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118:騎士と書庫。⑧

大変長らくお待たせいたしました。もはや待っていた人がいないかもしれませんが、ようやく書けたので投稿することにしました。三か月ほど空いてしまったのですが、話の続きはバッチリと覚えていたので、展開自体は思っていたのと合っているのですが、問題は文章についてです。前に書いていた文章と、今書いた文章に、若干の違いがあるような、ないような気がしてならないのです。そこら辺を指摘していただけるとありがたいです。

 どうするか決めた俺は、クラウ・ソラスに意識を集中させる。一つ目の契約者の精神を破壊することは難しいだろう。物理的に壊すことを得意とする俺だが、精神を壊したことがないから、今は不可能と言っても良いだろう。


 そうなれば、後者の契約の破棄の手段しかなくなる。契約を破壊するスキルなど持っていないが、それに近しい≪断絶≫は持っている。これは空間を斬ることができてすべてを断ち切れるとなっているが、正確にはこの次元にないが重なってこの次元に干渉している空間を斬ることができるスキルになっている。だから、通常なら斬れないものはないことになっている。


 契約自体がこの次元に干渉していれば俺の≪断絶≫でも斬ることができたが、契約は別次元で契約者同士が繋がっているから、干渉していないため斬ることができない。だけど、≪順応≫する前から目的に近しいスキルを持っているのなら、目的のスキルは手に入れやすくなる。


 どういう原理かは未だに分からないが、原型があるかないかの違いではないかと俺は思っている。そんなことはさておき、これからどう≪順応≫するのかが重要だ。≪順応≫は、順応したい状況に陥り、どう対処するかを考え、対処する方法を獲得し、順応するというのが一連の流れだ。


 しかし、そう上手く順応できれば苦労はしていない。単純な攻撃ならば、早ければ目を良く、強力ならば身体を頑丈にすることができるが、こういう特殊な件はあまり順応はスムーズに行くことはない。それでも元となるスキルの≪断絶≫を持っているだけで大きく違う。


 意識するのは、どうこいつを倒すか、そしてこいつを倒す自分を思い描くこと。順応をする過程の二番目が一番大切になってくる。ここが上手く行っていないと三番目に行くことができない。その点、≪魔力解放≫で超巨大モンスターを一撃目ですべて読み取り、二撃目で倒すということは化け物じみた能力だ。


 俺が破壊ではない傷を肩代わりする≪自己犠牲≫を習得するのに結構な時間を要した。それは根本的に別方向のスキルであるから時間を要しただけか。兎にも角にも、集中しなければこいつらを倒すことなんてできない。これ以上時間をかければ後ろにいるサラさんの精神的負担も大きくなるだろう。


「・・・・・・やるか」


 俺のその言葉を合図に、魔導書の契約者である男は俺に襲い掛かってきた。俺は遠慮なくクラウ・ソラスで≪断絶≫を使いながら男を真っ二つに斬った。その際に、男と魔導書の契約を断ち切るイメージを思い浮かべながら斬ったが、≪断絶≫で空間ごと断ち切ったに過ぎなかった。一度死んだ男は、再び生をその身体に宿している。空間を断ち切ったため、クラウ・ソラスが通った剣の軌道に真黒な何もない空間が見える。


 少し力を入れ過ぎてしまった。いつもなら良い力加減でこの空間のすべてを断ち切ることができたが、さっき空間ごと斬った力加減で空間自体を斬ってしまった。これではない、これは空間を斬っただけで別の次元にある契約を斬ることとは全く違う。


 ・・・・・・≪魔力解放≫ができれば、こいつを二撃で倒すことはできるだろうが、この場所と後ろにサラさんがいるからやることはできない。そこまでの制御を俺ができないと思っているからだ。


 ただ、最悪の場合は≪魔力解放≫しなければならないだろう。俺が一向に≪順応≫することができず、万が一にも不意を突かれてサラさんに危害を加えられた場合は、俺は惜しみなく≪魔力解放≫を使う。だけどあれは奥の手の中の奥の手であるから使わないのならそれでいい代物だ。他にも戦うべき相手がいるのならなおさらだ。


