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115:騎士と書庫。⑤

これは、書庫であと少し使いそうです。そんなに書くつもりはありませんでしたが。

 移動させられた先は、凄まじい空間から出た時と一緒の場所であり、盗賊たちと騎士たちに挟まれている状況と、すべてが一緒だった。ループしているのかと思ったが、盗賊たちが疲れているところを見ると、盗賊たちも俺たちと一緒で強制的に移動させられたらしいな。


「おい、こんなことができるのなら最初からしてくれよ。無駄な体力を使っちまったじゃないか」


 盗賊の一人が誰に向かってかは知らないが、そう言葉を放った。・・・・・・その言葉は、この強制的に移動した奴と知り合いということが伺えるが、それなら俺たちを捕らえていたのは盗賊陣営の人間なのか? それだと、物言いが変な気がする。


 今はそんなことどうでもいい。・・・・・・この洞窟、周りをよく見ればそこら中に魔法陣だらけだ。魔法陣がない場所がない。本当に厄介な魔法使い? が潜んでいる。どうやっても俺とこいつらを戦わせる気なのだろう。逃げることはまず不可能と考えて良いだろう。


 そうと決まれば、お望み通りこいつらと戦うしかない。盗賊はともかくとしても、騎士の集団とも戦うのか? そうだ、戦う。騎士の集団は俺たちに殺気を送ってきている。騎士と盗賊の集団に入り込んだ俺たちの図ではなく、最初から俺とサラさんを挟み込んでいる騎士と盗賊の集団の図だったのか。


「どうやら、ここは戦うしかないようです。サラさんはこの場を動かないでください」


 これだけの人数を相手にするだけなら俺一人で楽勝だが、後ろにサラさんがいる分戦いづらくなる。だが、それでもハンデにすらならない。サラさんの元へと向かわせずにこいつらを一掃する。簡単なことだ。だが、サラさんに動かれてはやりにくいから、一応サラさんに注意しておく。


「アユムさん、私や、フローラさんたちのことを甘く見ていませんか?」

「はい?」


 サラさんが俺の言葉に少し怒気を含んだ言葉で返してきた。俺は驚いてサラさんの方を見ると、サラさんの身体から紫色の靄みたいな、これは魔力か。魔力が身体中からあふれ出ている。そして、普通のサラさんでは考えられない速度で盗賊たちの元へと向かった。俺は止めようとしたが、サラさんが目で静止してきたので様子を見ることにした。


「女だからって、舐めないでください!」

「ぐはぁっ!」


 虚を突かれた盗賊の一人の前に立ったサラさんは、叫びながら盗賊の腹に深く刺さる拳を繰り出した。盗賊は吹き飛び、後ろにいた盗賊も巻き込んで倒れている。俺はその光景を見て驚いてしまった。どうやってサラさんの筋肉量で成人男性を腕一本で吹き飛ばせるんだよ。やっぱり魔力の影響なのだろうか。すげぇな、魔力。


 魔力のすごさに驚きながらサラさんの方を見ると、サラさんは俺を見返してやったことに満足そうな笑みを浮かべている。何の才能もないと言っていたが、そんなことが嘘のように思える。


「これでも、この場を動かないでくださいと言えますか? 私はこういう時のために、強くなる努力をしてきました。ですから、一緒に、アユムさんの隣で戦います」


 ・・・・・・ここでサラさんの申し出を断れば、サラさんは悲しんでしまう。サラさんが動かないでいてくれた方が戦いやすい。そもそも俺は一人で戦い続けたのだから、その相手がラフォンさんであっても戦いやすいと言えるだろう。


 だが、それでも俺の隣で戦うと言ってくれたのだから、サラさんの想いを尊重したい。何、簡単なことだろう。盗賊と騎士と戦いながら、サラさんのサポートをすればいいだけの話だ。五段階くらい難易度が上がったくらいで、どうということはない。


「分かりました。では、一緒に戦いましょう!」

「はいっ!」


 俺の言葉にサラさんは満面の笑みで答えてくれた。この笑顔を見れたのだから、少しくらい頑張っても良いだろう。ついでにここに落としたやつに対しての八つ当たりを兼ねてこいつらを遠慮なしに倒すことにしよう。ここでは≪魔力武装≫をしなくても十分だ。


