った通りの男だとも思った。おそらく、年甲斐もなく女遊びが好きで、家族を家族とも思わない人間だと即座に理解した。
「テンリュウジ殿は罪人ではありません。罪人と呼ぶのはやめていただきたい」
「伯爵を、それも俺が気にかけている伯爵を殺しにかかってきた男だぞ。罪人以外の何者でもない」
「そのような事実は一切ありません。すべてはそこにいるカスペール伯爵が言っている戯言でしょう」
「貴様、それは俺を侮辱していることと同義だと分かっているのか?」
「まさか。そのようなことは微塵も思っておりません。そのように聞こえてしまっていたのなら、それは申し訳ございません」
・・・・・・グロヴレさん、大公相手にものすごく言うな。相手が大公だというのに怖くないのだろうか。それよりも、この調子なら俺は身の潔白を証明することができるのだろうか。
「ふん、そのようなことを言っていられるのは今のうちだ。こちらにはカスペール以外にもそこの若造がカスペールを殺そうとしたことを見たという人間がいるんだからな」
は? そんなわけがないだろう。こいつを殺そうとしていないのに、見たという人間が出てくるはずがない。そいつらも嘘をついていることになるだろうが。
「国王。その証人を連れてきてもよろしいでしょうか?」
「・・・・・・許す。連れてきて参れ」
国王さまがそう大公に命じ、大公は近くにいた兵士に顎で指図して兵士は部屋から出て行った。しばらくすると、兵士は複数の女性と一緒に戻ってきた。女性たちは恰好から言って貴族ではなく、そこら辺にいる平民であろう恰好であった。
「この者たちが、そこにいる若造の罪を立証してくれる証人たちです。さぁ、そいつが何をしていたのかを言ってみてくれ」
俺は少しばかり困惑しながらも、状況は進んで行き、大公が呼び出した証人の女たちのうちの一人が大公に促されて口を開き喋り始める。
「はい。・・・・・・私は花屋の娘で店番をしていた時のことです。外に目をやると、ただ歩いていたカスペールさまと護衛の男性の二人が見えました。ただ歩いていただけでしたので、私は店番に戻ろうとしました。ですが、大きな音に驚き、そちらに目を向けました。・・・・・・そこには、倒れておられるカスペールさまと、カスペールさまを守ろうと剣を構えている護衛の男性がおり、そして、すごい血相で剣を構えているそこの男性がおりました」
カスペールを襲おうとした男が、俺であるとその女性は言ってきた。女性の証言で、俺への注目度が一気に高くなった。俺はその視線に動揺したが、外には出さないように心がける。ここで俺が思ったことは、ただ隙を見せないこと。それだけだ。
「大きな音で人々が外へと出てくると、そこの男性は逃げていきました。・・・・・・これが、私が見た一部始終です」
「ほぉ、それはこいつで間違いないことなのか?」
「はい、間違いありません。顔を一切隠していなかったので、ハッキリとこの男性の顔を確認しました」
「では、他の者はどうだ?」
一番に話した女性は俺を恐れるような瞳をしてくる。そして、大公はその女性を下げて他の連れてきた女性にも聞いた。他の女性たちも、俺を恐れるような表情をしながら身に覚えのない事柄を話していく。
「私もたまたまそこを通ったときに見ました。カスペールさまに剣を構えているこいつに」
「わ、私もです。その人が逃げていくところを見ました」
「私は、こいつがカスペールさまに斬りかかろうとしたところから見ました。カスペールさまを斬りかかろうとしていましたが、護衛の男性が剣を弾き返すところを見ました」
次々に言われもない証言に、俺は少しだけ畏怖を覚えた。これが、元居た世界でいうところの冤罪と言うもので、冤罪が出来上がる図がこれになるのか、と。案外余裕があるなと自分に感心しながらも、この状況はやばいと自覚する。最悪、首が飛んでしまうぞ。いや、俺が本気で抗えば俺を殺すことなんて人間ではほぼ誰もできないだろう。
「これが、こいつがカスペールを殺そうとしたという証言だ。これだけの証言が揃っておいて、まだこいつが殺人未遂ではないと言えるのか?」
「・・・・・・これだけ揃っていれば、こちらも言うことがありませんね」
えぇっ⁉ これでグロヴレさんが引き下がるのか⁉ こんなどこのどいつか分からないような、どうせ大公が根回しして送り込んできた人間のことを信じるのか⁉ こんなこと虚偽に決まっているだろうが。くそっ、これだから汚い貴族は嫌いだ。想像通りだ。
