15:騎士と異常事態。②
連日投稿十五日目! 戦闘描写に移るのは好きですけど、戦闘描写に入ると書くスピードが落ちてしまいます!
後ろからラフォンさんの声が聞こえたが、それを無視して学園の方へと走り続ける。ようやくフローラさまの機嫌が悪かった原因が分かったというのに、今度は俺とフローラさまが切り離されている間に誘拐か何かが起こっているのかよ。ふざけやがって。
スキル≪感知≫を全力で使い、どこにフローラさまがいるのかを探る。その際に、ルネさまとニコレットさんにスアレム、サラさんも対象に探す。もちろん、敵がどれくらいいるのか、どこに誰がいるのか、どれくらいの実力を持っているのかを全力で情報を収集する。
・・・・・・侵入者が多数いるようだ。しかもそこそこ強い。さっきのモンと同等かそれ以上の実力の持ち主が大半だ。さすがにラフォンさん以上の人はいないようだが、ここにいるほとんどの生徒や先生たちには倒せない実力者たち、だっ⁉
感知範囲に引っかかったのは、ルネさまでルネさまが数人の侵入者に襲われている! ニコレットさんは別の場所で侵入者と戦っているようだ。俺がここで行かないとルネさまが手遅れになる。フローラさまが感知できないことが気がかりだが、ルネさまを襲っている侵入者を秒で片づけて探し出す。
俺はルネさまの元へと全力で走って向かう。そして視界に、ルネさまを襲っているイケメンで下半身を露出させている三人の男たちと服が破かれてほぼ全裸な状態で襲われそうになっているルネさまが見えた。俺は刀剣を構えるが、奴らを殺していいものかどうかで思考が鈍る。殺しても問題ないだろうが、人間を殺すという一線を越えれば、俺は元の世界に帰れない気がする。だから、俺はここでも奴らを殺さずに、半殺しにする。
「こいつ、不細工だけど良い体つきしているぜ!」
「そうだな、この醜い顔だけ潰せばいいおもちゃになるぞ」
「使えなくなったら魔物と繁殖させればいいだけさ」
段々と聞こえてきた男たちの会話。これだけで俺が奴らを殺す理由が揃っているが、絶対に殺さない。殺すという救いは与えてやらない。拷問してから自ら死を選ぶくらいに追い込んでやる。
「や、やめてください・・・・・・っ!」
「おいおい、逃げるなよ。どうせお前は俺たちに犯されるんだから」
「そうだぞ。余計な時間を使わせるなよ。さらにひどい目に合うだけだぞ?」
後ずさるルネさまに、下衆な声音で見下ろしている男たち。・・・・・・この世界の人間は、どうしてクズが多いのだろうか。殺したい対象がいすぎて困る。殺すなど生ぬるい。ずっと死を体験し続ける生をプレゼントしてやろう。そして、自業自得と言ってやろう。救いを求めても、お前たちには決して与えない。お前らが与えなかったように。
「た、助けて・・・・・・、アユムくん!」
「さあて、もうそろそろで開通――」
「≪一撃一閃≫」
俺は剣を片手で持ち、もう片方の手を刃に添えてスキルを使った。≪一閃≫シリーズはあらゆる場所からでも、狙った場所を狙うことができる斬撃のスキルだ。それは相手が盾で防御してようと、相手が後ろを向いていてこちらにものが見えなくても、狙いきることができるスキルだ。
「・・・・・・えっ?」
だから、こちらに背を向けて下半身を露出している男の一物を切り落とすことくらい容易くできるのだ。男の股からは大量の血が噴き出してきて、痛みか驚きかどちらかは分からないが悲鳴を上げている。
「ぐ、ぎゃがぁぁあっっ! お、俺のチンコがぁぁっ!」
「だ、大丈夫か⁉ くそっ、一体どこから攻撃してきているんだ⁉」
他の二人の男たちは周りを見渡して攻撃してきたやつを探す。そして一人が俺の存在に気が付いたようで、こちらに正面を向けてきたが、その粗末なものをこちらに向けるな。いや、ルネさまに向けるよりかは何倍も良いから良いのだけど、いや、良くない。
