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29:騎士と知らせ。

連日投稿二十九日目! 物語は加速していきます!

 結局あのまま、ニコレットさんの部屋で二人仲良く寝てしまったが、やましいことはしていない。ニコレットさんがここぞとばかりに普段の冷静な言動はどこにやらで抱き着いてきたが、俺は理性を保ち耐えきった。そしてそこから寝て見せたのだ。ニコレットさんの方は寝れなかったようだが、寝不足であろうと仕事モードに入ればいつものニコレットさんと変わりなかった。


「じゃあ、ここで分かれるぞ。フローラさまのことは頭の片隅に置いておいて、しっかりと仕事に励め」

「はい、分かっています。それでは、今日も一日頑張りましょう」

「あぁ、頑張ろう」


 俺とニコレットさんはそれぞれの主人の元へと向かい、俺はランディさまのお部屋へと足を運ぶ。その間に、フローラさまとどう向き合うかを考える。振ってしまった女性に、どう接すれば良いのか分からない。男女関係は一度も経験したことがないからな。もし、フローラさまが吹っ切れていて、俺のひどく当たられたらどうしようと考えてしまう。だが、その時は大人しく騎士をやめよう。フローラさまのことだから、案外吹っ切れているかもしれない。


 そんなことを思いながら歩くこと数分で、今一番会いたくない気配の二人と角で鉢合わせしそうなことに気が付いた。その二人は、もちろんフローラさまとスアレムだ。二人は並んで曲がり角から出てこようとしてきているのが気配で分かる。


 俺はどこかに隠れるところか逃げるところがないか探すが、そんなところは一切なく、間に合わずにフローラさまとスアレムが曲がり角からこちらの方向に歩いてきた。そんな二人と俺は目が合ってしまった。スアレムは至って普通であるが、フローラさまはまだ目を赤くしてお肌に艶がなかった。そして俺と目が合うとすぐに目をそらされた。その目には再び涙が浮かんでいる。


「おはようございます、フローラさま」


 至って普通のご挨拶をフローラさまに申し上げるが、フローラさまは何も反応を示さずにいた。そんなフローラさまを見ていたスアレムが、ため息を一つ吐いて俺に言葉を投げかけてきた。


「すみませんが、フローラさまと私は急いでいます。それではこれで」


 スアレムは言葉を言い終えると、素早く俺の横を通り抜けていく。そのスアレムに密着して、フローラさまも俺の横を素通りされて行った。・・・・・・まさか、ここまでとは思わなかった。目を合わさないのはまだしも、挨拶はおろか反応すらしてくれなかった。あのような状態のフローラさまと、向き合うことができるのだろうか。




 少しだけ気が重くなりながら、ランディさまを起こしに行き、ランディさまと共に食堂室へと向かった。今日も体調が悪いフローラさま抜きの朝食だとランベールさまは仰られた。さっき見かけたが、もしかして俺がいるから参加しないのだろうか。それなら俺が食堂室にいない方が良い。フローラさまが不参加になるのは間違っている。フローラさまの家なのだから。


 朝食を終えると、ランディさまはお勉強の時間に入る。いつも、午後までお勉強をして、そこから俺と遊ぶ約束をしている。今日もランディさまと約束をして、俺は屋敷に異変がないかを調査する仕事に取り掛かる。いつもなら、掃除を基本的にしているが、どこかにどんな罠が仕掛けられていてはいけないから、こうして異変を調査している。


 とは言え、今まで変わったことがなかった。だから気を抜いていいという問題ではないから、隅々まで屋敷を調べる。それこそネズミ一匹を逃がさないくらいに徹底的に。徹底的に屋敷を調べていると、ある廊下の窓の下に、赤い宝石が落ちていた。特に魔力を感じないから、これに何かあるわけではない。誰かが落としたのかもしれない。見たところ窓から侵入された痕跡はない、落とし物としてニコレットさんに渡しておこう。


