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22:騎士と盗賊。

連日投稿二十二日目! 連日投稿三十日目が見えてきました!

 俺を抜きにして、俺が女性関係に疎いところを言い合いながら女性四人で盛り上がっている。それを馬車という個室でするのはやめてほしいし、あろうことか、俺が中央にいる状態だ。せめて端っこに移動したいが、そうはさせてくれないのがフローラさまだ。


 俺は諦めてその場にいることにして、何も考えずにいた。そうすることで自身の話が耳に入ってこないようにすることで、俺につけられた傷をえぐられないようにする。何だよ、名前を呼んでくれないだの、やるところまでやっているのに襲ってこないだの、一緒に寝たのに襲ってこないだの、相思相愛なのに告白してこないだの、と。


 俺は騎士なのだから、何かをするわけがないし、好きでもない男に襲われるなんてことはよした方が良いだろう。俺の首を狙っているのか? それに本当に俺のことを話しているのかとも思ってしまう。身に覚えがない話もあった。そして、四人が不満を言うたびに、他の三人がすごい反応をしている。ハァ、早くここから出たい。


 などと思っていると、森林の中を走っている最中に、先でこちらに敵意を向けているものがいることに気が付いた。こんな願いの叶い方はやめてほしいものだ。


「すみません、すぐに止まってください。緊急事態です」

「あぁ、はい。分かりました」


 俺は馬を操作している人に声をかけて、急いで止まってもらう。少し先なため、急いで止まる必要はなかったが、何かされて止まるよりかよっぽどいい。


「どうしたの? アユム。もしかして私たちの話を聞きたくなくなったの? 私はもう聞きたくないわよ。こんなにもあなたが身内にちょっかいをかけているとは思っていなかったから。怒りしかこみあげてこないわ」

「そんなことで馬車を止めません。いや、この場から逃げ出したいのは本音ですけど。それよりも、この先におそらく盗賊がいます」


 怒気を纏っているフローラさまに顔をそらしながら、要件を伝えた。


「そう、それならすぐに片付けてきなさい。この私の馬車を襲おうとする不届き者には、その考えごと後悔させてやりなさい」

「そこまでやるつもりはありませんが、適当に片付けておきます」

「アユム、私も行こう」

「いえ、ニコレットさんはスアレムと一緒にお嬢さまたちを護衛していてください。その方が自分も安心して戦えます」

「そうか、分かった。くれぐれも気を付けて片付けて来い」


 ニコレットさんの言葉に頷いて、馬車を降りて馬車の行く手に走って進む。手には神器クラウ・ソラスを装備して駆ける。


 それにしても、シャロン家から王都への道のりには獣や盗賊などが頻繁に出現している。獣などは何かの気候変動を察知して来るとかは分かるが、盗賊はそうもいかないだろう。まさかこの世界の盗賊は何かを察知する能力がたけているわけでもなし。・・・・・・盗賊に聞いてみるか。


 少し走ったところにある、変哲もない道で止まる。馬車が通る道の先を見ると、丈夫な糸が張ってある。そして周りには隠れていて姿は見えないが、うじゃうじゃと悪意と欲望の感情が渦巻いている連中がそこら中にいることが分かる。


「そこら辺にいるのは分かっている。さっさと出て来い」


 俺が来ても姿を見せない連中に、俺の方から声をかけた。すると素直に姿を現した。こんなにも素直に姿を現すのなら、俺が声をかける前に奇襲でもしてくればいいものを。いや、一部の連中は姿を見せずに奇襲しようと木の上で待機している奴らがいるな。


「よくわかったな、俺たちがここで隠れていることに」


 俺に答えたのは、いかにも盗賊と言わんばかりの汚い格好をして、顔に数多の傷をつけている身体つきがごつい男であった。俺と身体が大きい男が対面している間に、俺を取り囲むようにして他の盗賊たちが移動している。