「あそこにいたぞ!」
「くそがっ! せっかくのお楽しみだったの邪魔しやがって!」
男二人は下半身を丸出しにした状態で、俺に手のひらを出して魔法陣を展開させている。無詠唱魔法を放つことができるとは、相当な実力者だが、こんなことのために力を使うとは宝の持ち腐れとしか言いようがない。
少し距離があったが、俺は魔法が撃たれる前に一回の踏み込みで一人の男の懐にもぐりこんだ。懐にもぐりこまれた男は、目を見開いてこちらを見てきた。そして魔法の軌道をこちらに変えようとしてきたが、危険だしもう遅い。そもそも臭い下半身のそばになんて居たくないんだよ。
魔法を放とうとしている男の腕を、その刀剣で斬り落とす。悲鳴を上げようとしているところを、追い打ちのごとく片方の腕も斬り落とし、両方の太ももを斬り足を切断した。男の胴体が落ちる前に次の男に狙いつけた。
しかし、その男は驚いてはいるものの、すでに魔法を撃つ準備をしている。こういう死と直面している状況に慣れているのだろうか。そうじゃないとしばらくは驚きで身体を動かすことができない。俺もこの世界にきて、まず最初に慣れたことが驚きに慣れることだった。驚きは人を死の淵に立たせる。だが、それだと俺を殺すことはできない。俺に一瞬さえあれば、スキルで四肢を切断することができる。
「・・・・・・あ?」
「≪四撃一閃≫」
魔法を撃とうとしていた男の四肢は、根元から切断されており男の頭と胴体だけの身体は重力に従って落ちている。斬られた張本人は何が起こったのか分からずに地面に落ちて行く。そして、達磨となった二人の男は地面に落ちた。
「ぎ、ぎぎゃぁあぁぁぁっ! いたいいたいいたいいたいぃぃぃっ!」
一人は悲鳴を上げて腕と足がない状態で悶えており、一人は気を失っている。そして、最初に一物を落とした男は、股間を押さえてこちらを怯えた目で見てきている。一物を斬られても、そんな感じで済むんだな。ショック死はしないのか。そうでないとな。
「た、助けてくれっ・・・・・・、何でもするから見逃してくれよ!」
「ふっ、おかしなことを言う。お前が俺の立場の時に、そう言われて見逃した相手が一人でもいたか?」
俺の言葉に、男は口をつぐむ。この様子だといなかったようだな。いるわけがないよな? 見逃しても何のメリットもないのだから。俺も同じだよ。メリットが一つもない。
「せいぜい自らの罪を悔い改めることだな」
俺は刀剣で両目を横に斬って失明させた。男が悲鳴を上げそうになったところを、男の胴体を蹴って校舎に身体をぶつけさせた。三人を無力化したところで、ずっと力強く目を閉じて震えているルネさまの元へと向かう。
「ルネさま、大丈夫ですか?」
「・・・・・・アユムくん?」
「はい、そうでございます」
ルネさまはぎゅっと閉じていた目をゆっくりと開けた。そして俺の顔を見ると、すぐに抱き着いて俺の胸板に顔をうずめてきた。
「怖かった・・・・・・怖かったよぉ」
ルネさまの服装の状態は、色々なところが丸見えで目のやり場や手のやり場に困るけれど、いつも通りの感じでルネさまを抱きしめた。色々なところに触っているけれど、今は許してほしいところだ。いや、今はこんなことをしている場合じゃなかったんだった。
「すみません、ルネさま。今はニコレットさんやフローラさまを助けなければなりません」
「そうだ! ニコレットが多くの敵を引き連れて一人で戦っているの! 早く助けてあげて!」
「分かっています」
俺はルネさまをお姫様抱っこして、少し離れた場所で戦っているニコレットさんの元へと向かう。ルネさまは俺の首に腕を回してしっかりと掴まっている。綺麗なピンク色の乳輪や見えそうで見えない恥部に目をやらないように、前だけを見る。
