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129:騎士とアンジェ王国。③

書いている上でここってどうだっけというので自分で読み返しているのですが、案外誤字とか脱字とか間違いを見つけられるものですね。そういうのがあれば遠慮なく報告してください!

 女性の冒険者の一人が俺に向かって剣で斬り込んできたため、俺はクラウ・ソラスで剣を折った。そして驚いている前衛の冒険者に盾の突っ込もうとするが、後衛の冒険者が炎の魔法で助けに入ったことで俺は中断して魔法を切り裂いた。


 戦闘が始まったことで女性冒険者たちのフォーメーションを見ると、前衛二人、中衛一人、後衛二人のバランスの取れた形だった。


 この人たちの相手をしている間に他の人がここに続々と来ていることが≪完全把握≫で分かっている。それはこちらに戦力を集められているから良いんだが、人が多くなって攻撃が雑になって大けがを負わせる可能性は避けたい。


「……ふぅ」


 そうなれば、一人一人にかけていられる時間は限られている。一撃で終わらせるのがベストであると理解した俺は、そうするべく構えて素早く冒険者たちに向かっていく。


「なっ! はや――」

「まず一人」


 俺がさっき剣を折った前衛の女性冒険者の前に立ち、クラウ・ソラスの柄頭で女性の腹にめり込ませたことで女性はその場に倒れた。それに驚いて隙だらけなもう一人の前衛の冒険者の前に一瞬で移動した。


「このっ!」

「二人」


 メイスを持っている女性冒険者は俺にメイスを振り上げて攻撃してこようとするが、白銀の盾の縁をお腹に当てて数メートル先に吹き飛ばした。そして次の標的である中衛の女性冒険者に狙いを定めようとする前に、雷を剣に纏わせて斬りかかってくる中衛の女性冒険者が俺の近くに来ていた。


「はぁぁぁっ!」

「三人」


 雷を纏わせている剣であろうとも、俺のクラウ・ソラスに敵うわけがなくその剣をさっきみたいに折るのではなく白銀の盾で弾き、クラウ・ソラスを上に放り投げ掌底をお腹に喰らわせて女性冒険者を飛ばしてから、クラウ・ソラスをキャッチした。


「残り、二人」


 俺が攻撃職の三人を戦闘不能にして残りの後衛二人の方を見ても、目が死んでおらず俺のことを倒そうとしている目をしている。俺は何もしていないのにこんな目を向けられることにげんなりとしながら、俺はその二人も倒すことにした。


「チセ行くよ!」

「うん!」


 そう言った後衛職の二人は片方が杖を掲げながら詠唱を口にし始めた。だがあいにくとそんなことを待っている俺ではなく、無防備な二人に近づこうとするが、詠唱をしていないもう片方が杖をこちらに向けて何か魔法を発動したことは分かった。


 それでも俺は一瞬で距離を詰めようとするものの、二人の前に見えない壁があってぶつかりそうになるがクラウ・ソラスで破壊して二人のお腹に盾の縁と剣の柄頭を叩きこんでその場で気絶させた。


 そして≪完全把握≫でどこから誰が来るのか分かっているため、サラさんの方に攻撃を仕掛けてくる人がいることも把握している。だが俺はそちらに攻撃することなく、俺の方に来る人に視線を移した。


「悪いが大人しくつかまってくれ!」

「これ以上国を脅かすな!」


 鎧を纏っているサラさんの方に女性の冒険者が来て、そう言って剣とハンマーで武器を振り上げていたがサラさんはそれを避けようと一歩後ろに下がると必要以上に後ろに下がっていた。


「わっ! ……えっ、どうしてこんなに……」


 そのことに声で驚いていることが分かった。こうなることを少しだけ想像していたから当たり前と言えば当たり前と言える。


「サラさん、その鎧は纏っているだけではなく、身体能力が異常に上昇しています。ですから魔力を使わなくてもおそらくそれ以上の身体能力を発揮することができます」

「……へぇ、この鎧ってそんなに凄いんですね……」

「まぁ、少し気を付けておかないと相手を大けがさせてしまうかもしれないので、逃げ回るだけでも構いません」

「いえ、要は力を制御できればいいだけの話なのでやってみせます!」

「それなら止めはしません。気を付けてください」


 サラさんが戦うと言うので、俺は止めずにサラさんがやりたいようにしてもらうことにした。力の制御ができれば戦力になることは間違いないわけであるからだ。サラさんは攻撃してくる冒険者の攻撃を避けて体を慣らしている。


