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11:騎士と目標。

投稿十一日目。もはやメインヒロインが置いて行かれてそうで怖いです。

 ルネさまが泣き止むまで俺はその場に動かずにおり、背後のニコレットさんもギリギリまで離れてくれなかった。ルネさまは泣き疲れてそのまま眠り、それを確認したニコレットさんは俺から離れた。今日はずっといようかと思ったが、ニコレットさんに主をまず第一に考えろと怒られたため、帰ることとなった。


 帰る際に、また精神的にダメになりそうだったらお願いすると悲しそうな顔で言われた。俺は何も言わずに頷いてフローラさまの部屋へと歩を進める。ルネさまとニコレットさんのために時間を使うのは別にいい。だけど二人がその状況に甘んじることは許さない。絶対に解決すると決意しながらフローラさまの部屋の前に着いて部屋をノックする。


「どちら様ですか?」


 中からスアレムの声が聞こえ、ニコレットさんの言葉が思い出していた。ニコレットさんはフローラさまとスアレムにあの件を言わないことを条件としていた。言わないようにしなければならない。


「テンリュウジだ」

「アユムですか。早く入ってください」


 スアレムが扉を開けて中に入れてくれる。扉を開けてスアレムの顔を見ると、どこか疲れている表情をしているように見える。・・・・・・もしかしなくても、フローラさまが原因で疲れているんだよな。そしてそれはフローラさまの授業が終わっても、俺がフローラさまの元に行かなかったからだろう。


「失礼します、フローラさま」


 部屋へと入り、奥へと進んでいく。奥にはフローラさまがソファーに座り優雅に紅茶を飲んでいた。その顔から怒りは感じ取れなかったが、雰囲気から怒っているのが分かった。そして紅茶のカップをテーブルに置くと、フローラさまが隣に来るように指示してきた。言う通りにソファーの隣に立つ。


「少し腰を落としなさい」

「はい」


 フローラさまの言う通りに腰を落とすと、フローラさまは俺の胸倉をつかんできて俺の顔とフローラさまの顔が急接近している。俺はフローラさまの方に倒れないように踏ん張っている。そしてフローラさまは俺の身体に鼻を近づけて、におい始めて顔をしかめた。


「あなた、自分では気が付いてはいないのだろうけれど、他の女の香水の香りがするわよ?」


 えっ! マジかよ。全然気が付かなかった。そして、浮気をばれた男の人の気持ちっていうのはこんな感じなのだろうな。女の人って、マジで敏感すぎるだろう。


「で? 今日はどこに行っていたの?」

「今日は、フローラさまをお見送りになった後に、ラフォンさんの元へと向かいました。そこでお昼ごろまで特訓しておりました」

「へぇ? 七聖剣の一人の元で特訓していたのは良いわ。もちろん必要以上の接触はなかったのでしょうね?」


 そう言われて、俺はラフォンさんとの打ち合いの時に二人とも大勢を崩してラフォンさんの胸に顔をうずめてしまったことを思い出した。これを言えば、フローラさまの怒りが爆発しそうだ。


「特訓をしていた上で、やむを得ない接触はあったものの、必要以上の接触はありませんでした」

「ふぅん・・・・・・、そう。それなら良いわ」


 嘘は言っていない。特訓で大勢を崩して倒れるなんてことはよくあることだ。まぁ、それが相手の胸に顔を突っ込む事態にはそうはならないけど。


「それで? 昼まで特訓をして、今までどこにいたのかしら? 今はもう夕方よ?」


 ついにフローラさまは触れてほしくないところに触れてきた。主なのだから騎士の行動を知る必要はあるのだが、今回はことがことだから言いだすことができない。


「黙っていては何もわからないわよ。あなたが女と会っていたことなんて分かっているのだから、早く話しなさい」


 何故ばれているんだ⁉ もしかしたら鎌をかけているだけもしれない。そうだと良いのだが、フローラさまが鎌をかけたことなど一度もない。これは何か証拠があっての拷問に近い問答だ。答えを間違えれば、痛めつけられる、完全に拷問だな。


