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37:騎士とニース王国。

連日投稿三十七日目! 少し長くなりました!

 俺は目の前で腰を抜かせている男に剣先を向け、暴力と恐怖をもってして質問に答えさせる。さっきフローラさまにしようとしたことは、騎士の俺にとっては万死に値する。ただ殺すだけでは物足りない。拷問をかけたいくらいだが、フローラさまがいる手前だ。そんなことはできない。


「一つ目の質問だ。お前はどこに所属している人間だ?」

「に、ニース王国だ! 俺はニース王国に所属している戦闘部隊の隊員だ」

「戦闘部隊の、隊員ねぇ?」


 俺はその腰抜けの姿を見て、どう見ても隊員ではないと思ったが、今はそんなことはどうでも良い。これでニース王国が裏で糸を引いていることが分かった。まさか、こいつが嘘を言っているとは思えないが、少しの可能性も見落とさないようにしなければならない。


「それじゃあ、今回の件はニースが起こしたってことか? それに誰がどんな目的で起こしたんだ?」

「た、確かに、ニース王国が今回の件の裏にいる。・・・・・・だけど、ニース王国の中でアンジェ王国を滅ぼそうとしている人間たちが起こしたことだ。第二王女が襲われた件でニース王国の王女さまはアンジェ王国に宣戦布告する真似をするつもりはないと言っていた」

「やはりか、そんな国を挙げて戦争をするつもりなのは一部の人間か。・・・・・・うん? 第二王女?」


 確か、大公の一人娘に襲われたのは第二王子であったはず。なのにこいつは第二王女と答えた。もしかしたら聞き間違いなのか? それとも、本当に第二王女なのだろうか。


「今、第二王女と言ったか?」

「えっ? あ、あぁ、第二王女と言った。第二王女が襲われて帰ってきたと聞いている」

「第二王子じゃないのか?」

「だ、第二王子など知らない。そ、そもそも、ニース王国に、王子はいない」


 これは、ますます分からなくなってきた。えっ? つまり第二王子だと思っていたお方は、第二王女であったから、第二王女は第二王子として変装してアンジェ王国に来ていたということになるのか。どうしてそんなことをしているのかが、全く分からない。


「それで、誰がどんな目的でこの騒動を起こしたんだ?」

「騒動を起こしたのは、魔物研究部門主任兼戦闘部門隊長・サムソン・ヴォーブルゴワン。北の大陸の全領土をニース王国が支配することを望んでいる男だ」


 魔物研究部門主任兼戦闘部門隊長か。頭が良くて戦闘力が高いのに、人をないがしろにする天才によくあるタイプか。どうせ直接会ってみれば、テンプレ通りで納得してしまう奴なのだろう。だからと言って、人をないがしろにして良い理由にはならない。


「ゴブリンキングに似ている魔物や紫色のドラゴンも、そいつが作り出したのか?」

「まさか、あいつらを見てここにいるのか⁉」

「何を驚くことがあるんだ? 俺はあいつらを倒したからここにいる。もれなくここにいる魔物をすべて処理するから安心すると良い」

「・・・・・・うそだろ、あんな化け物たちを、一人で。それはあの人が恐れるわけだ」

「答えるのか? 答えないのか?」

「こ、答える! 少し考え事していただけだ!」

「お前に考える時間を与えるほど暇ではない。一刻も早くこの状況を解消したいんだ。だから反射で答えろ」

「わ、分かっている」


 俺は目の前の男を急かす。そうしなければ、魔物がシャロン領の方に侵攻してきている。手っ取り早くこいつから情報を取り出して、フローラさまを安全な場所に送り届けてこいつらを始末しなければならない。それがランベールさまとの誓いだ。


「あの改造された魔物たちは、ヴォーブルゴワンが作り出した人造魔物だ。ネオ・ゴブリンキングの場合はゴブリンキングに強化スキルや知性のスキルを与えることで、戦闘力を上げていた。他にもポイズン・ドラゴンもスキルを多数詰め込み、支配していた」