「はぁぁっ!」


 サラさんは盗賊たちに攻撃を始めた。盗賊たちもバカではないから、一人であるサラさんを囲むように移動しようとするが、そこは俺の出番だ。俺はサラさんの死角にいる盗賊たちを≪一閃≫で斬り倒していく。


 一人、また一人とサラさんはどんどんと盗賊たちをなぎ倒していく。盗賊たちは別に格段弱いわけではなく、サラさんが盗賊たちを上回っている。サラさんに才能がないなんて信じられない光景だが、それほどに努力したのだろうか。このクラウ・ソラスを持ってずるをしている俺とは、大違いだ。


「ふっ!」

「邪魔だ」


 俺がサラさんを気にかけている隙に、俺の背後から鉄の全身鎧を着た騎士が俺に剣を振りかざして襲い掛かってきたが、俺はクラウ・ソラスを横払いして騎士を吹き飛ばした。騎士たちはどうしようかと悩んでいたが、襲い掛かってきたら何も問題はない。何を言って来ようとも、あちらから襲ってきたのだから正当防衛が言い張れる。


「行くぞ、クラウ・ソラス」


 俺の意思に反応するかのように、クラウ・ソラスは黒く光り始める。いつもなら白銀に光り始めるのだが、今回は刀身がほとんど黒くなっていることもあり、光まで黒くなっている。この状態でも俺の戦闘状態に異常はない。いつも通りと言える。


 騎士たちは俺に襲い掛かり、盗賊たちはサラさんに襲い掛かる。サラさんは調子を上げているように見えるが、明らかに魔力の量は減ってきている。最初から飛ばしているようだから、そこは俺がカバーしないといけない。サラさんの魔力が尽きる前に決着をつけることを考えよう。


「背教者が!」

「その身に神の裁きを受けるがいい!」


 騎士たちは意味の分からないことを言いながら次々と襲い掛かってくるが、俺はそんなことを気にせずに斬り倒していく。俺は別に神に祈ったことはないし、神から裁きを受けるようなことをした覚えはない。そもそも、神が何をしてくれると言うんだ。何もしてくれないからこそ、俺たちはこうして争っているんだ。くだらないことを言ってくれる。


「炎よ!」

「雷よ!」


 後方にいた騎士たちが俺の方に向けて炎と雷の魔法を放ってきた。俺はクラウ・ソラスで弾き飛ばしたが、こいつら魔法も使えるのか。騎士のくせにやりやがる。そこだけは俺の上に立っていると言えるだろうが、所詮は騎士が放った魔法。三木と比べれば大したことはない。


「サラさん! まだ行けそうですか?」

「はい! 大丈夫です」


 俺は騎士たちの数を減らして盗賊たちの数も同じくらいに減らしながら、サラさんに声をかける。サラさんは少し息を切らしながらも、まだまだいけるようである。しかし、大丈夫だからと言ってサラさんに無理をさせる必要はない。


「≪剣舞・空≫」


 騎士の集団に入って行き、俺は≪剣舞≫と≪裂空≫を合わせて使用した。舞っているかのように剣を振り、飛ぶ斬撃で射程を無視して騎士の数を減らしていく。油断せずに剣を振っているが、最初に感じた通り俺の足元にも及ばない。だが、何だこの感じ。こいつらは俺を倒しに来ているのだろうが、それがどうにも違和感しかない。殺意はあるが、本気ではないのか? 俺に勝てないと分かっているのか?


「お前たちは下げれ! ここからは私がやる!」


 違和感の正体がつかめないまま、後方から俺と一回りくらい身体が大きい全身鎧の男が出てきた。男のその言葉に、他の騎士たちは下がっていく。この騎士たちの中で一番強いのがこいつだが、それでも俺に勝てるとは思えない。一体どういうことだろうか。こいつらは、本気で俺に勝とうとしていないのか?