「早く言いなさい。もう分かっているのだから、あなたが七聖剣の一人以外に二人の女と会っていたことは。早く言わないと罪が重くなるわよ?」


 本当に分かっている。・・・・・・だが、こればかりはフローラさまでもお話しすることができない。ニコレットさんとの約束でもあり、フローラさまに知られれば介入してくるのを回避することは不可能だ。なら、ここは俺の誠意で回避するしかない。俺はフローラさまのすぐ近くで跪いてフローラさまに頭を垂れた。


「申し訳ございません、フローラさま。午後のことをお話しすることはできません」

「・・・・・・ふぅん、そう。あなたがそこまでして話したくないことなのね」


 俺が自分の意志で頭を下げることはないから、フローラさまは分かってくれるだろう、そう思っていた。許してくれそうな雰囲気が漂って――


「でもダメよ。午後にあったことをすべて話しなさい。あなたが私に隠すことなんて、大抵私に関係することで、私を思ってのことなのでしょう。けれど、私に隠し事をすることは許さない。それが私のためを思っていても関係ないわ、あなたが抱えることも許さないのだから、話しなさい」


 全然許してくれる気はないようであった。フローラさまは靴を脱いで靴下をはいた状態で俺の身体に足先を伝わせている。少しこしょばいが、我慢をするしかない。


「・・・・・・そう、そこまで話したくないの。じゃあ質問を変えるわ」


 イタズラされている間、俺はずっと黙秘を続けていた。するとフローラさまの方が折れてくれて、先ほどの質問をやめてくれた。でも、追撃はされるだろうな。


「あなたはお昼から、女二人と会っていたのね?」

「はい、その通りでございます」

「その二人を答えることはできるの?」

「いいえ、お答えしかねます」

「じゃあ、その二人と抱き合っていたのは認めるかしら?」


 ・・・・・・どうしてそのことを知っているんだ? フローラさまは見通すことができるのか? いや、今は答えれるところを正直の答えよう。


「はい。抱き合っていました」

「その経緯の説明は?」

「お答えしかねます」

「・・・・・・じゃあ、抱き合っていたことに対して、よこしまな感情を持っていたのかしら?」

「いいえ、そのような感情は持てる状況ではありませんでした」

「そう、分かったわ。今回のところは話さなくても良いわ」


 ほっ、フローラさまの重圧の中で俺は耐えきることができた。そもそも、身内のために動こうとしているのに、身内が壁になるとかどういうことだよ。でも、フローラさまは自分の騎士のためを思ってのことだろうから、何も言えない。


「その代わり、今回はこれで許してあげるわ」


 フローラさまは、俺の前にご自身の足を突き出してきた。その足からはいい香りがするから不思議でならない。どうして女性はいい香りがいつでもするのだろうか。男とは全く違うんだな。ていうかこれと言われても分からないんだけど。


「これ、と仰られても、理解しかねるのですが」

「私はただで許すとは言っていないわ。それ相応のバツが必要よ。今回は私の足を綺麗になめれば、許してあげるわ」


 ・・・・・・なめる? この素敵なお足を? い、良いのなら喜んで舐めるぞ? アブノーマルだと分かるけれど、足をなめさせるという行為を俺は下の者がやる行為だと思っていない。足という汚いはずの場所を相手になめさせる、この行為は一種の相手に心を許していると言える。許していなければ、相手は自身の汚い部分を出さないだろう。


 だから俺は喜んでフローラさまの足をなめるぞ? そこに手加減などない、フローラさまが限界というまでなめてやる。それが好きな人の足ならなおさら舐めまくる。バツなどではなく、プレイとして楽しめばいい。


「ほら、早く靴下を脱がしなさい。じゃないと舐めれないでしょう?」


 フローラさまに促されて、俺は丁寧にフローラさまの靴下を脱がしていく。チラリと紫色のパンツが見えており、それもこのプレイのスパイスとなっている。そして、俺はフローラさまの両足の靴下を脱がし終えた。すると、目の前にフローラさまが足を出してきた。


