104:騎士と侵攻。⑥
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白銀の光が収まったことで、超巨大モンスターは苦しまなくなり俺に攻撃しようとしてくる。あの光は本当に光を放って苦しめているだけで、モンスターたちの身体に害はなかったのか。白銀の光だけで倒そうとは思っていないから、問題ないか。
そして俺に攻撃してこようとしてくるが、その攻撃がずっとスローモーションで見えている。≪紅舞の君主≫を使っている時と一緒の要領だが、今は常時使用状態みたいで使いにくい。俺はいつも通りに見ようとすると、モンスターたちの攻撃が普通の速度で迫ってきた。
避けるために後方に下がるが、軽く下がろうとしただけなのにモンスターたちと十分すぎる距離が空いて、随分と離れてしまった。これだけの力でこんなにも下がるものなのか? またこれは調整が難しい力を手に入れてしまったな。だが、暴走がない分マシと言えばマシか。
俺は再び超巨大モンスターたちの元へと軽い一歩で向かい、クラウ・ソラスを構えた。今までのクラウ・ソラスとは違い、とても軽いがかなり純度の高い白銀に輝いている。まだまだこの≪魔力解放≫状態の真骨頂を体験していないが、こいつらくらいなら軽く片付けられる気がする。
「シャァァァッ!」
「ガァぁぁッ!」
「ギギャァァァッ!」
超巨大モンスターたちが再び俺に攻撃してこようとしたから、俺は本気とまでは行かないが、さっきのモンスターの力を考慮して五割くらいの力を入れた状態で三体のモンスターに向かってクラウ・ソラスを振るった。すると、俺は目を疑う光景を目にしてしまった。
ただの一振りで、目の前にいた超巨大モンスターは跡形もなくいなくなっており、俺の目の前には断崖絶壁になっている地面と、後方にあった森が数キロ先まで消失していた。さすがに跡形もなく消し去っているから、超巨大モンスターは再生できないようだ。
だが、こんなにも強い力なのか。五割くらいで力を発揮してこの威力。簡単に国を落とせるレベルだな。本気でただの斬撃を出せば、どれだけの威力を出せるんだ。そして、魔力で解放した後、一体俺は何者になるんだ? この力の源である銀髪の女性は一体何者なんだ? いや、今はそんなことは良い。今はただこいつらを消失させるのみだ。
俺は近くにいた超巨大馬を標的にして、今度は軽くクラウ・ソラスを振った。するとその軽くは超巨大馬を真っ二つにして、なおかつ地面を深くえぐるほどの威力だった。こいつらを倒すにしてもこれくらいが一番いいのかもしれないが。こいつらには再生がある。
超巨大馬は真っ二つにされたが再生しようとしている。さっきみたいに斬撃で消し去るしかないのか? それだと無駄に地形を崩してしまいそうだが、今はそんなこと言っている暇ではないか。
『方法ならあるわよ?』
「どんな方法だ?」
一度消えたと思った銀髪の女性が再び俺の傍に現れてそんなことを口にした。一太刀で消し去ることができる威力がある上に、これを封じる方法があるというのか。それが本当なら、恐ろしい代物だと改めて実感させられる。
『当り前よ。この私の力なのだから、恐ろしくて当然』
「この私と言うが、その私は一体正体は何なんだ? それを教えてくれないと、この私と言われても全く意味が分からないぞ」
『今はそんなこと良いでしょう? 今はただ敵を倒すことだけを考えていなさい』
また正体を教えてくれなかった。いつになったらこいつの正体を教えてくれるんだろうか。まぁ、こいつと出会ってから一日すら経っていないから気長に待つことにしよう。ただ、俺はこいつを信用するしかないんだから。俺の力の根源はこいつであって、俺の力ではない。俺はこいつがいなければ何もない人間なのだから。
『私がただの人間に味方するわけがないんだけど・・・・・・、まぁ良いわ。私の力の根源は、基本的に順応で合っている。だから、どんな相手にでも弱点を突くことができるし、弱点を補うことができる。それはこの状態になっても、変わらない。むしろ今の状態に方が順応しやすくなっている。ほら、クラウ・ソラスを見てみて?』
俺は銀髪の女性に言われてクラウ・ソラスを見ると、クラウ・ソラスの刀身に何か文字が浮かび上がっている。俺には全く読めない文字であったが、文字は次第に消えていった。一体何だ、これは?
