表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薔薇騎士物語  作者: 雨音AKIRA
第2章 トラヴィス王国編 ~砂漠の王者とロヴァンスの花嫁~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

243/319

2章64話 街の噂


 エドワード達がヴィシュテールの街に入ると、早朝にもかかわらず、街は賑やかさを通り越して、物々しい雰囲気となっていた。



「何かあったんですかね?」



 ユリウスが視線を険しくして、辺りを警戒している。


 街には多くの兵士が闊歩し、人や物を念入りに取り締まっているようだ。その険しい表情を見るに、かなり深刻な様子が窺える。



「いつもこのような感じなのか?ヴィシュテールは」



 エドワードが同行しているチャンセラー商会の人間に問うた。



「いえ……いつもはこんな風ではないのですが……」



 フランとミスティの双子と道中一緒になった為、ここに来るまでの間に商会の案内役がエドワード一行に付いてきていた。だがその案内役の者も予測していない事態が、この街で起きていたようである。



「なんだか怖い感じだね……」


「うん……」



 双子が怯えて、エドワードの影に隠れるようにして歩く。



「大丈夫だ。すぐに姉君の所に到着する。それまでの辛抱だ」



 エドワードがしっかりと双子達の肩を抱き、彼女達を励ます。



「あ、なんか人が集まってますよ?ちょっと見てきます!」



 ユリウスが街中の人だかりに気が付き、情報収集の為にそこへ向かう。エドワードや他の者達も気になったので、共に行くことにした。



────────────────



 石畳の敷かれた広場に、多くの人々が集まっていた。その中央に、高々と掲げられた看板。皆仕事の手を止めて、そこに書かれた内容を食い入るようにして見ている。



「ちょっと、すみません!通して!」



 ユリウスが人混みを掻き分けて、前へ進んだ。 



「本当に大丈夫なのか?」


「戦が始まらないといいけど……」 



 人混みを描き分ける中で聞こえるのは、街の人々の戸惑いの声。


 戦というその言葉に不安を感じながら、ユリウスはそこに書かれている文章を読んだ。そこに書かれていたのは──



『国王アスラン・ハウルク・タゥラヴィーシュは、ロヴァンス王国の姫君を妃に迎え、これを唯一の正妃として遇する。婚礼の儀式は次のタゥラの祝日に行うこととする』



「これって……」


「ティアンナ嬢が正式に第一位の妃になる……ということだな」


「エドワード様……!」



 ユリウスの後に付いてきたエドワードが、表情を険しくしながら呟いた。



「でも、これって民にとったらおめでたい事ですよね?街の物々しい雰囲気とそぐわないような気が……」


「あんたら、外から来た人かい?」


「え?えぇ」



 ユリウスの素朴な疑問を耳にした街の者が、声を掛けてきた。人の好さそうな恰幅のいい男性である。



「なら仕方ねぇな。今この街は、おかしな殺人者が闊歩しているっていうからよ。み~んなピリピリしてるんだ」


「殺人者?」



 不穏な言葉に、エドワード達は身を固くした。



「あぁ、なんでも後宮の女達を襲って、街でも多くの人間を殺したんだってよ。つい昨日の晩のことだ」


「それは……」



 エドワード達は顔を見合わせる。彼等は道中立ち寄ったルシュタールの街でも、人が殺されていたのを目撃していたのだ。


 すると男は声を潜めて、とっておきの話だと言って街の噂を語り始める。



「ここだけの話だが……裏でロヴァンスのお妃様が、糸を引いているんじゃないかって」


「そんなはずはっ……!」


「しっ……!」



 反論しようとする双子を、エドワードが抱きかかえて制する。ここで騒ぎを起こせば、余計混乱を招き、あらぬ疑いを掛けられかねない。



「妃を殺して、自分が一番になって、いずれこの国を乗っ取る為に戦を仕掛けるんじゃないかって、もっぱらの噂だよ」



 男はエドワード達の動揺に気が付いていないのか、噂を話し終えた所で満足したようだ。その場を離れ、また同じ話を別の者に話して回っている。



「エドワード様……」


「……あまり良くない流れだな……」


「えぇ……真実がどうであっても、このままでは……」



──戦が始まるかもしれない──



 彼らの行く先に、暗雲が立ち込めようとしていた──


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i386123 i528335
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