「待ってください! そこにいるアユムがそのようなことをするわけがありません。そもそも、カスペール伯爵を殺そうとする動機がないではありませんか」
その証言に待ったをかけたのは、俺の主で敬愛するフローラさまであった。フローラさまは必死な顔をして俺の無実を訴えかけてくれた。そのことで、俺は味方がいると自覚し、安心することができた。それと同時にフローラさまに迷惑をかけていることに情けなさを覚えた。
「どうだか。聞けば、シャロン家とカスペール家は前にいざこざがあったようではないか。シャロン家の執事ならば、そのいざこざが今になって悪化して、こいつがカスペールを殺しに来たかもしれないだろう」
「もう終わったことですし、今は関係ないことです。持ち出さないでいただきたいですわ」
必死なフローラさまと並んでいるルネさまが、前のことを引き出してくる大公に対して冷静に対処する。こんな一面を見たのは初めてだ。いつもはマイペースなルネさまであるが、こんなお顔もするんだと意外に思ってしまった。いつもの感じなら、フローラさまとルネさまは逆であるはずなのに、この場面では違うようだ。
「動機はどうであれ、こいつがカスペールを殺そうとしたのは確かだ。今すぐにでも死刑にするべきだ。こんな危険な男を生かしては置けない!」
大公がそう言うと、周りにいた大臣か貴族か分からない輩たちが一斉に口を開き始めた。
「そうだ! そんな男すぐにでも殺せッ!」
「そんな危険な男が生きていては、この国の治安が乱れてしまう。すぐにでも消してしまえ!」
「そうだそうだ! 生かしておいても何も価値はない!」
「殺してしまえ!」
「たかが執事風情が、死んでしまえ!」
大勢の人間が俺に対して死んでしまえとか殺してしまえとか言ってくる。はぁぁぁ、ダメだな。貴族はお行儀悪く育ってきたのかよ。そんな言葉で俺を精神的に殺そうとしているのなら無駄なあがきだ。なんせ、俺には耐性が付いているのだから通用しない。それに、魔物の叫び声の方がよっぽど威力がある。
「大丈夫? フローラ」
「ッ・・・・・・は、い。大丈夫です」
俺は平気であったが、爆心地の近くにいたフローラさまが顔色を悪くして汗を流している。フローラさまの背中をさすっているルネさまであるが、もしかして、フローラさまは公的な場が苦手な人なのだろうか。話には聞いたが、汚物を見るような目で見られていたことをトラウマにしていると仰られていた。フローラさまをこの場に立たせてしまったのは自分の責任だッ。
「その悪党の主であるシャロン家も、疑わしいところでもあるな」
攻撃対象は、俺だけではなくフローラさまとルネさまの方にも向かった。俺はすぐにでもお二人の元に向かおうとしたが、俺の前に出たグロヴレさんによって立ち止まった。グロヴレさんの目を見ると、目で静止しているように感じた。俺はここに入る前に言われたことを思い出し、こらえた。
「もしや、シャロン家が執事にカスペールを殺すように命じたのではないのか? 先の件でカスペール家に恨みを抱き、それを晴らすために執事を仕向けたのではないのか?」
「そ、それは憶測にすぎません。それにアユムくんが殺したとはまだ決まっていません」
「これだけの証人を集めたにもかかわらず、まだ認めないか。全く、シャロン家は往生際が悪いようだな。これでは、先の件でもシャロン家が悪いのではないのか? その言い逃れようとする根性や、その醜い顔などを考えて、シャロン家に問題があったのかもしれない。冗談は顔だけにしておいてほしいものだ」
大公の言葉で、周りにいた貴族たちは一斉に笑い始める。・・・・・・今は、我慢しろ。顔色を悪くしているフローラさまでも、手を思いっきり握って血が出ているルネさまも、我慢しているんだ。俺が我慢しなくてどうする。ここで耐えなければ、すべてが水の泡だ。
「こんな女たちに、伯爵など不必要だろう。それに執事が殺人未遂を行ったとなれば、そいつらに伯爵の地位を与えておくのもおかしな話だ。こんな身体しか生きる価値がない女たち、おもちゃで十分だ。どうだ、俺の元で俺の相手でもしてくれるか?」
・・・・・・はぁぁぁぁぁっ、もう、無理だろう。こんな謂れもないことを言われ、挙句の果てに主を否定された。これ以上に俺が戦う必要があるのか? いや、これ以上はないだろう。こいつは、この大公は、ここでフローラさまとルネさま、シャロン家を笑った奴らは、全員殺して見せる。生がどうかなんて関係ない。ただ、世界に必要のない害を取り除くだけだ。
