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18:騎士と捕らわれのお姫さま。③

連日投稿十八日目! 次で一区切りつきそうです!

 眼帯の女を倒して、迷宮を進んで行くが、開けた場所に行っても誰も待機していなかった。そもそもこの迷宮の中には、俺とさっきの眼帯の女にフローラさま、そしておそらくステファニー殿下と侵入者たちのリーダーしかいない。広い迷宮であるが、これだけ広ければもったいない感じがする。いや、学園に出払っているからいないのか。


 それにしても眼帯の女しか残さないとはどういうことだ? よっぽどの自信があるのか、馬鹿なのか、それとも想定していなかったのか。あれだけの人数を束ねているんだ、リーダーであるのだから馬鹿ではないだろう。気を引き締めないといけない。頭が切れる奴は戦いにくい。


 迷宮内をくまなく通り、ついにフローラさまの気配が近づいてきた。ステファニー殿下とリーダーの女の気配もある。そして一本道の先に開けた場所が見え、俺は加速して開けた場所に入り込んだ。そこには椅子に座ってこちらを見て余裕の表情を浮かべている肩まである黒髪の美人な女性がいた。そして久しぶりに感じる、この人の姿もそこにあった。


「フローラさま、お迎えに参りました」

「アユムッ、遅いわよ」


 頬を腫らして服装がボロボロで縛られているフローラさまがそこにいた。その隣に同じように座っているが威風堂々と縛られていた長い赤髪の女性がいた。このお方がステファニー殿下なのだろうか、美しい人だ。それに二人とも無事でよかった。


「騎士王ではなかったようだ。君は確か未来の騎士王だったね」

「誰もかれも騎士王を期待していたようだが、残念だったな。ラフォンさんは俺より後にくる」


 俺はようやく神器クラウ・ソラスを構える。すぐに戦う気満々であったが、ステファニー殿下とリーダーの女が俺の剣を見て目を見開くくらいに驚いている。


「まさか! あれは本物のクラウ・ソラスなのですか⁉」


 ステファニー殿下の驚きようは尋常ではなかった。・・・・・・そうか、ラフォンさんが知っているのだから、この国の姫が知っていても何らおかしくない。そもそも王が勇者を呼び出したのだから、王族の方が詳しいだろう。いや待てよ。このお姫様にばれたのは非常にまずいんじゃないのか? だって、この人は召喚した側の人間だ。本物が別にいるのなら、そっちで魔王討伐してもらおうと思うだろう。


 ・・・・・・今はそれを考えていても仕方がない。助けた報酬で秘密にしてもらっていれば良いだろう。今はリーダーの女だ。


「クラウ・ソラスが二本あるとは。いや、そちらが本物かな? 君の持っている剣は伝承された特徴と一致しているが、コウスケ・イナダの剣は特徴が不一致していた。なら、そちらが本物なのだろう」

「そんなことはどうでも良いだろう。俺の剣が本物であろうと本物でなかろうと、戦うことには変わりしないのだから」

「・・・・・・それもそうだね。そこにいる勇敢なお嬢さんの騎士なのだから、お嬢さんを痛めつけた私を逃がすわけがないか」

「そういうことだ。俺はお前を倒してフローラさまに謝らないといけないんだ」


 リーダーの女はやれやれとした表情で席から立ちあがって俺と対面する。対面したときに女はプレッシャーを放ってくるが、このプレッシャーはラフォンさん以来だ。この女を甘く見るつもりはないから、油断せずに行く。


「フローラさま、待っていてください。今お助けします」

「早くしなさい。私に言うことがあるのでしょう?」


 フローラさまの言葉に俺は頷き、目の前の女に集中する。どんなことをしてくるかは分からないが、攻撃しないことには仕方がない。俺は温まっている身体で、リーダーの女に斬りかかった。しかし、リーダーの女は俺の視界から何の動作もなく消えた。


「危ないなぁ、いきなり乙女に攻撃してくることはないと思うよ?」


 視界からいなくなったと思ったら、リーダーの女は俺の背後に立っていた。俺はすぐに背後にいるリーダーの女に振り返りざまに斬ろうとする。だが、剣は空振りして、女は後方に移動していた。この二回の攻撃で、リーダーの女が目に見えぬ速さで動いているのではなく、瞬間移動しているのが分かった。


