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35:騎士と人造魔物。②

連日投稿のはず! ちょっと自分の中でこの作品を続けて、人気が出るのかという葛藤がありまして、作品を作るのをあきらめかけていました。しかし、やはりやるところまでやらなければ、この作品を作った過去の自分を否定してしまいますので、連日投稿を続けようと思いました。

 俺の言葉がもうすでに分かっていないのか分からないゴブリンキングが、俺の言葉を無視して俺に剣を振り下ろしてきた。その無視が否定の無視なのか分かっていない態度なのかは分からないが、俺はゴブリンキングを殺すことを決め、剣を神器クラウ・ソラスで受け止める。


 怒りに身を任している剣なため、先ほどとは打って変わり、力が分散してさっきの攻撃より攻撃力がかなり下がっている。分かり切っていることであったが、やはり魔物なのだろうか。人間でも冷静さを失えば、力の使い方を間違えることがあるがな。


 俺はクラウ・ソラスでゴブリンキングの剣を弾き飛ばし、再びゴブリンキングの胴体を真っ二つにしようとする。だが、懲りずにゴブリンで防ごうとするゴブリンキングであるが、その手にはもう乗らない。剣を振るっている途中で向かってきているゴブリンに≪一閃≫を放ち、殺した。一閃の特徴は、どんな場所からでもどんな位置にでも放てる。それは、どんな体勢でも問題ない。熟練度はそれなりに必要だけどな。


「これで、終わりだ」


 俺とゴブリンキングは、もはや誰も守ってくれる位置と距離にではなく、ゴブリンキングはこのまま斬られるしかなかった。俺は油断せずに勝利を確信しかけたが、ゴブリンキングの表情を見て勝利の確信をやめた。さっきまで怒りの表情であったにもかかわらず、今は何かを狙って笑っている顔になっている。


 ここで何かをしてくると思って逃げていては、時間がかかる。何より、それを恐れて逃げていては勝てない。そう思った俺はそのままゴブリンキングの身体を真っ二つに切り裂いた。ゴブリンキングは驚いた表情をしながら胴体を真っ二つにされてた。すぐに何も起こらなかったため、ただのハッタリかと思ったが、そうではなかった。


 ゴブリンキングの真っ二つにされた身体の中から、真黒な泥があふれ出てきた。すぐさまゴブリンキングの身体から離れて、様子を見る。ゴブリンキングは身体を真っ二つにされている状態で地面に倒れているが、真黒な泥は未だに流れ出ている。


 そして、近くにいたゴブリンがその泥に触れると、泥が生き物のようにゴブリンに纏わりつき、ゴブリンは苦しんでいるが、しばらくすると動かなくなり直立している。動き出したかと思えば、ゴブリンの身体は泥を吸収して大きくなり、さっき倒したはずのゴブリンキングと全く同じ顔と身体つきになった。


 さっきまで生きていた全快のゴブリンキングと、全く気配が一緒になったゴブリンに驚いてしまった。ゴブリンをゴブリンキングにした泥は、次々に他のゴブリンたちを呑み込み続け、ゴブリンキングを量産している。俺はそれを防ぐために本体のゴブリンキングから出ている泥に、走り出した。


 ゴブリンキングの死体から出ている泥に向け、≪剛力無双≫で強化している腕力で剣を振るった。ゴブリンキングの死体とそこから出ている泥は剣圧で消し飛ばすことができ、これでゴブリンキングが量産されることはなくなったと思った。


「があぁぁぁっ! あっ!」

「ぐぎゃぁあぁ!」

「ぐぎゃがぎゃぁ!」


 そう思っていたが、どうやら違うようだ。ゴブリンキングになった元ゴブリンたちは自害し始めた。そしてその身体から次々に泥があふれ出していき、他のゴブリンがその泥に触れるとゴブリンキングになっていった。つまり、ゴブリンだった魔物たちは、全個体がゴブリンキングになったわけだ。Aランクの魔物がこれだけ集まっていると、Sランクと呼んでも問題ないくらいだ。


