表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/134

42:騎士と復学。

少しだけ書く気力がわいてきた気がします。最近あまり書く気力がゼロに近かったので。

 馬車の中で何日もフローラさまとニコレットさんが俺にキスをしたり十八禁一歩手前のようなことをしているような混沌とした状況を味わされ、どれほど早く学園に着くことを望んだことか。もはや俺の口内はフローラさまとニコレットさんの唾液の味しかしない気がする。


 学園が見えた時には人生で一番安堵したと言えよう。女性に囲まれてエロイことをされていることを羨ましいと思うだろうが、精神的には来るものがある。彼女らは複数であるがこちらは一人で、一人で二人の相手をしないといけない。・・・・・・一人でも慣れていないのに、二人でなんてこられたら疲れるしかない。


 学園にたどり着き、俺はようやく悪夢の馬車から解放された。馬車から降り、アンジェ王国の地を踏んだ時の感動は計り知れないものがあった。フローラさまには、もう少し時と場所と場合をお考えになられてやってほしいものだ。もうやるところまでやっているのだから、それをやること自体は否定しない。だから、もう少しだけ俺の精神を労ってくれ。


「アユムさんっ!」


 背後から久しぶりに聞こえた声に俺はすぐに振り返った。振り返った先には、走りながらこちらに来ている黒髪のハーフアップの女性こと、サラ・エントーヴェンさんが見えた。走ってきているから、大きな胸と思ったが、馬車の件で女体には触れたくないから、胸から目を外してサラさんに向けて手を軽く振った。


「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・お久しぶりです」

「大丈夫ですか? 自分は待っていたのでゆっくり来てくだされば良かったですのに」


 サラさんは息を乱しながら俺に挨拶をしてくださった。どうしてサラさんが走ってきたのか分からずに、そのことをサラさんに聞いてみた。


「はぁぁっ、・・・・・・ごめんなさい、少しでも早くアユムさんに会いたかったので、走ってきちゃいました」

「・・・・・・そうですか、それは嬉しいです。それはそうと、改めてお久しぶりです、サラさん」

「はい、お久しぶりです。アユムさん」


 こういう会話を馬車を乗ってからしていなかったから、久しぶりに普通の会話をした気がする。別にフローラさまやニコレットさんと会話することが嫌だということでもないし、どちらかと言えば好きだ。だけど、もう少し遠慮してくれれば、好き加減は増すと思う、うん。正直にそれを言えないけどね。


「聞いてくださいアユムさん!」

「何ですか?」


 サラさんは俺の顔に顔を近づけてきた。それもキスしそうな距離に近づいてきている。俺は押されながらもサラさんの話を聞くことにした。


「アユムさんからもらった懐中時計を父に見せたら、私に婚約者がいることを父が一応という形で信じてくれました! これで私は実家に帰った時に安心できます! これもアユムさんのおかげです、本当にありがとうございます!」

「それは良かったです。懐中時計を差し上げた甲斐があったものです。・・・・・・それよりも、お顔をどけてくださるとありがたいです」

「えっ? ・・・・・・あっ、ご、ごめんなさい!」


 顔を近づけていたことに気が付いたサラさんは急いで俺から遠ざかってくれた。やはりこれが普通の反応だよな? 俺があの環境にいれば、この反応が普通じゃないと思ってしまうのだろうか。


「いえ、大丈夫です。嬉しいことがとても分かりました」

「はい、本当にありがとうございます。何度言っても言い足りないくらいに、婚約者の件は助かりました」

「お礼はもういらないですよ。持ちつ持たれつの関係でお願いできますか? サラさんにはこれからおそらく助けてもらうと思うので、その時に適当に助けてください。恩が足りなくなったら、また恩を売りに行きますので、よろしくお願いします」

