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01:始まり。

どうも、こもっちです。

今回の作品は美醜逆転異世界を書いてみようと思います。

 俺は、天龍寺歩夢。三年くらい前までは、地元の大学に進学して大学生活を謳歌、してはいなかったが、真面目と不真面目の中間で生活していた。単位はきちんと取っていたし、バイトもそこそこしていて、女性関係では全くと言って良いほど縁がなかったが、充実はしていたのだろう。


 そもそも、俺は女性どころか人間を信じることをしていなかったから、あまり友達を作らなかったし、必要だとも思わなかった。だが、授業を休んだ時に、『前の授業を休んだ人は友達に教えてもらってください』はちょっとだけ効いた。その授業に友達いねぇよ。お前、ボッチの人権を侵害すんのか? あ? とか思ったことはある。


 とにもかくにも、そんな大学生活を送っていた俺であるが、一年前のある日、授業中に先生が蛇足に入ったことを確認した俺は、睡眠を取ろうとした。大学の授業で、授業を受けるために快適な環境は、寝るときにも快適だと言えるから、ぐっすり眠れる。すでにまぶたが落ちてきていたため、寝ようと思えばすぐに寝ることができた。


 そして、起きた時にはすでに異世界でした。周りにはこちらを見向きもせずにドラゴンやワイバーンが争っている現場を目撃した。


 当時の俺は、言葉にもならない動揺が全身を駆け巡り、数分間何もできずに立ち止まることしかできなかった。そして、動揺が解けた俺は、ようやく手に持ってある白銀の刀身に、白を基調として青が所々にまじっている西洋の騎士が持つような大きな剣に気が付いた。


 そこからは地獄だった。何も説明されないまま異世界転移された上に、周りには強そうな魔物がたくさんいるときた。持っているのは、強そうである格好いい剣のみ。死を考えたが、死ぬのは嫌だったためあがきまくった。幸い、剣の能力や俺が転移されたセーフティゾーンがあったため何とかなった。


 そんな生活を一年間続け、周りの魔物を倒しつくしたため、離れることにした。何もわからないまま色々な地をさまよい続けること数日、俺は盗賊に襲われている馬車に乗った家族に出会った。


 盗賊なんているんだなと平和ボケしたことを思いながら、助けたお礼にこの世界のことを教えてもらおうと下心を持って山賊を蹴散らしていく。あの恐ろしい魔物たちを相手にしていたのだから、どれだけヤクザみたいな顔だろうと怖くない。さすがに人間を殺す覚悟を持ち合わせていないから、気絶させるか、力加減を間違えて半殺しにしてしまったりとか盗賊を鎮圧した。


 俺の思惑通りに、その家族は俺に感謝してくれて何でもお望みの物をと言ってくれた。・・・・・・言ってくれたんだよな。これが、俺の異世界人生で最初に間違った場所なのかもしれない。間違ったは言い過ぎだが、マジでしんどいと思うことは多々ある。ハァ、こんな夢を見ていないで、起きるか。




 日の光を感じ、俺は目を覚ます。目覚ましなしに起きるなんて日本にいた頃では考えられないことであるが、魔物に囲まれた環境で一年間生活していれば、感覚に敏感になるし、危険も察知できるようになる。今のようにな。


「おい、ふざけてんのか」

「ふざけてなどいませんよ」


 俺の部屋でいつものようにごそごそとしているクールな表情をしている黒髪ショートヘアのメイド服がよく似合う女性、ブリジット・スアレムが俺の言葉に反論してきた。


「俺にはふざけているようにしか見えないんだが?」

「これがふざけている? 馬鹿なことを言わないでください。私はあなたにより良い価値観を見出してもらいたく、こうしているのですよ」

「ほぉ、なるほど。お前の言い分は分かった。他人の部屋にボーイズラブ漫画をいたるところに置く行為がふざけていないと言うのか、お前は」


 ごそごそとしているのは、こいつが俺の部屋のいたるところにBL本を置いているのだ。こいつは美人のくせに根っからの腐女子であり、同僚である執事の俺に布教しようとしているのだ。全く、これを毎日毎日されるのはやめてほしいものだ。起きたら男同士で抱き合っている絵を天井に張られていた時は、マジでスアレムを殺す気で追いかけた。