 そんなこんなで、緩やかな一日を過ごすのも久しぶりだと感慨にふけっていたその時、俺の≪感知≫に数多の魔物の群れが反応した! 幸い一方向から来ているだけであるが、このままの速さで来れば十五分くらいでこの屋敷にたどり着く。俺は被害を出さないためにも、魔物の群れの処理に向かう。


 こんなことは初めてだ。そもそも俺の≪聖騎士≫スキルがあるから、魔物がこちらに来ないようになっているはずだ。それなのに、魔物が来た。考える可能性は、俺の≪聖騎士≫スキルが効かない魔物か、はたまた≪聖騎士≫スキルを無効化できる魔物たちなのか。前者であろうと後者であろうと、考えにくい。≪感知≫で魔物を探ったが、それほど強い気配を持っている魔物はいなかった。これくらいなら≪聖騎士≫スキルが効いても良いはずだ。それに、≪聖騎士≫スキルを無効化することは、俺以上の力を持っていなければ、それすらも効かない。


 ・・・・・・盗賊がここら辺に来ている件と、何か関係しているのだろうか。関係しているのなら、これほどの魔物の量を使役できる者が相手にいるということだ。骨が折れそうだ。


 一分もかからないうちに、魔物の群れが数秒後に通るであろう場所にたどり着いた。俺が向いている方向に、魔物の群れが目視できる。そこには〝ファイア・ウルフ〟や〝ホワイト・スネーク〟、〝クロス・タイガー〟などがいる。しかし、どれもランクが低い魔物であるから大したことではない。


 俺は神器クラウ・ソラスを装備し、魔物の群れに突っ込んだ。人間とは違い、容赦なく切り刻んでいく。しかし、斬っていく中で魔物の異変に気が付いた。魔物は魔物たちを斬っている敵である俺がいるのに、俺のことを見向きもせずに屋敷に進もうとしている。普通は敵が現れれば、そちらに攻撃してくるはずだ。


「・・・・・・≪一閃・狂乱≫」


 俺に見向きもしないのと数が多すぎるから、スキル≪一閃≫を使い敵を一掃しようとする。そこで、俺は目を疑う光景を目にしてしまう。どこに飛んでくるか分からない≪一閃≫をすべて受け止める、両手が鎌で頭がカマキリで他は人間であるカマキリと人間が融合したようなカマキリ男の魔物が現れたのだ。こいつの気配は何だ、姿通りに魔物と人間が合わさった気配をしているし、何よりいきなり現れた。それに俺の≪一閃≫を受け止めた。


「シャァァァッ!」


 カマキリ男は俺に鎌を振りかざして俺に襲い掛かってきた。俺は他の魔物の群れを倒す必要があるから、カマキリ男の鎌を斬り落とそうとするが、カマキリ男の鎌は想像以上に堅かった。俺とカマキリ男が拮抗している間に、他の魔物は屋敷に向かおうとする。だから、騎士が仲間の囮になるためのスキル、≪絶対権限・囮≫を発動する。


 そうすると、魔物の群れはようやく屋敷の方ではなく俺の方を向いてくれた。だが、俺の方にくることはなく魔物全体が困惑しているように見える。どういうことだ? 一体何が原因で魔物はこうなっているんだ? こんな現象は初めてだ。困惑しているということは、俺の命令と他の命令が混雑しているから、そうなっているのだろうか。俺のスキル≪絶対権限・囮≫と同等となると、相当なスキルだ。≪絶対権限・囮≫は騎士の囮スキルの中で最高ランクに当たるからな。


「ウッキイィィィィッ!」


 兎にも角にも、魔物が困惑している間に倒し切ろうと思っていたが、どこかからか猿のような鳴き声が聞こえてきた。カマキリ男と対峙しながら、そちらに目をやる。しかし聞こえた方向を見ても、猿のような姿の敵はいなかった。そこにいるのは、毛深く異常に上半身の筋肉だけが膨張している見たこともないゴリラ型の魔物だけであった。