「こちらからお願いするくらいに大丈夫です! これからよろしくお願いしますね、アユムさん」

「はい、お願いします」


 知り合いが身を落とさなくて済んでよかった。・・・・・・それにしても、婚約者? 彼氏とかじゃなくて? 同じか? 微妙に違う気がするが、結局は玉の輿を狙っているわけだから、婚約者の方が都合が良かったのかもしれない。


「あっ、少し言いにくいことがあるのですが、よろしいですか?」

「どうぞ、構いませんよ」


 サラさんは申し訳なさそうな顔をして俺の方を見てくる。婚約者の件で何かあるのだろうか。親に納得してもらうために、サラさんとキスでもして噂を立てたいとかなら、こちらから大歓迎だ。少し時間をおいてくれればの話だけど。


「その・・・・・・、もしかしたら、父がアユムさんを確認するために学園に来るかもしれません。そういうことを私に言わずに、ぼやいていたので定かではありませんが、疑り深い父ですので、来る可能性は高いです」

「あぁ、そんなことですか。それなら大丈夫ですよ。自分もそのことは考えていたので、サラさんは何も心配しないでください」

「・・・・・・すみません、こんなことに巻き込んでしまって」

「今更ですよ。何度も言いますが、自分はサラさんに助けられたので何も苦だとは思いませんし、サラさんが困っているのだから助けますよ」

「本当にありがとうございます」


 サラさんは俺に深々と俺に頭を下げてこられた。俺はこんな美人な女性の仮の婚約者役をできるのだから、嬉しいくらいだ。今はフローラさまの件で素直に喜べないがな。女性関係でこんなにも贅沢しているのは、人生で初めてだ。


「話は終わったかしら?」

「はい、終わりました」


 俺とサラさんの会話が一区切りついたところで、フローラさまが俺の腕に抱き着いてサラさんにそれを見せつけているようであった。サラさんはそれを見て固まってしまった。少しするとすぐにサラさんは回復して、フローラさまに話しかけた。


「お、お久りぶりですね、フローラさん」

「えぇ、久しぶりね。私のアユムに助けてもらって帰省中は難を逃れたらしいわね。あなたもひどい親を持ったものだとつくづく思うわ」

「仕方がないです、私の親なので。・・・・・・それよりも、アユムさんとフローラさんは、何かありましたか? 帰省する前では抱き着くなんて簡単にしなかったはずですけど、どこか雰囲気が違う気がします」


 すげぇ! 一目見ただけで俺とフローラさまの変化を感じ取ることができるとは、これが女の勘と言うものなのか。本当に数十秒しかたっていないのに、よく気が付いたと思う。


「分かるかしら? アユムと私はもう深く結ばれていると言っても良いわ。文字通り一つになったとも言えるわね」


 その表現はド直球すぎると思いますよ。ほら、またサラさんが固まっている。知り合いのそんな内情を知っても生々しいだけで、聞きたくねぇよ。サラさんもそう思っているはずだ。そしてサラさんの表情は暗くなった。


「そ、それは、おめでとうございます。フローラさんの想いは実ったのですね」

「えぇ、私の想いは実ったわ。と言っても、まだアユムからハッキリとした答えはもらっていないけれど、いずれアユムの覚悟が決まった時に私への想いを思いっきりぶつけてもらう予定よ」


 えっ、そんなことを予定しているのか? 俺がすぐに答えを出さないのが悪いのだから、罰ゲーム的なことなのだろう。別に俺にとって不都合はないから、フローラさまが赤面するくらいの想いをぶつけて差し上げよう。


「あなたはどうするの? 私とアユムが結ばれることになって、あなたはどうするつもりなの?」

「・・・・・・どうするとは、どういうことですか? アユムさんとフローラさんが結ばれることに、どうするも何もないと思います。・・・・・・もしかして、彼氏役のことですか?」

「いいえ、違うわ。仮の彼氏でも仮の婚約者でもない、あなたとアユムのこれからについてよ。私とアユムが結ばれて、あなたの気持ちはどうするのと聞いているの。このままあきらめるの? それとも何かするの?」