「BL本を置きまくるのは良いとして、朝の仕事は終わったのか?」

「朝の仕事が終わったからここにいるのですよ。それと、本人の許可をもらったので毎朝遠慮なくBL本を置きますね」

「それは言葉の綾だ。ここではそれを持っているだけで洒落にならないから勘弁してくれ」

「それはそれは、おいしい展開を期待してます」

「期待するな」


 俺は寝間着から、身支度をしていつもの執事服へと着替えて仕事モードへと切り替える。その間、スアレムはせっせとBL本を回収している。何故しているのかと言えば、スアレムが置き去りにしていたBL本をすべて俺が切り刻んだからだ。それから、朝一度だけ布教して、それだけで終わる。


 まぁ、こいつはこの家でまだマシな部類に入る。元の世界でBL本を朝一でばらまいている奴は普通ではないが、まだ耐えきれるレベルだ。うん、大丈夫。仕事仲間だと割り切った関係だ。


「では、私はお嬢様を起こしてきます。アユムはお坊ちゃまの方をお願いします」

「了解、じゃあまた後で」


 日本にいた頃、リアルでは一度も見たことも入ったこともなかったアニメでよくあるような西洋の大きな屋敷に自分がいて、そこで働いていることに不思議な感覚になりながら、とある部屋に向かう。部屋の前にたどり着き、ノックをしても返事がないため失礼して中に入る。


 中には、大きなベッドで気持ちよさそうに寝ている肩まである金髪で顔立ちが整っている美しい女の子のように見える十の子供がそこにいた。俺はその子のそばに行き、肩をゆすって起こす。


「朝でございます。起きてください、ランディさま」

「・・・・・・う、うぅん? もお、あさ?」


 ランディさまは完全に意識を覚醒させずにベッドから身体を起こすが、はだけている服と、その隙間から見える白い肌は他のどの女の子よりも女の子のように見える。


「あぁ、アユムだぁ。一緒に寝よう?」

「ダメですよ、起きないとお嬢様に怒られますよ?」

「それはいやだけどぉ、・・・アユムと寝たいのぉ」


 俺をベッドに引きずり込もうとして、駄々をこねている女の子のように見えるランディさま。しかし、現実は悲しいかな。この人は、このシャロン家の令息で、立派な男の子だ。いや、立派ではないか。貴族の家の出身なのに、まさかの〝女装趣味〟を患っている男の娘なのだ。


「早く起きてください。でないとスアレムに薄い本の材料にされますよ?」

「うぅぅんっ・・・・・・、それもいいかも。僕はアユムに襲われても、大丈夫だよ?」


 寝間着を意識して、一層はだけさせて俺を誘ってくる。最初の方は俺も股間を熱くさせて、そっちの気を目覚めそうになったけど、今では大丈夫だ。夜の間に処理している。でも、たまにこんなに可愛かったら、仕方がないんじゃないかと思ってしまう。


「馬鹿を言っていないで、早く着替えてください。奥様に怒られますよ?」

「・・・・・・着替えさせて」


 奥様の名を出すと、ランディさまは渋々起き上がり着替えさせるように促してきた。俺はいつもの朝のごとく、ランディさまの寝間着を脱がせていく。その際に、肌に触れて色っぽい声を漏れ出せているが、そんなに敏感ではないだろう。そしてランディさまを下着姿にすると、恥ずかしそうに下着を手で隠して顔を赤くしながら俺を上目遣いで見てくる。


「・・・恥ずかしいよぉ」

「はいはい、恥ずかしいなら早く着替えましょうね」

「・・・・・・はぁい」


 いつも通り、ランディさまには女性用の服を着てもらう。断じて俺の趣味とかではない。これはランディさまが決めたことだし、家族も了承している件だ。


「はい、できました。それでは行きましょうか」

「うん、行こっか」


 ランディさまの身支度を済ませ、食堂室へと向かう。ランディさまはいつものように俺の腕に抱き着いてきてスリスリとしてくる。心なしか股間を押し付けてきているような気がするが、気のせいだろう。上目遣いでこちらを見てきて、満面の笑みを浮かべてくるのは卑怯だと思う。男の娘だけど。