「考え事とは余裕だな!」

「余裕だから考え事をしているんだ」


 大男は俺に斧を振り下ろしてくるが、俺はクラウ・ソラスで受け止めた。これだけでも俺とこいつの実力差は明白だ。・・・・・・何だか、嫌な予感しかしない。フローラさまたちに何かあることはないだろうが、それでも絶対ではないはずだ。


 もう一度大男が斧を振り下ろそうとしてくるから、俺はクラウ・ソラスで斧を砕いた。そして大男の胴体にクラウ・ソラスで斬りつけるが、驚くべきことにクラウ・ソラスが大男に傷をつけることができずに鎧で受け止められた。


「神を侮辱する者が、神の名の元にひれ伏すがいい!」


 また意味の分からないことを言いながら、大男は俺を捕まえようとする。俺は一度体勢を立て直すために大男と距離を取った。大男は引いた俺を追いかけてきたが、俺は≪裂空≫を放って牽制して大男の動きを止めた。


 どういうことだ? こいつの実力を測り間違えたとは考えにくい。ならどうして俺の剣は止められたのか。あの鎧に何か仕掛けがあるのだろうが、止められた時の感覚がどこかで見覚えがある。大男にクラウ・ソラスがきかなかった時、止められたのではなく、こちらの衝撃を吸収したように感じた。


 ・・・・・・あぁ、そうか。この感覚は、神器を無効化する能力を持った巨大モンスターの時と同じ感覚だ。あの時はクラウ・ソラスに干渉してきて、相手に攻撃できなかった。だが今回は相手が神器の攻撃を無効化しているのか。


「貴様らは、神の名を騙った悪魔だ。そのようなまがい物が神の力を受けているはずがない。この場にてその悪しき武器を破壊する!」

「まがい物・・・・・・、あぁ、神器のことか」


 そう言えば、ドラゴンを倒すために神が作ったものが神器だったな。それをこいつらは認めないと言っているのか。俺としては、これが神が作ったものであろうと悪魔が作ったものであろうと関係ない。ただ俺の障害となるものを斬り伏せる剣として俺は使っている。


 だが、こういう思考を持っている人間が集団でいるということは確かだ。この神器を否定するものたちが。それにしても、こいつらの狙いは俺ということになるが、そうなれば、俺がここに来ることを想定してここに来ていたことになるぞ。偶然にしてはほどがある。


 俺が今日図書館に来る予定はなかったし、図書館に来ることになったのは数時間前だ。それなのにどうして俺のことを待ち伏せにできるんだ? 考えられるのは、俺を今日図書館に呼び出すことができたものがいて、そいつと騎士たちが手を組んでいたことになる。


 今一番考えられるのは、ショーソンさんだ。あの人がこいつらと手を組んでいたことになるのか? 他にもそれをできる人間がいるのか? 今知っている人には考えられない。いや、今こんなことを考えるのはよそう。


「神の名の元に、所有者もろとも死に晒せ!」


 大男は素手で俺に襲い掛かろうとしてくる。あの鎧は神器の攻撃を無効化してくる鎧のようだが、前回のモンスターみたいに神器を無効化してくるわけではない。神器自体を無効化してくれば俺はほとんど何もすることはできないが、神器の攻撃だけならいくらでもやりようはある。


「ハァっ!」

「無駄だ!」


 俺は大男の胴体に五割の力で斬りつけるが、先ほどと同じように攻撃を無効化されてしまった。だが、先ほどより少しだけ吸収しきれずに大男は後ろに引き下がった。なるほど、これくらいか。これくらいなら≪魔力武装≫しなくて良いな。


 神器の無効化は神器の力を出せなくなるから苦労したが、神器の攻撃を無効化だけならこの俺の神器の力を叩きこめば何ら問題はない。攻撃を無効化するのにも、キャパシティがあるのだろう。だからさっきの攻撃を受け止め切れていない。まぁ、神器の無効化も神器の攻撃を無効化も、力技が一番簡単で分かりやすい。


「終わりだ」


 俺は瞬時に大男の前に移動して、胴体に逆袈裟斬りを放った。大男は俺の攻撃を効かないと慢心していたようだが、俺の剣は鎧を切り裂き、大男の胴体までも切り裂いた。大男は斬られたことを大層驚いた顔をしているが、戦いにおいて油断するバカがどこにいるんだよ。


「きゃっ!」

「このクソアマ! よくも今までやってくれたなぁ!」


 俺が少し騎士たちに気を取られている間に、サラさんが盗賊たちに腕を掴まれて身動きが取れなくなっている。俺はすぐさまサラさんの元へと向かい、サラさんの腕をつかんでいる盗賊を背後から斬った。そして盗賊を蹴りでサラさんから遠ざけた。


「大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。すみません、手を煩わせてしまって」

「問題ないです。それに自分があちらと戦っている間にサラさんが盗賊たちの数を減らしてくれていたので助かっています」


 少しの間だったとは言え、俺はあの大男に時間を奪われてしまった。その間にもサラさんが盗賊の相手をしてくれていたから俺は騎士と戦うことができていた。ふぅ、まだまだだな俺は。神器の攻撃が無効化されたくらいで時間を取られてしまっては騎士失格だ。


