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19:騎士と決闘。

連日投稿十九日目! ここまで書き続ければ、もういいよね? とか思ってしまいます!

 フローラさまと、ついでにステファニー殿下を潜伏の迷宮から救い出してから、数日が経った。学園は侵入者が大量に現れたことが問題視され、学園の信頼が問われた。まぁ、大量の侵入者については仕方がないとしか言いようがない、相手が悪い。あの空間操作がなければ大量に侵入されることなんてあり得なかった。


 タランス学園には数人の高位の騎士が在住しており、学園の外をくまなく監視している冒険者上がりの警備員や学園の周りに結界を張っている人がいるらしい。そんな中、タランス学園に入ってきた侵入者がすごいのだろう。いや、入ってきたのか、それとも裏で糸を引くものがいたのか。


 考えれば考えるほど、非現実的に感じてしまう。それこそ、思惑が思惑を呼んでいるとか、あの侵入者たちも誰かに操られていたのかもしれないとか、この世界にいるからだろうか色々と考えてしまう。


 話は戻るが、学園の信頼が問われたことにより、貴族の親たちから非難が殺到した。強制的に学園に行かせられているのに、その不甲斐なさは何事か! ってね。それを受けた国王は、国王直々に学園の体制を今一度見直すようにと命令が下った。それを受けた学園は少しの間、学園を閉鎖して改善することを決定したらしい。それが決まったのが昨日で、今から二日後に学園を完全に関係者以外立ち入り禁止となった。


「思い切ったことをやりますね、学園側は」

「学園側も必死なのだろう。侵入者が襲撃してきたことで、絶対に安全という言葉が無に帰した。それはすなわち学園を建てた王の威厳にもかかわる。信頼を元に戻すには今以上の施設管理と襲撃者への的確な対応が問われる。それは、生徒がいる間にできないのだろう」


 今はラフォンさんとスキルなしでの本気の打ち合いをしている。喋りながら打ち合っているあたり、お互いに本気ではないが。


「それにしても、スキルなしの特訓を始めてから半月でここまで成長するとは思わなかった。いや、≪順応≫していると言った方が正しいか?」

「身体能力に≪順応≫が作用しているとは思ってもみませんでしたよ。スキルだけだと思っていました」

「おそらくアユムに合わせて≪順応≫が変化したのだろう。勇者・騎士についての文献を読み漁ってみたが、それらしい記述はなかった。それに、アユムと出会ってから思っていたが、その目の良さは異世界に来る前から目が良かったのか?」

「いえ、異世界に来る前までは普通の身体能力でしたよ」

「それなら何か思い当たる節はないのか? とてつもなく早い魔物に襲われていたとか」


 ラフォンさんにそう言われて、〝終末の跡地〟での記憶を手繰り寄せた。・・・・・・あいつしかいないよな。あいつが一番速かった。それにあいつと戦ってから、妙に目が良くなったと思っていた。もしかしなくてもそこから身体能力の≪順応≫が起こっていたのかもしれない。


「その顔は何か心当たりがあるんだな?」

「まぁ、はい、一応。〝終末の跡地〟に召喚されてから数か月経ったころに、〝ジェット・クロウ〟が現れまして、それを倒す時に身に着いたのかと思いました」

「〝ジェット・クロウ〟だと⁉ この世で一番速いと言われている生物を倒したのか? ・・・・・・それは恐ろしいな」


 聞いておいてその顔はやめてほしい。俺だって最初は身体中を食べられていたけれど、そいつを殺そうとしていたら、おのずとジェット・クロウの速度に目が追いつけるようになっていた。あのカラスは速いだけであまり知能はないから、速度に慣れればもう倒すのは簡単だ。待ち構えていたら殺すことができた。


「・・・・・・あれは」


 打ち合っている最中に、ラフォンさんが何かを発見したのか一度俺と距離を取った。ラフォンさんが見えている方向を見ると、少し遠くで年老いている白髪に伸ばしている白髭の服の上からでもわかる筋肉質な人がいた。その人にラフォンさんがは深々と頭を下げているが、どこかの偉い人なのだろうか。俺には分からない。


「知り合いですか?」

「まぁ、そんなところだ。さて、ここからはスキルありの本気の戦いをするぞ」


 いきなりスキルありの本気の戦いをするぞと言われて、俺は驚いた。今までスキルありでの戦いをしてこなかったのに、どうしてこのタイミングでスキルありの戦いをするんだ?