「アユム、気をつけなさい! あいつは空間を操作して瞬間移動しているわ! 私と殿下がここに連れてこられた時も、空間操作を使っていたわ」

「空間操作ですか、承知いたしました」

「あぁあ、もう種を明かしちゃった。もう少しからかおうかと思っていたんだけどなぁ」


 なるほど。学園に侵入者が入ってきた時も、フローラさまの気配が察知できなかったのもこいつが空間操作していたからか。これで合点がいった。それよりも、こいつをどうやって倒すかということだ。


「種明かしされたけど、君はどうやって私を倒すのかな?」

「敵に手の内を教えるわけがないだろう」

「それもそっか。じゃあ戦いで見せてもらおうかな?」


 リーダーの女はそう言って、その場から消えた。周りを見渡しても発見できなかったため、≪感知≫を全開にしていつどこに現れても良いように全神経を集中させる。そして気配が現れた場所は、フローラさまの背後で、剣でフローラさまの背中を刺そうとしていた。


 女の剣が振り下ろされている間に俺はフローラさまとリーダーの女の元へと移動し、殺す気で剣を振るったが、女は俺の剣が当たる前にどこかへと消え、またしても俺の剣は空振りした。リーダーの女は空間の中央に現れた。


「いやぁ、驚いたね。まさかそこまで反応が早くて、そこまで守備範囲が広いとは」

「俺がこの空間にいる間は、フローラさま、とステファニー殿下には手を出させない」


 この空間の広さなら、十分に反応して対処できる。そしてリーダーの女が出てきた時が俺の攻撃するチャンスだ。出てこない限りはどうすることもできない。


「じゃあこれならどうかな?」


 再びリーダーの女は消えた。同じように≪感知≫で感覚を研ぎ澄ませてどこに出てきてもいいようにする。が、妙な気配が出てきたと思ったら俺の近くであり、もっと言えば俺の太ももの近くだった。妙な気配の正体は俺の太ももの近くに出現している黒いもやであった。


 何かと一瞬だけ思考を取られていた時、その黒いもやから剣が現れて俺の太ももを貫いてきた。貫かれ、すぐさま抜かれて黒いもやは消失した。俺は片膝をついて太ももに視線を送る。俺の太ももからは血がとめどなく出てきており、傷口から漂ってくるこの嫌な感じは毒か。


「アユム大丈夫⁉」

「大丈夫です。すぐに回復します」


 フローラさまは縛られているが俺の心配をしてくれている。フローラさまを落ち着かせながら、俺は≪超速再生≫を使用して傷口を治療していく。その間にリーダーの女は空間の真ん中に現れて剣についた血を舐めている。


「≪自己再生≫か。でもそれだけだと回復しきれないよ?」


 おおよそ毒のことを言っているのだろうが、俺には関係ない。そう示すように、太ももの貫き傷を完治させて立ち上がった。毒に相当の自信があったのか、その目は大きく開かれた。


「この剣に少しでも斬られただけで死に至る付与能力がついているんだよ? それがどうして効かないの?」

「じゃあ聞くが、この俺の剣のことは知っているだろう。神器クラウ・ソラスには、どんな状況にも対応できる≪順応≫という能力が存在している。どんなスキルであろうと、その状況に対応できるのなら習得することができる。≪状態異常無効≫のスキルを持っているのだから、俺がこの程度の付与能力で倒されるはずがない。それに、このスキルを持っていなくても、俺を一撃で倒す術を持っていない限り、俺はどんな能力にも対応して見せる。これがこの剣の能力なのだろう?」


 俺の言葉を聞いて、リーダーの女はため息を深く吐いた。その顔には少しだけ引きつった笑みを浮かべている。


「・・・・・・そうだった、君はその能力を持っていたね。五人の勇者の武器にはそれぞれ違う能力が備えられており、勇者には〝成長〟、弓兵には〝超感覚〟、賢者には〝英知〟、司教には〝寵愛〟、そして騎士には〝順応〟が与えられている。だっけ? 一番厄介なのは勇者の成長だと思っていたけれど、そうじゃないんだね。誰よりも前に立ち、仲間を最後まで守りきるために順応する。これは敵にとっても脅威だね」