「・・・・・・それをやったのが、ヴォーブルゴワンということなのか?」

「あぁ、そうだ。あの人は魔物の改造を行うことができる特殊なスキルを持っている。人間での改造は極力抑え、害のある魔物を実験対象として今のように戦力を増加させている」

「その特殊なスキルは何だ?」

「それは――」


 目の前の男がヴォーブルゴワンのスキルについて喋りだそうとした時に、何もない空から突然気配が現れ、そこから何か攻撃してきたのが感知できた。俺が上を見上げると、ここら一帯を呑み込むほどの極大の光線みたいな攻撃がこちらに迫っていた。こいつの口を封じるために俺たち共々消すというわけか。ふざけた真似をしてくれる。


「う、うわあぁぁぁっ! 死ぬぅぅぅっ!」

「少し黙っていろ」


 男が叫んでいることに耳障りと思いながら、神器クラウ・ソラスから、一部だけ魔力武装した騎士に相応しい大きな盾を出現させる。そして極大の光線に盾を向けて、≪絶対防御≫のスキルを使う。スキルを使うと俺とフローラさまにアンヴァル、ついでに今口を閉じてもらっては困る男の、この場にいる全員の上に≪絶対防御≫によって出現させた透明な大きな盾を展開する。


 大きな透明な盾と極大の光線は衝突している。こちらが負けそうになることはなく、光線の方が段々と威力を減少させている。これくらいの威力の攻撃なら、≪絶対防御≫に傷をつけることすら敵わない。そもそも≪絶対防御≫を破壊できる生物はこの世にいないと思っている。神か何かなら知らないけど。


「おい、死にたくなければさっさと話せ」

「はぁっ⁉ こんな状況で話せるかよ!」

「それならお前をこの盾の中から追い出すだけだ」

「ッ! ・・・・・・どうして俺がこんな目に」

「それが分からないのなら、一度死んでみるか? お前が俺の主で大切な人に傷つけようとしたからだ。今までに同じようなことをやったことがあるんじゃないのか? やったことがあるのに、〝どうして〟とまだ言うのなら、俺はお前を助けてやれない。すべてはお前の自業自得だ」


 男は涙目になりながら俺に睨めつけて歯ぎしりをしている。この顔はどうしようもない人間の顔だろうな。何も悪いとは思っていない。こんなクズから話を聞かないといけないとなると、どうでもよくなった。ニース王国が敵だと分かった時点で、もう話を聞く必要はない。


 そして光線が消えたと思ったら、また次の極大の光線が放たれ、今度は複数の光線が俺たちの元へと放たれている。いくつ放たれても一緒で、俺は≪絶対防御≫を展開した状態で、今度こそ男に話しを聞き出そうとする。だけど、男の様子がおかしいことに気が付いた。


「ち、違う・・・・・・ッ、俺は何も喋っていない! ほ、本当だ! 信じてくれ!」


 男は頭を抱えながら一人で誰かと話しているように見える。念話か何かの類のスキルで話しているのだろうと思う。こいつが精神を病んで一人で話しているとか、俺の知らぬ何かがあるのなら、俺はどうしようもないが、念話の類だろう。


「う、裏切っていない! ・・・・・・そ、それは、生きるためには仕方がなかったんだ!」

「おい、誰と話しているんだ?」


 俺が話しかけても、男はこちらに見向きもせずに大量の汗をかき歯をカチカチと鳴らしながら震えている。これは本格的にやばいのだろう。こいつを助けたのだから、もう少し情報を吐き出して死んでほしい。だが、遠隔操作できるのなら、こいつを一人だけ殺すことは可能なのではないだろうか。


 今は俺たちに極体の光線を大量に降り注いでいるが、これで俺の手をふさいでいると考えると、次に殺すのは情報を渡した裏切り者だろう。そう考えて極大の光線の他にも、周りに注意深く観察する。その間にも極大の光線が威力を増しているが、俺には全く通じていない。


 それにしても、どうしてあんなに真上から空間の歪みを生み出して光線を放出しているのだろうか。それだと威力を完全に俺たちに与えることができない。その疑問が頭によぎっていると、ここら一帯で感じていた不思議な感覚が突如として消えた。・・・・・・不思議な感じと言えば、≪感知≫や≪騎士の誓い≫が使えない時に感じていた雰囲気。


 どうして今の段階で消した? 俺に効かないと分かったからか? もし術者自身もスキルが使えないという制約があるのなら、極大の光線を放つ時に消しているはずだ。・・・・・・となれば、裏切り者のあいつを処理するために、今結界か何かを消したのか?