何も考えずに走っていると、全員が美男美女で二人の男と七人の女に囲まれているニコレットさんを目視した。ニコレットさんは、すでに全身がボロボロになっており前に至っては乳房があらわになっている。
「ルネさま。今からニコレットさんを助け出しますので、自分に抱き着いてください。少し激しく動きますので、振り落とされない程度にお願いします」
「うん、ニコレットをお願いね」
ルネさまは俺の正面に抱き着かれた。しかし、その状態が非常にまずかった。ルネさまは俺にその巨大な胸を形が変わるかと思うくらいに抱きしめ、足も俺の腰に回して、ルネさまの全身を俺は堪能している。しかも、俺の股間のあれがあれしようものなら、ルネさまにすぐにばれてしまう。わざとじゃないところがすごく言いずらい。
それよりも今はニコレットさんで、抱き着かれた状態で再び≪一閃≫の構えに入る。狙うのは九人の相手の背中であり、内臓に達するか達しないかしないくらいの傷の深さ。骨は斬らせてもらおう。大量の出血をしてもらおうか。
「≪九撃一閃≫」
ニコレットさんを囲んでいた侵入者たちの背中に、九人同時に肩から腰にかけて大きく斜めの傷が入った。これで九人全員を無力化したと思ったが、そうではなかった。女三人は倒れこんだが、残りの六人は倒れずに傷を負いながら戦闘態勢に入った。
「この技は、≪一閃≫か。しかも九撃も同時に放つとはそうとうな実力者だな」
女の一人が俺のスキルを知っているようで、口を動かしながら何もせずに背中の傷が癒していく。≪自己再生≫なのだろうか? 他の侵入者たちはポーションを飲んだり、傷口にかけたりして治している。侵入者の女の一人は傷が深くついていない。この≪一閃≫は、一定のレベル以上の敵には効かないからな。だからこれは想定内。こちらに意識を集中させるのが目的だ。
俺は治療が終わる前にやつらの元に走り出した。回復していない一人の女に向けて剣を振り下ろそうとする。しかし、傷が深くついていない女が籠手を着けた腕で俺の剣を受け止めてきた。拳闘士タイプか、こいつは結構強いな。≪感知≫で分かる。だけど敵という敵ではない。これくらいの敵なら秒で倒す。
「邪魔はさせない」
「悪いが、それはできない相談だ。道を開けろっ」
少し腕に力を入れて、女の腕を籠手ごと斬り落とした。女は斬り落とされるとは思っていなかったらしく、目を見開いて動きが少し止まった。その間に女の身体の正面を深く斬りつけた。女は倒れこんだが、こいつらはどうして俺のことを見て油断するのだろうか。油断しているから、俺は簡単にこいつらを倒すことができる。油断していなければ、あと一、二手は必要であろうけれど、必要ではなかった。
「リラ!」
女一人がこちらに槍を構えて襲い掛かってきた。そいつは特に速いわけでもなく、俺は穂先を斬り落としてさっきの籠手の女と同様に正面を切り裂いた。力なく倒れたが、やはり強くはなかった。
「おい、女を抱えている変な男! 動くな!」
次に狙いを定めようとすると、一人の男がニコレットさんに後ろから抱き着いて短剣を首筋に当てて俺に見えるようにしている。ニコレットさんは俺を見て申し訳ない顔になっている。
「この女を助けに来たんだろう? なら今すぐにその剣を置いて両手を挙げろ! さもなくばこいつを殺すぞ!」
「・・・・・・すみません、ルネさま。少しの間だけ降りていてください」
「うん、分かった」
ルネさまに降りてもらい、俺は言う通りに剣を無造作に前に投げ、両手を挙げた。ルネさまも同じように両手を挙げてくださった。その際に、ルネさまのすでに露わになっている巨乳がものすごく揺れているのに目が釘付けになってしまった。それをニコレットさんに見られ、俺に向けて殺気を放たれ、俺は前に視線を戻した。
「したぞ。次はどうするんだ?」