「どうするも何も、それで終わりじゃないですか。私がどうこうする問題じゃありません」

「・・・・・・あなた、相当強情ね。正直に言わないと、アユムとの関係を認めないわよ。あなたが我慢すればいいという考えはやめなさい。私が全面的にアユムとの関係を認めようと言っているのだからあなたは言えばいいのよ。私が言えと言っているのだから、正直に言いなさい。良いわね?」


 どこの暴君だよ。サラさんの言葉を吐き出させようとしている。まぁ、俺でもサラさんが何かを隠しているということは分かっている。俺が何か手伝えることがあるのなら、伝えてほしいものだ。そうしないと何もわからない。


「・・・・・・フローラさんが良くても、アユムさんはどうなのですか? フローラさんがいる身のアユムさんに私みたいな女の想いを伝えられても迷惑だと思います」

「そこは気にしなくていいわ。そもそも私を選んだ時点で察しなさい。アユムはとある事情で容姿を気にしない男だから、気にせずに行きなさい。これでもまだあなたはアユムを諦めると言うの? それなら私も諦めるわ。それ以上言っても意味がなさそうだから」

「・・・・・・ほ、本当に良いのですか?」

「そう言っているわ。言うなら早く言いなさい」


 フローラさまに促されて、サラさんは俺の方に向いた。俺だけ話が分からないから、ハブられている感じがする。だけど、サラさんが俺を向いていることから俺に関係することなのだろう。


「あの、その・・・・・・少し、よろしいですか?」

「はい、大丈夫です」


 サラさんは俺の顔を見るが、顔を赤くしてそらしてしまう。そこからチラチラと俺の方を見てくるが、すぐに顔をそらすを繰り返している。また言いにくいことなのだろうか。それにしても一向に言い出そうとしない。


「早く言いなさい。こっちは暇じゃないのよ」

「ご、ごめんなさい! こういうことは初めてで、アユムさんの顔を見ていると頭が真っ白になってしまうのですッ!」


 サラさんの態度に少し腹が立ったフローラさまがサラさんに発破をかけるが、サラさんは恥ずかしくて話せれないようだ。・・・・・・照れているサラさんも、可愛いな。そんなことを思っていると、俺の首はまたしても無理やり向きを変えられた。


「いっ!」

「また私以外に見惚れているところだったでしょう? そういう時は私の顔を見なさい。私以外の女で見惚れることは許さないわ」

「も、申し訳ございません」


 どうしてフローラさまにはすぐ俺の考えていることが分かるのだろうか。そして、フローラさまの態度が優しくて戦慄しているんだが。いつもなら俺の足を踏んでこられるはずだが、それがなく、フローラさまの顔を赤くしてむくれている姿に、ドキッとしてしまう。こちらの方が何倍も良い。狂わされるのは確かだけど。


「いつかは私以外を気にも留めないようにしてあげるから、覚悟しておきなさい」

「・・・・・・お手柔らかにお願いします」


 何だか、前のフローラさまは余裕がない感じだったけれど、今のフローラさまは余裕がある感じだからフローラさまの魅力が増している気がする。・・・・・・ハァ、俺も覚悟を決めないとあきれられて捨てられそうだ。


 結局、サラさんはその場で何も言えずに学園に入り寮へと向かった。寮に向かっている間、フローラさまはサラさんと何かこそこそと話しておられ、ルネさまとニコレットさんも二人で俺に聞こえないように話していた。そしてハブられた俺とスアレム、ではなくブリジットの二人で並んで歩いていた。