「まぁ、その反面順応する状況にならなければ、順応できないがな」

「それでも十分でしょう? その状況を作り出せば、どんな状況にも対応できる。・・・・・・あぁあ、こんな相手が敵になるとは思っていなかった。でも、君はどうやってさっきの私の攻撃を防ぐの? 早く対処方法を考えないと君のお姫さまに攻撃が当たっちゃうかもよ?」

「あぁ、普通ならそうだな。だが、俺に一度その攻撃を見せたのが失敗だったな。もうその攻撃は覚えたから、次は喰らわない」

「相当な自信だね。それが嘘でないと良いね」


 リーダーの女がそう言っている間に、さっき俺を攻撃した時のあの妙な気配がフローラさまの近くに現れた。そちらを向くと黒いもやがフローラさまの背後に出現しており、剣先が少しだけ飛び出していた。俺はすぐに背後にある黒いもやを斬り上げた。普通に攻撃したが、黒いもやは消え去った。


「言っただろう? もう喰らわない」

「・・・・・・ふぅ、こればかりは分が悪いなぁ」

「言っておくが、逃がすつもりはない。お前らがしたことに対して俺は相当キレているんだよ。俺が殺しはしないが、国に引き渡して処刑でもなんでもしてもらおう」

「それは怖いね。ここで殺された方がまだましな気がするよ」


 そう言いながらリーダーの女は、また黒いもやを出してきた。しかも今度はステファニー殿下の背後にだ。それに素早く対応して、さっきよりも早く黒いもやを斬り消した。


「お怪我はありませんか? ステファニー殿下」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます」


 ステファニー殿下は自身が攻撃されたにもかかわらず、堂々としている態度を崩していない。これが王族か。威厳が半端ないな。


「何度やっても一緒だ。お前が俺たちに攻撃を喰らわせることは、もうない」

「そうみたいだね。でも、ここで諦められるほど、無法者をやっているわけじゃないから」


 リーダーの女はまだ諦めるつもりはないらしく、何かをしてきそうな顔をしている。諦めて逃げることをすればいいのに、と思うが、逃がすつもりはない。能力を見せてしまった以上、こいつが何をしてこようが関係なく俺はこいつを斬り伏せる自信がある。


 またしても消えたリーダーの女であったが、すぐに気配は出現し俺の背後であった。斬りかかってこようとしているのだろうが、俺は逆にリーダーの女の背後に回って無防備な背中を切り裂いた。傷口から血が飛び出してきて、リーダーの女は倒れた。


「美人なんだから、無法者じゃなくてもう少しましな道を歩めよ」

「私が、美人? ・・・・・・その言葉を、もう少し早く聞きたかった」


 俺の言葉にリーダーの女は答えたがすぐに気を失った。もうリーダーの女が動けないことを確認した俺は、フローラさまの元へと向かった。フローラさまを縛っている縄を解いて、隣にいたステファニー殿下の縄も解いて二人を解放した。


「遅くなりました、フローラさま。今傷を治します」


 俺はフローラさまに触れてフローラさまの負っている傷を≪自己犠牲≫で俺に移し、≪超速再生≫で移す度に回復していく。フローラさまの回復が終わると同時に俺の回復も終わった。


「良いわ、別に。助けに来てくれたもの。少し遅かった気がするけれど」

「フローラ、助けに来てくれた人にそうは言ってはいけません。もう少し感謝を素直に述べるべきです」

「・・・・・・ありがとう、アユム」


 ツンツンとしていたフローラさまに、ステファニー殿下は注意してくれて俺に素直にお礼を言ってくれた。あっ、忘れていたけれど、俺はフローラさまに謝るんだった。


「フローラさまに噂の件で謝らなければなりません」

「・・・・・・言ってみなさい」

「ラフォンさんとそういう関係であるということを周りに誤解させたことについて、謝罪させてください。本当に申し訳ございませんでした。フローラさまの騎士という自覚が足りず、ラフォンさんとの距離を考えていませんでした」