『その状態で常時発動している私の力の一端。今のはどんなに相手が硬かろうが、再生能力を持っていようが、二撃目ではそれをすべて無効化する順応の一つの形。クラウ・ソラスに浮き出た文字は、クラウ・ソラスで斬った相手の真名と能力を読み取った文字。今のクラウ・ソラスは浮き出た真名と能力をすべて分析する。つまり、もう畜生の再生は使えない』
それを聞いた俺はもう再生が終わりそうな超巨大馬に向けて一歩踏み出して飛び上がった。そしてさっきと同じくらいの力でまた超巨大馬を再生したところを切り裂いた。超巨大馬はまたしても倒れて、少しもがいていたが、次第に動かなくなった。本当に再生しなくなっている。
簡単に斬れて再生しなくなったのなら、こいつらはただ大きいだけのモンスターだ。こうなったら、早くこのモンスターたちを片付けてしまおう。フローラさまたちに安心してもらうために、今から俺は殺戮の限りを尽くそう。
「今の状態で他のスキルは使えるのか?」
『使えるわよ。でも、≪剛力無双≫と≪強靭無双≫と≪神速無双≫を使うのはやめておきなさい。その三つを使えば、手加減しても地形を変化させてしまうほどに力が増してしまう』
「なるほど、分かった」
『それじゃあ頑張りなさい。私は時間制限が来るまで黙っておくわ』
どうして黙っておくのか分からないが、話しかけられるよりかはマシだな。スキルが使えると分かったから、手始めに俺がよく使っている≪一閃≫を使うことにした。こちらには続々と周りの超巨大モンスターが集結しているが、そちらの方が好都合だ。
「ニクヲ、クワセロォォォ!」
「≪一閃≫」
息を荒くして言葉を話しながら走っている超巨大ゴブリンが一番近くにいたから、こいつに一閃を喰らわせることにした。それにしても、ここまで大きくしたら普通の状態でも野蛮に見えるのに、もはや見たくないと思える。どうしてゴブリンを大きくしたのだろうか。
俺は構えずに超巨大ゴブリンに一閃を放った。その威力は俺の想像を上回り、瞬く間に、超巨大ゴブリンは真っ二つになっていた。俺が驚いているのはそこではない。一閃は通常一人しか斬れないはずなのに、後ろにいた三つ首の犬、超巨大ケルベロスも一緒に斬れていた。
普通なら威力を調整しないで良いのに、どうして不必要な威力まで出しているんだろうか。それよりも、こいつらは二度斬らないといけないんだったと思ったが、こいつらはいつまで経っても再生しない。もしかしなくても同系統の能力なら、同じように無効化してくれるのだろうか。それなら話が早い。
二度目をしなくて良いということは、一撃でモンスターたちを倒すことができる。アンジェ王国の周りにいるモンスターたちを数えたが、千は超えている。一体に一秒もかけていられない。何せ俺の制限時間は十分なのだから、迅速に終わらせないといけない。だが、そのついでにスキルの威力を試しておきたいところではある。
「コケェェッ!」
俺の後ろに回り込んできたのは、首から上が鶏で、胴体はドラゴンのような翼と鱗を持っており、尾が蛇であるコカトリスであった。別名バジリスクであったり、蛇の王とも言われている化け物だ。こいつが大きくなると脅威度はSランクになっているだろう。こいつは相手の目を見ただけで死に至らせる邪眼を持っていたな。
俺はこいつの目を見ないようにしていたが、結局こいつがデカいから目を合わせることができない。デカくしたら不便なモンスターもいるんだな。それよりも、さっきまで相手にしていたのは動物をモンスターにしていただけのに、急に大物のモンスターの超巨大化が出てくる。
兎に角、今はこいつらを倒すことだけを考えよう。そう思ってクラウ・ソラスを振るおうとした時に、コカトリスの尾の蛇から毒霧が一面に吐き出された。この毒は結構やばかったはずだ。瞬時に後方に移動しようとしたが、それを見越したかのように周りに多くの超巨大モンスターが待ち受けていた。
こいつら自身にも毒を受けるはずなのに、お構いなしかよ。俺を倒すためには命すら惜しくないのか。それだけの覚悟、いや、命が惜しいという気持ちを持ち合わせていないのだろう。よくできた兵士たちだ。手早く俺を囲んだモンスターたちを真っ二つにして後方へと回避した。