「舐めなさい? お犬さん?」


 俺はフローラさまの興奮している顔を上目遣いで見ながら、舌を出してフローラさまの足の親指の先にペロリと舐めた。その瞬間、フローラさまの顔が一層興奮しているのが分かり、おそらく俺も興奮している顔になっているだろう。・・・・・・やばい、これはやめられそうにない。バツも良いかもな。




 昨日はフローラさまと結構やばそうなところまで行っていた。足を舐めるのに飽き足らず、ふくらはぎや太ももまで舐め始めてしまった。それを止めないフローラさまであったから、足の付け根まで行きそうになったところで、ずっと部屋の隅で見ていたスアレムに止められて我に返った。あそこで止められなかったら、最後まで行っていた。まさか足にあんな魔性が潜んでいたとは。


 止めた本人のスアレムは、フローラさまにきつく怒られていた。主と騎士である俺たちの行為を止めたスアレムが正しいはずなのに、怒られているのは理不尽だろうな。その間俺は落ち着かせるために止めれなかったから、本当に申し訳ない。


 今日も、昨日と同じでフローラさまとスアレムとサラさんは学び舎へと向かい、俺はラフォンさんがいる騎士育成場へと向かう。騎士育成場へとたどり着くと、昨日と同じ光景でラフォンさんが訓練場に立っているのが見えた。


「おはようございます、ラフォンさん」

「おはよう! アユム。よく来てくれたな、もう来ないかと思ったぞ」

「どうしてですか?」

「いや、私が本気で師事すると全員が一日と続かないことが多いんだ。だから少し不安であったが、杞憂に終わって良かった」


 確かに、ラフォンさんの特訓は前の世界で平和に暮らしていた俺にとっては地獄と変わりないものであったけれど、本当の地獄を見てきた俺にとってはどうということはない特訓であった。きついけれども、逃げ出すほどではない。


「特に、コウスケはひどかった。私に一撃も喰らわせられず逃げ出していった。しかも一日でだ。あいつが勇者と言われた時には、もうこの世界は終わりだと何度思ったか」


 あぁ、あいつは色々とダメそうだ。あいつは元の世界で中途半端に色々なことが得意だった。それに顔もイケメンと来たものだから、女子には人気であった。だけど、その中途半端なのがあいつを努力させない道に堕落させた。前に三木にそんな話を聞いた。自業自得としか思わなかった。ここで生き残っているのも、努力せずにうまくやっているからだろう。上手くやっているのなら良いが、上手くできないときが来ないことを祈っておいてやろう。


「時間が惜しい。早速始めようか」

「はい、今日もよろしくお願いします」


 昨日と同じ通りにストレッチで身体をほぐして、軽いランニングを行った。そして俺とラフォンさんは木刀を持ってスキルなしでも慣れるための特訓を始めた。ハッキリ言って、俺は防御しかできていない。攻撃なんて以ての外だ。耐えれていれば良い方だと言ったが、結局は守るためには攻撃しなければならない。


 相手が諦めて攻撃をやめてくれるわけでもない。それは、ルネさまとニコレットさんでも言えることだ。二人がこのまま耐えきれることができるか分からないし、耐えきれないほどの攻撃をしてくるかもしれない。何か手を打たなければならないが、どうすればいいのだろうか。


「・・・・・・何かあったのか? 剣に迷いが見えるぞ?」


 ラフォンさんは打ち込んでくるのをやめて、俺の心中を察してきた。俺は顔に出していないはずなのに、剣を交えただけで分かるのかと、感心しながらも、ラフォンさんに相談するのもありだと思った。俺の異世界人ということを知っている数少ない人物だし、詳しく話すわけではない。


「いえ、ちょっと・・・・・・、悩んでいることがありまして、それで剣に迷いがあるのだと思います」

「それは気を付けておいた方がいい。剣に限らず、戦闘の場数を踏んでいる人が見れば、すぐに迷いを見破られる。まぁ、今君が特訓でしようとしていることが、この場数を鍛えるための下ごしらえと言ったところだ」