「ウッキイィィィィィッ‼」

「お前かよ、紛らわしいな」


 ゴリラのようなのに、猿のような鳴き声をしている魔物。そもそも目の前にいるカマキリ男もそうだが、猿の鳴き声のゴリラも見たことがない魔物だ。カマキリ男に至っては、人間の部分がほぼ占めている。これは人間なのか? 魔物なのか? いや、魔物だ。人型の魔物はたくさんいる。


「キッ! キッ! キッ!」


 ゴリラの魔物はこちらをあざ笑うかのような鳴き声をしだし、ゴリラのように胸を両手で叩いて鈍い音を鳴らし始めた。その音は、上半身が膨れているからか分からないが、俺が想像しているゴリラの胸をたたく音とは違っていた。より太く、響いてくるものがあった。威嚇のつもりでやっているのかと思ったが、それは違うと瞬時に認識した。


「・・・・・・嘘だろ?」


 ゴリラの胸を叩く音で、困惑していた魔物たちが次々に屋敷に向かって動き始めたのだ。俺は慌てたが、すぐに落ち着き、どうするかを考える。まずは、目の前のカマキリ男を殺す。そのあとに魔物の群れを駆逐し、ゴリラも殺す。それでこの一件は解決だ。


 俺は少し強めに力を入れてカマキリ男の鎌を切り裂く。普通の状態だといつもより力を入れないといけないが、所詮はこの程度。≪一閃≫をすべて防いだのは驚いたが、≪一閃≫を防ぐ鎌の強度と反射神経だけが少し飛びぬけているだけで、どうということはない。


 ゴリラ以外の魔物の群れ全体を標的にし、≪紅舞の君主≫を発動させる。遠慮なく殺しても良い相手なら、このスキルを発動させて問題ない。人間相手だろうと、殺していると言っても良いくらいの傷を負わせているから、殺していると言っても良いだろう。


 スキル≪紅舞の君主≫を発動させ、一秒もかからないうちにゴリラ以外の魔物の首を斬り落とした。相手が集団であるときにこそ真価を発揮する≪紅舞の君主≫。しかもその威力は桁違いであるから、魔物が相手なら使いやすい。


「あとはお前だけだ」


 残ったゴリラのような魔物に切っ先を向ける。魔物であるから言葉を理解しているとは思えないが、一応そう言っておく。すると、ゴリラのような魔物は自身の胸板を思いっきり叩いて、大きな音を出して今度は威嚇してきているようであった。そしてゴリラのような魔物は、その大きな腕で殴りかかってきた。


 俺はすぐに後方へと飛んで避けるが、大きな腕が地面に衝突して地面は大きく割れた。さすが膨らんでいる大きな腕なだけはある。ゴリラの魔物は、後方に飛んで避けている俺に向けて追い打ちしてきた。だから俺はゴリラの攻撃してきている腕を斬り落とす。


「キ、キィィィィィィィッ⁉」


 ゴリラの魔物は腕を斬り落とされたことで、驚き斬られた部分を押さえてのたうち回っている。この見たこともない魔物を拘束して王都に連れて行けば、何か分かるかもしれないが、何せ距離がある。その間の危険と死亡するリスクを考えれば、生かすという選択肢はないのだろう。何より、言葉が通じないのなら生かしていても仕方がない。巣に帰るときに付いて行けば、アジトが分かるかもしれないが、そんなへまをする相手だろうか。


 結論は、この場で殺す。それしかない。俺は神器クラウ・ソラスをゴリラの魔物の首を狙って振りかざし、そのまま剣を振り下ろした。ゴリラの頭はそのまま地面に落ちていき、首からは血が噴き出している。しばらく身体が痙攣して動いていたが、次第に動かなくなった。


 俺は≪感知≫を使い他の魔物がいないかどうか確認するが、今は何も異常がないことを確認した。それにしても、このカマキリ男とゴリラ型の魔物は一体何だったのだろうか。見たこともない魔物であったが、何より気配と実力が合っていないのだ。これは非常にまずい事態になっている。