 だからこそ、もっと集中しないといけない。痛い思いをしてスキルを獲得するよりも、よっぽど難しい想像と集中。これら二つを今ここで同時に≪順応≫してしまえば、俺に怖いものはなくなるだろう。いや、それは欲張っているな。今はただこいつを倒すことだけを考えろ。こいつと魔導書を切り離すことだけを考えろ。


「すぅ・・・・・・ふぅ・・・・・・」


 俺は深く息を吸い、深く息を吐く。今だけは周りの情報を遮断して目の前の男に集中しろ。自身の心臓の音すら煩わしくすら感じる。だが、突然俺の周りから女性騎士さんの息遣いや、サラさんの息遣い、さらには自身の心臓の音、周りの光景が消えていく。見えているのはただ目の前の男と魔導書のみ。自分の心臓の音すら消えたことで驚いたら、すぐに元の光景と音が戻ってきた。


 すぐにスキルを確認すると、≪明鏡止水≫というスキルが手に入っていた。俺は即座に意識して≪明鏡止水≫を使い、男と魔導書以外のすべての情報を遮断する。この≪明鏡止水≫というスキル、こういう使い方ではない気がするが、こういう使い方をする以外に今を乗り切る方法はない。


「ッ!」


 しかも、どうしてかは分からないが、このスキルを使い続けていると嫌な予感しかしない。いや、本能が何かを訴えているのかもしれない。俺はその本能を信じて男の元に駆け出した。男はニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべながら構えている。


 いつもならそんな男の笑みを消してやると思うところであるが、今はそんなことを一切思わず、ただただ男と魔導書を切り離すことに集中している。心が落ち着いている、いや、無駄なことを一切考えれなくなっていると言った方が正しいか。いつもなら正常な思考ができなくなるから危ないが、今はありがたい。


「ハァァッ!」


 男と魔導書の契約を切るイメージを頭の中で作り上げながら、≪断絶≫で男の身体を切り裂いた。男は余裕の表情を浮かべながら斬られて地面に倒れたが、こちらにニヤニヤとした表情をしながら起き上がろうとしている。一度殺したが生き返ったため、また今度もダメかと思ってしまった。


「・・・・・・ッ! ど、どういう、こと、ふぐっ!」


 起き上がろうとした男は未だに余裕の表情を浮かべていたが、急にその表情が一変した。起き上がろうとしている男は起き上がれずに何が起きているのか分からずにか、自身に起こった異常に驚いている。そんな男の気配を探ると、どんどんと生命力が弱まっている。


 俺も多少驚いたが、自分のスキルの中に≪異次元干渉≫が追加されていることで納得した。つまり、俺はこの苦しんでいる男と魔導書の契約を断ち切ることに成功したようだ。それを確信した俺は、すぐさま≪明鏡止水≫を解除した。


「ぁ・・・・・・ハァ、ハァ、すぅぅ・・・・・・ふぅ」


 スキルを解除した瞬間、自分が呼吸をしていないことに気が付いた。あと少し≪明鏡止水≫をしていれば、身体に異常をきたしていたのではないかと思うくらいに呼吸をしていなかった。急いで酸素を取り込むと同時に、このスキルの異常性に気が付いた。使えば呼吸を忘れる集中力を得られることができるが、使いどころによれば毒となってしまう。


「だ、大丈夫ですか⁉」

「ハァ、ハァ・・・・・・、はい、大丈夫です」


 急にしんどそうにしている俺を心配してサラさんが駆け寄ってきてくれた。俺は少し呼吸を整えて大丈夫だと言った。だが、そんな中でも俺は男と魔導書から目を離すことはしない。男と魔導書の契約を断ち切ることができたはずだが、殺した男は生き返った。それは契約を断ち切ったと言えるのか疑問を覚えたからだ。