 もう四分の三は倒すことができている。残りは俺がすべて片付けて良いだろう。そろそろでサラさんの魔力も尽きかけて、体力の限界だ。サラさんは本当によく頑張ってくれた。


「サラさん、ここからは自分がやります。サラさんは少し休んでいてください」

「まだ、と言いたいところですけど、さすがにもう魔力がなくなりそうです。お言葉に甘えて休ませてもらいます」


 さすがにサラさんも自身の限界に気が付いていたようで、素直に全身に纏わせていた魔力を解いて戦闘態勢を解除した。するとどっとサラさんの全身から汗が出てきて、肩を上下させて荒く呼吸をしている。魔力を使った戦闘は、体力がそれなりでも戦えるようになるが、その反面解いた後は完全に戦えなくなるようだ。今後は体力をつけることが課題だな。


「さて、俺たちはボチボチ先に行く。そこを通してもらおうか」


 俺は盗賊たちが何かしてこようとしていたから、まずは盗賊たちから片付けていく。とは言っても、≪一閃・空≫の構えずに放つ斬撃で残りの盗賊たちをすべて片付けた。≪一閃≫も俺の身体が変化したことで威力が格段に上がっているから、すべてを片付けることができた。


「残りはお前たちだ」

「ッ! 悪魔ごときが、私たちに叶うと思うな!」


 全身鎧であるが、声が女の騎士がそう俺に言い放ち向かってくる。それに続いて他の騎士たちも俺に向かってきた。俺は再び≪一閃・空≫ですべての騎士を斬ろうとしたが、盗賊と同じように行かなかった。大半の騎士は俺に鎧ごと斬られて倒れているが、一部は俺の攻撃に耐えて残った。


 どういうことか見るまでもなく、さっきの大男と同じ仕掛けだろう。大男と同じく鎧で神器の攻撃を無効化している騎士もいれば、剣で俺の斬撃を受けた騎士や指輪を前に出して透明な壁を出している騎士など騎士たちは様々な武具を持っている。


 これがすべて神器の攻撃を無効化できるとは、どれだけ神器の攻撃を無効化できる武具があるんだよ。量産体制にあると考えても良いのだろうか。それともここにあるものがすべてなのだろうか。何はともあれ、俺がやることはさっきの大男と変わらない。


「ぐはっ」


 一番前にいた鎧が神器の攻撃を無効化する女の騎士に、無効化できない攻撃を放って戦闘不能にする。そこから盾や剣が神器の攻撃を無効化にする武具を破壊して、所有者を斬って戦闘不能にしていく。その際に、神器の攻撃を無効化する剣と盾を持っている騎士二人の剣と盾を割けて所有者を戦闘不能にした。


 少し興味があるから、一つずつ貰って行っても良いだろう。それと、指輪で透明な壁を作り出して神器の攻撃を無効化する騎士がいたが、クラウ・ソラスを上へと投げて素手で攻撃しようとすると透明な壁を通り抜けることができて殴り飛ばして騎士を倒すことができた。飛ばされる前に指輪を手放していたから、遠慮なく指輪はもらった。襲われたんだから、これくらいのことはして良いだろう。


 神器の攻撃を無効化する白い宝石が柄頭に埋め込まれている剣と、青い宝石が表面の真ん中に埋め込まれている盾、それに赤銅の宝石がはめ込まれている指輪の三つを手に入れることができた。後でこれがどれくらいの効果があるのか、前野たちに試してやろう。


「・・・・・・終わりましたか?」

「はい、終わりましたよ」

「これからどうするのですか?」

「そうですね・・・・・・」


 サラさんに問われて、俺はどうするか考える。これから出入口の方に向かった方が良いのか、それとも先に進んだ方が良いのか。ここが魔法使いの支配下である以上、ここにあまり長居したくはない。だが、出入り口に戻ればここに戻されるかもしれない。どうしたものか。

書くペースが落ちてきている気がします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まだまだ洞窟の謎が続きますね。 サラさんは魔力で肉弾戦タイプだったのにビックリですよ!? 良い意味で期待を裏切ってくれたサラさん(笑) [気になる点] 神器の攻撃を無効化の武具が大量に出て…
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