「当たり前だ。そんなので隠れていると言っているのなら、バカにもほどがあるぞ。いや、極まったバカだからこんな真似をしているのか」

「・・・・・・どうやら、すぐにでも死にてぇようだな。どこぞの執事だから金を用意すれば逃がしてやろうと思っていたが、やめだ。馬鹿にしたツケを払ってもらおうかぁ?」

「できるものならやればいい。一応言っておくが、逃げるのなら今のうちだぞ?」


 俺がそう言うと、取り囲んでいる男たちは大いに笑い始めた。気持ち悪い笑いだから、今すぐにでもやめてほしいが、こいつらの答えを聞いていないから今は待っておこう。


「聞いたか⁉ 野郎ども! 逃げるのなら今のうちだとよ! こいつは今の状況を見て、どういう状況か分かっていないぞ!」

「これは面白いな! こいつはこの人数を相手に勝てると思っているぞ!」

「ぶはははっ! 面白すぎて腹がいてぇ!」


 俺はこいつらの反応に無反応で待ち続ける。どれだけ笑われても、俺には効かない。前の世界で幾度となく、イナダと比べられて陰で笑われていたことに比べれば、どうと言うこともない。それに、興味がないやつに笑われても何とも思わない。


「はぁぁぁっ、笑った。それじゃあ、どうやって切り抜けるのか見せてもらおうか?」


 俺が勝手に暫定で頭と決めつけた身体が大きい男の合図で、木の上で待機していたやつらが音もなく降りてきて俺を殺そうとして来ている。が、殺気が駄々漏れで気づかない方がおかしい。俺が気が付いていないのかと思っているのか、頭の男は俺のことをニヤニヤして見てきている。


 降りてきている連中が俺の上に集まっていることを確認して、俺は上を向いた。降りてきている奴らは俺が見てきたことに心底驚いてきているようだが、空中では何もできない。俺は上へと飛んで、降りてきている奴らの高度に達した。そして、空中で連中の両腕をすべて斬り落として攻撃手段を消した。


「ぎ、ぎゃぁあぁぁぁ⁉」

「う、腕ガアァァァ!」


 ついでに太ももの部分を深く斬りつけて、動けない程度にしてあげた。そうすると、奴らは上手に着地できずに頭から落下した。結構高い場所であったため、頭を地面に激突させた連中は頭から血を流して動かなくなった。死んではいないと思うが、何もしないと死んでいく。


「どうする? 早く治療しないとこいつらは死ぬぞ?」

「ッ⁉ やっちまえ!」


 俺が親切に教えてあげているのに、俺の言葉を無視して盗賊は俺に襲い掛かってきた。仲間よりも金とは、盗賊らしいと言えば盗賊らしいか。今引き返せば逃がしてやろうと思っていたのに、仕方がない。四肢を切り取られる覚悟をしてもらおうか。


 連携など関係なしに襲い掛かってくる盗賊を、返り血がかからないように斬りつけていく。この大きな剣では下手をすると胴体を真っ二つにしてしまうから気を付けないといけない。微調整をしている≪紅舞の君主≫を使おうにも、あれは相手を殺してしまうから使えない。


 俺は〝終末の跡地〟で魔物を殺すことに特化した戦い方をしてきたが、人間だとその覚悟ができていない。どちらも同じ生き物なのだが、元の世界で人権云々を尊重する世界だったから、俺は人や人型を殺す覚悟ができていない。いつかは殺す覚悟をしないといけない日が来るから、覚悟を決めないといけない。


「≪一閃・狂乱≫」


 狙いを定めずに、一閃を周りに放ち続ける技である。周りにいる盗賊たちは次々に身体の至る所を斬りつけられている。この技は技の有効範囲が広い分、適度に相手にダメージを与えられるから、人間相手なら使いやすい。ただ、俺でもどこに一閃が行くのか分からないから仲間が周りにいては打つことができない。現に、すごく偶然で同じ木に何回も当たって、木が倒れている。その木に下敷きになっている盗賊がいた。運がない。