「突然ですね。何かあるのですか?」

「なに、ただ実力を測るだけだ。それ以上のことは何もない。本気の戦いと言っても、相手に重傷を負わせるのはなしだぞ?」

「さすがに、ラフォンさんに重傷を負わせる気はありませんよ。大事な師匠なのですから」

「そ、そうか。そう言われると嬉しいぞ」


 少し照れが入ったラフォンさんであったが、戦闘態勢に入ると雰囲気を一変させた。相対して感じるこのプレッシャーは、魔物と戦った中でも上位に入るプレッシャーだ。俺も気を引き締めてラフォンさん相対する。


「どこからでもかかって来ると良い。初手は譲ろう」

「良いんですか? それなら遠慮なく初手はもらいますよ」


 俺は一つ深呼吸をして、ラフォンさんに集中する。これがラフォンさんとの最初の真剣勝負だ。俺は大型から小型までの魔物の相手なら数えきれないくらいにしてきたが、人型でこれほどの相手は初めてだ。


「・・・・・・ふっ!」


 俺は遠慮なく≪神速無双≫を限界の三割くらいの速さでラフォンさんに斬りかかった。それに対応したラフォンさんは俺の木刀を受け止め、ラフォンさんからも木刀の攻撃が来た。俺はこの速度で初めて人と剣を合わせている。今までの敵は魔物だったから、新鮮だ。それにここまで速い人も数えるくらいしかいないだろう。


「どうした! もうその程度か⁉」

「まさか、この程度なわけがないですよ」


 さすがに≪神速無双≫を四割以上は使えない。手加減できなくなるからな。なら速さではなく技術で勝負しかない。俺は踊るように美しく攻撃をするスキルである≪剣舞≫を使い、ラフォンさんに攻撃を仕掛ける。それに対して、ラフォンさんも≪剣舞≫を使い対抗してきた。


 同じスキルを使えば拮抗するわけではない。身体能力とスキル熟練度によって変わってくる。身体能力は間違いなく俺の方が上だが、スキルの熟練度はあちらの方が上だ。そうなってくれば、俺の攻撃を華麗に避けられるものの、あちらの攻撃は俺の身体能力で避けている。良い感じで拮抗している。


「これでは勝負がつかないぞ?」

「分かっていますよ。別の切り口で試してみます」


 俺は≪剣舞≫と≪一閃≫以外にも剣のスキルを二つ持っている。≪裂空≫と≪断絶≫の二つだ。ここで使える剣のスキルは≪裂空≫の方だ。一度ラフォンさんと距離を取り、態勢を整える。そしてラフォンさんに距離がある状態で木刀を振るった。


 すると、木刀から目に見えない斬撃が飛び出した。この≪裂空≫というスキルは言うなれば飛ぶ斬撃を放つためのスキルだ。だけど、その威力はスキルなしの状態で出す飛ぶ斬撃より段違いに上がっている。十倍以上の威力は出している。それこそ、空を切り裂くくらいの威力がある。


 それを目の前にしてラフォンさんは避けもせずに木刀で受け止めて、少し手こずっているが消し去った。これくらいは受け止めてくれると思っていた。


「これは、≪裂空≫か。・・・・・・スキルのことを聞くのは良くないが、剣のスキルをどれくらい持っているのか、良ければ教えてくれないか?」

「剣のスキルですか? ≪剣舞≫と≪一閃≫と≪裂空≫と≪断絶≫の四つです」

「四つも上級のスキルを持っていて、こちらに来たのが三年か。・・・・・・勇者の力がすごいのか、それともアユムがおかしいのかは分からないが、末恐ろしい才能だ」


 ラフォンさんが引きつった笑みを浮かべているのが見えた。他の人と比べたことがないから分からないが、多いのだろう。だけど俺はそのスキルを持っているだけで使いこなしていない。熟練度をあまり上げていない。だから熟練度を上げることも目標だ。


「行きます!」

「あぁ、来い!」


 この戦いで熟練度を上げるつもりで、スキルを使い続ける。≪裂空≫を軸にして、≪剣舞≫と≪一閃≫を使い戦いを進める。一方のラフォンさんは俺のスキルに押されながらも、≪剣舞≫と何のスキルか分からないが剣の速度を上げているスキルで戦い続けている。