「ふふふっ、よくも乙女の背中に傷をつけてくれたじゃない。しかもそこそこ顔が良いじゃない。どう弄んでくれようかしら?」
残っている男女二人ずつのうちの女一人が、俺のそばまで来て俺の顔を撫でてきた。こいつは俺から見れば美人であるが、ニコレットさんを追い詰めようとする奴なんてお断りだ。こいつに触られても鳥肌しか立たない。そもそも、こんなところで足止めを喰らっている暇はないんだ。
俺は俺に触れている女の腹を、俺の手で貫いた。生暖かく、ぬるっとする感覚を体感しながら手を抜くと、女は驚いた顔をして倒れて行った。引き抜いた手は真っ赤に染まっている。
「お、お前! こいつがどうなっても良いのか⁉」
「アユム! 私のことは構わずにやれ! お前はお前の使命を果たせ!」
ニコレットさんに刃物を突き付けている男は叫びながらニコレットさんの存在をアピールしている。一方ニコレットさんの方はやれと言ってくる。ニコレットさんの首筋からは血が流れ出ている。俺は言われなくてもやるつもりだ。ただし、ニコレットさんを救う前提でな。
「安心してください、ニコレットさん。すぐに助け出します」
「そんな甘い考えでは、何も救えないぞ!」
俺はニコレットさんと男の元に一瞬で向かう。目の前に俺が来たことに驚いている男であるが、俺はその隙に拾った剣で男の刃物を持っている方の腕を斬り落とし、ニコレットさんを胸に抱きかかえて男を切り裂いた。残りの二人も倒そうかと思ったが、二人はニコレットさんが捕まっている件の間にどこかへと去っていった。
「ほら、大丈夫だったでしょう?」
「・・・・・・危ない真似はするな」
俺がニコレットさんに触れて≪自己犠牲≫を発動させながら、ニコレットさんに自慢げに言うと、そっぽ向かれてしまった。だが、ルネさまとニコレットさんを救い出せてよかった。
「ニコレット! 大丈夫⁉」
「私の方は問題ありません、アユムが治してくれているので。ルネさまはお怪我はありませんか?」
「うん、私も大丈夫。アユムくんが危ないところを助けてくれたから。あっ、アユムくん、手を綺麗にしてあげる」
ルネさまがニコレットさんに詰め寄って怪我がないかを確かめ、俺の血濡れた手を水の魔法で洗い流してくれた。俺がニコレットさんの怪我を治したから怪我は大丈夫だけど、二人の服装が目のやり場に困る格好になっている。どこかで着替えてほしいものだ。
「それよりも、アユム。フローラさまとブリジットはどうした? 周りにはいないようだが?」
「今はフローラさまの元に向かっている途中です。先ほど学園の異変に気が付いたので」
「それなら早くフローラさまの元に向かえ。私とルネさまのことは良い」
「どうするつもりですか?」
「どうもしない。二人で身を潜めているだけだ。お前は自身のお嬢さまを守りに行け」
「うん、私たちのことは気にしなくていいよ? 邪魔になるだけだから、早く行ってあげて」
二人がそう言ってくるが、正直不安でしかない。あんなことが起こって、二人でどうにかできるとは思えない。・・・・・・それに、ルネさまの手が震えているのが見えた。俺に話しかけた時に隠しているのも確認した。たぶん我慢しているんだろうけれど、ここで襲われるより抱えた方が良いだろう。
「いいえ、お二人は連れて行きます。また襲われても困りますから」
「お、おい!」
「きゃっ」
剣を後ろ腰に携え、二人を両肩に背負い走り始める。
「おい! 連れて行くのは良いとしても、この体勢はやめろ! 恥ずかしい!」
「そう? 私はこれも良いと思う」
恥ずかしいと言うニコレットさんと、文句一つ言わないルネさまを背負いながら、俺はスアレムの気配のする方向へと向かった。・・・・・・フローラさまは一体どこにいるのだろうか。
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