だが、その際に少しだけ手に毒霧が付着してしまった。鎧だけなら大丈夫かと思ったが、毒霧は即座に消えてクラウ・ソラスと同様に文字が浮かび上がってきた。相変わらず俺の分からない文字だが、文字も次第に消えていった。
クラウ・ソラスと同様の能力で鎧で考えてみると、一度受けた攻撃はもう喰らわないのではないのか? 順応の真骨頂と言うのなら、すぐさま順応できるのがこの鎧の能力なのかもしれない。まぁ、能力がどうであれ、もう攻撃は喰らわない。俺を攻撃できる隙はこれだけだ。
「≪剣舞≫」
俺は≪剣舞≫のスキルを発動させ、コカトリス含めた周りに来ている超巨大モンスターをすべて一撃で倒していく。一撃という表現は正しくないか。超巨大モンスターが重なっていれば、一度で何体も倒すことができる。それを狙いながら、効率よく超巨大モンスターを殺す。
今は一秒に十体ほど倒せているから、何とか時間内に倒せそうだ。それは、ボサボサ頭の男が邪魔をしてこなければの話になる。邪魔をしてこずに俺の能力を観察するか、俺に隙ができれば攻撃してくるか。考えられる手段はいくらでもある。だからそれを考えているだけ無駄だろう。来たら来たで好機と思い倒せばいい。
「こっちだぞ!」
俺の≪絶対権限・囮≫を発動させることで、遠くにいた超巨大モンスターまでもが俺の周りに集まり始めた。こうした方が一気に倒せることができるから楽だ。それに、このスキルも超強力になっている。俺が思っていないところにいたモンスターもこちらに呼び寄せてしまった。これもこの状態でスキルを使ったおかげか。俺としては一気に来てくれてありがたい。
「≪裂空≫」
超巨大モンスターがちょうど一列に並んでいるところを見逃さず、俺は飛ぶ斬撃を放った。ただ振っただけでも飛ぶ斬撃になるが、裂空を使ったらどうなるかと思って使ってみたが、効果はただ振るうよりか威力がある。超巨大モンスターたちは真っ二つになっていったが、斬撃は威力が落ちずに王都の方まで行きそうな勢いであった。さすがに俺でもそれは焦ったが、王都にたどり着く前に消失してくれた。
良かった、俺が国を壊してどうするんだよ。≪裂空≫の飛距離があり得ないくらいに上がっている。それも手加減してこれだ。≪一閃≫は基本的にコントロールできないが、≪裂空≫はコントロールできる。これはスキルを試している場合ではないな。下手をすれば何もかも壊しかねない。
ここは比較的に使いやすい≪剣舞≫で全滅させることにした。≪剣舞≫は俺が手に入れた情報で無駄なく動いてくれる。それは俺の力のコントロールにもつながる。≪剣舞≫を使いつつ、力の制御を身に着けよう。
『残り、五分』
銀髪の女性が残りの時間を教えてくれた。残り半分なら、モンスターたちを片付けることができるだろう。今までので、力の強さは理解した。使い方までは理解していないが、どう戦えば良いのかは固めることができた。今はそれだけで、こいつらを全滅させれる。
力強く一歩を踏み出し、地面が崩れ去る前に俺は飛び出した。同時に≪剣舞≫を使用して超巨大モンスターたちをただの斬撃だけで殺していく。俺のいる場所から反対の場所でアンジェ王国のすぐそばまで近づいているモンスターもいるが、あの移動速度なら追いつく。
「ぶるるるっ!」
モンスターを視認した瞬間に殺していっていると、鼻息を荒くしている超巨大ミノタウロスの集団が俺を止めようと俺の前に立ち塞がろうとしているが、もはや俺が止まることはない。近くで倒そうとすれば、無駄にクラウ・ソラスを振るわないといけないし、集団でいられるのは邪魔だから、最初に使った五割ほどの力でクラウ・ソラスを振った。
さっきと同じようにミノタウロスは跡形もなく消し去った。俺は止まらずに走り続けているが、気になることがある。・・・・・・やはり、時間が経つにつれて力が増してきている。力の制御がおぼつかないのはこのせいなのか? 力の制御自体はどうでもいい話だ。