「ぐぅ、よくも・・・・・・よくも、この俺と、魔導書を・・・・・・」


 起き上がれず、痛みにもがいていた男は、ひどい顔で俺の顔を睨みつけながら恨み言を向けてきた。この男の状態で何かできるとは思わないが、未だに理解していない魔導書を相手にしている以上、油断することはできない。


「気を付けて! まだ契約が切れたわけじゃない!」


 女性騎士さんが大声で忠告してくれたと同時に、男と魔導書から歪な魔力が多くあふれ出てきた。俺はその光景を見て、男と魔導書の契約が切れていないと思ってしまった。完全に斬ったと思っていたのに、失敗していた。だが、それなら男が苦しんでいる理由が分からない。男と魔導書がどういう契約状況か意味が分からなくなっている。


「どういうことですか? 契約は切れているのですか? 切れていないのですか?」

「契約は切れています。いえ、切れかけています。あと少しすれば契約は切れます」


 どういうことか分からずに、女性騎士さんに聞いた。女性騎士さんはこのことを分かっているようで、すぐに答えてくれた。


「それなら、この莫大な魔力はどういうことですか?」

「これは、男と魔導書が契約していた時に繋がっていた魔力でできた道に亀裂が入り、切れそうな道から魔力があふれ出ている状況です。放っておいても道の魔力は魔導書ほどではありませんから、数分のうちに魔力は収まります」


 女性騎士さんの話を聞く限り、魔力が収まれば大丈夫だと聞こえる。だけど、この魔力は大丈夫なのかという問題になってくる。女性騎士さんが俺に必死な声音で忠告してくれたことが気になった。


「なら、この魔力は大丈夫なのですか?」

「・・・・・・大丈夫では、ないです。この魔力はさっき魔導書が出していた魔力とは違い、契約をするための魔力で、魔力の性質が違います。魔導書はそれ単体でも危険なことは変わりませんが、それを扱うための契約者がいるのといないとでは危険度が格段に違います。そして、禁忌指定された魔導書の中には、自我がなくても無理やり契約を結ばせることができます。この反転の魔導書のように」

「この魔力を浴びれば、危ないということですか?」

「はい、危ないです。数秒も浴びれば、強制的に魔導書と契約することになり、常人なら魔導書に込められた怨念に自我が支配されます」


 俺は女性騎士さんの話を聞いて、すぐにクラウ・ソラスを前に出して≪浄化の剣≫を発動させた。俺ならば簡単には支配されることはなく、≪不可侵領域≫があるから侵入されることはない。だが、後ろにいるサラさんは違う。こんなおぞましい魔力がサラさんが耐えられるとは思わない。


「後ろに下がっていてください、サラさん」

「は、はいッ」


 そして、莫大な魔力はこちらに襲い掛かってきた。俺はサラさんに俺の背後についてもらい、クラウ・ソラスで歪な魔力を浄化していく。だが、今までに体験したことのないほどの魔力の波が襲い掛かってくる。俺は負けずにクラウ・ソラスで吸い込んでいく。


「・・・・・・これは?」


 今まで通りクラウ・ソラスで吸収して浄化していくが、少しずつ変な感覚が生まれてきた。言葉では言い表せないが、言い表すとするならば身体のどこかが自分の物ではない、そんな感覚だ。


『や・・・・・・、い・・・・・・めて』

「ッ! こ、れは」


 頭にひどい鈍痛を感じ、またしても頭の中で声のような音が正確に聞こえずに響いてくる。身体がこの浄化を拒絶しているとしか考えられないが、ここで浄化をやめるわけにはいかない。やめればサラさんを守れなくなる。サラさんと、女性騎士さんたちを抱えて歪な魔力が来る前より先に逃げる、という手も考えたが、サラさんの身が持たない可能性もある。


 次々に魔導書の魔力が来ているため、どんどんと魔力を吸いこんでいるが、次第に俺の身体は重くなってくるのが分かる。≪痛覚麻痺≫のスキルがあるはずなのに、頭は時間が経つにつれて痛さが重くなり、吐き気も感じるようになる。このことに、≪浄化の剣≫の浄化作用が機能していないのかと考えた。