 一閃を使い続けることで、動ける連中が数人になった。その数人の中に頭の男も残っているが、何回も一閃を喰らったのか満身創痍であった。俺は一閃・狂乱を使うのをやめて、頭の男以外の動ける連中に狙いを絞った。頭の男には聞きたいことがあるから、下手をして殺すわけにはいかない。


「≪四撃一閃≫」


 頭の男以外の盗賊を、狙い澄ませた≪一閃≫で戦闘不能にしていく。そして最後の一人は頭の男となった。ここまで一人も殺していないのだから、感謝してほしい。こいつらは俺を殺そうとしていたのに、生かされているんだからな。


「さぁ、後はお前だけだな」

「・・・・・・お前、一体何者だよ?」

「それを答える必要はないし、今からは俺が質問するんだ」


 頭の男の足を斬りつけて動けないようにして、頭の男に剣を突き付けている。男は降参とばかりに両手を挙げて武器を捨てた。降参している意思を見せているように見えるが、この男からは俺の隙を伺っているように感じる。油断するつもりはないが、攻撃してきた時はそれ相応の覚悟をしてもらおう、言葉にはしていないけど。


「お前らはどうしてこの地にいるんだ?」

「どうしてって、どういうことだよ?」

「お前らはこの地に来たばかりだろう。だからなぜここに来たと聞いているんだ」

「あぁ、そのことか。・・・・・・だが、情報をタダでやるのは――」

「くだらないことを言って痛い目を見るか、素直に話すか、どちらが良い?」


 ふざけたことを言い出そうとしていた頭の男の首筋に少しだけ剣を当てる。剣を当てたところは少し切れて少量の血が流れている。


「冗談だ、そこまでムキにならなくても良いじゃないか」

「俺は急いでいるんだ。くだらない冗談に付き合っている暇はない」

「へいへい、分かったよ。話すよ」


 頭の男はようやく話す気になったようだが、未だに隠しきれていない殺気が丸見えだ。まぁ、盗賊風情にやられるほどやわな鍛えられ方をしていない。今はこいつの話を聞こう。


「ここには、ある男から言われて来たんだよ」

「ある男?」

「そうだ。男の正体を聞いても分からないぜ。何せ男はフードを被って見えなかったんだから。声で男ということだけが分かったが、それ以外はサッパリだ」

「そうか。それで男には何と言われたんだ?」

「男にはこう言われた。『ここら辺には宝が眠っている。それにここを通る人間の中に伯爵家がいる。伯爵家のくせに守りが薄い。そこを突けば大金を手に入れられるぞ』てな」


 宝が眠っている? そんな話は聞いたことがないぞ。こいつらは嘘をつかまされたのか、それともこいつ自身が嘘をついているのか。どちらにしてもこの地に何かあるのは確かかもしれない。


「嘘を言っていないか?」

「まさか、この状況で嘘を言えば俺の首が飛ぶから嘘なんて言わない。信じてくれ」

「盗賊を信用する奴がどこにいる? もう一度だけ聞くぞ、嘘を言っていないな? ちゃんと考えて言うことだな」


 俺は鎌をかけようと、殺気を少し出しながら睨めつけて言った。頭の男は俺の殺気に押されたのか、冷や汗を流し始め、全身を震わせ始めた。しばらくして、男が観念したようで口を開こうとした。


「た、宝の件は――」


 口を開こうとした頭の男の影から、何か形を持たない黒い物体が現れた。これはこの男とは完全に別の力だ。頭の男が操っているものではない。周りを見ると他の盗賊の影からも黒い物体が現れた。そしてその黒い物体は鋭利な刃物に姿を変えて、盗賊たちを殺し始めた。頭の男にもその刃物が迫っていた。俺はその刃物を弾き飛ばしたが、別の場所から出てきた黒い物体によって頭の男は心臓を貫かれて、死に至った。正直、こんなクソな奴らを助ける気はなかった。