「・・・・・・ゴブリンキングだけが特別だと思ったが、全個体が同一個体だったのか」


 俺がここに残っていて良かった。残っていなければ、ゴブリンキングが量産されているところであった。いや、ゴブリンキングが量産できるのなら、最初から全個体をゴブリンキングにしていれば良かったものを。ゴブリンキングにするには何か条件があるのかもしれないが、全個体がゴブリンキングになった今、それを考えることは意味がなくなった。


「どれだけゴブリンキングが居ようと、俺には勝てないぞ? ・・・・・・そう言えば、ゴブリンキングになったのなら、言葉は分かるのか?」


 ゴブリンからゴブリンキングになった個体たちは、落ち着いた雰囲気であったのに、俺が問いかけた途端に怒りの血相を現した。そして各々に恨みがこもった声を俺に向けてきた。


「オマエハ、コロス」

「オレタチハ、ゼンブデヒトツ。ソレラヲコロシタオマエヲユルサナイ」

「コロス、コロスッ!」

「アァ、ゼッタイニ!」


 全部で一つ? ゴブリンキングとゴブリンたちは元々一つだったってことか? まぁ、今はそんなことはどうでも良いんだ。こいつらを殺すことだけを考える。それにこいつらだけに構ってはいられない。他にも俺の場所を囲んでくる魔物が次々に来ている。ここでこいつらを殺し、フローラさまを安心させることが俺のやるべきことだ。


「悪いが、お前らがどう思っていも関係ない。ここでお前らは死ぬのだから」


 俺は≪剛力無双≫と≪神速無双≫の両方を四割で発動させる。さらに、≪紅舞の君主≫を発動させる準備をする。≪感知≫で敵がどれだけいるかを確認し、≪紅舞の君主≫が使いやすい環境を整える。そして、一体のゴブリンキングがこちらに動き出そうとしていることを確認した俺は、複数のゴブリンキングに向けて≪紅舞の君主≫を発動させた。


 すべての生物や木々、空気までもが止まっているように錯覚している空間で、俺だけが一人だけ動けている感覚に陥っている。俺は走りゴブリンキングの首を一体ずつ確実に斬り落としていく。だが、俺が斬ってしばらくしてもゴブリンキングの頭が落ちることはなく、ただ止まっているだけであった。


 だが俺はそんなことを気にせずに、次々に踊るようにすべてのゴブリンキングの首を斬った。そして≪紅舞の君主≫が発動し終えるとともに、ゴブリンキング全個体の首が、同時に地面に落ちた。どのゴブリンキングの表情を見ても、何をされたのか分からないような表情であった。


 スキルの合わせ技で、≪剛力無双≫と≪神速無双≫、≪紅舞の君主≫の三つを合わせたことはなかったから成功するかどうか自信がなかった。自信がなかったとは言っても、成功すると自覚していた。そもそも≪紅舞の君主≫自体が早いスキルであるから、前の二つを組み合わせる必要はなかった。今は急いでいるから組み合わせたが。


「・・・・・・何だ? これは」


 次に倒すべき魔物を≪感知≫で探っていると、ある異変に気が付いた。発動するはずの≪感知≫が発動していない。こんなことは初めてだ。身体に異変がないのにもかかわらず、何も気配を感じ取れない。これがもし敵の仕業なら、恐ろしいことだ。幸いなことに、他のスキルは発動する。・・・・・・いや、≪騎士の誓い≫が発動しない! これじゃあフローラさまの気配が分からないし、フローラさまの元に移動できない!


 くそっ、一体どうなっているんだ! 今はここら辺一体にいる魔物を駆逐することから始めないといけない。それだけは変わらない。だが、駆逐する速度はなるべく早くということだ。異常事態につき、命乞いをする魔物が居ても、殺さずにいることはできない。


 フローラさまが逃げて行った方向に走り始める。一方向だけは逃げ道を確保していないと、何が起こるか分からない以上万全じゃない状態で万全を整えておきたい。俺が最後に≪感知≫した魔物は、何の魔物かは分からなかったが、特に強くない魔物の気配があった。不慮の何かが起こらなければ良いと思っていたが、どうやらそうはいかないらしい。