 スキルなしの戦いを鍛えたから、個々のスキルのレベルが上がっている気がする。いや、俺の素の状態が上がっているのだろう。本当にラフォンさんには感謝しっぱなしだな。


「待たせている人がいることだ、そろそろで終わりにしようか」

「そうですね、お互いの武器もボロボロですからね」


 一進一退の激しい攻防を続けていたから、俺とラフォンさんの木刀はいつ粉々に砕けてもおかしくはないくらいにボロボロになっていた。おそらく一撃を放てばそれでこれは壊れる。いつも得物は良いもので戦っていたから、得物を大事に使わないといけないとも思った。


 最後の一撃に、ラフォンさんは最上級のスキルである≪紅舞の姫君≫を使うらしい。ラフォンさんしか持っていなかった最上級のスキル。だが、俺は初日からこのスキルを習得するように特訓させられた。まだスキルの習得には至っていないが、その一歩前までは来ている。


 それを含めてこの一撃に俺のすべてを詰め込む。それがこの人に対する礼儀だ。俺も同じように≪紅舞の姫君≫を使う心づもりで構える。この≪紅舞の姫君≫は≪剣舞≫に似ているスキルであるが、実際には出力と用途が違う。≪紅舞の姫君≫は多対一の一撃必殺技。戦場で数多の敵を一瞬で屠ったらしい。


 今まで教えてもらったことを木刀に込め、お互いに同時に踏み込んだ。距離はすぐになくなり、お互いの木刀がぶつかり合う。鈍い音がしたが、お互いに止まらずに踏み込んだ場所を入れ替えた状態になった。


 見るまでもないが、手の方を見ると俺の木刀は柄より上が粉々になっていた。振り返ってラフォンさんを見ると、彼女の木刀も俺と同様に粉々になっており、それをこちらに見せるようにあきれた顔をしてこちらを振り返っていた。


「まさかこの短期間で≪紅舞の姫君≫を習得するとは思わなかった。そのスキルはもうアユムに継承された」


 そう言われ、俺はスキルを確認するためにスキルについて思い浮かべる。頭の中に情報が浮かび上がった。その中に、≪紅舞の姫君≫と同系統のスキルである≪紅舞の君主≫が新たに出現していた。


「・・・・・・≪紅舞の君主≫」

「姫君ではなく、君主か。女ではないから当たり前だが、君主と来たか。それはまた大層なスキル名だ」

「これでこのスキルを持っているのが、ラフォンさんだけではなくなりましたね」

「あぁ、喜ばしいことだ。私が十数年の年月をかけて会得したものを、後世に残せる可能性が増えたのだからな」


 後世って、ラフォンさんと俺ではあまり年が離れていないから、やるならもっと若い人にした方が良いと思う。それよりも、さっきからラフォンさんが距離をずっと詰めてきているんだが、どういうことだ? 俺が何かしたか? 俺が汗臭いからあまり近づいてほしくはない。


「アユム、実はだな、お前に話があるんだ」

「はい、何ですか?」


 いつも堂々としているラフォンさんが珍しく乙女のようにもじもじとしている。何か言いにくいことでもあるのだろうか。


「そ、その、前からずっと思っていたのだが――」

「ゴホンッ!」


 ラフォンさんが何かを話し出そうとしていた時に、誰かが近くに来てわざとらしく大きな咳払いをした。それを聞いたラフォンさんは急いで俺から離れた。誰がしたのかと思ったら、さっき少し遠くにいた白髪のご老人が近くに来ていた。その身体を近くで見ると、よく鍛え上げられたことが分かった。この筋肉の感じは騎士か何かだった人なのか?


「大事な話でもするところだったか? ラフォンくん」

「い、いえ、お気になさらず」


 ラフォンさんはその人に片膝を付いて頭を下げている。えっ、それくらいの人なのか? 俺は状況が理解できないぞ。


「えっと・・・・・・すみません、どなたか伺ってもよろしいですか?」

「あぁ、構わない。私はアンジェ王国の現国王、クリスチャン・ユルティスである」


 ・・・・・・えっ、現国王? この人が? この普通の格好をしていて、マッチョのこの人が? 戦士とかではなく、国王? ・・・・・・えぇっ⁉ 嘘だろ⁉ 絶対に国王とか気づけないだろう! 俺は驚きすぎて動きが数秒止まってしまった。異世界に来てから一、二を争うくらいの驚きだよ!

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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