「アユム、今日は寮に荷物を置きに行ってからどうするつもりですか?」

「今日はラフォンさんに挨拶しに行くくらいだな。どうしたんだ?」

「少し時間をいただけないかと思っていましたが、どうですか?」

「フローラさまが何もないのなら、俺は大丈夫だ。買い物でもするつもりなのか?」

「そんな感じです。フローラさまに確認しておきますね」

「あぁ、分かった。それにしても、スアレムから買い物のお誘いとは珍しいこともあるものだ」


 俺が素朴な疑問を呟くと、スアレムは俺の方を向いて少しむくれた顔をしている。・・・・・・あっ、本当に間違えた。


「ブリジットだったな。ごめん、癖でスアレムと呼んでしまった」

「・・・・・・良いですよ、わざとじゃないのなら。それよりもお買い物の件ですが、単純にアユムと買い物に行きたかったではダメですか?」

「ダメではない。ブリジットとは、仕事仲間という感覚しかなかったから、意外だと思ったんだ」

「そこですよ、私が危惧している点は」


 俺の言葉に賛同するかのようにブリジットは俺の顔に自身の顔を近づけてきた。近いから一歩ブリジットから離れる。危惧しているって、どういうことだよ。こいつは何を相手に戦っているんだよ。


「危惧している? どういうことだ?」

「良いですか? アユムは私のことを仕事仲間と感じています」

「あぁ、そうだ。大体そんな感じだ」

「なら、私の姉はどうなのですか?」

「・・・・・・ニコレットさんは、シャロン家に来てから仕事面でも私的な面でも面倒になったから、仕事仲間という意識はなかった」

「姉だけそういう扱いで、私は仕事仲間とは、不公平だとは思いませんか?」


 またブリジットが近づいてきた分だけ、俺はブリジットから離れる。何だか無表情ながらも熱くなってきているのだろうか。こんなにも迫ってきているブリジットは初めて見る。不公平とはどういうことだよ。どこをどう思って不公平だと感じているんだ。


「いや、意味が分からない。説明してくれ」

「分かりました、説明しましょう。姉とアユムは仕事仲間だけではなく、恋愛感情を抱くほどに仲が良くなっています。フローラさまも主従関係を飛び越えた関係となろうとしています。ルネさまは、ルネさまはそういうことです」


 一瞬だけブリジットの視線がルネさまがいる方向に向いた気がした。俺もルネさまの方を向くが、こちらに笑顔を向けてくれた。どうしてルネさまだけ誤魔化したのだろうか。


「私だけ、シャロン家の中で仕事面以外で一番アユムと仲が悪いのではないでしょうかと言う問題です」

「そうか? 別にそんなことは思わないが。それに敬語を使っていないのはブリジットだけだから、その点から言えば、ブリジットが一番心を許しているのかもしれない」

「たったそれだけですよ。確かに私だけが敬語ではないのは嬉しいことですが、私もアユムともっと仲良くなりたいのです」

「どうしてだ?」

「・・・・・・そ、それは」


 俺がブリジットに仲良くなりたい理由を聞いたところ、ブリジットはその質問に固まっているようであった。どうしてそこで固まる。それは俺とは仲良くなりたい理由がないからだろうか。それは、悲しいことだ。ブリジットは口をパクパクさせて何かを言おうとしている模様だ。


「そ、それは・・・・・・」

「それは?」

「それは、アユムと一緒に薄い本を読んでもらうためですッ。仲良くなれば一緒に読んでくれますよね?」

「いや、仲良くなったからと言って、どうして男同士の本を読まないといけない」

「そ、そうですか? ・・・・・・ハァ」


 ブリジットはなぜかため息を吐いた。もしかして俺が何かしたのかと思い、周りに確認を取ろうとすると、フローラさまとニコレットさんは呆れた視線をこちらに向けて、ルネさまとサラさんは同情の視線を送っている。・・・・・・これは、俺への視線じゃない。ブリジットに向けての視線だな。良かった、俺のせいではないらしい。


 寮へと向かう道中では、終始ブリジットは落ち込んだ調子で寮へと向かったのであった。俺は最後まで説明されていないから、もやもやとしている。誰かこのもやもやを払ってくれ。

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

評価・感想はいつでも待ってます。よければお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