「・・・・・・はぁ、良いわよ。最初からそういうことだとは思っていたから。それに私も少し子供みたいにムキになりすぎたと反省している」


 ふぅ、良かった。これでフローラさまの騎士としていられるぞ。これでフローラさまに許されていなかったら、シャロン家に帰るところだったぞ。


「それよりも」


 俺が安どの表情を浮かべていると、急にフローラさまに詰め寄られた。・・・・・・また俺が何かしたのか? 今度ばかりは何も心当たりはないぞ。


「勇者って、どういうことかしら?」


 あぁ、そういうことか。じゃなくて、そうだった。リーダーの女との会話中に神器クラウ・ソラスを出したから勇者であることがばれたんだった。フローラさまはこの剣について知らなかったようだけど、リーダーの女とステファニー殿下はバッチリと知っていた。


「それはわたくしも知りたいです。その神器クラウ・ソラスは間違いなく本物でありながら、あなたのことをわたくしは知りません。あの召喚の場にはいなかったはずです。どういうことかご説明いただきたいです」

「もちろん話してくれるわよね? アユム?」


 二人の美人な女性の圧にやられて、俺はこれまでの経緯をラフォンさんに教えてもらった情報と組み合わせて話していった。もちろん、フローラさまに伝えるのだから嘘偽りなく、俺が異世界人で俺の世界ではフローラさまみたいな人が美人であることもすべてだ。


「・・・・・・そう、そういうことだったの。あなたの世界では私みたいな不細工が美人なのね。だから外見で判断して私に近づいてきたのかしら?」

「確かにフローラさまを見て、この人の近くにいたいと思いました。ですが、知れば知るほどに引き込まれていきました。自分に厳しいところ、自身の家に誇りを持っているところ、人にどう接していいか分からずに悪態をついてしまう不器用で可愛いところなど、今ではフローラさまの近くにいたいと強く思っています」


 異世界のことについて話してしまったのだから、俺は思っていることをすべて正直に答えた。その正直な言葉にフローラさまは珍しく顔を真っ赤にして、俺から顔をそらした。


「で、殿下がいる前でバカなことを言わないで! 恥ずかしいじゃない!」

「この際、正直に言っておこうかと思いまして。・・・・・・ダメでしたか?」

「時と場合を考えなさい! そういうのは二人きりの時に言うのよ!」


 正直に言ったのに、叱られている。俺はもうどうすることもできない運命にあるのだろう。だが、フローラさまがずっと顔を真っ赤にしているから結果オーライ、可愛いフローラさまが見れて良かった。こんな本心も何もない俺をそばに置いてくれる人なのだから、本当に可愛い人だ。


 フローラさまと俺で話していると、そばにいたステファニー殿下の咳払いでステファニー殿下の存在を思い出した。


「わたくしからもアユムさんに用事があるのですが、少しよろしいですか?」

「えっ、はい。どうぞ」


 ステファニー殿下からの用事というのは、もしかしなくても勇者についてだろう。最近知ったが、勇者として召喚された俺以外の五人は、魔王討伐の旅に出ていたらしい。だが、三年経った今でも魔王を討伐できておらず、あまつさえ魔王以外の魔族に瀕死の重傷を負わされている状況だそうだ。これから考えると、そうなるよな。


「あなたは勇者として、この国に命を捧げることができますか?」

「いや、無理です」


 ステファニー殿下のお言葉に俺は即答してしまった。国に命を捧げるとか馬鹿らしいにも程があるだろう。俺は騎士であるけれど、別に国に忠誠を誓ったわけではない。だから拒否しても何も問題はないだろう。


