5話
「ねぇ、結婚式に呼ぶ友人なんだけどさ………………」
紗英は結婚式の準備に忙しそうにしている。でも、前回の治療で友人のほとんどを忘れてしまったので、誰を呼べばいいのかわからない。
「あ~、僕の方は会社の同僚とかにするから、友人席は紗英の友達を多めにしてくれたらいいよ。」
「えっ?地元の友達とかはいいの?」
僕が一番触れられたくないところを的確につかれたと思い、
「また、地元に帰ったときに飲み会でもするよ。
結婚式のために出て来てもらうのも大変だしね。」
「そう?
まぁ、それならいいんだけど。
じゃあ、会社の同僚の人をリストアップしといてね。」
「わかった。」
これでこの話は終わったなと思っていると紗英が僕の横に座り、
「結婚式の招待状なんだけどさ………………」
「何か気に入らないところとかあった?」
「あ、違うの。
デザインとかもよかったし、送る人にはもう発送の手続きも進めてるんだけど、修也のご両親には直接渡したいなと思ってさ。
良いかな?」
「別にいいけど、仕事もあるから一緒に行けるかわからないな。」
「うん、まぁ、そうだよね。
じゃあ、私だけでも行って良い?」
別にかまわないと思ったが、両親は僕の病気を知っている。もしも、うっかりと話すようなことがあってはいけない。
そんなことを考えていると紗英が心配そうに覗きこみ、
「やっぱりダメだった?」
「いや、いいよ。
いつ行くの?」
「う~ん、私も仕事があるから、少し落ち着いたところで休んで行こうかな。」
「そっか、ごめんね、一緒に行けたらよかったけど。」
「急に言い出したの私だしいいよ。」
紗英はそう言って笑った。
僕はできるだけ早くこの事を両親に伝えて、病気のことを話さないように釘を指す必要があると思った。
紗英を騙し続けることになっても、紗英と一緒にいたい。それが僕のすべてだったからだ。