 俺とランディさまは食堂室へとたどり着き、食堂室へと入る前にランディさまは俺から離れて服装正した。そして俺が食堂室の扉を開けて、ランディさまが食堂室に入る。


「おはようございます、お母さま、お父さま、お姉さま」


 食堂室には、朝食が各々の場所に置かれて出入り口から伸びている長方形の長テーブルがある。部屋の両端には俺と同じ使用人たちが待機している。テーブルの席に座っているお三方は、俺が仕えている家のご家族で、全員が美形と言っても言い切れない。


 テーブルの一番奥の席、つまり上座に座っている金色の髪でダンディに決めている男性こと、この家の当主であるランベールさま。


 そこから手前の右側の席に、長い赤髪を軽くらせん状に巻いた髪型で優しそうな顔をしている女性が、ランベールさまの奥様であるエスエルさま。


 こちらに一番近く左側の席にいる、編んだ金の髪の毛を王冠のように頭に巻き付けている髪型、クラウンブレイドをして怒っているような表情をしている女性がこの家の令嬢であるフローラさまだ。


「おはよう、ランディ。今日もアユムくんに甘えていたのか?」

「はい! すごく目覚めの良い朝です!」


 ランディさまの座る椅子を俺が引いて、ランディさまはそこに座る。俺は使用人が並んでいる場所に一緒に並ぶ。開口一番は当主であるランベールさまで、ランディさまにそう問いかけると、ランディさまは気持ちのいい笑顔で答えている。


「・・・・・・良いな。私もアユムくんに起こしてもらいたいものだ」

「ダメですよ、お父さま。アユムは僕の騎士なのですから、起こされるのは僕だけで十分です」

「いや、一日で終わるから貸してくれないか?」

「ダメです。それにむさいおっさんを起こすのはアユムも気が引けるでしょう。それ以前に、お父さまは別の目的がありますよね?」

「少しあれの処理を頼むくらいで――」

「お父さま、下品です。食事の場でおやめください」


 ランベールさまが変な方向に話を持っていこうとしたところで、この家の令嬢であるフローラさまが言葉を遮った。ナイス、フローラさま。今の会話の一端でご理解してもらえたと思うが、ランベールさまも普通ではない。


「あぁ、すまない、フローラ。だが、アユムくんの鍛え上げられた身体を見ていると、どうにも言いたくて仕方がないのだよ」

「それは分かりますわ。あの身体で抱かれた日には、そう考えると火照りが収まりませんわ」


 ランベールさまに乗っかって、奥様であるエスエルさまも顔を赤くして少しだけ息を荒くしており、人妻とは思えない言動をしている。このエスエルさまも、同じく普通ではない。


「ダメですよ! アユムは僕の何ですから遊んでいいのは僕だけです!」

「あらあら、良いじゃない。減るものではないのだから。それにわたくしは女性なのだから、アユムさんも満更ではないはずでしょう?」

「そ、そういうわけではなくて・・・・・・、アユムぅ、助けてぇ」


 エスエルさまに何も文句を言えず、俺に助けを求めてくるランディさま。ハァ、どうしてこうも毎回俺がいるとこんなに騒がしいのだろうか。いつもは騒がしくないと聞いているんだが。


 お気づきであろうが、この家族は普通ではない。まだフローラさんは頭角を現していないが、この家族はある理由で普通ではなくなっているのだ。当主であるランベールさまは〝同性愛者〟。当主の奥様は〝寝取り寝取られ〟。令息であるランディさまは〝女装〟。そしてフローラさまは――


「フォークが落ちたわ。アユム、取りなさい」


 カランと、物が落ちる音が聞こえてきて、フローラさまが俺に取るように命じる。


「私が今拾い――」

「私はアユムに拾えと言っているの。何度も言わせないでちょうだい」


 使用人の一人である、茶髪のツインテールのかわいらしい女性が拾おうとするが、フローラさまが切れている声音で言ったものだから、ビビってすぐに引き下がった。俺はため息を吐いてフローラさまの元へと向かう。