「・・・・・・理由を聞いてもよろしいですか?」

「理由、ですか? それは忠を尽くす相手がフローラさまだからです。自分はフローラさまのためなら死ぬことも厭いませんが、国に忠を尽くす義理も何もありませんから」

「またお前は、そうやって平気な顔で恥ずかしいことを言うんじゃない!」


 俺の素直な言葉に、殿下ではなく顔を真っ赤にしているフローラさまが反応した。別に騎士が主のために命を張ることは不思議ではないと思う。


「そうですか。それなら仕方がありませんね。わたくしも諦めましょう」


 意外とアッサリ引き下がったステファニー殿下に、俺は驚いた。少しは粘ってくるかと思ったが、勘違いだったようだ。俺としてはこれでよかった。


「意外、という顔をしていますね」

「まぁ、はい。召喚したのは私たちなのだから言うこと聞け、みたいな感じで来るのかと思っていました」

「そのような、非人道的なことは言いません。あくまで、個人の意思を尊重する形を取っています。そうでなければ、魔族と同じになってしまいますから」


 元の世界で見ていた異世界召喚ものの中には、強制的に戦わせるラノベとかあったが、ステファニー殿下の国ではそうではないらしい。それはそれで良いのだが、ステファニー殿下には口止めしておかないといけないことがあったんだった。


「ステファニー殿下、折り入ってお願いがあります」

「お願いですか? よろしいです、何なりと申してください。国の姫を助けた勇者にはそれ相応の対価が必要ですから。お金ですか? 地位ですか? それともわたくしですか?」


 ステファニー殿下をもらうとか、最上級のご褒美だろう。とか思っているとフローラさまからの圧がすごく来たから考えるのもやめよう。ステファニー殿下がこう仰ってくれているのだから、俺は遠慮なく口止めの件を言う。


「自分が異世界から召喚された勇者ということを、他の者に秘密にしてほしいのです。この望みが叶えられるのならば、自分は十分です」

「理由を聞きましょう。理由次第では秘密にすることを拒否する可能性があります。嘘偽りなく話してください」

「承知いたしました。一つ目は、自分が勇者ということを他の者に知られれば、フローラさまに迷惑がかかるかもしれないからです。そうなれば、自分はフローラさまから離れざるを得ません。しかし、自分はフローラさまの騎士として誇りを持っており、フローラさまのおそばにおりたいと思っています」

「ふむ、そうですね。勇者を私的に利用していると思われるかもしれません。それで、一つ目と言うことは二つ目があるのですか?」


 ・・・・・・正直、このことを話すべきかどうか少しためらったけれど、嘘偽りなく話せと言われたのだから、これも言うべきであろう。言っておいた方が配慮してくれるかもしれない。


「はい、その通りでございます。・・・・・・二つ目は、自分が他の勇者と会いたくないからです」


 勇者ということを知られたくない一番の理由といっても過言ではない理由を俺は言った。その言葉を聞いたステファニー殿下は、少し固まったがすぐに回復した。


「そ、それは、どうしてですか? 他の勇者とは知り合いなのですか?」

「はい、不本意ながら知り合いです」

「・・・・・・そうですか。どうして他の勇者たちと会いたくないのですか? 仲が悪いのですか?」

「仲が悪いと言いますか、あちらはこちらのことを嫌ってはいないと思いますが、自分があちらのことをすごく嫌いなので会いたくないです」


 すごくのところを強調して他の勇者がすごく嫌いなことを殿下に伝えた。殿下は、俺の顔を見て何を言っているのか分からないという顔をしている。どうしてそんな顔をされるのだろうか。


「・・・・・・その言葉に嘘偽りはありませんか?」

「はい、ございません。他の勇者が嫌いなことをご理解いただけるまで、何度でも嫌いだと言えるくらいに嫌いです。顔も見たくありません、声も聴きたくありません、二メートル以内に近づいてきてほしくありません、名前を呼ばれただけで虫唾が走ります」


 これまでの鬱憤を、失礼であるが殿下への言葉に乗せて言ってやった。


「そ、そうですか。分かりました、勇者ということを秘匿にしておきましょう。そして他の勇者への接触しないように、こちらでも配慮しましょう」

「殿下の寛大なお心遣いに感謝します」


 ステファニー殿下は少し引きながら分かってくれた。少しやりすぎたと思うけれど、分かってくれたのだから良かった。


 その後、迷宮から出た俺たち三人はラフォンさんが到着していたため、アンヴァルに俺とフローラさま、白馬にラフォンさんとステファニー殿下と今回の主犯格である二人を乗せて王都へと戻った。今日は長い一日だった。

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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