「・・・・・・ッ! 来た」


 俺が予想していた通りに、今も頭を抱えている男の近くに空間の歪みが出現し、剣先が出てきているのが見える。これくらいの距離なら、極大光線を≪裂空≫と≪剛力無双≫の合わせ技で撃っているところまで切り裂いて、男を助けることができる、そう思ったが、それを見越したかのように、フローラさまの背後にも空間の歪みが生まれている。


 学園の侵入してきた時のリーダーの女を思い出す。これでフローラさまの方を助けて、男の方は見逃せと言っているのか? こちらの選択肢を消して、思い通りに動かされていることに気に食わないが、今はフローラさまを助ける方が先だ。


「≪裂空・剛≫」


 盾で光線を少し押し返したところで、クラウ・ソラスで≪裂空・剛≫を発動させる。飛ぶ斬撃は極大光線が放たれている場所に当たり、極大光線はこれ以上撃たれなくなった。だが、空間の歪みは消せないでいた。だがこういう時に、≪断絶≫がある。


 上の歪みはこの際無視しておこう。まずはフローラさまの近くに向かい、剣先が出ている歪んでいる空間に狙いを定め、スキル≪断絶≫を放った。この≪断絶≫は、通常では斬れない今回のような歪んだ空間や目に見えない魔力のパスを断ち斬ることができる。フローラさまの元に出ていた空間の歪みは、俺の≪断絶≫により消え去った。


 残りの男の方に行こうとしたが、こちらは間に合わず心臓を貫かれている最中であった。フローラさまと男の両方を助けようとすれば、助けることができたが、男を助ける価値が見出せなかったためフローラさまだけを助けることにした。


「がぁ・・・・・・、た、たす、け、て」


 男は血濡れた手でこちらに助けてもらおうと手を伸ばしている。俺はフローラさまにした、未遂であるがフローラさまを襲おうとしていた件があるから、ただゴミが転がっているようにしか見えない。フローラさまも汚らわしいものを見る目で見ている。そんな目で見られながら、男は死んでいった。


「・・・・・・行きましょう、フローラさま。アンヴァル、歩けるか?」

「えぇ、そうね。・・・・・・行くと言っても、どこに行くの?」


 今のところは攻撃されないとは思うが、ここは敵のテリトリーであるから、いつどこからでも攻撃が来ても対応できるくらいに臨戦態勢を取っている状態で、アンヴァルの様子を見る。アンヴァルは少し回復したようで、立つことはできるがこの状態では走れないだろう。そのアンヴァルの状態を見て、フローラさまの問いかけに答える。


「今はシャロン領に戻りましょう。攻めてきたのが一部とは言え、ニース王国なのですから、ラフォンさんに知らせる必要があります」

「・・・・・・そうね。それよりも、ここら辺には魔物がたくさんいるの?」

「はい、たくさんいます」

「それはどれくらいなの? シャロン家を余裕で潰せるくらいの魔物の数なの?」

「はい、余裕で潰せます。ここら一帯には魔物が張り巡らされています。それこそ、隙間がないほどに。たぶん何も準備をしていない国を滅ぼせるくらいに数が多いです」

「そう、そうなの。・・・・・・シャロン家が危険に晒されているのだから、そんな危険な場所であってもアユムは行くのでしょう?」


 俺は無言で頷き、フローラさまとアンヴァルの手を引いて進み始める。ここで止まっていてはまた囲まれてしまうだろう。そうなる前に何としてもフローラさまを安全な場所に送り届けたい。俺と一緒にいた方が、大体の場合では安全であろう。だけど、これは例外だ。戦場に大切な人を巻き込めるわけがない。シャロン家に到着したら、まずランベールさまに報告及びラフォンさんに報告。