 サラさんに何かあれば気が付くし、白銀の鎧があればする傷一つ付くことはない。そうなれば俺は俺の方に来ている人たちをどうにかすることを考えることにした。


「ここで止まってもらいます」

「そうです。これ以上好きにはさせません」


 俺とサラさんを倒すために次々と冒険者たちが来ているが、彼女らは俺をどういう風に見ているのか気になった。俺の印象を変えている、なら俺がアンジェ王国を救った時や騎士王決定戦の時を覚えているはずで、俺に勝てるわけがないと思うはずだ。そんな感じもせずに、俺に向かってくるということはそれも忘れていると考えれる。


「今は関係ないか」


 ただそんなことを考えている場合ではないと思い、今にも俺に攻撃を仕掛けてきている人を手加減して倒していく。だが、こんなにもいっぱい来られても困る。疲れるからとかではなく、全員倒してしまえばアンジェ王国の戦力が著しく低くなる。


 つまり、強い人しか敵わないと思われれば女性冒険者たちも引くし、ラフォンさんなどを倒すだけで俺たちの襲撃は収まるはずだ。誰も敵わないと思えば国中はパニックになるだろうが、それよりも前に解決すればいいと考えた。


「緊急事態だから、大目に見てくれ」


 復興中の街を直した人々に少し謝罪をしてから、周りにいる十数人いる冒険者たちに直撃は避けても少しだけ当たるようにして、俺はクラウ・ソラスを手加減をしているが地面を切り裂くくらいの斬撃を放った。


「きゃっ!」

「くっ!」

「うそでしょ⁉」


 女性冒険者たちが軽くかすった程度とは言え、地面を数メートル先まで切り裂いており建物も真っ二つにしているくらいであるから吹き飛ばされている。せっかく建て直した建物なのにと思いながら、すべてはこうした張本人に罪を償わせてほしい。


「外してしまったか。……次は、当てる」

「……あ」


 俺は大きくえぐれている地面を見た後に女性冒険者たちの方を向いて鋭い目で低い声音で言い放った。そうしたところ、ある女性は失禁し始めたことでやり過ぎたと思ったが、これくらいしないと下がってくれないと思っている。


「アユムさん、それは怖いですよ……」


 サラさんと戦っている冒険者たちも俺の攻撃に驚いているためサラさんがこちらに来たが、サラさんは俺のさっきの言葉に怖いと言ってきた。あまり気にしていなかったが、怖かったのかと認識した。今までは人ではなく魔物と戦うことが多かったため気にすることはなかったからだ。


「そうですか? でも、自分としては思惑通りになってくれそうです」


 この場にいる冒険者の他に、状況を監視している女性が冒険者たちの近くに行き何かを話している。俺はこれ以上必要以上に戦力を減らすことはしたくないため、優しいことに待ちながらサラさんに話しかける。


「それよりも、その鎧には慣れましたか?」

「はい、人を手加減して攻撃できるくらいには慣れました」

「それは何よりです」

「それにしてもこの鎧ってすごいですね。攻撃されても傷がつかずに身体能力を上げてくれます」

「まぁ、神器の固有スキルですから強いです。ですが、纏わせている側の自分が言うのもあれですが、あまり長い時間使い続けることはお勧めできません」

「どうしてですか?」

「纏っている鎧の魔力はこちらが負担していますが、体力の消費や疲労は蓄積されているはずです。まだ大丈夫でしょうけど、鎧を解除した時に疲労がどっと来るかもしれません」

「それなら大丈夫です。今何とか出来るのならそんなこと、どうということはないです」


 サラさんのその言葉を聞いて、早めに終わらせないとサラさんに無理をさせてしまうと思った。一刻も早くアンジェ王国にかけられている魔法を解除しないといけないと思っていると、サルモンさんと三木がすれ違っていた。二人を≪完全把握≫で見ると今のところ、こちらとは違い何も起こっていない。