 相手の実力は気配を察知してある程度予測、そして初手で使う力を見定めるようにしているが、それができないとなると返り討ちにあう可能性が出てくる。必要以上の攻撃はしたくはないから、最小限の攻撃で片づけたいところだ。・・・・・・先の盗賊の件と言い、今回の件と言い、この領土で一体何が起こっているのだろうか。


「・・・・・・この先は、ニースか」


 魔物が来た方向には、アンジェ王国と同盟関係にあるニース王国だ。このシャロン領地はアンジェとニースの国境付近に位置している場所であるため、二つの国が会議をするときにしばしば場所指定されることがあるらしい。俺はその現場に立ち会ったことがないから分からないが。そして、五大陸あるうちの北の大陸に位置しているこの大地は、人間の領土以外の森などに多くの魔物がいることで有名だ。北の大地では魔物から国を守るために、同盟を結ぶと言っても過言ではないらしい。


 しかし、もし、この魔物たちがニース王国からの贈り物なら・・・・・・、いやそんなはずがない。これはテロリストか何かの仕業だ。国と国が争うなど、魔物を相手にしている時にしていいことではない。それに、もし国と国が争うことになれば、このシャロン領土は戦場になる。それだけは避けなければならない。仮定の話であるがな。


 俺はくだらない考えを頭の片隅に置いておき、魔物を剣に食らわせて屋敷の方に戻る。まだ屋敷の周辺を調査し終えていない。


「・・・・・・ふぅ、これは、何か起こるのか?」


 何か不自然な気配を感じ、足を止めてそちらを見つめるが、特にそこには何もなく不自然な気配も存在していなかった。だが、気のせいではなく確かにそこに存在していた。俺は一抹の不安を抱えながらも、屋敷へと戻った。フローラさまとの件で頭がいっぱいだというのに、今来なくても良いだろうが。




 屋敷に戻った俺は周辺の調査を始めるが、特に変わったことはなかった。先の魔物の件があるから、より丹念に調査したが、それでも何も痕跡は見つからなかった。何か手掛かりがあればいいと思っていたが、そうは上手くもいかないし、考えすぎか?


「あ?」


 面倒な件が起こることで、少し気が滅入っていた俺はふと空を見上げた。すると鳥が俺の上空で回りながら飛んでいるのが見えた。鳥が何か背負っているのが見える。俺は前に聞いたことがある通りに、手を上空に掲げて見せると、鳥は上空から急降下してきた。そして俺は腕を肩と平行に上げ、その腕に鳥が綺麗に衝撃もなく着地してきた。


 姿は至って普通の鳥であるが、背負っている縦長い箱で普通の鳥ではないと言える。俺に飛んできたということは、俺宛のものだと判断して箱を開けて中身を取り出す。箱の中身は巻物のようになっている紙だけが入っていた。その紙を開け放つ。紙には文字が記されており、手紙であった。それも俺宛に書かれていることが分かった。


 送り主は、ラフォンさんだった。鳥で手紙を送ってくるとは何事かと思いながら手紙を読み進めていく。読み進めていくにつれ、俺は冷や汗を流してしまうほどの内容であった。確かに、これは重要で、今すぐにでも知っておかないといけないことであった。ラフォンさんには後で感謝の言葉を述べておかないといけない。


 最悪の場合、俺が考えていたことが現実になるかもしれない。それほどの事実だ。・・・・・・あのクソ女が、いらないことしかしないな。


『大公ミッシェル・ユルティスの一人娘、ドゥニーズ・ユルティスさまが、ニース王国の第二王子に襲い掛かられた。第二王子はすぐにアンジェ王国からニース王国に帰国なされた。ニース王国から正式な文書は来ていないが、国際問題になることは確実。すぐにシャロン伯爵に伝えろ』

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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