 もしかしたらラフォンさんはもうすでに知っているから、何かしてくれるかもしれないが、俺は前もって戦争になればシャロン家をよろしくお願いしますと言っている。それを了承してくれるかは分からないが、ニース王国と事を構えるよりかはマシだろう。


「ねぇ、どうしてもアユムが行かないといけないの?」

「はい、その通りでございます。自分しか侵攻を止めるものはいません」

「そ、それでも、シャロン家の全員で逃げれば、・・・・・・アユムは戦わなくていいじゃない! もしかしたら死ぬかもしれないのよ⁉」

「それでもです。それが自分がするべきことですから。それに、フローラさまは何か勘違いをしておられますよ?」

「・・・・・・勘違いって?」

「自分はこの戦いで死ぬつもりはありません。自分は勝算があるから、戦いに向かうのであって、守るために死にに行くつもりは毛頭あるわけがないです。フローラさまと向き合っていない状態で死ぬことなんてできませんよ」


 俺がそう言うと、フローラさまは驚いた表情をしたが、少し俯いてその表情が伺えなかった。しかし、すぐに顔を上げて覚悟を決めた表情をしているようであった。


「アユムがそこまで言うのなら、私は止めないわ。騎士が生きて帰ると言っているのだから、主の私が信じないで誰が信じるという話よ」

「ありがとうございます」


 フローラさまから許可をもらえて良かった。これでシャロン家の避難さえ完了すれば、心おきなく戦場に向かうことができる。ラフォンさんがすぐに来てくれれば俺は安心するのだが、さすがにそうは上手く行かない・・・・・・か?


 ラフォンさんのことを考えていると、遠くの方から猛スピードでこちらに向かってくる感じたことのある気配があった。一瞬だけ幻覚か何かかと思ったが、そうではなかった。間違いなくラフォンさんの気配があり、こちらに向かってきているのが分かる。


 すぐにラフォンさんの姿が見え、ラフォンさんもこちらの姿が見えると安堵した表情を浮かべている。俺も今この状況でラフォンさんが来てくれて非常に助かった。これでシャロン家の方は安心して任せることができるだろう。


「ラフォンさん、良いところに来てくれました」

「良いところも何もないだろう。お前がこの手紙を送ってきたから急いで王に報告してこちらに来たぞ」


 ラフォンさんの手には、俺がラフォンさんに向けて送った手紙があった。良かった、ラフォンさんにちゃんと届いていたようだ。だが、それでここに急いでくる原因になるのか?


「それを読んで、どうして急いできたのですか?」

「当たり前だろうが! 一人で国を相手にするなど、正気の沙汰ではないだろうが。死ぬ気か?」


 ラフォンさんは馬から降りて俺の胸倉をつかんできて、俺に怒鳴りつけてきた。・・・・・・もしかしなくても、俺の身を心配してここまで急いできてくれたのか?


「死ぬ気はありません。自分がやれることをやろうとするだけです」

「一国を相手にして、死ぬことがか?」

「ですから、死ぬつもりはありません」

「お前が死ぬつもりがなくても、一人の人間が国一つを相手にするのなら、死ぬことくらい分かるだろう」

「絶対に死にません。自分の実力は自分の師匠であるラフォンさんが一番よく分かっているじゃないですか。それに万全の状態ですので、絶対に生きて帰ります」

「お前の実力は分かっているが・・・・・・、一国が相手なんだぞ? それに敵の総戦力が分からない今では、危険すぎる」


 俺とラフォンさんの言い合いが平行線になりつつあった時に、忘れた頃にやってきた最速を誇るジェット・クロウが俺の元に戻ってきた。ジェット・クロウは俺の肩に乗ってきて、少し疲れたように息切れを起こしているようであった。


「・・・・・・これは、ジェット・クロウか?」

「はい、そうです。俺が呼び出した魔物で、こいつにはニース王国を調査させておきました」

『てぇへんだ! てぇへんだ! ニース王国の兵士たちが王の命令により今まさに侵攻してきてやがんぞ!』


 ジェット・クロウの言葉に、この場にいる全員が驚いた。この魔物の群れがある状態で、ニース王国の兵士が、王の命令で侵攻してきているというのか? そんなふざけた状況があってたまるか。