「うっ・・・・・・、ハァ、ハァ、ハァ」


 まともに立っていることすら苦しくなり始め、呼吸するのもしんどくなる。さらに、早く倒れてしまいたいという気持ちすらも湧き上がってきた。だが、サラさんを守るという気持ちだけは絶対に手放してはならない気持ちなため、それだけを胸に刻む。


 しかし、早く終わってくれないと俺の身体が持たない。今までの魔力の積み重ねで、浄化の機能が低下するということを初めて知ったが、どれくらいの魔力を吸ったのかもう分からないくらいに吸収して浄化している。これくらいしていれば、何かしら≪順応≫できそうな気もするが、そんな気配はない。


 何より、クラウ・ソラスが元の美しい白銀など見る影もなく、醜い黒へと変わり果てていた。このクラウ・ソラスの状態に申し訳なさと自分の不甲斐なさで顔をしかめてしまった。何もかもに嫌な気持ちになり、自分すらも消してしまいたい、そんな気持ちになる。


「アユムさんッ!」


 意識も消えそうになったところに、サラさんの声で意識が覚醒した。サラさんは後ろから俺に抱き着いてきていた。それも、離れないように思いっきり抱き着いている。その温かさだけで、俺はだいぶ落ち着いてきた。


「もう、頑張らなくて良いですよ?」

「・・・・・・何を、言っているんですか?」

「もう十分に、アユムさんは頑張りました。だから、私のために頑張らないでください。もう私は満足ですから。こんなにも必死に守ってくれる人がいるのだから、これ以上に幸せなことはないです。これ以上アユムさんが苦しい思いをする方が嫌なんです」


 顔だけ後ろを向けると、泣きそうな顔で笑っているサラさんがいた。その顔を見た瞬間、身体の異常がすべて吹き飛び、ある一つの感情だけが俺の中で支配した。


「・・・・・・不甲斐ない」

「え?」


 ぼそっと言った俺の一言をサラさんは聞こえていなかったようだが、それでいい。俺が守りたいと思っているだけなのに、それを守っている人にもういいと言われるなんて、不甲斐なさしか溢れてこない。


 そして、不甲斐なさと同じくらいに騎士としての自分自身もハッキリとした。こんな魔導書ごときの魔力で、俺が倒れることなど許されない。俺が負ければ、俺の守っているものはすべて守れない。俺は常に勝ち続けなければならない。それが騎士としての俺だ。


「こんなことで・・・・・・、負けて、られるかぁッ!」


 クラウ・ソラスの浄化作用が弱っているから、順応できないから、吸収しすぎたから、そんなことは関係ない。それらすべてを跳ね返してこその騎士で、魔導書に負けられるわけがない。


 俺はより一層気合を入れて膨大な魔力を吸いこんでいく。それに応じてクラウ・ソラスの機能も回復しているような気がする。それよりも、今はこの莫大な魔力を耐えることに集中しなければならない。それだけに集中すれば後はどうでもいい。この一瞬だけを――


「ハァ、必死過ぎて笑えるんだけど」


 俺の斜め後ろから少し冷たい声が聞こえてきた。そちらを横目で見ると、魔導書のことを教えてくれた女性騎士であったが、こちらを冷めた目で見てきており、先ほどまでの雰囲気とは一切違う。


「ねぇ、少し聞いても良い?」

「今じゃないとダメですか?」

「うん、ダメ。答えによっては助けてあげてもいいよ?」

「自分を助けた方が、あなたも助かると思いますが?」

「別にあたしはここで死んでも悔いはないから。あんたはあるでしょ?」

「ある」

「そう、なら答えて」


 さっきまでの女性騎士の雰囲気とは打って変わり、冷たく、達観して、何もかもどうでも良いと思っている雰囲気を醸し出している。今は話しかけられたくないが、助かる方法があるのなら質問にさっさと答えることにした。