「ぐるぅぅぅっ」

「・・・・・・俺を囲むには、随分と適正な評価をしているようだな」


 フローラさまが逃げた方向に走ると、俺の目の前には鋭い牙に鋭い爪、そして大きな羽に大きな尻尾を持っている大きな紫色の生き物、ドラゴンがそこにはいた。このドラゴンも見たことがない。しかし、ドラゴンという生き物はどれも等しく一定以上の強さを持っている。こいつが強いとも言えないし、弱いとも言えない。≪感知≫を持っていないから、何とも言えないが、歴戦の戦いでそこそこの強さだと言うことは理解できる。


 確かに俺を倒すためにはドラゴンを用意しないとならないだろうが、俺とフローラさまがここに来るのを決めたのは昨日だぞ? 俺を狙ったものではないだろう。・・・・・・もしや、ニース王国からの戦力がこれなのか? それなら笑えない。もう戦力が揃っているではないか。


「があぁぁぁっ!」


 本来知性を持ち合わせているはずの高位の魔物であるドラゴンであるが、そんな知性を持ち合わせている感じではなく、本能のまま俺に襲い掛かってきた。俺はこの紫色のドラゴンがどんな能力を持っているのか見当もつかないが、今は観察している場合ではない。俺はすぐに≪剛力無双≫と≪神速無双≫を限界の四割で発動させ、紫色のドラゴンにクラウ・ソラスで斬りかかった。


 紫色のドラゴンは斬りかかっている俺に向けて、口から紫色の霧を吐き出してきた。俺はその紫色の霧を一身に受けて、それが毒霧であることを理解した。紫色のドラゴンであるから、身体の色通りと言えば色通りだ。だが、俺には≪状態異常無効≫のスキルを持っているため、その毒霧は効かない。


 俺は構わずに毒霧に突っ込んでいき、クラウ・ソラスを振りかざした。紫色のドラゴンはその剣を避けようとするが、間に合わず俺の剣は紫色のドラゴンの右目を切り裂いた。紫色のドラゴンの反応速度が速かったから、首を斬り落とすまでには至らなかった。


「ぐ、ぎゃぁぁぁっ!」


 しかし、紫色のドラゴンには渾身の一撃だったようで後ろに下がりながら叫んでいる。それにしてもこの紫色のドラゴンは少し硬いな。硬さや攻撃力ではなく性能が特化したドラゴンかと思ったが、普通のドラゴンくらいに硬さがある。この紫色のドラゴンがここにいる時点で、こいつも人造魔物なのか? それは本当に笑えない。ドラゴン一体で国を半壊させることができるんだぞ。それに、さっきのゴブリンキングと合わせれば、もはや国を落とすことができる。


 ・・・・・・俺も、覚悟を決めないといけないな。これがもう自然発生したものではないことは明確だ。この≪感知≫が発動しない状態も含め、戦力以外にも戦術も揃っている。これを初手でやられれば、他の人間なら対応できないだろう。


「があぁぁぁっ!」


 俺が今後について考えていると、目の前の紫色のドラゴンが俺に向かって突っ込んできた。俺はクラウ・ソラスでその突進を受け止めた。そしてそのまま紫色のドラゴンの顔を斬ってやろうと思ったが、予想以上に硬いことに気が付いた。・・・・・・身体を強化する類のスキルか。さっきまでこんなに硬くなかったはずだ。ドラゴンであるならこのスキルを持っていても不思議ではない。


 そんな強化した紫色のドラゴンであるが、俺の前では何も意味をなさない。俺は紫色のドラゴンを真っ二つにするつもりで力を入れると、紫色のドラゴンの顔に俺の剣が入り始めた。それを確認した俺はこのまま一気に力を入れる。だが、その剣は空振りに終わり、俺の目の前から紫色のドラゴンが消えた。


 どこにいるのかと神経を研ぎ澄ませていると、上からこちらまで少し熱くなるほどの熱を感じた。上を見ると、紫色のドラゴンが空を飛んでおり、口から炎を吐き出そうとしている。こいつも転移系のスキルを持っているのか! そんなに簡単に手に入るようなスキルではないだろう。そんなに簡単に手に入っていれば、国に簡単に入り込めるということになる。治安が崩れるぞ。俺も≪空間移動≫を持っているが、戦闘に使えるスキルではないからうらやましい限りだ!