「少し待て。お前の気持ちはよくわかるが、今は耐えろ。耐えてこその騎士だ」
俺が今にも襲い掛かりそうになった時に、ラフォンさんが俺の腕をつかんでくれて少し我に返った。その言葉で頭が冷えたが、今にも飛び出しそうなほどな怒りは消えていない。そして、ラフォンさんの方を向いて少し頷いてこの場にとどまることを決めた。
「お前こそ、口が過ぎるぞ。ミッシェル」
「それは失礼しました。ですが、明らかに分かり切っている状態で往生際が悪い奴らが悪いのです」
さすがに国王が大公を止めたものの、これから俺がどうにかなるルートが見当たらない。グロヴレさんは本当に何かをする気があるのだろうか。
「何を勘違いしている? 私はまだこの者を罪人だとは認めてはおらん」
「ですが、国王。これだけの証人がいるにもかかわらず、国王までお認めにならないのですか?」
「私は、両者を公平に見極め真実かどうかを決断する。お前が決めることではない」
「・・・・・・それは、すぎたことをしてしまいました」
国王の言葉で、大公が引き下がった。さすがは国王と言ったところか。国王は俺の味方なのか? いや、本当に公平に事柄を見極めているのだろう。
「まず、この者に私は信頼を置いている。我が娘を助けただけではなく、ニース王国からの侵攻を一人で食い止めてくれた。これだけで信頼に置くに足りる」
「それは国王の信用を得るために行ったことではないのですか?」
「ほぉ? 信用を得るために、侵入者に立ち向かい、国一つを相手にするというのか? それができるものがそこら中にいるのなら連れてくると良い。それならばこの者の信用を捨てて見せよう」
国王の言葉に、大公は押し黙った。まぁ、別に俺は国王の信用を得るために戦ったわけではない。俺が戦ったのは、すべてシャロン家やフローラさまのためだ。それ以外に何もない。ただ付随的に国を救っただけだ。
「しかし、本当にこいつが一人でニース王国と戦ったのでしょうか。私にはそうとは思えません。もしや、ニース王国と結託しているのではないでしょうか。こんな名も上がらぬ若造が、強いわけがありません」
この大公は俺が弱いと思っているのか? それなら今ここで国を滅ぼして強さを証明してやろう。死にゆきながら俺の強さを自覚することができるだろう。
「そもそも、国王はこの者が強いからと言う理由でこの者を信用しているのでしょうか?」
「強さだけではないが、強さで見ている部分は多くある」
「もし、この者が本当に強いとするならば、なおさらこの者を生かしては置けません。こいつが世界に影響を与えるのならともかく、そうでないのなら即刻殺すべきです」
「私は、この者が世界に影響を与える騎士だと認識している。この者がカスペールを殺そうがそうでなかろうが、この者を殺すには惜しい」
「・・・・・・そうですか。なら、それを証明しなくてはなりません。こいつがの強さがどれほどのものかを。まぁ、それを証明できる場があればの話ですが」
その大公の言葉を聞いたグロヴレさんが、一歩前に出て国王に進言する。
「それならば、証明できるいい場所があります」
「ほぉ、申して見よ、アドルフ」
「『騎士王決定戦』であるならば、テンリュウジ殿の実力を証明するにはもってこいの場でありましょう。幸い、テンリュウジ殿はすでに『騎士王決定戦』に出場しております。この場で証明できるかと」
「それは良い。そこで彼の強さを証明すれば、この者の価値を見いだせよう。それで文句はないな、ミッシェル?」
「・・・・・・はい、それで良いでしょう。そこでハッキリします」
国王の言葉を聞いた大公は、一瞬だけ苦虫を噛み潰したような顔をしたが、それは本当に一瞬で、なぜか笑みを浮かべている。何かを考えているのだろうか。
「もうこの件は良いな? 殺人未遂の件は私の方で一旦預かる。アユム・テンリュウジの身柄は拘束せず、カスペールを我が兵士たちで護衛する。これで保留とする」
国王の言葉でこの場は幕を下ろした。俺は安どすることはなく、シャロン家を侮辱した奴らの方を睨めつける。こいつらを、いつか殺すことを忘れないために。
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