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薔薇騎士物語  作者: 雨音AKIRA
第2章 トラヴィス王国編 ~砂漠の王者とロヴァンスの花嫁~

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2章86話 動き出した二国



──ロヴァンス・ラーデルス国境地帯の大森林──



「第一部隊はそのままラーデルス軍と共闘しながら洞窟内へ侵攻しろ!第二部隊は散開して、国内に侵入した敵兵の排除!第三部隊は非戦闘員の護衛を!第四部隊は洞窟外で待機だ!すぐにかかれ!」



 ロヴァンス王国の王太子であるノワールの号令が、闇に閉ざされた森林の中に響いた。


 すぐに騎士達が呼応し、それぞれの任務を遂行する為に持ち場へと移動を始める。



「まさか本当にこんな場所に抜け道があったなんて……」



 王太子付きの護衛を務めるセレスは、驚きの声を上げずにはいられなかった。その言葉に、王太子のノワールも頷きを返す。



「これまでこの森を不可侵の地として放っておいたのが徒になったな。だが、ラーデルス国王の慧眼でそれも今日までだ。気を引き締めていくぞ!」


「はっ!」



 国境地帯の大森林──その深い森の中をラーデルス、ロヴァンス両国間の交易路を整備するという名目で人員が動員され、大調査が行われていた。


 森を切り開き、安全な交易路を確保する為、そしてこの森のどこかにあるだろうトラヴィス王国への抜け道を探す為である。


 そしてついに彼等は、その森の奥深くに探し求めていたものを見つけたのである。


 森林地帯を抜ける街道を、南方のトラヴィス側へとかなり行った先──山脈の裾野が広がる少し手前にその洞窟への入り口があった。ごつごつとした岩と生い茂る木々に隠されて、その場所を見つけるのは困難を極めた。


 だが近くにあった盗賊の隠れ家らしき場所から、人の通ったような痕跡が見つかり、それを辿って発見する事ができたのである。



「伝令!内部に潜む残党を発見!既に戦闘を開始し、敵数名を捕縛!現在深部に逃げ込んだ敵を追っています!」



 前線からの情報が、王太子ノワールの下に伝えられる。その内容にノワールはすぐに次の指示を飛ばした。



「単独での深追いはするな!洞窟内の地の利は敵側にある!慎重に進め!捕虜は第四部隊に引き渡し、こちらへ連れて来い!」


「はっ!」



 ノワールの指示に、すぐさま伝令が前線へと戻っていった。その背中を鋭い眼差しで見送っていたノワールは、視線をそのままに側に立つセレスに声を掛ける。



「セレス……すべき事はわかっているな?」


「……任せといてください。こういうのは得意ですからね」



 自嘲するように暗い笑みを浮かべたセレスを、ノワールは一瞥する事なく頷きのみを返す。その短い会話だけで、彼等の間では十分であった。


 やがて縄で縛られた敵の捕虜数名が連れて来られ、ノワールの前へと投げ出される。


 捕虜は一見、ラーデルスの一般的な服装を身に纏っているが、顔の作りや肌の色合いが、ラーデルスの者とは若干異なっている。何より、剣を握る者独特の手や筋肉の付き方に、ロヴァンスの騎士であるノワールやセレスが騙されるわけがなかった。



「さて、お前達の事と、あの洞窟の事を洗いざらい喋ってもらおうか?」



 ノワールが倒れ伏した捕虜の前に立ち、見下ろしている。その冷徹なアイスブルーの瞳は、今にもその眼差しだけで相手の留めをさせそうなほど鋭い。



「っ──……」



 しかし捕虜も簡単には口を割る気がないようだ。一様に口を引き結び、ノワールを睨みつけている。


 ノワールは、そんな捕虜たちを更に凍えるような眼差しで一瞥すると、セレスを呼んだ。



「……だんまりか……いいだろう。セレス、お前の出番だ」


「はっ!」



 セレスがノワールと入れ替わるようにして捕虜たちの前へ出る。そして捕虜と目が合うと、途端にニヤついた表情を見せた。



「久方ぶりで腕がなるね~。あんたらがどれだけ耐えられるか、見ものだな」



 緊張感のない喋りと表情に、捕虜たちの顏が訝し気に歪む。しかしそれもすぐに恐怖の表情に変わる事を、傍らで見ていたノワールは知っていた。



「まずはお前からだな。──あー、そこの第四部隊の人、ちょっとコイツをそこの木に縛り付けてくれます?」



 声を掛けられた騎士が、すぐに捕虜の一人を近くの木に縄で動けないように縛り付けた。肩から腰までしっかりと巻かれている為、ほとんど身動きが出来ない状態だ。



「さてと……暗いし、結構久しぶりだから、外したら悪いな。でもまぁ他にもまだいるから死んでくれても大丈夫だぜ?」



──ビュンッ!!──


──ドスッ!!──


「ひっ!!」



 セレスはとんでもないセリフを言うや否や、あっという間に弓を構え、木に縛り付けられた捕虜に向かって矢を放った。


 放たれた矢は捕虜の頬を掠め、赤い筋をその肌の上に残している。セレスの鮮やかな弓の技術に、傍らで見ていたノワールは感嘆し、捕虜たちは皆、顏を青ざめさせた。



「さぁて、その体に穴が開くのが先か、こちらの欲しい情報を言うのが先か──どっちになるかな?」



 次の矢を構えたセレスが、仄暗い笑みをこぼした──



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