 これで一件落着と思いきや、そうもいかなかった。黒い物体は盗賊全員の命を奪い取り盗賊の身体を喰らい終えるとすべてが一つに融合して、巨大な黒い物体になった。その黒い物体は巨大な剣を作り出して俺に襲い掛かってきた。その巨大な剣を難なく破壊して、本体を切り裂く。


 しかし、黒い物体が切り裂けることはなく、またしても色々な武器を作り出して俺に襲い掛かってくる。俺はそのすべてを破壊しながら、どうするか考える。この手のタイプは実体を持たないことで、こちらの攻撃を受けることがない。ただし、こちらに攻撃できるということは実体するタイミングがあるけれど、実体しているのは武器だけだ、


 ・・・・・・よく見れば、こいつは闇の魔法を使っているのか。そうなれば、俺のスキルで使えるものがある。俺は黒い物体の前で剣を掲げた。そして≪浄化の剣≫のスキルを使う。文字通り不浄のものを浄化することができるスキルである。黒い物体は黒い部分を強制的に俺の剣に吸収されていく。自身が吸収されて行っているから抵抗するが、抵抗むなしく黒い物体は浄化されて、正体が露わになった。


 目玉が大きい蛇がそこにいた。うわっ、俺は爬虫類系が嫌いなんだよ、特にあの鱗と言うかあの肌感が。そういうわけで、俺は襲い掛かりそうにあった蛇を原型がなくなるほどに切り刻んだ。


 それにしても、さっきのは口止めされたな。ここに誘導した誰かがこいつらに言ったことを他の誰かに知られたくなくて、面倒な仕掛けを施したわけか。・・・・・・ここら辺でされるのは非常に迷惑な話だ。


「アユム! 大丈夫⁉」


 アンヴァルに乗ったフローラさまと馬車が俺の元へと駆け付けた。少し時間をかけすぎて、フローラさまたちに心配させてしまったようだ。


「はい、大丈夫です。ご心配をかけて申し訳ございません」

「そんなことは良いのよ。・・・・・・それよりも、盗賊はどうしたの? それにここら一体の赤い模様は、血よね?」

「はい、そうでございます。盗賊の血です。先ほど盗賊を戦闘不能にしたのは良いのですが、何者かの妨害により盗賊がすべて殺され、食されたため、このような何もない状態に至りました」

「妨害? 誰が何のために?」

「それは分かりません。しかし、この地は何者かに狙われているのかもしれません」

「・・・・・・そう、それは後でお父さまに報告しておいてちょうだい」

「承知いたしました」

「それよりも早く乗りなさい。疲れたでしょう?」


 フローラさまに促されて、俺は馬車へと乗った。・・・・・・さっきと全く同じ状態でな。これは、もしかしなくてもはめられた、ということなのか? さっきの労いの言葉はどこに行ったんだ⁉


「さて、アユム? 他の三人から聞かせてもらったことについて、聞かせてもらいたいのだけれど、良いかしら?」

「・・・・・・少し疲れているので、休ませてくれませんか?」

「それはもちろん良いわよ。でも、家まではまだまだ距離があるから、時間稼ぎをしようとしても無駄よ?」


 ・・・・・・これは本当に逃がしてくれる気はなさそうだ。いやでも、俺は結局女性関係で何かしでかしたわけではないから、問題ないだろう。うん、問題ない。・・・・・・問題ない、はず。


「休む気がないようだから、早速始めるわよ? アユムの女たらしの真偽を確かめるために」

「待ってください、フローラさま。別に自分は女たらしで――」

「黙りなさい! もう証言は上がっているのよ。これは自分がどれだけの女にちょっかいをかけたのかを確認するためのものよ。それにあまつさえ、姉や使用人と使用人の姉に手を出すとは、思ってもみなかったわ」


 だから、手を出すほどの度胸はない。それに彼女たちに手を出せば、俺がシャロン家にいられなくなるのだから、簡単に手を出すわけがないし、手を出すつもりはない! ちょ、弁解させてください!

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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