「予定より早すぎるぞ! ・・・・・・それに、何だここは。魔物の気配がそこら中にするぞ。しかも少しだけ妙な気配の魔物ばかりだ」

「それは、ニース王国がすでに送り込んでいた改造された魔物です。ゴブリンキングやドラゴンが存在しているので、魔物だけでも厄介と言えるでしょう」

「・・・・・・それなら、なおさらアユムだけではどうにもならないだろう。本当に死ぬぞ? ≪順応≫があったとしても、順応しきれずに死んでしまう。戦争はそんな生易しいものではない。今すぐにシャロン家と共に逃げるぞ」


 ラフォンさんの意見は全く変わらないようで、俺を行かせようとはしてくれない。こんな場所にまさかの障害があったとは思わなかった。とりあえず今はジェット・クロウにスキルの中に戻っておいてもらい、ラフォンさんの説得を試みようとする。しようとするが、敵さんは待ってくれないようであった。


「があぁぁっ!」

「シャアァァッ!」


 スリムで筋肉質なクマと、人間を丸呑みにできるほどの身体の大きさを持つ蛇が俺たちの方に襲ってきた。俺はすぐにクラウ・ソラスで切り裂き、次の戦闘に備える。ラフォンさんと話していたおかげで、魔物たちがこちらへと集結しているのが分かる。数で押しつぶすつもりか。


「アユム、ここは私がやる。だからお前は主と共にシャロン家に戻って避難しておけ。私がここで食い止めておくうちに」


 ラフォンさんが前に出て魔物たちと戦おうとしている。だが、悪いがそれだけは譲れない。ラフォンさんが強いのは知っているが、俺より強いわけではない。総合的に考えれば、俺の方が強いだろう。こと、魔物や遠慮しなくていい敵でなら、俺の方が火力や速さ、硬さ、体力が持つ。


 俺はそれを示すために、≪剛力無双≫と≪神速無双≫をいつものごとく限界の四割まで引き出して、周りにいた魔物たちを≪紅舞の君主≫ですべての命を絶った。これにはラフォンさんも見えなかったようで、周りを見て驚いている。


「これで、自分の方が残る方が良いということが証明できましたか? ラフォンさんはフローラさまをお願いします」

「し、しかし、アユムはまだ将来がある若者だろう!」

「年で言えば、ラフォンさんも変わらないじゃないですか。それよりも、ここで俺と言い合っているより、シャロン家の人間が逃げ遅れないようにして、アンジェ王国からの援軍を呼んでもらった方がありがたいです。自分は〝マジェスティ・ロードパラディン〟になって、自分の欲望を叶えるまでは死ぬつもりがありませんから」


 俺の言葉を聞いたラフォンさんは一瞬だけ迷った表情をしたが、すぐにいつも通りの勇ましい表情になり、フローラさまをお姫様抱っこしてラフォンさんの馬に乗せた。


「分かった。シャロン家のことは任せろ。すぐにアンジェ王国から援軍が来るからそれまで耐えろ」

「ありがとうございます」

「アンヴァル、行けるか?」


 さっきまで元気がなかったアンヴァルであったが、いいタイミングで元気になってくれたようだ。万全に走れるということを俺たちに訴えかけている。


「じゃあ、私たちはこれで行く。くれぐれも死ぬなよ」

「何度言われなくても分かっています」


 心配そうな目でこちらを見てきているラフォンさんが最後の小言のように、俺に言ってきた。そしてラフォンさんの馬に乗っているフローラさまは、俺を真っすぐ見つめてきて、言葉を放った。


「絶対に生きて帰りなさい。このまま何もアユムのことが分からないままなんて許さないし、死ぬのなら私の元で死になさい」

「承知しました」


 ラフォンさんとフローラさまを乗せたラフォンさんの馬と、アンヴァルはシャロン家に向けて走り出した。俺はそれを見えなくなるまで見送り、さっきからこちらの様子を見ている魔物たちの方を向く。正直、こいつらに負ける気がしない。どれだけ人造魔物だろうと兵士だろうと、俺が斬る。

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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