 紫色のドラゴンは高温の炎を放ってきたが、俺は剣圧で切り裂いた。そして空へと逃げられるのは面倒であるから、紫色のドラゴンが認識できないほどの速さで紫色のドラゴンより上へと飛び上がり、無防備な背中に乗った。俺が背中にいると分かったドラゴンは俺を振り落とそうとするが、その前に、二つの大きな翼を切り取ってやった。翼をなくしたドラゴンは地へと落ちて行く。俺はドラゴンから離れ、ドラゴンは地へと落下して砂埃が舞っている。


 これくらいでやられるはずがないと思っているから、油断せずにクラウ・ソラスを構え続ける。それにしても≪感知≫が使えないとこんなにも不便だったのか。・・・・・・もう少しで、≪感知≫が使えるようになるからな。できれば≪感知≫を≪順応≫させるのではなく、この状況に≪順応≫してもらいたいところだ。


 砂埃から出てきたドラゴンは、両翼を斬られて血だらけの状態であった。それでもドラゴンの目には戦う意志がみなぎっており、あきらめるつもりはないようであった。俺はそんな気高く生きているドラゴンを見て、最後まで戦うことにした。それがこのドラゴンにできる最後の誠意だ。


「ぐ・・・・・・、があああぁぁっ! があぁっ!」


 ドラゴンは俺に向けて全身全霊を込めて俺に突進してきた。俺は≪剛力無双≫と≪裂空≫の二つを組み合わせた≪裂空・剛≫をドラゴンが突進する前に放った。俺の技を喰らったドラゴンは、縦に身体が真っ二つになり、血があふれ出している。最後に見たドラゴンの顔は、少しだけ安堵した顔であったから、操られていたのかと思ってしまう。


 そんなことよりも、今は感知できない状況で敵を的確に倒す方法を・・・・・・探す必要はなくなった。俺の≪順応≫が発動し、≪感知≫だけが順応したようだ。できればこの状況に順応してほしかったが、今は贅沢を言っていられない。≪感知≫から超希少な≪完全把握≫に順応したスキルを使う。


 このスキルはどうやら、ありとあらゆる魔法やスキルの妨害を受けずに感知できるらしい。スキルの妨害で、認識を妨害するスキルがあったが、それも受けずに感知できるとは、ありがたい順応だ。俺はすぐに辺り一帯に≪完全把握≫を張り巡らせる。そうすると魔物は一直線に俺の方に来ているのが分かる。やはり俺が狙いなのか。


 そう思いながら、フローラさまがいるであろう場所に意識を向ける。・・・・・・ッ! 嘘だろ⁉ 敵は魔物だけじゃないのかよ。敵は人間でもいるのか。それはそうか、こいつらを操っているのは、人間か魔族だろうが、ここは人間領。フローラさまとその近くにいる敵が相対しているのが感じ取れた。それも敵はフローラさまより格上の相手だ。


 すぐにフローラさまの元へと向かおうとする。こういう時に≪騎士の誓い≫が使えれば、どれだけ良かったことか。今はないものねだりしても意味がない。そう思って、走り始めようとするが、俺の真上から何かが降ってくるのを感じ取った。


 俺は後方に飛んでそれを避ける。降ってきた何かは地面に着地すると砂埃が舞った。その一体だけではなく、俺を囲むように三方向にもその何かが降ってきた。砂埃が晴れた先を見ると、見たことのない大きさに驚いた。


「悪いが、ここから先には行かせないわ」


 薄い服を着ている女性の身体をしている巨人が四方に立っていた。どの女の巨人も、長い水色の髪をしており、今にも薄い服からはちきれんばかりの胸やお尻に目が行ってしまった。こんな奴らも手下にしているのかよ。


「いいや、行かせてもらう。この先には俺の命よりも大切な人がいるんだ」

「ふふふっ、私たちを見てもその態度とは、命知らずなのか、それ相応の実力の持ち主なのか。私たちが見定めてあげる!」


 そう言ってきた女性の巨人は俺に向かってきた。今はこんなことしている場合ではないのに、仕方がないか!

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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