「どこへ落ちたのですか?」

「私の足元よ。しゃがんで取りなさい」

「了解でございます」


 俺はテーブルに当たらないようにしゃがんでどこにあるのか探すが、どこにも見当たらない。


「もっと奥に行きなさい。このテーブルの下に身体を隠すくらいに」

「了解です」


 いつものことだから、もうフローラさまのわがままには慣れた。俺は完全にテーブルの下へともぐりこみ、フォークを探す。どこにあるのかと探しているとフローラさまの足元にあることに気が付いた。俺にもぐりこめと言った意味がないと思いながら、フォークに手を伸ばすとフローラさまに手を踏みつけられた。


 何をしているのかと問いかけようと上を向くと、そこには予想だにしなかった光景が目に移った。フローラさまは足首まであるスカートをめくり上げていた。そして目に入るのは、美脚と言って良いほどの足に、肉付きが良い太もも、そして純白のパンツを見せつけていたのだ。


 さすがに不意打ちだったため、動きを停止させてその純白のパンツを凝視してしまった。あのパンツの向こうに、フローラさまの恥部がある。あの布きれ一枚だけで守られている彼女の恥ずかしいところ。どれほどのものだろうかと妄想してしまう。もう手を踏みつけられているのに、いつまでも離れられずにいる。


「アユム? まだ取れないの?」

「ッ! 見つかりました。大丈夫です」


 俺がいつまでもテーブルから出てこないことで、ランディさまが俺に声をかけてくれたので、すぐに正気に戻ってフォークを取ってテーブルから出た。フォークをさっきビビっていたツインテールの女の子に渡して元の位置に戻ろうとするが、フローラさまに上着の裾を引っ張られて引き留められる。


「・・・変態」

「・・・・・・それはお互いさまなことで」


 妖艶か、はたまた不敵な笑みかと捉えれる表情をして俺にそう言ってきた。この人は、俺をこうやっていじめてくる悪役令嬢なのだ。本来の性格はもっと優しいものだと聞いたが、この世界が歪んでいるのだから歪むのも仕方がないか。


 俺は元の位置に戻り、一息つくと、隣にいた声で女性だと判断した人に小声で話しかけられた。


「あんたも大変ね、こんな〝不細工〟たちに付き合わされるなんて。給料が良くなければ不細工だらけの巣窟で働いてないっていうの」

「まぁ、そうですね」


 声をかけてきた女性の方を横目で見ると、整っていない輪郭、離れた両目、無駄に膨らんでいる鼻の女性がそこにいた。俺は自分で自分のことを言っているのかと思ったが、彼女は本当に自分が美人だと思っており、シャロン家の人々を不細工だと思っている。この世界の人間であれば、そう思うのは当然なのだ。


 美醜逆転世界。


 俺の異世界転移先の世界であった。このおかげで、俺から見れば素晴らしく美人なフローラさまはブスだと思われていると、何とも残念な世界なのだ。この美醜逆転のおかげで、この家族は美形なのに不細工の烙印を押されて、こんな性癖になったのだ。


 しかも、驚く事実があったのだ。この世界の男女比は二対八となっており、女性の美人率、いやこの世界で言うところの不細工率は八割を超えている。道行くところで美人が歩いている感じになっている。何だ、この世界は。この世界の美人、いや、俺の世界での不細工と呼ばれるものたちは、自分たちが美人で数が少ないことを鼻にかけて偉そうな態度を取っている。マジで何様だよ。


 ハァ、異世界転移するのは百歩譲っていいが、もっとまともな世界にしてほしかったものだ。でもまぁ、美人を独占できるんじゃね? とか思ったことは幾度となくある。それは俺が意気地なしだから無理だけどね!

最後まで見てくださってありがとうございます。誤字脱字あればご指摘お願いします。

評価・感想はいつでも待ってます。よければお願いします。

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