「質問、どうしてそんなに必死で騎士をしているの? この人が大切だから? それとも死にたくないから? はたまた、あんたが騎士だから?」

「そんなものは決まっている、全部だ」

「ふぅん、それは随分と欲張りだね。じゃあ、騎士のあんたに聞くけど、騎士って何?」


 こんなにもしんどい思いをしているにもかかわらず、簡単に思えて難しいことを聞いてきた。だけど、考えることもなく、俺の答えは決まっていた。


「それが俺のすべてだからだ。騎士になるまで何もなかった俺が、騎士になって、大切な人ができて、これが俺だと胸を張って答えられるからこそ、俺のすべてだ」

「じゃあ、騎士じゃなくなったらどうする?」

「騎士でない俺は死ぬだけだ。騎士であるからこそ、俺に生きてる価値がある」

「・・・・・・随分といかれているね」

「それで十分だ。大切な人を守れるのなら、俺はそれを貫き通す」


 俺がそう答えると、女性騎士は黙った。これは答えが気に入らなかったのかもしれない。元よりあるかどうかも分からない力に頼るつもりもなかったから、目の前の魔力に集中するだけだ。


「このこと、秘密にしておいてよ」

「あ?」


 女性騎士が黙ったかと思ったら、今度は俺の隣に来た。そしてクラウ・ソラスを握っている俺の手に彼女が手を添えてきた。何かと思った瞬間に、クラウ・ソラスと、俺の中にある歪な魔力が一気に吹き飛んだ。俺の身体は本調子に戻り、クラウ・ソラスもここに降り立った時の少しだけ白銀が見える状態になった。


「これは・・・・・・」

「何も聞かないで、誰にも話さないで。そして、早く魔力を消し去って。じゃないとあたしが助けた意味がないから」


 女性騎士の方を見てもこれ現象が何か答えてくれる気配はないが、聞くなと言うのなら何も聞くつもりはない。助けてくれたのだから、俺はそれを尊重するしかない。今はこの万全な状態で魔導書からいつまでも流れ出ている魔力を片付ける。


「さぁ行くぞ、クラウ・ソラス。浄化せよ!」


 クラウ・ソラスは俺の言葉で光り始め、大量にあった魔力をさっきまでとは違う勢いでどんどんと吸い込んでいく。数秒もしないうちに、男と魔導書から出ていた魔力はすべてクラウ・ソラスで吸収して浄化し終えた。さっきの身体のだるさはなく、いつも通り調子がいい。


 大量の魔力を吸収し終えたが、油断せずに男と魔導書の方を見ると、男はすでに絶命しており、魔導書から歪な魔力は収まっている。今の魔導書は何も感じず、ただの本と言われても違和感はない。


「あっ、サラさん」

「えっ、は、はい」


 一息ついてクラウ・ソラスをしまった俺は、振り返ってサラさんを面と向かってみる。これだけは言っておかなければならないことがあった。


「サラさんのあの言葉で自分は騎士として再認識することができました、ありがとうございます」

「えっ、と、それは良かったです」

「ですが、自分が苦しいからと言ってサラさんを見捨てることはありません。どんなことがあっても、サラさんは助けます。それが、騎士としての、男としての自分ですから」


 俺がそうサラさんに言うと、サラさんは俺から顔をそらした。


「そ、そうですか。それは、嬉しいです。ありがとうございます」

「あの、サラさん? どうして顔をそらしているのですか?」

「な、何でもないので気にしないでください!」


 どうしてサラさんが顔をそらしているのか、俺には一切分からない。恥ずかしい、ようなことはなかったはずだ。だからサラさんの行動は俺には理解できない。


「普通、人前でする? はずっ」


 女性騎士さんの言葉にも俺は理解することができなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 普段は無双していますが、ちょっと弱気になったアユム。 [気になる点] やはり女性騎士が気になりますね。 たぶん能力が高いキャラクターですよね! [一言] 再開、楽しみにお待ちしていまし…
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