 場数か。俺が足りないのは決定的にそれなのだろうな。俺には戦闘の才能はない代わりに、この剣があり努力を重ねた結果強くなった。だけどそれは諸刃に過ぎない。だから今その才能を補填するようにこの特訓をしているわけか。


「で? 何があったんだ? 私でよければ相談に乗るぞ? その状態で特訓に臨まれても迷惑なだけだからな」

「その通りですね。・・・・・・ある事情により、詳しい話は伏せさせていただいてよろしいですか?」

「あぁ、構わない。この学園ではよくあることだからな」

「では、相談させていただきます。・・・・・・実は、ある人が高位の貴族にひどい目にあっています。それは陰湿なものから始まり、今では暴行まで発展しています。それをどうにかしたいと考えているのですが、高位の貴族に報復することは危険なので、武力行使もできません」


 俺は大体の感じでラフォンさんに伝えた。ラフォンさんは頷きながら聞いており、最後に大きく頷いた。大体分かったのだろうか。


「事情は分かった。よくあることだな、貴族が下のものをいぶることは」

「でも、よくあることで済ませれません。あちらから手を出してきているというのに、こちらからは何もできない理不尽を、収めれません」

「そうだな。大方、大公の一人娘にやられた口だろう」

「・・・・・・他に被害を受けている人がいるのですか?」

「いるとも。あいつはどうしようもないクズだからな。・・・・・・で、そのクズに対抗するための手段はないかという問題だったな。解決策なら一つある。それも君にピッタリの解決策だ」

「何かあるのですか⁉」


 そんな方法があるとは! それは是非とも教えてもらいたいところだ!


「それは騎士になることだ」

「・・・・・・騎士、ですか?」

「そう、この国には騎士という貴族ではないものが貴族と同等の権力を持っているものがいる。大公に匹敵するには、その騎士から成り上がらなければ対抗できない」

「自分に、ピッタリですか。確かにそうですね、それなら行けそうな気がします」

「君なら行けると思うが、その道のりは険しいぞ。何せ、大公に匹敵する地位は〝マジェスティ・ロードパラディン〟か〝グランド・パラディン〟の上二つしかない。他にも〝プリンス・パラディン〟などがあるがそれはまた別の地位だ。基本的にその二つしかないと思え」


 何かちょっと名前が格好いいな。でも、力で解決するのではなく、こういう風に解決する方法があるのか。俺が別に考えた方法で、大公の地位をはく奪するほどのネタを見つけ出せばいいとも思っていた。


「その騎士の階級は下からどれくらいあるのですか?」

「下から、ナイト、ホーリー・ナイト、セイクリッド・ナイト、ロード・ナイト、パラディン、ホーリー・パラディン、セイクリッド・パラディン、ロード・パラディン、グランド・パラディン、そしてマジェスティ・ロードパラディンの順だ」


 結構騎士の種類があるんだな。そもそも、本当にグランド・パラディンとかマジェスティ・ロードパラディンになることができるのか?


「ちなみに私はこの国ではロード・パラディンの位置だ」


 えぇっ⁉ 上から三番目の騎士かよ! いや、七聖剣になっているのだから当たり前か。ていうか七聖剣でその位置というのはどういうことだよ。グランドとかは七聖剣より上ということなのか?


「言っておくが、〝グランド・パラディン〟と〝マジェスティ・ロードパラディン〟に過去なったものは一人ずつしかいない。その者たちのための地位とも言われている」


 無理だろうが何だろうが、やるしかないのには変わらない。色々な手段を試しておくのに越したことはない。だから、俺はやるしかない。


「・・・・・・どうすれば、その騎士になれるのですか?」

「騎士になることは、君にとっては簡単だろう。騎士資格試験に合格すれば騎士になることができ、そこから地位を上げるために名をあげていかないとならない。簡単だろう?」

「簡単って。・・・・・・でも、やるしかないです。やってみます」

「その意気だ。さぁ、〝マジェスティ・ロードパラディン〟になるために頑張ろうではないか!」

「やってやりますよ!」


 時間は限られている。一刻も早く〝マジェスティ・ロードパラディン〟になって、あのブスに地獄を味合わせてやるよ。

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

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