 二人は右回りと左回りで国を回っているが、おそらく周辺にはなく国の中枢にあるのではないかと勝手な想像をしている。そっちの方が守りやすいということもあると思った。


「撤退するみたいですね」

「そうみたいですね。ですが、これからです」


 冒険者たちは引いて行き、そしてこちらにものすごい速度で来ている人を確認できた。そいつは≪完全把握≫の精度が落ちていても嫌というほど分かる人物だった。


「はぁっ!」

「はぁ」


 建物の上から勢いよく飛んできた前野妹が俺に殺気をビンビンに出しながらジュワユーズで斬りかかってきたため、俺はクラウ・ソラスで受け止めた。神器が近くにいることで、俺のクラウ・ソラスは白銀に光り、前野妹のジュワユーズは深紅に光っている。


「これ以上、アンジェ王国で好きにさせないから」

「……良いな、この感じ」


 今まで前野妹から受けたことのない殺気と言葉を受け、俺は笑みを浮かべてしまった。今までは俺が前野妹たちを無下にしていたから、今は逆になる。ただ今までと違うことは、こちらも相手を殺すことに躊躇がないということだ。


「今すぐにこの国から出て行くのなら、危害は加えないよ?」

「それは強い奴が言うセリフだ。弱い奴が言うセリフじゃないぞ?」

「そう……。≪神立極地(かみたつきょくち)≫!」


 俺の言葉に少し残念そうな顔をすると、ジュワユーズの固有スキルである≪神立極地≫を発動させて両足の膝下から足にかけて深紅の鎧が出現した。あちらが固有スキルを出したとしても、こちらが固有スキルを出す必要はない。それくらいに実力差はある。


「死んでも許してね」

「死んだら許すもくそもないだろ」


 敵にも甘い前野妹がそう言った直後、俺のすぐ前に前野妹の姿があり俺に斬りかかろうとしていたが俺はクラウ・ソラスでジュワユーズを弾いて前野妹の胴体にすぐに回復できるが少しは動けないような傷の浅さに斬りつけた。


「くっ……」

「良いのか? 逃げないで?」

「ッ!」


 斬りつけられたことで前野妹は苦しそうな顔をしてその場で止まっているが、俺が二撃目を放つと暗に言うと俺から距離を取った。しかし浅い割には斬り傷から血があふれ出ている。


「ちょ、ちょっと、アユムさん! やり過ぎじゃないんですか……?」


 前野妹の傷を見たサラさんが焦りながら言ってくるが、今は敵なのだからある程度は手加減をしない方が良いと思っている。


「大丈夫ですよ。死なない程度には斬りつけています」

「えぇ……、あれでですか?」

「はい。一応内臓を傷つけないようにしています。それにあの程度ならすぐに治すことができますよ」


 そう言うや否や、俺とサラさんの方に緑の矢が複数飛んできたが俺が一振りですべて打ち落とした。矢を放った張本人を見ると、屋根の上でキム・クイを構えている佐伯がそこにいた。佐伯は今度は俺に集中して数十の緑の矢を一度に放ってきた。


「≪一閃≫」


 クラウ・ソラスを動かさずに≪一閃≫を使って緑の矢をすべて打ち落とす。今度はこちらの番だと言わんばかりに≪裂空≫を佐伯に放ったが、放つ前に移動を開始した佐伯に当たることはなかった。


 この二人が来ているのだからもう一人が来ていてもおかしくないと思っていると、前野姉が少し息を切らしてこの場に来て、一直線に前野妹の方に向かった。そして前野妹の傷をドラウプニルで治している。


 前の世界でいつも五人でいるところを見ていたから、三人でいることは少なく感じるとくだらないことを思いながら、こいつらを早めに倒すことにした。最悪、この国の強者をすべて倒して魔法の原因を探すことにあるが、それよりも前に二人が探し出してくれることが望ましい。


「あの人、すごく強いよ」

「……分かってる。見ていた」

「そうだよね。ユズキちゃんがこんなにもなるくらいだから……」


 三人が集まってこちらを見て話しているが、前の世界から知っていても例外なく魔法にかかれば俺のことを知らないようになっている。だが、サラさんはどうなんだと思った。俺を標的にした魔法ならサラさんと前野妹たちは面識があるはずなのに躊躇なく攻撃してきた。


 もしかすれば、俺と俺の仲間を標的とした魔法かもしれないが、すべてを解決すれば分かる話だと思って前野妹たちに意識を集中させる。幸い、この場に前野妹たち以外はおらず、それ以外の人が来る気配も今のところはない。