一番危惧すべき点は、銀髪の女性が言っていた通り≪魔力解放≫の先に行ってしまうことだ。そのために銀髪の女性にカウントダウンをしてもらっているわけだが、力が上がっていることで無理やりにでも認識せざるを得ない。
少しだけ不安要素ができただけで、焦りはない。これらを倒すことだけを考えているから雑念も戦闘に影響を与えない。それに、もう少しですべてのモンスターを倒しきるところだ。アンジェ王国に迫っていたモンスターの元にすぐにたどり着くことができ、間違えずに王都の方からモンスターを真っ二つにした。
『残り、二分』
「はぁぁぁっ!」
ついにあれだけいた超巨大モンスターは最後の一体となり、最後に残って飛んでいた超巨大グリフォンを仕留めた。・・・・・・ふぅ、ようやく終わった。この姿になってから、本当にただ数が多いだけのモンスターだった。それにボサボサ頭の男は何もしてこなかった。何かしてくると思っていたのだが。
『す、素晴らしい力だ』
想いが伝わったのか、ボサボサ頭の男の声だけがこの場に響いた。そしてその声には動揺が隠しきれていない。どうやらあいつの度肝を抜くことができたし、あいつを楽しませることができたようだ。その顔を拝めないのが残念で仕方がないところではある。
『本当に僕を楽しませてくれて嬉しいよ。いい意味で僕の期待を遥かに超えてくれた!』
「それはどうも。それで? 次はあんたが相手をしてくれるのか?」
『残念だけど、それはできない相談だ。僕は君という不確定要素を調べたくて調べたくてうずうずしているけれど、今の君には僕は勝てないだろう。だから君との戦いはお預けだよ』
「そんなことを言うなよ。俺はいつでもお前を葬る準備はできているぞ? 何なら、俺がお前のところまで行ってやってもいいぞ?」
俺はこの状態になって初めて≪完全把握≫を使用した。そしてボサボサ頭の男がどこにいるのかと感知範囲を大幅に広げていく。かなり国から離れた場所に、ボサボサ頭の男がいることに気が付いた。そこにいたのか。案外近いな。
『僕はここで出直させてもらうよ。・・・・・・やっぱり、僕の元に来ないかい?』
「何度言われようが、俺が答えを変えるつもりはない。お前の方こそ、俺たちに手を出すのをやめたらどうだ? 痛い目を見ずに済むぞ?」
『それはできない相談だ。僕がしていることは、すべて僕が僕であるためにしていることだからね。研究をしなくなれば僕は僕じゃなくなってしまう。例え数千、数万の犠牲が出ようとも、僕は止まらない』
やめるつもりはないのか。それなら、俺は今すぐにでもお前を倒しに行くことにしよう。今ここでボサボサ頭の男を倒した方が、面倒にならないのは明白だ。俺はすぐにでもボサボサ頭の男の元へと行こうとすると、白銀の鎧から嫌な男がした。下を見てみると、白銀の籠手にひびが入っている。どうしてこんなひびが入っているんだ?
『もうそろそろで、魔力で解放されてしまうわ。あいつを追うことは諦めなさい』
銀髪の女性にそう言われ、俺はボサボサ頭の男を仕留めに行くことを諦めた。まだ十分経っていないはずだが、初めだから十分も維持できなかったということなのだろうか。超巨大モンスターをすべて倒せただけで良しとしよう。欲を言えば、ボサボサ頭の男を殺したかった。
『君の方も限界みたいだからね、僕は引かせてもらうよ。もう今日は君に手を出すつもりはないから、安心すると良い。また、いずれどこかで会おう、アユム・テンリュウジくん』
ボサボサ頭の男はそう言い残して気配を消した。俺の方もひびが入った場所から何やら光が溢れてきているのが分かるから、急いでこの鎧を解除した。解除すると、空は明るくなりどっと疲れが押し寄せてくる。立っているのがやっとなくらいだ。
『初回にしては良くやった方ね。今日はゆっくりと寝なさい』
「分かっている。もうすぐに寝ることができるぞ」
そう答えるのがしんどいくらいなのだが、俺はフローラさまに報告するためにアンジェ王国を目指した。せめてもう少し近くで解除した方が良かったなぁ。
あと少しで第四章が終わりそうです。ですが、それを二日後に投稿できるかが怪しいです。遅れたらごめんなさい。