「サラさん、これからはおそらく強い人が来ます。ですから戦おうとはせずに逃げ回っていてください」

「この鎧があれば大丈夫じゃないですか?」

「大丈夫ですが、その鎧はあくまで自分がいないと使えないものです。ですから自分みたいに受けるよりも逃げることに集中していた方がこれからに役立つはずです」

「……確かに。なら、逃げ回っています」

「そうしてください」


 あまり白銀の鎧の旨味を味合わせないように逃げることを癖付けさせようとサラさんを説得することに成功した。この白銀の鎧は強大過ぎて使用者に何とも言えない満足感を与えている気がする。俺も一時そんなことを思ったことがあるが、今はそんなことはない。何より疲れるからだ。


「さぁ、さっさと始めるぞ。殺し合いを」


 前野妹の傷を回復し終えたタイミングを見計らい、クラウ・ソラスを握り直しながら前野妹たちに歩み寄っていく。おそらく今の俺はすごく殺気を放っているらしく、三人の顔がこわばっているように見える。


「コウスケが来るまでの間、耐え続けるよ!」

「……了解」

「うん、そうだね」


 前野妹から稲田の名前が出て疑問がわいた。少し前に前野妹たち四人と戦っていた時は稲田の話題を出した時に冷たい声音で答えていたが、今はそんなことはなく普通どころか最大限信用しているように感じる。


 このことから、この国の人たちは洗脳に近い何かを受けているのだと思った。元より俺の印象を変えることをしているから洗脳と言えるが、それ以上のことをしているような感じがしてならなかった。とにかく、今はこいつらを片付けることだけに専念する。


「こっからは大けがしても知らないからな?」


 俺はそう言うと一歩で前野妹たちの元へとたどり着き、驚いている三人の中でいち早く前野妹がジュワユーズを構えようとしているがその間に俺は何度こいつらを殺せることかと思いながら、前野妹がジュワユーズを構えるのを待ち続け、構えた瞬間に俺はジュワユーズに向けてクラウ・ソラスを折るつもりで斬りつけた。


「きゃっ!」


 だが、前野妹の手から弾かれるだけでジュワユーズが折れることはなかった。さすがは神器と言ったところだと思いながら前野妹の腹に蹴りを一撃、佐伯の腹にも蹴りを一撃、最後に前野姉の腹に盾を一撃して一瞬で三人を吹き飛ばした。


 三人は成すすべなく後方に吹き飛ばされて行くが、前野妹だけは吹き飛ばされるところを無理やり止めて一度収納したジュワユーズを出現させてから俺に向かってきた。これ以上長引かせるわけにもいかず前野妹を気絶させようとしたが、ある場所である変化が起きたことで前野妹をまた吹き飛ばしてそちらの様子を確認する。


「……まさか」


 俺がずっと≪完全把握≫で見ていた三木が突然止まって戦闘力が落ちている。そして気絶しているように感じている。これは誰かに三木がやられたと思って間違いなかった。誰がやったのかが全く分からないくらいの≪完全把握≫の精度だった。


 しかし三木の気配は強く感じることができ、三木が確実に俺の方に来ていた。おそらく三木をやった奴に運ばれているのだろうが、それが誰なのか全く見当がつかない。そもそも今は俺がこの国の敵なはずであるため、三木が襲われる理由が分からない。


「まだまだ!」

「……いい加減しつこいぞ」


 三木の方に意識を向けている時に前野妹が俺に斬りかかってきた。どうせ俺に意味がないのに無駄なことをしてきて、今はお前に構っている暇はないと思った。だからジュワユーズを弾いて俺はクラウ・ソラスを収納する。


「そろそろ眠っていろ」

「ぐうぇ!」


 そう言った俺は前野妹のお腹めがけて掌底を強く撃ちこんだ。撃ち込んだことで前野妹の口からゲロやら血やらが吐き出され、衝撃を逃すことができずにその場で倒れ込んだ。そしてもう二人を気絶させようと思ったところで、三木の気配と、こいつも忘れられるはずがないと思う気配が近くまであった。


 そいつが来るまで俺はサラさんの元まで戻り、前野姉が前野妹をドラウプニルで治している。そして待つこと数分も経たずに三木をお姫様抱っこをしている男がこちらを気持ち悪い笑みで見ていた。


「よぉ、テンリュウジ」

「……稲田か」


 稲田亘祐が俺の前に再び現れた。

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